機動戦士ガンダムOOΞ   作:Gfish

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収容所の襲撃はソレスタルビーイングによって戦端を開かれた。刹那は収容所への侵入に成功し、アレルヤを救出すべく奔走する。一方、侵入成功の知らせが届いたアルビオンではダグザのバイアラン・カスタムが先行発進した。連邦ダゲスタン管区の特殊部隊による接収作戦は開始された。


アレルヤ・ハプティズム

時は遡る。

 

「ガンダム並びに被検体E57を確保!」

 

被検体E57、それは彼がガンダムマイスターとなる前の「名称」だった。

 

キュリオスは動けなくなり、自身ももう動けない。仲間はとっくのとうに散ってしまったのだろう。なす術もなく国連軍に機体が引っ張られていく。

 

(裁きの時が来たんだ...)

 

あれから4年間、被検体E57はどこかの独房で4年間暗闇の中で朽ちていくのをひたすら待ち続けた。ある時は目隠しをされ、謎のチューブのようなものを体中につけられたこともあった。何をされようと、自身は世界を敵に回し、時には虐殺と言われても仕方がないことをした以上、これも裁きだと受け止めた。

 

それにしても途中で1日だけ温かな感情のようなものを感じ取った。脳量子波でなんとなくではあるが分かった。誰かの温かな意識に触れたのだと。

 

「最後にいい夢を見せてくれてありがとう...」

 

その日、収容所には例の特殊部隊もいた。それから2年目のある日、それは起きた。

 

 

「被検体E57!」

 

聞き覚えのある女性の声がした。

 

「う...」

 

眩しい。暗闇に慣れたせいか、久しぶりの光は僅かなものであっても眩しい。照明ときたらなおさらである。それにしてもなんでこれまで気が付かなかったのだろうと、彼は己を責めていた。

 

「マリー...」

 

「私はマリーなどという名ではない!」

 

「なんで気付けなかったんだろうね...」

 

「私はソーマ・ピーリス、超兵だ!」

 

「マリー、あの時からずっと一緒だったのに...」

 

「気やすくしゃべるな!被検体E57!」

 

「アレルヤだよ...君が...」

 

「気やすくしゃべるなと言っている!」

 

アロウズの制服を着た女性士官、ソーマ・ピーリス中尉の口調は毒々しかった。

 

「2年前にここに超兵がもう1人いたそうだな。」

 

「....」

 

「質問に答えろ!被検体E57!」

 

「1日だけ、温かい気持ちになれたんだ...」

 

女性士官は舌打ちする。多くの人を「武力介入」で散々なぶり殺しにしたかと思えば今度はこんな調子なので苛立ちはあっという間に沸騰する。しかし、ソーマ・ピーリスはそこを抑える。

 

「生きていたのか?」

 

この問いにアレルヤは頭に激痛が走り、パニック状態になる。

 

「うあぁぁぁ!あぁぁぁ!」

 

ソーマ・ピーリスと共に同行していた4人の男がパニック状態のアレルヤを取り押さえる。そこにはクシャトリヤとやり合って生き延びたアンドレイ少尉もいた。

 

結局、アレルヤを気絶させて縛り上げた上で独房を後にした。

 

「あんな奴は早く廃棄処分にした方がいいのではないでしょうか。」

 

問いかけたのはアンドレイ少尉だった。

 

「いや、まだ使いようはある。確かにここにもう1人超兵がいたらしい。」

 

答えるのはソーマ・ピーリス中尉。

 

「しかし、暴走が原因で処分されたのでは?」

 

「4枚羽とやりあったんだったな?」

 

「はい。とても常人が使えるとは思えない代物でしたが。」

 

「ああ、そこには恐らく被検体E57のような超兵崩れがいるのだろう。」

 

「まさか...!」

 

「マネキン大佐が懸念していた通りかもしれん。」

 

「正規軍にもシンパはいるのか...!恩知らずめ!」

 

アンドレイ少尉の捨て台詞を余所目にピーリス中尉は何かを感じ始める。

 

(ハレルヤが目覚めないといいのだが)

 

その時、敵襲警報が鳴った。

 

 

 

 

刹那は収容所の中を走っていた。すでに銃声は聞こえるが、自身を狙っていない。

 

(カタロンもいるのか..)

