カードファイト!! ヴァンガード -隻眼のPSYクオリア- 作:キシヨウタ
「「スタンドアップ・ヴァンガード!」」
「《スターダスト・トランペッター》!」
「《ロゼンジ・メイガス》!」
「オラクルシンクタンク、ですか…。」
ミサキがFVに選んだ《ロゼンジ・メイガス》は、アイチの使う『ロイヤルパラディン』と同国家に所属する巨大企業、『オラクルシンクタンク』が誇る天才占い師。
その姿はどことなく彼女、戸倉ミサキによく似ていた。
「私が先攻だね、ドロー。《オラクルガーディアン ジェミニ》にライド、能力で《ロゼンジ》はRに移動。」
ミサキの手札・5枚
V・《オラクルガーディアン ジェミニ》(G1、パワー8000)
R・中央後列《ロゼンジ・メイガス》(G0、パワー3000、能力)
「あんたの番。」
ミサキがぶっきらぼうに言うと、アイチは少しむくれる。
「『あんた』じゃなくてアイチです。」
そんなアイチの様子に、ミサキは微笑みを浮かべる。
「ごめんごめん、アイチの番だよ。」
「はい。ドロー、《小さな賢者 マロン》にライド!後列に《ういんがる》をコール。《ういんがる》のブースト、《マロン》でVにアタック!」
「ガードしないよ。」
先日の櫂とのファイトと同じ展開をするアイチ。しかし、全く同じという訳ではない。
「ドライブチェック、《幸運の運び手 エポナ》…ゲット、☆トリガー!効果は全て《マロン》に!」
「ダメージチェック、《ドリーム・イーター》…
『ドロートリガー…。『オラクルシンクタンク』の真骨頂、か…。』
「2枚目、《ミラクル・キッド》…同じく引トリガー!Vにパワー、もう1枚ドロー。」
「ターン終了です。」
アイチの手札・5枚
V・《小さな賢者 マロン》(G1、パワー8000)
R・中央後列《ういんがる》(G1、パワー6000、能力)
ミサキのダメージ・0→2
手札・5→7
「早速☆トリガーなんて、初心者相手に容赦ないね。」
「引トリガーを連続で引き当てる人を、初心者扱いは出来ませんよ。それに、ぼくも初心者です。」
「フフッ、それこそないでしょ。」
お互いにまだ1ターンしか進行していないのに、冗談混じりの会話が弾む。
アイチとミサキ、二人はこの短い時間ですっかり友人になっていた。
「それじゃあ私のターン。ドロー、《メイデン・オブ・ライブラ》にライド!さらに、左右前列に《サイレント・トム》をコール!」
『《サイレント・トム》…!』
「どうやらこのカードの能力を知っているようだね。なら遠慮なく、左の《サイレント・トム》でVにアタック!」
《サイレント・トム》の能力によりG0でのガードが封じられたアイチは、その攻撃を甘んじて受け入れるしかなかった。
「…、ノーガード。ダメージチェック、《閃光の盾 イゾルデ》…トリガーなし。」
「右の《サイレント・トム》でVにアタック!」
「ノーガード。ダメージチェック、《スターライト・ユニコーン》…トリガーなしです…。」
「《ロゼンジ・メイガス》のブースト、《メイデン・オブ・ライブラ》でVにアタック!《ロゼンジ》の能力、ブーストした時、ブーストされたユニットのパワー+3000!」
合計パワー15000の攻撃が《マロン》を襲う。しかし、アイチもただその様子を見ているだけではなかった。
「《世界樹の巫女 エレイン》でガード!」
シールド10000の《エレイン》を使いガードする。トリガーを引かれれば突破されてしまうが、ミサキは先程2枚のトリガーを引き、Rには治トリガーの《ロゼンジ》がいる。
トリガーは引けないと読んだのだ。
「ドライブチェック、《オラクルガーディアン ワイズマン》…トリガーなし。」
『ふぅ…、何とか2ダメージで抑えられた。けど、ここからが本番…!ミサキさんの手札には多分、『あのカード』がある…!』
「ターン終了時、《ロゼンジ》をデッキに戻す。さ、アイチのターンだよ。」
ミサキの手札・6枚
V・《メイデン・オブ・ライブラ》(G2、パワー9000、能力)
R・右前列《サイレント・トム》(G2、パワー8000、能力)、左前列《サイレント・トム》
アイチのダメージ・0→2
手札・5→4
「スタンド&ドロー、ッ!」
『来たっ!』
『どうやら、引き当てたみたいだね…!』
アイチの表情から、ミサキも察する。彼の魂そのものと言えるユニットの存在を…!
