カードファイト!! ヴァンガード -隻眼のPSYクオリア- 作:キシヨウタ
良いキャラしてるわこの兄妹。
「どうしたんですか、アイチお兄さん?」
アイチがショップ大会の個性的な面々に影響を受けたであろう子供たちが楽しそうにファイトをする様子を眺めていると、カムイが不思議そうに話しかけて来る。
「…ショップ大会、終わったんだなぁって思って。」
「ショップ大会かぁ…。クッソー、お兄さんへのリベンジも、櫂のヤツとの再戦も出来なかった…!正直、心残りがあります…。」
「ぼくは楽しかったよ。カムイくんとのファイトも、櫂くんとのファイトも。でも、今までは勝ち負けなんてどうでも良いって思ってたけど…。」
「やっぱり、負けたら悔しい。私も一緒だよ。」
「ミサキさん…。」
店の入り口付近で話していたため、共に大会に参加していたミサキも会話に混ざって来る。
「もっと、強くなりたいな。そうすれば、もっと色んな人とファイトが楽しめるだろうし。」
「だったら、別のショップに行って武者修行しかないですよ!良い店知ってますから!」
ギランッ、とミサキの目が鋭くなる。
暗に『他の店に行こうっての…。』と言っている様である。
「いっ⁉︎」
明らかに怒気を孕んだ視線に、カムイは萎縮してしまう。
「まあまあ、ミサキさん。ぼくも他のショップに興味くらいありますから。」
ミサキの迫力にも物怖じしないアイチがミサキをなだめる。
そうすると彼女は、『ふーん、そう。じゃあ勝手にすれば?』とほとんど言っている様な態度を取り、そっぽを向いてしまう。
「あはは…。それでカムイくん、そのお店ってどんな所なの?」
アイチは後が大変だと思いつつも、カムイからその店の事を聞く。
「そこはカードショップ『男前』っていって、去年全国大会に出場したチームがそこに…。って、あーーー‼︎」
「カムイくん?」
『そうだった、あそこには『アイツ』がいたんだ…!でもお兄さんに提案したのはオレだし、でもでも『アイツ』に会ったらどんな目に会うか…!でもでもでも、ここでアイチお兄さんに恩を売っておけば、エミさんとも…!』
自らの都合の良い方向に思考を巡らせ、カムイは決断する。
「…行きましょう、お兄さん。カードショップ『男前』に!」
「う、うん…。」
全国大会に行ったという事は、地区大会を優勝したという事。
一体どんな人たちなんだろう、とアイチは期待に胸を膨らませながらカムイに着いて行った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
それは、あまりにも派手だった。
店の壁に描かれた、荒れ狂う波の中を突き進むかの様な海賊船の帆にデカデカと書かれた『CARD SHOP 男前』の文字。
店内もまるで船の中の様な装飾がされており、店員も客も皆同じ様なバンダナを身につけている。
カードショップ『PSY』も独特な雰囲気の店だったが、ここはそれとはまた別の意味で独特、というより『奇抜』だった。
『どうやら『アイツ』はいねぇみたいだな…。』
店内に入ってからしきりに辺りを見回すカムイ。
よっぽどその人物に会いたくないみたいだが、今はいない様だ。
━━そう、今は…。
「ゴウキいる?」
カムイが知り合いの常連客に話しかける。
「もちろんさ。船長、カムイですよ!」
「船長?」
アイチがその呼び方に疑問を持つより早く、件の人物がやって来る。
「ヤツらが去年、全国大会に出場した『チーム男前』です。オレたちが、地区大会で倒さなきゃいけないチームっすよ…。」
カムイが小声でアイチに教えると、その内の一人がカムイの目の前まで来て頭を豪快に頭を撫でる。
「おお、カムイか!久しぶりだなぁ、元気だったか?」
「元気に決まってるぜ、ゴウキ!」
ゴウキと呼ばれた人物の手を振り払い、カムイは答える。
「ハハハハハハッ!ん?カムイ、お前が人を連れて来る何て初めてだな。」
「はじめまして、先導アイチです。カムイくんには、日頃お世話になってまして…。」
「そうか、俺は『大文字ゴウキ』。こっちの背が高いのが中津川ヒロシで、こっちのブラジル人とのハーフが小松原カオルだ。よろしく!」
「「よろしく!」」
「よろしくお願いします。」
「ところでお前、その右目大丈夫か?眼帯なんかして。」
