カードファイト!! ヴァンガード -隻眼のPSYクオリア- 作:キシヨウタ
全話生配信にあてられました。
初投稿、初2次創作です。温かい目で見てやって下さい。
世界のカードゲーム人口は数億人を越え、人々の生活の一部として当たり前のものになっていた。
『カードファイト!! ヴァンガード』
人々の中で今一番注目を集めているカードゲームだ。
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「さあさあここで上杉軍軍勢1万2000!戦術パターン『車懸りの陣』発令!濃霧の中信玄本隊へ攻撃だァ!」
後江中学校3年生のとある教室。そこで社会科教師、マーク・ホワイティングによる、カードゲームを用いた独特の授業が繰り広げられていた。
「そして武田軍は軍勢8000!『鶴翼の陣』を発令して上杉軍に対抗!しかし多勢に無勢、武田軍ピーンチ‼︎」
(……あいかわらず暑っ苦しい授業だなぁ…)
(外国人なのに戦国時代マニアなんて、変わってるよね)
生徒たちの呆れにも近いぼやきも聞こえないのか、どんどん授業内容もヒートアップしていく。
「さあ、この生き馬の眼を抜くような戦国時代を…」
そう言うとマーク教師は出席簿を広げ、その中にあった一人の生徒を指差す。
「キミならどう生きるか‼︎先導アイチ‼︎」
日本史の教科書を開いてまじめに授業を聞いていたであろう、右目部分に眼帯をした青髪の少年『先導アイチ』は、特に驚いた様子もなくゆっくりと顔を上げ、教師であるマークに視線を移した。
「先導くんは、この戦国時代になにをして名を残したいかね?」
「そうですね……」
マークのこの無茶振りとも言える問いに、少し悩む素振りを見せる。
(先導って、なんか不思議なヤツだよな…)
(ああ、あんまり喋るタイプじゃないけど、だからって影が薄い訳でもないし…)
(右目にしてる眼帯のことも、なんか聞きづらいしな…)
(それにカワイイし…)
(今なんか変なヤツいなかったか?)
「どうした先導くん!イメージ‼︎イメージして!」
周囲がざわつく中マークに急かされつつも数秒ほど悩み、
「…ぼくなら、まずは敵を一人倒して、その鎧や武器を奪います。」
と穏やかながら、はっきりとした口調で言った。
周りの生徒たちがどよめく一方で、教師であるマークはそんなアイチに対し、
「ほう…、その心は?」
アイチに再び問う。
それに対して、
「ぼくは武田軍の兵士、しかし戦力的にはこちらの不利。ただの一兵士に過ぎないぼくに出来ることは、精々相手を、良くて数人倒す程度。だったら、敵を一人確実に倒して、その倒した人に成り代わります。」
さらに続けて、
「そうしたら、戦いの混乱に乗じて敵大将に近づき、隙をみてその首を討ちます。」
アイチはまるで事前に用意していたかの様にスラスラと、当たり前にそう言ってみせた。
他の生徒たちはこのアイチの予想外の解答に対してざわめきすら失っていたが、マークは、
「フーム…。しかし、これは中々に危険な作戦ですよアイチくん。上手く潜入出来る保証もない。たとえ出来ても、戦いが混乱に発展するとは限らないのですから。」
と、先程までの笑顔ではなく、真剣な眼差しでアイチを見た。
アイチは、マークから向けられるその、覚悟を問うかの様な視線に真っ直ぐに答える。
「『歴史に名を残す』なら、このくらいはしないと。それにぼくは、自分の仲間たちならきっとやってくれるって、信じていますから…。」
と、微笑みながら。
後ろを振り返ってアイチに注目していた周りの生徒ーー特に女子たちーーは、眼帯で右目が覆われていても決して損なわれない、その幼さの残る中性的な顔立ちから放たれる少年の笑みに鼓動を速め、マークは、
「マーベラス!素晴らしいイメージです、先導アイチくん!」
自分の生徒が自らの想像を超える解答をしてきたことに感動していた。