「立ち上がれ、ぼくの分身!ライド、《ブラスター・ブレード》!能力発動、CB2で相手のR1枚を退却させる!左の《サイレント・トム》を退却!」
ダメージゾーンのカードが2枚裏返り、二体いる《サイレント・トム》の内の一体がドロップゾーンに送られる。
「左右前列に《沈黙の騎士 ギャラティン》、さらに右後列に《ふろうがる》をコール!バトルだ、左の《ギャラティン》でVをアタック!」
「《バトルシスター ここあ》でガード!」
「《ういんがる》のブースト、《ブラスター・ブレード》でVをアタック!《ういんがる》の能力で、合計パワー19000!」
「ノーガード!」
「ドライブチェック、《ふろうがる》…醒トリガー!左の《ギャラティン》をスタンド、パワーは右の《ギャラティン》に!」
「ダメージチェック、《ドリーム・イーター》…引トリガー!1枚ドロー、パワーはライブラに!」
「また引トリガー…、攻撃続行!トリガーでスタンドした《ギャラティン》で、《サイレント・トム》にアタック!」
「ノーガード!」
この攻撃が通り、ミサキのリアガードサークルからユニットが全ていなくなり、ヴァンガードが孤立した状態になる。
しかし、ミサキは全く悲観していなかった。
「《ふろうがる》のブースト、右の《ギャラティン》でVにアタック!」
「《オラクルガーディアン ニケ》でガード!」
「ターン終了です。」
アイチの手札・2枚
V・《ブラスター・ブレード》(G2、パワー9000、能力)
R・右前列《沈黙の騎士 ギャラティン》(G2、パワー10000)、右後列《ふろうがる》(G0、パワー5000)、左前列《沈黙の騎士 ギャラティン》、中央後列《ういんがる》
ミサキのダメージ・2→3
手札・6→5
右前列《サイレント・トム》、左前列《サイレント・トム》退却
『醒トリガーを引いた4回攻撃でも1ダメージか…。ミサキさん、すごい…!』
『全く、息つく暇もないよ…!でもそれ以上に、アイチとのファイトが楽しい…!』
お互いに一歩も譲らない全力のぶつかり合いを、二人は楽しんでいた。今のアイチとミサキの間に、余計な会話は最早不要だった。
しかし、そんな時間が長く続く事はなかった。
「いくよ、私のスタンド&ド「よう、アイチ。」「おう、昨日の!今日はオレが相手してやろうか!」…急にうるさくなったね…。」
櫂と三和の来店にため息をつくミサキ。
店員としてその態度はどうかと思うが、アイチとのファイトの邪魔をされたのだ。無理もない。
「おーう、待たせたなアイチ!早速ファイトしようぜ!」
「俺も俺も!」
さらに学校の用事を終わらせた森川と井崎が来て、店内の騒々しさが増す。
それと比例する様にミサキの纏う怒気も増幅していく。
「って…、もしかしてねーちゃんとファイトしてたのか?」
「珍しいな、店番のねーちゃんがファイトしてるなんて。」
「珍しいというか、ファイトしてるとこ初めて見たぞ。」
三和、森川、井崎の三人がアイチたちのファイトしているテーブルに近づく。櫂も近づきこそしなかったが、側の壁に寄りかかりその様子を伺っていた。
そこへさらに、
「ミサキー、店番はどうしたんですか…ってあぁ!ミサキがヴァンガードを⁉︎」
商店街の寄合から帰って来たカードショップ『カードキャピタル』の店長、新田シンが現れミサキの怒りが頂点に達する。
「テメェらうっせえんだよ‼︎ファイト中だろ!」
「「「「す、すみませーん‼︎」」」」
あまりの気迫に、自覚ありの四人はすぐさま謝った。
我関せずといった態度の櫂も、あまりの気迫に若干身構えてしまった。