 

収容所の守備隊がカタロンとやり合っている隙に敵と鉢合わせることもなく標的の独房にたどり着いた。

 

「アレルヤ、聞こえるか。」

 

独房の中から返事が聞こえた。

 

「刹那...!生きてたんだ..!」

 

「ドアから離れろ!」

 

刹那は返事も聞かず独房のドアに粘着爆弾を投げつける。そしてドアが吹き飛んだことを確認して中に入り、軽いフットワークで手錠をハンドガンで撃ち壊す。

 

「刹那...」

 

「時間がない、このポイントに向かえ。」

 

そういうと刹那は足早に立ち去った。明らかに急いでいる様子だった。

 

一方のアレルヤは信じられないほどに大人びた刹那を見て察した。まだ朽ちてはいけないのだと。

 

「マリー...必ず...!」

 

アレルヤは水を得た魚のように猛疾走する。やがてたどり着いた先にはキュリオスに似たガンダム、アリオスガンダムが主人を待っていた。が、そこに例の女性士官らが立ちはだかる。

 

「動くな!被検体E57!」

 

アレルヤは動きを止めたが、死を待っていた顔ではなかった。

 

「マリーなんだろ!マリーなら聞いてくれ!」

 

「何度言わせれば気が済む!」

 

「アレルヤだ!僕が分からないのか!」

 

「射殺許可は出てい....くっ....なんだ...」

 

ソーマ・ピーリス中尉は突然の出来事に意識が遠ざかりそうになる。脳内を引っ掻き回されるような不快感だった。アンドレイ少尉がフォローを試みる。

 

「大丈夫で...」

 

その時建物に緑色の腕が突っ込んだ。クシャトリヤだった。

 

「時間がない!早くしろ!」

 

アレルヤにとって不思議と初めてとは思えなかったが、クシャトリヤの腕がバリケード代わりになっている内にここは考え過ぎずにアリオスに乗り込む。

 

一方のピーリス中尉の頭痛はさらに激しさを増していた。

 

フォローしていたアンドレイ少尉は他の士官にピーリス中尉をたくし、4枚羽を怪訝な目でにらみつける。

 

「4枚羽め...!」

 

 

 

「例のパイロットの戦線離脱を確認した。アンクシャも出すぞ!」

 

ダグザのバイアランはミノフスキー粒子を散布してレーダーをジャミングできたことをいいことに、収容所の上空から偵察ができていた。高度は2万メートルだ。

 

アルビオンからヨナの登場する「オリジナル」のアンクシャを先頭に編隊が出撃していく。

 

アンクシャの編隊はクシャトリヤやガンダムを回収していくプトレマイオスが視界に入るが、ここは基本的に無視する。ハサウェイのアンクシャについてはクシャトリヤから通信が入っていた。

 

「強化人間 ダウン...か。俺の出番はなさそうだな。」

 

収容所を視界に捉えたあたりでダグザの駆るバイアランが先頭に合流する。

 

「こちら地球連邦軍特殊部隊エコーズ隊長、ダグザ・マックール。本収容所は軍規で禁止されていた強化人間の研究を強行している。よって、連邦軍の軍規に従い、軍規違反を犯した収容所を接収するものとする。」

 

ダグザはオープンチャンネルを切ると独り言をポツリ。

 

「残念だ...マネキン大佐...」

 

ダグザの言っていたカティ・マネキン大佐はピーリス中尉らによる「被検体E57に関する任務」でアロウズから指揮官として派遣されていた。しかし、ソレスタルビーイングの奇襲を受け、さらにカタロンまでなだれ込み、例の被検体を失い、最後には友軍から銃口を突き付けられる有様だった。