一方、解答を終えてすでに着席していた眼帯の少年、アイチは制服の胸ポケットから生徒手帳を取り出し、その中に挟んでいた一枚のカードを見つめていた。
『君ならこんな策じゃなくて、正々堂々と敵を倒していくんだろうね……』
ーー『ブラスター・ブレード』……ーー
自分にはない、戦うための力を持つ剣士の姿を眺めながら、アイチはそう思った。
そんなアイチの斜め後ろの席に座る、同じく後江中学校三年生の森川カツミは、授業中にも関わらずカードゲームのパックを開封していた。
『……このパックにも昨日のアイツに勝てるような強力なカードはねぇ…。引きが弱いのか?俺…。』
彼は今焦っていた。自分がよく利用しているカードショップに、引越してきたという『とある少年』がやってきて、カードファイトを挑まれ負けたのだ。
その少年がやって来るまで、森川はショップの常連の中で一番の実力者だった。
『なんとかしてあいつを倒す強力なカードを……ん?』
ふと前の方に目線をやると、斜め前の席に座る先導アイチの姿が目に入った。
『あいつが見てるあれは……、ヴァンガードのカード?しかもありゃ…『ブラスター・ブレード』じゃねぇか⁉︎』
ブラスター・ブレードは強力なユニットでありレアカード。今の森川にとっては喉から手が出るほど欲しい存在だった。
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本日の授業もすべて終了し、放課後の今。
体育館裏に呼び出されたアイチは彼に声をかけた張本人、森川を含む数人の男子生徒に囲まれていた。
「先導アイチ…、おめぇがヴァンガードファイターだとは知らなかったぜ!」
自分と壁の間にアイチを挟み込み、片手を壁につけて逃げられないようにしながら、森川は話しかける。こんなことをされれば、普通は怖がったり萎縮してしまうものだが、アイチはまるで意に介さない様子で森川の発言に答える。
「ぼくが、ヴァンガードファイター?」
「とぼけんなよ、ヴァンガードのカードで戦うのがヴァンガードファイターだぜ。お前もそうなんだろ?」
森川の言葉に、アイチは少し悩む。
「うーん…。でも、そう言うことならやっぱりぼくはヴァンガードファイターじゃないよ。」
「あん?どういうことだ?」
「確かにぼくは、ヴァンガードのカードも持ってるし、いつか対戦したいと思ってデッキも組んだりしてるけど、まだ誰とも戦ったことがなくて…」
「ふーん……。ところでよぉ、先導。」
と、ここからが本題だと言わんばかりに、森川は今までの会話を切る。
「その胸ポケットに入ってるカード、ちょっと見せてくれよ。」
森川は、アイチの制服の左側に付いている胸ポケットを指差しながらそう言った。これにアイチは、
「うん。いいよ、森川くん。」
と言って快諾し、胸ポケットから取り出した生徒手帳を開いて森川の言うカード、『ブラスター・ブレード』を見せる。
『先導アイチ……。こいつ、気弱そうな面して結構度胸がありやがる。カードを奪い取るってのは、少し難しいかもしれねぇな…。なら、仕方ねぇ……。』
そう頭の中で算段をつけた森川は、壁から手を離して半歩ほど後ろに下がり、アイチに向かって拝むように手を合わせ頭を下げた。
「頼む先導!その『ブラスター・ブレード』のカード、俺に貸してくれ!」
「えぇ⁉︎」
森川の突然の懇願に対して、今まで平静を保っていたアイチも流石に驚きを隠せなかった。森川の友人でありクラスメイトでもある井崎ユウタも、「森川が、人に頭を下げるなんて……。」と一緒になって驚いていた。
「ど、どうしてぼくの『ブラスター・ブレード』を……?」
少しどもりながらも、自分のカードを貸してほしいと言ってきた森川に質問をする。
「俺は昨日、ある男にヴァンガードファイトで負けた…。それまで俺は、誰にも負けない最強ファイターだったのに…!」
