いろんな人に話を聞いてもらう   作:zennoo

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記念すべき一回目はモカちゃんです。
ちょい甘口
本編どうぞ


夕暮れの教室で話を聞いてもらう(青葉モカ)

「はあ……もう最悪……。」

 

 

放課後の教室に俺がぽつんと一人。俺、霧雨蛍雪(きりさめけいせつ)が何かで悩んでいた。

 

夕方にもなれば西日で教室がオレンジ色に照らされている。世の何も知らない大人達は「夕日の教室で何たそがれてんだよ~」とか平気で言うがこっちからも言わせてもらおう。好き好んでこうしてる訳じゃないんだよ。

 

誰にも相談できない。他人に相談する勇気もなければましてや大人に相談なんてしたくない。子供の戯言と思って蔑ろにするのがオチだからな。こうなった以上俺の胸に塞ぎ混むしかなくなる。辛いがバカにされるよりかはマシだ。

 

 

「俺、マジでどうすれば…」

 

 

今日一日は一人で居よう。そう決心した矢先教室のドアがガラッと開く音がした。

 

 

「およよ~?これはこれは、けーくんじゃありませんか~。」

 

「あ、モカか…」

 

 

間延びした声で俺を呼ぶ声がした。銀髪(?)のショートヘアーでマイペースなキャラの持ち主、青葉モカの登場だ。なにやら右手にレジ袋を引っ提げているのが気になるが。

 

 

「一人でどうしたの~?けーくんらしいけど~。」

 

「……だろうな。」

 

「一人ぽつんとどうしちゃったのよ~およよ~。」

 

 

マイペースなのは今日も健在。こっちのペースなどお構い無し。俺の心の内が引っ掻き回されていくがそれが逆にありがたくも感じる。不思議なものだ。

 

 

「隣の席失礼しま~す。」

 

「あいよ~。」

 

「ガサゴソガサゴソ」

 

「ん?そのビニール袋何入ってるの?」

 

「あたしの今日の夜ご飯~。」

 

「ああ、パンね…」

 

「せいかーい。そんなけーくんにはご褒美を授けよ~。」

 

「え?なんかくれるの?」

 

「チョココロネの一番下のやつ~」

 

「味しないところじゃねえか。まあありがたく頂くわ。」

 

「頂け頂け~」

 

「うんま。」

 

「でしょ~。それでけーくん。」

 

「何だ?」

 

「何で悩んでたのかな~?」

 

 

一瞬で心の内を見抜かれた気がして身の毛がよだつ。隠していたつもりだがモカには通用しないらしい。

 

 

「な、何でもねえよ…」

 

「うそうそ。けーくんって小さい時から強がりさんだからね~。何でだろうね~。」

 

「強がってなんか……ねえよ。」

 

「けーくん焦ってる~ヒューヒュー」

 

「………はあ。」

 

 

ホントこのペースでずっと迫ってくるって恐怖。初対面だったらモカのペースに持っていかれること間違いなしだな。俺じゃなきゃ……いや、俺ですら持ってかれてるのか…。悔しいったらありゃしない。

 

 

「それで~何で悩んでたの~?一花咲かせた美少女に語ってみんしゃ~い。」

 

「…美少女?」

 

「そう美少女。」

 

「まさか……モカのことか?」

 

「モカちゃん以外誰がいるのよ~。ぶー。」

 

 

わざとではあるが拗ねてるモカに一瞬心撃たれる。不覚…とも思ったが案外悪い気はしない。

 

 

「ああ……何かモカに黙っていることが馬鹿馬鹿しくなってきた……」

 

「それで良いのだ~。さあ、何があったか話してみよ~。」

 

「笑ったり……しないか?しょうもなくて笑っちまうと思うぞ。」

 

「十数年来の仲ですぞ~?散々笑いあってきたではありませんか~。」

 

「それも…そうか……」

 

 

するとモカは一息おいて俺と肩を組んで最接近してきた。

 

 

「大丈夫、あたしが受け止めるよ。」

 

 

優しい笑みで俺を包んでくれた。夕日に照らされたその美顔に俺は何を思ったのかつい引き込まれてしまう。友達思いのモカのことだ。今までもそうやって俺と歩んできたじゃないか。

 

 

「モカ……ありがとうな。」

 

「良いってことよ~。それで?どうしたのよ~。」

 

「ああ、実はな…今日の進路相談あっただろ?」

 

「ウンウン。何か言われちゃったのかな~?」

 