 

「本艦は遺憾ながら収容所を放棄する。MS隊は速やかに撤収せよ。」

 

正規軍のアロウズ殺しという異名を持つエコーズと正面からやり合うのは賢明ではないという判断だった。カタロンの前で連邦軍同士がやり合っているところが露見すると示しがつかない。そしてさらには弱体化していたソレスタルビーイングをこの機会に増長させかねないという懸念がマネキン大佐にはあった。

 

エコーズが収容所に到達したときにはほぼもぬけの殻となっていた。強いて言えばカタロンの撤収が終わっていたとは程遠い状況だった。まだ収容者の脱出が完了していなかったのだ。

 

しかし、これも想定通りだった。その上でバイアランはメガフォンをONにしてカタロンとまだ脱獄できていない収容者に呼びかける。

 

「連邦軍ダゲスタン管区特殊部隊エコーズのダグザ・マックールだ。これより軍規を犯した非人道的な収容所の調査を開始する。解放にあたって最大限の協力をお願いしたい。」

 

この文言はあらかじめハサウェイが準備していたものだった。典型的な軍人のダグザなら事情聴取とかいう言葉を使って誤解を招きかねないと心配したためだ。

 

しかし、緑色のアンクシャが見えた時点で「正規軍のアロウズ殺し」が来ていたことは分かっていた様子だった。

 

ダグザは続ける。

 

「なお、事務手続きはライトブルーのモビルスーツの1番機に乗っている組合の責任者が担当する。」

 

組合というキーワードを聞いたカタロンの要員は撤収作業を継続、隊長と思われる40代の男はその1番機に駆け寄った。

 

「連邦軍に紛れ込むなんて卑怯だなぁ!」

 

「正直銃を向けられるんじゃないかとヒヤヒヤしましたけどね。」

 

「組合がいると分かれば話は別さ。ところで、事務手続きをしたいんだけど。」

 

「事務手続きね...本当にGN-Xじゃなくていいんですか?」

 

「うちにはGNなんざじゃじゃ馬を扱える設備はないからな。」

 

「懸念は残るが契約は契約だ、イナクトはまだAEUのカラーリングにしてあります。拠点に着くまでは味方を欺くかもしれませんが、連邦の識別コードも...」

 

「分かってるよ、マフティー。」

 

「商談の時はハサウェイでいいって言ったはずですよ。ラシードさん。」

 

「おっとっと、これは失礼。ところで、ソレスタルビーイングとは話はつきそうかね?」

 

「ジーン1はどうしてます?」

 

「やれやれ、そこに組合もいたとはな」

 

「そういうことです、今頃頭痛はピークだと思いますよ。」

 

確かにプトレマイオスにはカタロンではジーン1だったライルとクシャトリヤに駆るマリーダが揃っていた。特にマリーダは堅物のティエリアを頭痛にさせた強者だ。が、そこにさらにもう1人の頭痛の種が加わっていた。

 

「刹那のことだからやりかねないと思ったが、本当にやってくれたな。」

 

ティエリアが苦笑いするのも無理はない。何せ、刹那がアレルヤを解放したついでにプトレマイオスに持ち帰ったのはマリナ・イスマイールだったのである。

 

が、プトレマイオスには頭痛に悩む気配はない。戻ってきたばかりのアレルヤは酒を持ってスメラギの部屋に入っていた。そこにさらにお節介焼きの営業担当も強行参戦したことでそれはそれはとても放送できないような内容が飛び交った酒宴になったらしい。なお、アレルヤは酔いつぶれる前に途中で離脱した。それにしてもマリーダは一体何を吹き込まれたのだろうか(笑)。その元凶はヘンケン艦長にあるのだが、その話はきっと改めて耳にすることになるだろう。

 

 




次回:ルブアル・ハーリー砂漠
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