プロローグ的なナニカ
「おっふ、照橋さん」
「おっふ、照橋さん」
「おっふ、照橋さん」
とある少女とすれ違う男子は全員、「おっふ」という奇声をあげて挙動不審な状態に陥っていく。そして、その顔は例外なく紅潮している。
何故ならそう、数多くの男子とすれ違った少女は──
──完璧美少女なのだ。
そして、少し離れたところで同じような奇声が聞こえてくる。
「あひゅ、念花美くん」
「あひゅ、念花美くん」
「あひゅ、念花美くん」
とある少年とすれ違う女子は全員、「あひゅ」という奇声をあげて挙動不審な状態に陥っていく。そして、その顔は例外なく紅潮している。
何故ならそう、数多くの女子とすれ違った少年は──
──完璧美少年なのだ。
そんな、誰も彼もを魅了するその2人の距離は次第に近づいていく。そして遂に……
「お……おはよう、照橋さん」
「あ……うん。おはよう、念花美くん」
両者は邂逅する。が、その二人が奇声をあげることはなかった。
これはPK学園高校の日常であり、2年3組における毎朝の光景。
そしてこれから語るは件の騒動の渦中にいる──2人の男女のラブコメディである。
とまあ、モノローグというかプロローグはこれくらいにしておこうか。何の説明もなく『
と言うわけで、僕の名前は斉木楠雄。超能力者だ。
さて、お決まりの自己紹介は早々に終わらせ次に移ろう。よし、回想スタートだ。
あれはそう…確かまだ超能力者だということを隠そうと思っていなかったくらいの時──僕の枕元に1人の男が現れた。
その男は高校生くらいの年齢でありながらピンクの髪にアンテナ状の突起のついた装置、そしておもちゃのような緑色レンズのメガネをかけたヤバめの男だった。
『まだマインドコントロールを使っていないのか』
そいつの口は一切動いていなかった。そして僕はおおよそのことを察した。目の前の男は間違いなく〝僕〟であり、並行世界か何かからやってきたのだと。
僕の考えを読んだのか、その男──というより未来の〝僕〟は続ける。
『これはちょっとした実験だ。確実に迷惑をかけるだろうが、まあ許してくれ』
なら断る。と言いたいところだが、僕は目を輝かせていた。何故なら、超能力に対する理解者が圧倒的に不足していたからだ。対等の能力を持つものであれば、肩身を狭くする必要もない。だからこそ目の前にいる自分に惹かれたのだ。
『よし、覚悟が決まったのなら1つだけ忠告を残していく。この忠告を受けてどういった行動を取るかはお前に任せる。僕がすることはそれだけだ』
そう言うと、目の前の〝僕〟は明らかに女物であろう花柄のハンカチを取り出し、それを僕へと差しだした。まったく、未来の〝僕〟はどんな趣味をしているんだ。
『勘違いするな、これは僕のものではない。とにかくこのハンカチにサイコメトリーを使ってみろ』
罠か? サイコメトリーが最低最悪な能力だってことくらい、僕だって知っているぞ。
『安心しろ。確実に清潔なものだと断言できる。なにより、僕も触って安全であることは確認しているからな』
100%安全である確信はないが、直感的に嘘を言っていないことを理解できた。そして、僕はそのハンカチに触れる。
すると、1人の女性と男性──というか、高校生の〝僕〟の姿が記録となって頭へと入ってくる。要するに、未来で関わることになる女性のことを伝えたかったわけだ。
『彼女の名前は照橋心美、僕に付き纏う災難の元凶でもある』
目が死んでいた。目の前に現れた時からずっと死んでいたが、さらに深い闇色の瞳をしている。なんなんだ、その照橋心美という人物は。
そして、〝僕〟は「ふぅ」と一息つき語り始めた。超能力をもってしても回避できない、神の加護とでも呼ぶべき彼女が持つ恐ろしい能力を──
なるほどな、大体理解できたぞ。お前が実験と言った意味もな。要するに、彼女によって齎される災難を回避する未来を作りたいわけか。
『まあ、興味本位と言えばそれまでだがな。実際、この世界で何が起きようとも、僕が生きる世界線での彼女との関係に変化が現れるわけではない。それでも、彼女からの災難に振り回されない──そんな未来があってもいいとは思わないか?』
説明中といって省略したが、目の前の〝僕〟は相当彼女に振り回されているらしく、その話は1時間にも及んだ。
しかし、確かに面倒臭そうだな。照橋心美という少女は異次元と言っていいほどの美少女らしい。そんな目立ちまくる人間に付き纏われるのは御免こうむりたい。透視能力のせいで僕が持つ醜美の感覚などとうに壊れているからな。美少女だからなんだというのだ。
『彼女の危険性は理解できたようだな。では帰るとしよう。会話程度なら世界が滅亡することもないだろうが、一応世界の危機的な状況にも警戒しておくんだぞ』
おい待て。なんだ世界が滅亡するって。……おい、逃げるな!