ゴウキがアイチの眼帯の事に触れる。それは初対面のアイチに対しての純粋な心配から出た言葉だったが、些か配慮に欠ける発言であった。
「ああこれは、『もう』大丈夫なんです…。」
気まずそうに答えるアイチの様子を見て、ゴウキも何かを察したのかこの話を切り上げカムイに話しかける。
「そうか…。ところでカムイ、考えてくれたか?『チーム男前』のメンバーになる事を。」
「何度も言ってるだろ、お断りだって。オレはこのアイチお兄さんと一緒に『カードキャピタル』の代表になったんだ、今度の地区大会でお前らを倒す!」
「…残念だ、お前の実力を買っていたのに。」
カムイはその実力から、全国大会出場チームからスカウトを受けていた。
普通ならこれを受けるだろう、しかしカムイはそうしなかった。
なぜなら。
「オレは強いヤツらの仲間になるんじゃなくて、強い相手と戦いてぇんだ。」
「などと格好つけてはいるものの…。」
「本当は違うよなぁ〜!ジャパ〜ン!」
「…?どういう事?」
アイチはその理由を、直後知る事になる。
「カムイちゃ〜〜〜〜〜〜〜〜ん‼︎‼︎」
それはまるで弾丸の様だった。
店の外から猛スピードでやって来た少女は、そのままの勢いでカムイに突撃。抱きつかれたカムイは壁に激突する。
「カムイちゃん大好き‼︎」
あまりにも突然の出来事でアイチも呆然としてしまったが、この状況と彼女の発言から一つの答えを導く。
「……。あ、彼女なんだ。」
「そうなの!ナギサもう小学四年生になったから、結婚出来るのよ!」
※小学校4年生では結婚できません。
「彼女でもねぇし、離れろ!」
「カムイちゃ〜ん‼︎」
「くっつくなっつーの!」
カムイの様子から、アイチは察する。
「カムイくんが『チーム男前』に入らなかった理由って…。」
「ご明察通り、カムイはナギサが苦手なんだ。」
「ジャッパ〜ン!」
しかしこのカムイとナギサの様子を見て、一人「うんうん。」と嬉しそうな表情を浮かべる者がいる。
「好きなだけ抱きつくが良い、我が妹よ!」
「妹さんなんですね。」
「ああ、妹のナギサだ。可愛いだろぉ!」
「ええ。ぼくにも妹がいるので、その気持ち分かります。」
「同志だったか!妹は何をしても許せる、妹の笑顔を守るためなら俺は何でもする…。妹を不幸にするヤツは許さない!」
ゴウキがヒートアップする中、妹のナギサもそれ以上の勢いでカムイに抱きつく。
カムイが「オレはお前の事なんか好きじゃねぇ!」とはっきり言っても「聞こえなーい!」としらばっくれる始末。
「良く聞け、オレが好きなのは━━」
「ナギサちゃーん!」
「違う!オレが好きなのは可憐で清楚で笑顔の可愛い人なんだ、お前みたいにガサツで人の話を聞かなくて強引なヤツとは違う!オレには好きな人がいるんだ!」
「それはワタシ!」
「違うー!」
散々な言われ様なナギサだったが、全くめげる様子はない。
しかし、その兄は別である。
片手でカムイの頭を掴み、そのまま持ち上げて自分の目の前まで持ってくる。
「カムイ、今言った事本当なのか!」
「ああ本当だ、好きな人はナギサじゃねぇ!そこにいるアイチお兄さんの、い…、いい、いもう…。」
「ああ⁉︎お前まさか、こんなヤツを好きになったのかー⁉︎」
「えぇ⁉︎」
カムイの言葉の最後辺りがはっきりしなかったせいか、ゴウキはとんでもない勘違いをする。
確かにアイチは可憐であり、清楚であり、そして笑顔も可愛いが。
「…許せん…、妹を不幸にするヤツは…!」
ゴウキがアイチに詰め寄る。
「俺が実力を認めたカムイが『兄さん』と呼ぶ程尊敬しているお前の事だ、余程実力のあるヴァンガードファイターなんだろうよ…。」
「そんな事は…。」
「いや!俺は確信した、そうに違いない。ならば、俺とファイトしろ!負けたらカムイはナギサのものだ!」
なんだかおかしな事になってしまったが、全国大会出場チームの一人とファイト出来るとあってアイチもこれを受ける。
二人がファイトテーブルの前に立ち、ファイトの準備を始める。
「アイチお兄さん、頼みます…!」
カムイの切実な願いと共に、ファイトは始まる。
「「スタンドアップ・ヴァンガード!」」
「《ばーくがる》!」
「《案内するゾンビ》!」
『グランブルー…、初めて戦うクランだ…。でも、どんな戦い方をするかは知っている…!』
