カードファイト!! ヴァンガード -隻眼のPSYクオリア- 作:キシヨウタ
時間がかかってしまいました、ごめんなさい。
これと次の話は、どうしても丁寧に書きたかったんです。
夢を見た。
昔の事を。
忘れたくても、忘れられない。
そんな、辛くて苦しくて、痛い記憶。
変える事の出来ない、過去の出来事を━━。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ヤバいです、実にヤバいです!」
「ヤバいって、何が?」
その日『カードキャピタル』を訪れていたカムイとアイチが、ミサキや森川たちも交えて、なにやら会議の様なものを開いていた。
その議題はもちろん。
「雀ヶ森レンです!あれが全国最高レベル、全国にはあんなファイターがぞろぞろいるかも…。」
「うん、楽しみだよね。」
「のんきに言ってる場合じゃないですよ、お兄さん…。そこで、オレが持って来たのがこれです!」
カムイがテーブルの上に出したのは、一組のヴァンガードのデッキだった。
「アイツが使ってたデッキです。まずは敵を徹底的に研究ですよ!」
「おっ、クソガキにしちゃあやるじゃねぇか。」
「クソガキ言うなマケミ!」「カツミだっつーの!」と、またしても喧嘩に発展する二人。
そんな二人を無視して、ミサキはカムイ持って来たデッキを手に取り、その内容を見る。
「…間違ってる。」
「えっ。」
「《ここあ》が1枚足りないし、《しょこら》は3枚じゃなくて2枚だった。それにこのデッキ、あの場限り使用のデッキでしょ。参考にはならないと思うけど。」
「そ…、そっか…。」
せっかく先日のファイトを思い出しながら一生懸命組んだデッキが、まさか何の参考にもならないと知り、がっくりとうなだれるカムイ。
しかし、こんな事ではめげないのが彼の長所だ。
「…じゃあ、こんなのはどうでしょう!経験値をカバーするのは、カードファイターの個性と技です。そこで、アイチお兄さんとミサキさんとでファイトして、お互い得意な戦い方を見つけるんです!そこを伸ばせば、『チームQ4』の更なる強化に繋がるんじゃないでしょうか!」
「おお、なかなか良い考えですね!」
「いや〜、まあ!『チームQ4』の『マンボウ』役って所ですかね〜!」
「「……『参謀』?」」
「そ、それです参謀役!…と、とにかく始めて下さい!」
「あはは…。とりあえず始めましょうか、ミサキさん。」
「だね…。」
デッキからカードを5枚引き、手札を確認する。
アイチの手札はG0が3枚もあり、G2のカードがなかった。
「3枚交換します。」
「私も。」
お互い引き直し、バランスの良い手札を目指す。
しかし、
『G2が引けなかった…。でももう、これで戦うしかない…。』
アイチの手札は依然良くないまま。
一方のミサキは、引き直した事でバランスの取れた手札を作る事に成功する。
『《ライブラ》、《アマテラス》、《みるく》…。』
ミサキは思い出す。
両親と過ごした日々を。
━━『「これは《お天気お姉さん みるく》だよね、お父さん?で、こっちが…、えっとえっと…。」』
『「「ふふっ…。」」』━━
「……。」
「ミサキさん、始めてもいいですか?」
アイチに話しかけられて、
「あっ、ああ。うん。」
「「スタンドアップ・ヴァンガード!」」
「《ロゼンジ・メイガス》!」
「《ばーくがる》!」
「私の先攻、ドロー。《お天気お姉さん みるく》にライド!《ロゼンジ》は左後列に移動。ターンエンド。」
ミサキの手札・5枚
V・《お天気お姉さん みるく》(G1、パワー6000、能力)
R・左後列《ロゼンジ・メイガス》(G0、パワー3000、能力)