「森川くん…。」
自らの心情を嘘偽りなく吐露する森川に対し、アイチは同情的な視線を向ける。
「だが、俺がヤツに負けたのは実力のせいじゃねぇ!昨日の俺の運勢が悪かったってのもあるが、ヤツの使うカードの方が強力なものが多かったのも事実。そこで!」
アイチの持つカード、『ブラスター・ブレード』に目を向けながら叫ぶ。
「その『ブラスター・ブレード』だ!そのカードさえありゃ、昨日のあいつにも勝てる!な?だから頼む、先導!そのカード、俺に貸してくれ!」
「…………。」
森川の必死の懇願に、アイチは少しだけ考え、
「はい、森川くん。」
そう言って、自分のカードを差し出した。
「い、いいのか?本当に?」
「うん。確かにこのカードは大切なものだけど、ぼくが『彼』を使う機会はまだなさそうだし。それに、このカードも誰かに使ってもらえる方が嬉しいだろうしね。」
ーーだから、少しの間ならーー。
アイチは少し寂しそうな笑顔をして、森川にカードを手渡す。受け取った森川は、
「サンキュー先導!よぅし、早速『カードキャピタル』に行って、あの野郎を負かしてやるぜ!」
いくぞ井崎!ま、待てよ森川ァ!なんて言いながら、彼等はカードショップに向かって走って行く。
その姿に少し羨ましさを感じながら、アイチは森川が言っていた言葉を思い出す。
「『カードキャピタル』か……。そこに行けば、ぼくもヴァンガードファイトができるのかな……?」
思い立ったアイチは、森川たちが走って行った方を見つめる。すでにその姿は見えなくなっていたが、件のカードショップがどこにあるのかおおよその見当はついていた。
「前に出かけた時に、見かけた覚えがある……。確か……。」
と言って、アイチはゆっくりと歩き出す。先に森川たちがたどり着き、話にあった『ある男』とヴァンガードファイトをしているであろうカードショップへ。
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カードショップ『カードキャピタル』の店内では、森川と彼の言っていた『ある男』、櫂トシキとが言い争いをしていた。
「櫂!勝負しろ!」
「お前、昨日の…。」
「一度勝ったぐらいでいい気になるな‼︎この店のトップの座を賭けて、もう一度勝負だ‼︎」
リベンジマッチに燃える森川。しかし対する櫂は、
「やだね…。」
と、明らかに冷めた返事をする。
「なにぃ⁉︎」
「お前はヴァンガードが下手だ。戦術が単純で戦略に深みがない、カードの力に頼り過ぎてるんだ。」
「…ッ‼︎」
「お前と戦っても何も得るものがないんだよ。だからやらない…。」
うっわー、そこまで言うか?と、櫂の向かい側に座り会話を聞いていた彼の旧友、三和タイシも若干呆れるように言う。
「……俺に得るものがないだとぉ…!」
こき下ろされた森川は怒りのあまり、禁断の手を使ってしまう。
「ならお前が勝てば、このカードをくれてやる!」
「おおっ、『ブラスター・ブレード』じゃねぇか!」
いちはやく反応したのは三和だった。どうやら彼もこのカードの価値を理解しているらしい。
『『ブラスター・ブレード』…?まさかこのカード…。』
櫂もまたそのカードに何かを感じ取り、顔を上げる。
「どうだ、これなら何も得るものがないなんて言えないだろ!」
「お、おい森川それは……。」
「うるせぇ井崎!さぁファイトしろ、櫂トシキ!」
借り物を賭けに使うのは流石にまずいと思い井崎は森川を止めようとするが、まったく聞く耳を持たない。
一方の櫂も、
「いいだろう…。」
と言ってその条件を条件を飲んでしまう。
三和も彼の言葉を聞いて、櫂と森川のファイトが始まると察し自分が座っていた席を立つ。
「「スタンドアップ・(the)ヴァンガード!」」
二人のファイトが始まったーー!