「ぼくの先攻、ドロー。《ういんがる》にライド!《ばーくがる》を中央後列に移動させて、能力を発動。レストして、山札から《ふろうがる》を左後列にスペリオルコール!ターン終了です。」
アイチの手札・5枚
V・《ういんがる》(G1、パワー6000、能力)
R・左後列《ふろうがる》(G0、パワー5000)、中央後列《ばーくがる》(G0、パワー4000、能力)
「いくぜ、ドロー!《伊達男 ロマリオ》にライド!《案内するゾンビ》は左前列に移動、そして《ダンシング・カットラス》を左後列にコール。バトルだ!《カットラス》のブースト、《案内するゾンビ》でVをアタック!」
「ノーガード。ダメージチェック、《閃光の盾 イゾルデ》…トリガーなし。」
「《ロマリオ》でVをアタック!」
「ノーガード!」
「ドライブチェック、《イービル・シェイド》…トリガーなし。」
「ダメージチェック、《世界樹の巫女 エレイン》…治トリガー!ダメージ1回復、パワーは《ういんがる》に!」
「ターン終了。」
ゴウキの手札・5枚
V・《伊達男 ロマリオ》(G1・パワー8000)
R・左前列《案内するゾンビ》(G0、パワー5000、能力)、左後列《ダンシング・カットラス》(G1、パワー5000、能力)
アイチのダメージ・0→1
「ぼくのターン、ドロー。立ち上がれ、ぼくの分身!ライド、《ブラスター・ブレード》!《ふろうがる》を前列に移動させて、《小さな賢者 マロン》を左後列にコール。バトル!《マロン》のブースト、《ふろうがる》でVをアタック!」
「ノーガード。ダメージチェック、《カットラス》…トリガーなし。」
「《ばーくがる》のブースト、《ブラスター・ブレード》でVをアタック!」
「ノーガード!」
「ドライブチェック、《ふろうがる》…醒トリガー!効果は全て《マロン》へ!」
「ダメージチェック、《ルイン・シェイド》…トリガーなし。」
「スタンドした《マロン》でVをアタック!」
「《お化けのちゃっぴー》でガード!《ちゃっぴー》の能力で山札から《キャプテン・ナイトミスト》をドロップゾーンに置く。」
「…、ターン終了です。」
アイチの手札・5枚
V・《ブラスター・ブレード》(G2、パワー9000、能力)
R・左前列《ふろうがる》、左後列《小さな賢者 マロン》(G1、パワー8000)、中央後列《ばーくがる》
ゴウキのダメージ・0→2
手札・5→4
「俺のスタンド&ドロー。ライド、《キャプテン・ナイトミスト》!ドロップゾーンに《ナイトミスト》がいるなら、Vの《ナイトミスト》はパワー+3000!さらに右前列に《大幹部 ブルーブラッド》、中央後列に《イービル・シェイド》をコール。バトルだ!《ブルーブラッド》でVをアタック!」
「ノーガード。ダメージチェック、《ういんがる》…トリガーなし。」
「《イービル・シェイド》のブースト、《ナイトミスト》でVをアタック!」
「ノーガード!」
「ドライブチェック、《モンスター・フランク》…トリガーなし。」
「ダメージチェック、《薔薇の騎士 モルガーナ》…トリガーなし。」
「《カットラス》のブースト、《案内するゾンビ》でVをアタック!」
「《モルガーナ》でガード!」
「ターン終了だ。」
ゴウキの手札・3枚
V・《キャプテン・ナイトミスト》(G2、パワー8000、能力)
R・右前列《大幹部 ブルーブラッド》(G2、パワー10000)、左前列《案内するゾンビ》、左後列《ダンシング・カットラス》、中央後列《イービル・シェイド》(G1、パワー6000、能力)
アイチのダメージ・1→3
手札・5→4
「ぼくのスタンド&ドロー。降臨せよ、戦士たちの主!ライド、《騎士王 アルフレッド》!《アルフレッド》の能力、CB3で山札から《沈黙の騎士 ギャラティン》を右前列にスペリオルコール!左前列にも《ギャラティン》をコール、《ふろうがる》は退却。さらに《ばーくがる》の能力で山札から《ふろうがる》を右後列にスペリオルコールして、バトル!《ふろうがる》のブースト、右の《ギャラティン》でVをアタック!」
「ノーガード。ダメージチェック、《荒海のバンシー》…☆トリガー!《キャプテン・ナイトミスト》にパワー+5000!」