「ごめんねアイチ。えっと、私のターンだったよね?」
「…あ。は、はい。」
ミサキの急激な態度の変わり様に放心していたアイチだったが、彼女のファイトを再開する旨を聞き何とか返事をする。
「スタンド&ドロー。光輝け、美しき女神。ライド、《CEO アマテラス》!」
『出た!《アマテラス》!』
オラクルシンクタンクの代表取締役にして太陽の女神、《CEO アマテラス》の登場でアイチの精神は一気に真剣勝負へと引き戻された。
「《アマテラス》の能力発動!山札の上から1枚をソウルに置いて、山札の一番上を確認。そのカードを山札の上か下に置く…、この子は下に。」
「おいおい、そんな事して何になるんだ?」
束の間の反省だったのか、森川がミサキのプレイングにケチをつける。
井崎と三和は『何やってんだこのバカ…⁉︎』という表情を浮かべていたが、森川を止める事はしなかった。巻き添えを食いたくはなかったのだ。
「あぁ⁉︎」
「あ、ごめんなさい。」
案の定ミサキに睨まれて一瞬で謝罪した。
「…はぁ、続けるよ。左右前列に《オラクルガーディアン ワイズマン》、そして右後列に《ジェミニ》をコール!バトルフェイズ、左の《ワイズマン》でVをアタック!」
「ノーガード。ダメージチェック、《竪琴の騎士 トリスタン》…トリガーなし。」
「《ジェミニ》のブースト、《ワイズマン》でVをアタック!」
「ノーガード。ダメージチェック、《世界樹の巫女 エレイン》…治トリガー!ダメージ1回復、パワーは《ブラスター・ブレード》に!」
「《アマテラス》でVにアタック!」
「《エポナ》でガード!」
「ツインドライブ‼︎ファーストチェック、《バトルシスター ここあ》…セカンドチェック、《バトルシスター しょこら》…どっちもトリガーなし。ターン終了。」
ミサキの手札・4枚
V・《CEO アマテラス》(G3、パワー10000、能力)
R・右前列《オラクルガーディアン ワイズマン》(G2、パワー10000)、右後列《オラクルガーディアン ジェミニ》、左前列《オラクルガーディアン ワイズマン》
アイチのダメージ・2→3
手札・2→1
「スタンド&ドロー。ぼくに力を、気高き誇りの白き翼!ライド!《孤高の騎士 ガンスロッド》!」
「《ガンスロッド》!コイツさえ出りゃアイチの勝ちは決まった様なモンだな!」
《ガンスロッド》の登場にG3馬鹿である森川が反応する。しかし流石に堪えたのか、声のボリュームは抑え気味であった。
「いいえ、それはどうでしょうか…。」
独り言を呟く様に森川の言葉を否定する店長のシン。アイチは当然、その言葉の意味を理解していた。
『ミサキさんがドライブチェックで手札に加えた《バトルシスター しょこら》は、
「《ガンスロッド》の能力!ソウルに《ブラスター・ブレード》があれば、CB2でパワー+5000、☆+1!」
『なるほど、そういう魂胆ね…!』
ミサキはアイチの行動の理由を察する。
「バトル!左の《ギャラティン》でVにアタック!」
「ノーガード。ダメージチェック、《オラクルガーディアン アポロン》…ノートリガー。」
「《ういんがる》のブースト、《ガンスロッド》でVにアタック!」
合計パワー20000、☆2の攻撃が《アマテラス》にーー、
「《しょこら》でガード!手札の《ここあ》を捨て、攻撃を無効にする。」
守護者である《しょこら》に防がれ、通らなかった。
「攻撃を無効とする。」
『…何で言い直したんだろう…?』
疑問に思ったアイチだったが、わざわざ指摘する様な事ではないと判断してファイトを続ける。