「ぼくのターン、ドロー。《ういんがる》にライド!《ばーくがる》は中央後列へ移動。《ばーくがる》の能力!自身をレストして、山札から《ふろうがる》を左後列にスペリオルコール!さらに《世界樹の巫女 エレイン》を左前列にコールして、バトル!《ういんがる》でVをアタック!」
「ノーガード。」
「ドライブチェック、《小さな賢者 マロン》…トリガーなし。」
「ダメージチェック、《バトルシスター しょこら》…トリガーなし。」
「《ふろうがる》のブースト、《エレイン》でVをアタック!」
「ノーガード。ダメージチェック、《オラクルガーディアン ワイズマン》…トリガーなし。」
「ターン終了です。」
アイチの手札・5枚
V・《ういんがる》(G1、パワー6000、能力)
R・左前列《世界樹の巫女 エレイン》(G0、パワー5000)、左後列《ふろうがる》(G0、パワー5000)、中央後列《ばーくがる》(G0、パワー4000、能力)
ミサキのダメージ・0→2
「私のターン、ドロー。《メイデン・オブ・ライブラ》にライド!中央後列に《オラクルガーディアン ジェミニ》をコールして、バトル!《ジェミニ》のブースト、《ライブラ》で《エレイン》をアタック!」
「…ノーガード。」
「ドライブチェック、《ワイズマン》…トリガーなし。ターン終了。」
ミサキの手札・5枚
V・《メイデン・オブ・ライブラ》(G2、パワー9000、能力)
R・左後列《ロゼンジ・メイガス》、中央後列《オラクルガーディアン ジェミニ》(G1、パワー8000)
アイチの左前列《世界樹の巫女 エレイン》退却
「もう終わり…?」
「手札はまだあんだろうに…。ケチケチしねぇで、ぞろっと並べるべきじゃねぇか?」
「声デカいし…!」
「おおう…!……って、あれ?」
森川が余計な口を挟み、またしてもミサキに怒鳴られるかと思いきや、何の注意もして来ない。
彼女は今、自分の事でいっぱいいっぱいだった。
『何も考えちゃいけない…、ファイトに集中しなきゃ…!』
方やアイチも、ミサキの先程のプレイングによって頭を悩まされていた。
『やられた…!手札にG2のユニットがいない事が、ミサキさんにバレてる…。このドローで、なんとか引かないと…。』
「ぼくのスタンド&ドロー。ッ!」
『《未来の騎士 リュー》…G2じゃない…!』
そんなアイチの考えを察してか、ミサキが話しかけてくる。
「やっぱり、《ばーくがる》と《リュー》と連携技狙いだったんだ。G2が引けなくても、その方法なら《ブラスター・ブレード》を呼び出せる。」
「…はい。でも、地区大会決勝の時みたいには、させて貰えませんでしたね。」
「ああ、あの時の!…って、それじゃあミサキさん、アイチお兄さんの最初のターンからこうなるって分かって…⁉︎」
「何ィー⁉︎…さては戸倉のヤツ、予知能力者か…⁉︎」
「いや、ミサキは…。その…。」
カムイと森川の反応にシンが言い淀んでいると、アイチが、
「
「……ッ!」
━━地雷を、踏んだ。
「そうか!地区大会で一度見ただけのお兄さんの戦法を憶えてたのも、雀ヶ森レンの使ってたデッキを憶えてたのも、記憶力が良いから!スゲェぜ、ミサキさん!」
「別に。…憶えたくて、憶えたわけじゃ…。」
「じゃあ自然に?もっとすごいじゃないですか、才能だぜ!」
「…ファイトの途中だよ!」
カムイの執拗な褒め言葉に、流石のミサキも苛立ちを隠せない。
そんなミサキの様子を察したのか、アイチがはファイトを進める。
「…《マロン》を左前列にコールして、バトル!《ばーくがる》のブースト、《ういんがる》でVをアタック!」
「…ノーガード。」
「ドライブチェック、《孤高の騎士 ガンスロッド》…トリガーなし。」
「ダメージチェック、《ライブラ》…トリガーなし。」
「《ふろうがる》のブースト、《マロン》でVをアタック!」
「《ドリーム・イーター》でガード!」
「ターン終了です。」
アイチの手札・6枚