雑な回想の切り方だが問題ないだろう。要するに、僕は異なる世界線に住む〝僕〟から啓示を受けていたのだ──『照橋心美に気をつけろ』と。
さて、ここで改めて冒頭へと戻ろう。僕のテレパシーで先程の会話を覗いてみるぞ。
「おっふ、照橋さん」
「おっふ、照橋さん」
「おっふ、照橋さん」
とある少女とすれ違う男子は全員、「おっふ」という奇声をあげて挙動不審な状態に陥っていく。そして、その顔は例外なく紅潮している。
何故ならそう、数多くの男子とすれ違った少女は──
──完璧美少女なのだ。
そして、少し離れたところで同じような奇声が聞こえてくる。
「あひゅ、念花美くん」
「あひゅ、念花美くん」
「あひゅ、念花美くん」
とある少年とすれ違う女子は全員、「あひゅ」という奇声をあげて挙動不審な状態に陥っていく。そして、その顔は例外なく紅潮している。
何故ならそう、数多くの女子とすれ違った少年は──
──完璧美少年なのだ。
そんな、誰も彼もを魅了するその2人の距離は次第に近づいていく。そして遂に……
「お……おはよう、照橋さん(おっf……危ねぇッ! あやうく「おっふ」するところだった。しかし、今日も可愛すぎるッ! 照橋さん!!)」
「あ……うん。おはよう、念花美くん(あhy……危ないッ! あやうく「あひゅ」するところだったわ。それにしても……今日もイケメンすぎよッ! 念花美!!)」
両者は邂逅する。が、その二人が奇声をあげることはなかった。
これはPK学園高校の日常であり、2年3組における毎朝の光景。
そしてこれから語るは件の騒動の渦中にいる──2人の男女のラブコメディである。
お分かりいただけただろうか。
……いや違う。これは文字数稼ぎではない。断じてな。
そんなことよりも最後らへんに注目だ。照橋さんと
ふふ。そうだ。僕が忠告を受けてとった行動は──〝完璧美少女たる照橋心美と
そして見事に僕の思惑は嵌り、〝照橋心美〟と〝
しかし、問題が1つある。とは言え僕しか知り得ないのだが……まあ説明するよりも見てもらったほうが早いか。よし、テレパシーだ。
「……はぁ(照橋さんはいつも可愛いな……今日こそ告るか? いや、でも俺告白なんてしたことないしな……楠雄のやつは告らせるように仕向ければいいなんて言ってたけど、無理だろ。……それにしても照橋さん、めちゃくちゃ男子に囲まれてるな)」
「ね、念花美くん! 調子が良くないの!?」
「これ、テンション上がる粉だけど使う?」
「この憂い顔……ご飯7杯はイけるわね」
「……はぁ(念花美のやつ、今日もカッコイイわね……てか早く告白してきなさいよ! 今朝だってOKの返事をする練習してきたのよ!? ……でもうかうかしてたら他の女に横取りされるかも。……いっそ私から告白する? いいやダメよッ! この完璧美少女 照橋心美が自分から「あ、あの! 私と……その……つ、付き合ってくれませんかっ!?」……とか言うなんてーーーッ!! ……ま、まあそれはそうとして念花美のやつ、めちゃくちゃ女子に囲まれてるわね)」
「て、照橋さん! 体調がすぐれないのですか!?」
「あの! よかったらコレ使ってください! 最近流行ってる粉です!」
「憂い顔も……素敵だ」
やれやれ、拗らせるにも程があるだろ。とくに照橋さん。
と、まあこんな具合で2人は恋の駆け引きとやらを続けている。察した人もいると思うが……いや、粉はどうでもいい。そんなことに注目して欲しいわけではない。僕と念花美は協力関係にある。これが重要だ。そして今一度思い出して欲しい。並行世界の〝僕〟から忠告を受けた僕がとった行動を。
……そう、つまり〝
──僕が育成した最強のイケメンキャラなのだ。
Ψオリキャラ名簿Ψ
・名前:念花美 翔(ねんげみ しょう)
・名前の由来:拈華微笑(ねんげみしょう)より。テレパシーの類語。詳しい意味は自分で調べてみてね☆