「マリーダから連絡だ、例の姫をアザディスタンに移送するとよ」
暗号伝文を伝えるのはギルボア。それを聞いたヘンケン艦長は口を開こうとするが、聞かれる内容の見当がついていたギルボアがさらに続ける。
「さすがにガンダムは使わないと」
「そう聞いて安心したといいたいところだが、我々の仕事が増えたともとれるな」
嗅覚の鋭さなのか、気が付いたころにはブリッジにダグザ中佐もいた。
「新規案件の臭いがするな」
「いつもすまないな。生憎組合の重鎮が出払っているのでな。しかし...」
ヘンケン艦長の懸念、それは連邦に加盟していないアザディスタンにのこのこと連邦軍が入ってきていいのかというものだった。無論、いくらでも大義名分は作れるが、下手をするとアロウズを増長させるだけになる。
「組合の艦長が心配することはないでしょう。」
ダグザは確かに連邦軍人ではあるが、ヘンケン艦長は違う。ただ、アルビオンのような「異物」を操舵、指揮できる人材はなかなかいない。故にアルビオンはMS戦は主にエコーズ、艦艇制御は主に組合と役割分担がなされている。おかげで組合は「運航手数料」とやらをダゲスタンから毎月欠かさずもらえている。
「確かに、私は組合の人間だが、アザディスタンは面倒な土地だぞ」
「故に我々に大義名分がある。アロウズでないということがな」
マリナ姫は刹那に連れられるがままにプトレマイオスの格納庫にあるシャトルに乗せられていた。
シャトルに乗り込むと発進するまで静けさが続いた。静けさを破ったのは刹那だった。
「アザディスタン領空に近づいたら協力者が引き続き移送する。」
ここでいう「協力者」とはカタロンでもなく、その他反連邦組織でもなくエコーズだ。
「刹那、なんで戦うの?」
刹那はしばらくだまりこんで答える。
「歪んだ世界を破壊する」
「ダグザ・マックール、バイアラン・カスタム、発進する!」
「ヨナ・ハイネセン、アンクシャ、出ます!」
最低でも3機で出撃した方がバランスはいいのだろうが、アザディスタンの反連邦感情を刺激しないように敢えて2機にした、というのが後のダグザの説明だ。それでももう1機出せばもっと楽に事は運んだと白状したのだが。
「面白いクライアントだぜ、やっぱ戦争は派手じゃなきゃなぁ!」
コックピットモニターの眼下には燃え盛る街が地平線上まで続いていた。
「あれは....」
ランデブーポイントにはまだついていなかったが、刹那は目を疑いたかった光景を確かに見ていた。
「なんで....」
唖然とするしかないマリナ姫。地平線を見る限りといわんばかりに辺り一帯は炎に包まれていた。そして犯人もそこにいた。いかにも忌まわしい外見の機体が優雅にたたずんていたかに見えた。目撃者がいるにも関わらず動じないということは「誰か」が戻ってくるというのは織り込み済みだったのだろう。
赤い機体にはファングが戻っていた。が、そのうちの1機が狙い撃ちにされた。
「くそ、部外者か....」
少しばかり時間を戻す。
「ダグザ隊長...」
「暴れたのは1機か...識別に該当はなし...か...」
「果たしてソレスタルビーイングの仕業でしょうか?」
「だとすれば自業自得だ。だが、アザディスタンに戻られると困る輩はいる」
「自作自演...」
「テロ行為に及んだ以上、大義名分はある」
バイアランのモニターでは赤い機体に戻るファングを1つ1つ捉えていた。
「ヨナ、遠隔攻撃を行う機体でピンとくるものはあるか?」
「前大戦で1機ありました。鹵獲されて国連軍で使われてましたね」
「こちらエコーズ1、これよりテロリストを排除する!」
「エコーズ2、貴殿を援護します。」
次回:一同会す