ーーそんなやりとりが起きているとはつゆほども思っていないアイチは、自分の記憶を頼りに森川たちが行った先であるカードショップ『カードキャピタル』に向かって歩いていた。
「確か、この道を行った先にそんな店があったような…。」
うろ覚えながらも、確かな足取りで目的地に近づきつつある。後数分もあれば間違いなく辿り着けるだろう。
ーー場面は戻り、『カードキャピタル』店内。
櫂と森川、二人の戦いは決着を迎えようとしていた。
「くそっ、なんて運が悪いんだ俺は…!」
「運じゃない、実力だ。」
森川は、思うようなファイトができないせいか自らの不運を呪う。が、櫂はそんな言い訳を正論で切り伏せる。
「ヴァンガードにアタック!」
「ガ、ガードできねぇ…。ダメージチェック……、トリガー…なし…。」
「これで6ダメージ、俺の勝ちだな。」
「こんな…、こんなはずじゃ…‼︎」
ショックを隠せない森川の手札から、三和が『ブラスター・ブレード』のカードを抜き取り、櫂に向かって滑らせるように投げる。
「ほら、お前のだぜ。」
『『ブラスター・ブレード』…。』
櫂が目の前にある賭けの戦利品を眺めていると、
「森川くん、やっぱりぼくもヴァンガードファイト始めてみようと思うんだ!それで、貸していたカードを返して欲しいんだけど…。」
『カードキャピタル』に辿り着いたアイチが店内に入ってきて、そんなことを言う。
森川たちのいるテーブルに近づいていき、その上を見るとファイトをした形跡がある。状況を見るに、森川がダメージを6つ貰い敗北したのだとたった今来たアイチにも分かるが、問題は森川の対戦相手である少年の手元にあるカードである。
『『ブラスター・ブレード』が、どうして……?』
アイチが目の前の光景に困惑していると、
「スマン先導!森川のやつがお前のカードを勝手に賭けに使っちまったんだ…!」
やらかしたはずの本人より先に、友人である井崎が謝罪する。
「え…、えぇぇ⁉︎」
「俺がもっと強く止めてれば…。ほら森川、お前も謝れ!」
「わ、悪いアイチ…。でも俺の計画じゃあ櫂のヤツに勝って問題ないはずだったんだよ!」
「いや言い訳になってねぇよ!」
井崎のごもっともなツッコミに流石の森川も反省したようにうなだれる。
すると先程から三人の会話を聞いていた三和が、
「これ、お前のカードだったのか?」
『ブラスター・ブレード』を指差して、そう言う。
「そ、そうみたいです…。あの、返してくれませんか…?」
アイチは少し緊張気味に櫂に話しかける。
それに対して櫂は、
「…なぜ?これはもう俺のカードだ。」
と、『ブラスター・ブレード』のカードを手に取り冷たくあしらう。
「お、おい…。」
彼の友人である三和もこの態度に困惑する。そして、森川と井崎も同じく困惑していた。
そんな彼等を気にする様子もなく、櫂は話を続ける。
「俺たち『ヴァンガードファイター』にとって何より神聖なものが、ファイトの結果だ。そしてあいつは、このカードを賭けて俺に挑み敗れた。」
櫂の言葉に、森川は気まずさからか目をそらす。彼の言い分が正しいだけに反論も出来ない。
櫂の言葉を受けて、アイチが質問をする。
「…では、どうすればカードを返してくれますか?」
「ヴァンガードファイトで失ったものは、ヴァンガードファイトでしか取り返せない。」
「つまりあなたに勝てば、カードを返してくれるんですね。」
大人しそうなアイチの意外な台詞に、彼等のやりとりの一部始終を読書の横目に見ていた『カードキャピタル』の店員、戸倉ミサキを含めた周囲の全員が驚く。
が、櫂はすぐに平静を取り戻して、
「あぁ。俺に勝てたら、な。」
「それじゃあ、決まりですね。」
「ちょっと待て、何言ってんだアイチ!お前、誰ともファイトしたことないって言ってただろうが!そんな素人が…。」
この対戦に待ったをかけたのは森川だった。
ヴァンガードファイト経験が豊富な自分ですら全く太刀打ち出来なかったのだ、素人同然のアイチが勝てる見込みはないと思ったのだろう。
しかし、そんな森川の心配するような言葉にアイチははっきりと答える。
「ありがとう森川くん。確かにぼくは、まだ誰ともヴァンガードファイトしたことがない。けど、いつかやりたいと思ってシミュレーションもしてきたし、デッキも磨いてきたつもりだから…。」
ーーだから、大丈夫。
シミュレーションと実際のファイトは違う。ましてそんな仮想敵相手に研鑽されたデッキで、一体どの程度通用するのか。一番不安に思っているのはアイチ自身だった。
だがアイチは、この戦いの発端を生み出した森川を責めることはなく、むしろ感謝していた。
『数年間、自分の世界だけで満足していたぼくにヴァンガードファイトをするきっかけを作ってくれて、ありがとう…。』
おかげで、覚悟が決まったよ…!
「ふっ…、いい眼だ…。」
櫂もまた、アイチの覚悟を感じ取ってやる気を覚える。
櫂とアイチ、二人が対面の席に着く。
「『ブラスター・ブレード』は貸してやる、俺にとっては余計なハンデだ。それと、ルールの説明はいらないな…?」
「はい、問題ありません。」
「なら、始めるぞ…。イメージしろ!」
「はい!」
「「スタンドアップ・(the)ヴァンガード!」」
アイチの初めての戦いが始まるーー!
文章短く出来なくて1話でアイチと櫂のファイト書けませんでした。ごめんなさい。