「《アルフレッド》でVをアタック!Rのロイヤルパラディンの数だけ、パワー+2000!」
「パワー20000か…、ノーガードだ!」
「ツインドライブ‼︎ファーストチェック、《孤高の騎士 ガンスロッド》…トリガーなし。セカンドチェック、《未来の騎士 リュー》…☆トリガー!」
「何ッ⁉︎」
「パワーは左の《ギャラティン》、☆は《アルフレッド》!」
「くぅっ…。ダメージチェック、《突風のジン》…トリガーなし。セカンドチェック、《モンスター・フランク》…トリガーなし。」
「《マロン》のブースト、《ギャラティン》でVをアタック!」
「《お化けのりっく》と《ルイン・シェイド》でガード!さらに《ブルーブラッド》でインターセプト!」
「ターン終了です。」
アイチの手札・5枚
V・《騎士王 アルフレッド》(G3、パワー10000、能力)
R・右前列《沈黙の騎士 ギャラティン》(G2、パワー10000)、右後列《ふろうがる》、左前列《沈黙の騎士 ギャラティン》、左後列《小さな賢者 マロン》、中央後列《ばーくがる》
ゴウキのダメージ・2→5
手札・3→1
右前列《大幹部 ブルーブラッド》退却
「まさか、船長が5ダメージ…!」
「ジャパ〜ン⁉︎」
驚きを隠せないヒロシとカオル。
無理もないだろう、自分たちが尊敬する『チーム男前』のリーダーがまさか名前も聞いたことがない様な相手に追い詰められているのだから。
その当の本人もまた、アイチの予想以上の実力に焦りつつあった。
『先導アイチ…。なるほど、カムイが慕うわけだ。だが、妹のためにも負けられん!』
「俺のスタンド&ドロー。生と死を超越した人造人間の、この世ならざる力を見よ!ライド、《モンスター・フランク》!左縦列の《案内するゾンビ》と《カットラス》を入れ替え、ドロップゾーンの《キャプテン・ナイトミスト》の能力!CB1とG1以上のグランブルーユニット1枚の退却で、左前列にスペリオルコール!さらに右前列に《ルイン・シェイド》をコールし、バトル!《ルイン・シェイド》でVをアタック!山札の上から2枚をドロップしてパワー+2000!」
「《大いなる賢者 バロン》でガード!」
「《イービル・シェイド》のブースト、《モンスター・フランク》でVをアタック!《イービル・シェイド》の能力で山札の上から2枚をドロップし、《モンスター・フランク》のパワーを+4000する!」
「ノーガード!」
「ツインドライブ‼︎ファーストチェック、《カットラス》…トリガーなし。セカンドチェック、《ルイン・シェイド》…トリガーなし。」
「ダメージチェック、《イゾルデ》…トリガーなし。」
「《案内するゾンビ》のブースト、《ナイトミスト》でVをアタック!」
「ノーガード。ダメージチェック、《ギャラティン》…トリガーなし。」
「ターン終了だ…。」
ゴウキの手札・2枚
V・《モンスター・フランク》(G3、パワー10000、能力)
R・右前列《ルイン・シェイド》(G2、パワー9000、能力)、左前列《キャプテン・ナイトミスト》、左後列《案内するゾンビ》、中央後列《イービル・シェイド》
アイチのダメージ・3→5
手札・5→4
「ぼくのスタンド&ドロー。《ふろうがる》のブースト、右の《ギャラティン》でVをアタック!」
「…ここは治トリガーに賭ける、ノーガード!ダメージチェック、《お化けのちゃっぴー》…トリガーなし。」
「船長が、負けた…。」
「ジャパーン…。」
「お兄ちゃん…。」
ヒロシとカオル、そして彼の妹であるナギサは信じられないといった顔をする。
反対にカムイは笑顔でアイチに駆け寄る。
「流石です、アイチお兄さん!まさかあのゴウキに勝つなんて!」
「ありがとう、カムイくん。」
そんな勝利を喜ぶ二人の前に、敗北したゴウキが近づく。
「…お前か勝った時の事を決めてなかったな…。さあ、煮るなり焼くなり好きにしろ!だが、カムイの事はどうかナギサに━━!」
「あの、その事なんですけど…。ぼくとカムイくんはそういう関係じゃありませんよ?」
「何…?」
「そうだぜ、早とちりの勘違いだ!オレが好きなのは、」
「ワタシよね!」
「だから…違ーーーう‼︎」
店中に響き渡るカムイの叫び。
果たして、彼らの恋の行方は……?
大落ちは一応考えてます。
道のりは果てしなく遠いですが。