V・《ういんがる》
R・左前列《小さな賢者 マロン》(G1、パワー8000)、左後列《ふろうがる》、中央後列《ばーくがる》
ミサキのダメージ・2→3
手札・5→4
「…私の、スタンド&ドロー。…《CEO アマテラス》にライド!《アマテラス》の能力でSCして、山札の上を確認。…このカードは山札の下へ。そして左前列に《サイレント・トム》、右前列に《ワイズマン》をコールして、バトル。《ワイズマン》でVをアタック…。」
「ノーガード。ダメージチェック、《真理の騎士 ゴードン》…トリガーなし。」
「次!《ジェミニ》のブースト、《アマテラス》でVをアタック!」
「ノーガード!」
「ツインドライブ‼︎ファーストチェック、《ラック・バード》…トリガーなし。セカンドチェック、《オラクルガーディアン ニケ》…☆トリガー!《サイレント・トム》にパワー、《アマテラス》に☆+1!」
「…ダメージチェック、《沈黙の騎士 ギャラティン》…トリガーなし。セカンドチェック、《閃光の盾 イゾルデ》…トリガーなし。」
「《サイレント・トム》でVをアタック…!」
「ノーガード!ダメージチェック、《ういんがる》…トリガーなし。」
「ターン終了…。」
ミサキの手札・4枚
V・《CEO アマテラス》(G3、パワー10000、能力)
R・右前列《オラクルガーディアン ワイズマン》(G2、パワー10000)、左前列《サイレント・トム》(G2、パワー8000、能力)、左後列《ロゼンジ・メイガス》、中央後列《オラクルガーディアン ジェミニ》
アイチのダメージ・0→4
「はぁっ…、はぁっ…。」
『ミサキ…。』
焦りからか、ミサキの息が荒くなる。
盤面を見れば明らかにリードしているが、問題は彼女の精神状態だ。
ミサキの焦りの原因を知っているシンは、少し悲しそうな表情でミサキを見つめる。
「ぼくのスタンド&ドロー。《ばーくがる》の能力で山札から《リュー》を右後列にスペリオルコール!…そういえば。」
「…?」
「ここでミサキさんと初めてファイトした時も、ミサキさんは初心者だったのにカードの知識もプレイングも完璧で、完敗しちゃったんですよね。」
探りを入れる様なアイチのセリフに、ますます苛立ちを募らせる。
「…早くしな。」
「はい。《リュー》の能力。CB1とRの《リュー》、《ばーくがる》、《ふろうがる》をソウルに置き、山札から《ブラスター・ブレード》をスペリオルライド!そして《ブラスター・ブレード》の能力、CB2で《サイレント・トム》を退却!さらに《マロン》を後列に移動し、左前列に《薔薇の騎士 モルガーナ》、中央後列に《幸運の運び手 エポナ》をコール。バトル!《エポナ》のブースト、《ブラスター・ブレード》でVをアタック!」
「ノーガード。」
「ドライブチェック、《ギャラティン》…トリガーなし。」
「ダメージチェック、《バトルシスター しょこら》…トリガーなし…!」
「《マロン》のブースト、《モルガーナ》でVをアタック!」
「《ニケ》でガード…!」
「…ターン終了です。」
アイチの手札・6枚
V・《ブラスター・ブレード》(G2、パワー9000、能力)
R・左前列《薔薇の騎士 モルガーナ》(G1、パワー6000、能力)、左後列《小さな賢者 マロン》、中央後列《幸運の運び手 エポナ》(G0、パワー5000)
ミサキのダメージ・3→4
手札・4→3
左前列《サイレント・トム》退却
「私のスタンド&…、ドロー。…ッ!」
『《ドリーム・イーター》…!』
ミサキは思い出す。
━━『「《ドリーム・イーター》、パワーもシールドも5000!えへへっ、すごいでしょ!」』
『「ふふっ…。」』
『「うふふっ…。」』━━
「…《アマテラス》の能力、SC…。山札の一番上、一番下へ…。《ラック・バード》を、コール…!」