「その通りだよ。行きたい大学を先生に伝えたら「そんな大学に行かずに国公立目指せ!」何て言われちゃってな……。その先生の圧力に怖じ気づいてなにも反論出来なかったのが悔しかった…」

 

「そっか……行きたい大学を否定されるのは確かに悔しいね…。」

 

「まあ、それで悩んでたんだよ。一人でな。」

 

「ちなみになんだけどさ~」

 

「何だ?」

 

「けーくんがそこに行きたい理由って何かな~って思ってね~。」

 

「ああそれか。まあ俺の興味のある学部があるって言うのもそうなんだけどさ……」

 

「だけど?何かあるの~?」

 

「ああ…その…」

 

「ん~?言ってごらんなさ~い。」

 

「も、もっ」

 

「ん~?」

 

「モカと同じ大学に行きたいんだよ!高校ではなればなれになるなんてイヤなんだよ!」

 

 

言ってしまったというなんとも言えない感情が俺を襲った。さてモカは何て反応するのだろうか…ああネタにされると思っていたが予期しない反応が返ってきた。

 

 

「へ~。あたしと同じ大学に行きたいだなんてね~//」

 

「ん?モカ?こっち向けって。おーいモカ~。」

 

「ごめ~ん。今そっち向けな~い。///」

 

「おいモカ……こっちも結構勇気を振り絞ったんだよ!めっちゃ恥ずかしかった…//」

 

「へ~いシャイボーイ///」

 

「う、うるさい!//モカも照れてるくせに!」

 

「あーおっかしいなぁ~。やっぱりけーくんおもしろ~い。」

 

「ったく、モカはよ~。…………アハッ。」

 

「ん~?今けーくん笑った~?」

 

「ん。わりぃ、なんか笑えちゃってな……」

 

「……フフッ。」

 

「ヒヒっ。」

 

「「アハハハハハ!!」」

 

 

なんで出てきたのか分からない笑いがモカとシンクロした。「なんでだ?」と、思う自分ともう少しこのままモカと笑いあっていたいという自分が脳内で戦っているが当然結果なんて分かりきっている。

 

 

「あ~~。」

 

「なんだよ。急に抜けたような声だしちゃって。」

 

「なんか出ちゃったんだよね~。で、さっきの話に戻るけど…けーくんはどうしたいの~?」

 

「そりゃあ……答えは…一つだよ。」

 

「どうなの~?」

 

 

相も変わらず肩を組みながらにやけ面で俺の顔を覗き込むモカ。正直ハズイ。

 

 

「……」

 

「……そっか。」

 

「ああ。その通りだ。」

 

「けーくん。」

 

「何だ?」

 

「大学でも、一緒に過ごそうね。」

 

「……ああ!」

 

「はあ~。けーくんと喋ってたらお腹空いちゃった~。」

 

「しかしモカはよく食べるよな~。ホント底知れない…。」

 

「モカちゃんはエネルギーをよく消費するからね~。食べなきゃ生きていけんのですよ~。」

 

「そ、そうですか…。」

 

「けーくん口開けて~」

 

「え?」

 

「い・い・か・ら~」

 

「あー。!ムグググ…」

 

「モカちゃんからのお裾分け~。いかがでしょうか~。」

 

 

モカが食べたメロンパンを強引に口に放り込まれた。

まあ…俗に言う間接キスってやつなのだがこんなの幼稚園ぶりだぞ…

 

 

「いきなり何すんだよモカ!美味しかったけど!」

 

「エヘヘ~。こんなことやるの幼稚園ぶりだね~」

 

「ああ…今となっては感じ方が違うがな…」

 

「モカちゃんお腹いっぱ~い。食った食った~。」

 

「ホントによく食べるな…」

 

「さ、けーくん帰りましょうか~」

 

「もうこんな時間か…一緒に帰るか。」

 

「けーくん、はい。」

 

 

モカの手を出した意味がよく分からなかったが数秒たった後理解した。小さい時からやっていた帰り道の恒例行事だ。

 

 

「はいはい。手、繋いでやるよ。」

 

「けーくんの手あったか~い。」

 

「……なあモカ。」

 

「ん~?どうした~?」

 

「……好きだぜ。」

 

「……あたしもけーくんのこと、大好き。」

 

 

オレンジ色に染まった教室を後にした二人。

幼なじみとも言えない、恋人とも言えない、二人だけの秘密の関係であった。




読了、ありがとうございました!
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