「ツインドライブ‼︎1枚目、《エポナ》…ゲット、☆トリガー!効果は全て右の《ギャラティン》に!セカンドチェック、《断罪の騎士 ボールス》…トリガーなし。」
《ガンスロッド》の攻撃こそ防がれたが、トリガーを引いた事によってもう一度同等の攻撃が可能となった。
「《ふろうがる》のブースト、右の《ギャラティン》でVにアタック!」
「手札の《ロゼンジ》を捨て、《しょこら》で完全ガード!」
「ターン終了です。」
アイチの手札・3枚
V・《孤高の騎士 ガンスロッド》(G3、パワー9000、能力)
R・右前列《沈黙の騎士 ギャラティン》、右後列《ふろうがる》、左前列《沈黙の騎士 ギャラティン》、中央後列《ういんがる》
ミサキのダメージ・3→4
手札・4→0
『このターン、また1ダメージしか与えられなかったけどミサキさんの手札を使い切らせた…。勝機は十分にある!』
『…って思ってる顔だね。確かに手札は0、《アマテラス》のパワー+4000も望めない…。けど、諦めない!』
「私のスタンド&ドロー。《アマテラス》の能力、
『間違いなくトリガーだ…!』
ついに山札の上にカードを戻したミサキの行動に、確信を得るアイチ。
「バトル!左の《ワイズマン》でVにアタック!」
「ノーガード。ダメージチェック、《マロン》…トリガーなし。」
「《ここあ》のブースト、《アマテラス》でVにアタック!」
『トリガー1枚は確実に乗る…!ダブルトリガーもあり得るけど、ここは賭けに出るしかない!』
「《エポナ》でガード、さらに右の《ギャラティン》でインターセプト!」
シールド15000が加わり、《ガンスロッド》のパワーは24000。パワー16000の《アマテラス》の攻撃は通らない。
「ツインドライブ‼︎ファーストチェック、《ニケ》…ゲット、☆トリガー!効果は全て右の《ワイズマン》に!」
「やっぱり☆トリガー…!」
「セカンドチェック、《ミラクル・キッド》…ゲット、引トリガー!1枚ドロー、パワーは右の《ワイズマン》へ!」
「ダブルトリガー…ッ!」
「《ジェミニ》のブースト、右の《ワイズマン》でVをアタック!」
「…ノーガード。」
ブーストとトリガー効果を受けてパワー28000、☆2となった《ワイズマン》の攻撃を防ぐ手立てが、今のアイチにはなかった。
「ダメージチェック、《エポナ》…トリガーゲット、パワーは《ガンスロッド》に。セカンドチェック…。」
めくられたカードはーー。
「《ガンスロッド》…ノートリガー、ぼくの負けです。」
アイチは敗北こそしたが、とてもいい笑顔をしていた。
新しい友人と、心踊る全力のファイトが出来たのだ。悔しさはもちろんあったが、それ以上に喜びの方が遥かに上回っていた。
「ありがとうございました、ミサキさん。とても楽しかったです!」
「私も、初めてのファイトだったけどすごく楽しかった。」
ミサキもまた、アイチとのファイトに今まで感じた事のない充実感を覚えていた。
それはヴァンガード自体が楽しかったのか、相手がアイチだから楽しかったのか。今の彼女にはまだ分からない事だった。
「まさかアイチが負けるなんてな…。」
「ああ、昨日のファイト見た後だと少し信じられないぜ…。」
「っていうかねーちゃん、今『初めてのファイト』って言わなかったか?」
「ええそうですよ。ミサキにヴァンガードへ興味を持ってもらおうと、私がどれだけ頑張ったか…!アイチくん、ありがとう‼︎」
「あぁ…。え、ええっと…。」
再び店内が騒がしくなる。
この数秒後、ファイト後の余韻に浸る間もなくミサキの怒号が店中に響き渡る事は、想像に難くなかった。
やっぱりアイチくんはミサキさんには勝てませんでした。