思い出す。
━━『「《ラック・バード》をコール!」』
『「SBで2枚ドロップ!」』━━
「一枚、ドロー…!…《ワイズマン》を、左前列にコール…。バトル…!《ラック・バード》のブースト、右の《ワイズマン》でVをアタック…!」
「《リュー》でガード!」
そしてこのタイミングでふと、井崎が気づく。
「…思ったんだけどさ、あの記憶力使ってずっと実戦やってたら、ねえちゃん今頃とんでもなく強いファイターになってたんじゃ…。」
「おお…!」
「確かに…。」
思い出す…。
━━『「今度、カードの遊び方教えてあげる。」』
『「うん!」』━━
━━『「お留守番よろしくね!」』
『「うん、わかった!大丈夫!」』
『「いい子にしてるんだよ。」』
『「いってきまーす!」』━━
「……。」
「いいなぁ、オレあんまり記憶力自信なくて…。今まで黙ってたなんて人が悪いぜ、ミサキさん!この記憶力を武器に出来れば、『Q4』はばっちりですね、お兄さん!」
バンッ‼︎と思い切りテーブルを叩く。
「「「ッ!」」」
「ミサキさん…。」
行き場のない感情が頂点に達したミサキの表情は怒りと焦り、そして悲しみの入り混じったものだった。
「思い出したくない事だって…!…《ジェミニ》のブースト、《アマテラス》をアタック!」
「…ノーガード!」
思い出す…!
━━『「もう、せっかくお父さんが組んでくれたのに…。メッ!」』
その日は、雨が降っていた。
両親とヴァンガードを教えて貰う約束をしたが、その日は二人とも用事があって出かけていた。
『「お父さんたち、遅いなー…。」』
予定よりも帰りが遅く、不貞腐れている所に雨でずぶ濡れになったシンさんがやって来て、
『「ミサキちゃん、大変だ!お父さんとお母さんが‼︎」』
『「えっ……。」』━━
「ツインドライブ‼︎ファーストチェック、《ライブラ》…トリガーなし…!」
思い出す…‼︎
━━『「お父さん…、お母さぁーん‼︎」』
連れて行かれたのは、事故現場だった。
両親が乗って行った車は炎上し、すでに原形をとどめていなかった。
気付いたら両親の葬式は終わっていて、実感も湧かないまま、両親の眠る墓の前に立っていた。
そしてその後、シンさんが両親が営んでいたカードショップを継ぐと言い出した。
『「おじさんとおばさんの大切なお店を、閉めるわけにはいかないよ。…ミサキちゃんも、お手伝いしてくれるよね。」』
『「…やらない。」』
『「えっ…?」』
『「だって、わかんないもん…!まだお父さんにカードファイトの事、何も教えて貰ってないもん…!お父さんも、お母さんも……、いなくなっちゃったんだもん…!」』
無理だもん、出来ないもん、と。
ずっと、ずっと泣いていた━━
「セカンドチェック、《サイキック・バード》…☆トリガー!効果は全て《アマテラス》‼︎…はぁっ、はぁっ…!」
「お兄さん…!」
「ミサキ…!」
カムイは絶体絶命のアイチを、シンは明らかに様子のおかしいミサキを心配する。
「…ダメージチェック、《エレイン》…トリガーなし。セカンドチェック、《ういんがる》…トリガーなし。」
「つ、強ぇ…!」
「おまけにあの記憶力…。」
「よっしゃあ!ミサキさんがいれば全国大会のデッキも、ファイトの内容もばっちり把握、研究出来る!これは大きな戦力アップですよ!」
ライド事故を起こしたとはいえ、アイチとのファイトにほぼ一方的に勝ったミサキの実力に森川たちは驚愕し、カムイは全国大会への活路を見出す。
しかし当の本人は、ファイトを終えるとすぐさまカードを片付けて、
「…無理。」
「えっ。」
「私はもう、あんたたちと戦えない…。」
そう言うとデッキを置いて、店を出て行ってしまう。
「…オレ、何かミサキさんにマズい事言っちゃったんでしょうか…⁉︎」
「いいえ、カムイ君たちは悪くありません。これはあの子の、ミサキ自身の問題なんです…。」
「…教えて下さい、店長。ミサキさんに、何があったのか。」
アイチの真っ直ぐな目にシンは少し考え、
「…分かりました。チームメイトであるアイチ君とカムイ君には、事情をお話ししましょう。すみませんが、森川君たちは…。」
「俺たちも、そこまで野暮じゃないですよ。さあ、帰るぞ森川!」
「ええ!お、俺も聞きてぇんだけど…。」
「いいから!…じゃあ、失礼しまーす!」
ナイスアシストな井崎によって森川も帰り、時間帯的に他の客も帰っていて店内にはアイチとカムイ、そしてシンの三人になる。
「…実は━━」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
辺りが夕日に照らされ、赤く染め上がってきる中をアイチとカムイが歩く。
「…まさか、地区大会の日が両親の命日だったなんて…。それに、ミサキさんの記憶力…。」
「…悲しい事も、辛い事も、決して忘れられない…。」
「それなのにオレ記憶力があってすごいとか、チームの戦力になるとか…!あぁ、絶対オレのせいだー‼︎」
先程までのミサキに対する言動を自己嫌悪するカムイ。
そしてそのきっかけを作ってしまったアイチもまた、重い面持ちだった。
「…何を騒いでる。」
「櫂…!」
そんな彼らの所に現れたのは、偶然にも通りかかった櫂だった。
「…ミサキさんの事で、話をしていたんだ。」
「戸倉の…?」
「お兄さん、何もこんなヤツに…!」
「櫂くんも『Q4』のチームメイトだから、事情を知る権利はあると思うんだ。それに、ぼくたちだけで解決出来る問題じゃないし…。」
「それは、そうですけど…。」
カムイも渋々同意し、アイチは櫂に今日起きた事の経緯と、シンから聞いたミサキの過去についてを話した。
そして、それを聞き終えた櫂は、
「…辞めればいい。」
「え?」
「辞めたいヤツは辞めればいい。過去なんて誰にでもある、それをいつまでも自分の弱さの理由にするのは、ただの甘えだ。」
と、ばっさりと切り捨てた。
「お前…、そんな言い方はないだろ!少しはミサキさんを心配する気持ちとかねぇのかよ、チームメイトだろうが!」
「フン、俺には関係ない。じゃあな…。」
カムイの怒りも全く届かず、櫂は二人に背を向け歩いて行ってしまう。
櫂への相談も無駄に終わり、アイチとカムイはそのままそれぞれの帰路につく。
家に着き、自室に戻ったアイチは櫂の言葉を思い出す。
「『過去なんて誰にでもある』か…。」
アイチは、自身の顔にしている眼帯に触れる。
「……。」
覚悟を、決めた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
翌日。
朝も早く、まだ開店前の『カードキャピタル』。
「アイチ君…?」
店内で開店準備をしていたシンが、店の前にアイチが立っているのに気づく。
とりあえず店内に入れて、何の用事かを聞く。
「どうしたんですか?まだ開店には…。」
「ミサキさん、いますか?」
「…今、開店する準備を手伝って貰っています。呼びましょうか?」
「お願いします。」
シンが店の奥で作業をしていたミサキを呼ぶ。
「どうしたのシンさ……、アイチ…。」
昨日の今日で気まずくなるが、アイチは一歩ミサキに近づいて、
「ミサキさん。今日はあなたにお願いがあって来ました。」
と、話しかける。
「お願い…?」
「…ぼくと、もう一度だけファイトをして下さい。そして、ぼくが勝ったら…。」
「『チームに戻ってくれ』って…?悪いけど、そういう事なら…。」
「いいえ。」
次の言葉を予想したミサキを、完全に否定する。
「ぼくが勝ったら…、」
━━ 『チームQ4』を辞めて下さい。
次回、アイチの『あの』秘密が明らかに。