照橋さんは告らせたい   作:ナイルダ

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※当二次小説はギャグ世界となっております。要するに何でもありです。ありありです。


育成計画『急』

前回のあらすじ

 

 〝ぼくのかんがえたさいきょうのイケメン育成計画〟は第二段階へと差し掛かる。その内容とは、念花美翔を近所(隣家)へ引っ越させることであり、斉木楠雄は見事にそれを成功させた。そして遂に、計画は最終段階へと突入するのだった──

 

以下、本編開始

 

 僕の名前は斉木楠雄。超能力者だ。

 まあ皆さんご存知のことかとは思うが、大抵のことであればできてしまう。少なくとも人間が想像できる限りのことならば可能だ。──と、こんな何でもありの僕なのだが、日常生活で驚くこともある。とはいえ滅多にないのだが……

 

Hello. My name is Nengemi and I moved next door.

 

 ……なんなんだ、これは。なにが起きているんだ。

 

I think that you will be indebted to me, but thank you.

 

「は……HAHA! あ、アイムオーケー!」

「あ、アイムソーリー……ひ、ヒゲソーリー!」

 

 ちなみに最後のは僕の両親である。正直みっともないと言いたいところだが、コミュニケーションを取ろうとしただけでも偉いものだ。まあこれをコミュニケーションと言ってもいいのか分からないが。

 しかし……やれやれ、少し戻って状況を整理する必要があるな。

 

 

 

ΨΨΨΨΨ

 

 

 

 僕はその日、夢を見た。とはいえただの夢ではない。俗にいう予知夢というやつだ。そしてこの予知夢は100%当たるという性質を持つのだが──まあ今はいいか。状況の整理を優先しよう。

 さて、肝心の内容なのだが、特段害のあるものではなかった。なんてことはない〝引っ越してきた念花美一家が挨拶にくる〟といった内容だった。念花美夫妻が息子と娘を連れて斉木家を訪れ、玄関先で僕の両親と2、3会話をする──その程度の内容だったのだ。

 そして時間が経ち、ちょうど正午を過ぎた頃……僕の夢は現実のものとなった。念花美一家が引っ越しの挨拶に来たのだ。〝やっと計画を最終段階に移せる〟──僕はそう思った。なのに……

 

Hello. My name is Nengemi and I moved next door.(あら、私たちと同じくらいの夫婦ね。ひょっとしたら翔ちゃんや(しらせ)ちゃんと同い年の子がいるかもしれないわ)

 

 何語なんだ。生まれも育ちも日本だろ。日本語でいいだろ。

 やれやれ、今まではテレパシーで心の声を拾っていただけだからな。まさかわけのわからない言語を使う人だとは……

 しかし、依然としてテレパシーで聞こえてくる言語は日本語だ。言わんとしていることは理解できる。

 

「……(ちょ……え? なんて?)

「……(ちょっとパパ、どうしよう!?)

 

I think that you will be indebted to me, but thank you.(あれ、どうかしたのかしら。黙っちゃったわね)

 

「は……HAHA! あ、アイムオーケー!(く、楠雄ーーッ! 助けてくれーー、なんて言ってるのか全然わからんッ!!)」

「あ、アイムソーリー……ひ、ヒゲソーリー!(くーちゃんっ! くーちゃんっ!!)

 

 やれやれ、2階の自室で様子を見ていたが行った方がよさそうだ。

 〝こんなときに限って空助のやつはいないし……本当にやれやれだな〟──僕はそんなことを考えながらも、重い腰を上げて部屋を後にした。そして階段を降りきり玄関に顔を出した時だった。

 

「あの、ごめんなさい。お父さんとお母さん、海外にいることがほとんどだから日本語を忘れちゃったみたいで……(あの、ごめんなさい。お父さんとお母さん、海外にいることがほとんどだから日本語を忘れちゃったみたいで……)

 

 僕はまたしても驚いた。

 停滞していた空気を壊し、可愛い声で喋り始めたソイツ……念花美翔には──

 

 

 

 ──まるで裏表がなかったのだ。

 

 

 

 人という生物は悪意を抱く。これは聖人と呼ばれる人間であっても変わりはない。悪意をほとんど持たない人間が聖人と呼ばれるだけであって、善意のみを持つ人間は誰1人だっていやしない。誰しもが暗い感情を持つ……これは、僕がテレパシーによって体験した事実を元に至った結論だ。

 では何故、人は悪意を抱くのか。それは他者の悪意に晒されるからだ。誰かから攻撃を受け、それを免罪符に自分もまた誰かを攻撃する。そしてその回数を重ねるごとに、次第と罪悪感を抱かなくなっていく。悪意に慣れ、染まっていくのだ。

 とはいえ、悪意を表に出していては生きていけない。人は本音と建前を使い分けて生きている。言葉を選び、なるべく優しい言葉を使い、コミュニティーの中で当たり障りなく生きている。そして気が合う人間の前でだけ、悪意という名の本音をこぼす。場合によっては、その中ですら本音を隠すこともある。もっとも、本音が必ずしも悪意とは限らないが……

 

 ともあれこれは、高い知能を得た代償。人間の業だ。

 

 しかし、しかしだ。極々稀にいるのだ、悪意に染まらぬ人間が。僕の母のように、底抜けにお人好しの人間が。そして恐らく、とうとう僕の目の前に現れた絶世の美少年もまた──稀有な人間の1人だったのだ。

 

 

 

 そして初対面から数ヶ月後……僕たち2人は無人島に立っていた。

 

 

 

ΨΨΨΨΨ

 

 

 

 僕の名前は斉木楠雄、超能力者だ。そして僕の隣にいるのは誰もが認める美少年、念花美翔(ねんげみしょう)である。そしてそして、僕らがいる場所は外周10kmほどの木々が生い茂る無人島。

 と、まあ急転直下な展開になってしまって申し訳ないのだが、僕らは無人島にいる。それは念花美のやつを最強イケメンに育成する為なのだが……一応回想に入って説明をしておこうか。

 

 

 

回想開始

 

 

 

 念花美一家が斉木家に引っ越しの挨拶をしにきた日、お互いの両親は僕のテレパシーによるサポートと念花美の通訳によってどうにかコミュニケーションを取ることに成功した。そして会話を続けるうちに念花美夫妻は日本語を少しずつ思い出し、やがて僕たち子供は「遊んでおいで」と2階の部屋に追いやられた。

 こうして僕は、ついに顔面偏差値最強の少年と対面したのだ。まあ念花美の妹という非常に邪魔なヤツも一緒についてきたのだが……それはまた別の機会に話すとしよう。

 

 さて、少しだけ話を飛ばそうか。

 左脇腹町に引っ越してきた念花美翔は僕と同じ小学校に通うこととなった。転校初日は、それはもう筆舌し難い大混乱だったのだが……まあこれは皆さんのご想像の通りだ。〝ヤバかった〟とだけ言っておこう。

 そんな、引っ越しに転校にと大忙しだった念花美が一通りの落ち着きを見せた頃、僕はある決断をした。それは──

 

 〝僕が超能力者であると打ち明けること〟──だ。

 

 正直、かなり危険だ。明智の一件で懲りもしたし、母さんにも秘密にするよう言われている。

 しかし、僕はどうしても打ち明けなければならないと思ったのだ。これから念花美に課す育成計画を進めるにはその方が都合がいいという打算的な考えもあった。だが、僕の都合を通すために必要なのは、超能力ではなく〝誠意〟だと──このとき強く思ったのだ。何もかも黙ったまま計画を進め、自分の操り人形にするわけにはいかない。念花美には全てを知った上で僕の計画に〝協力〟してほしいと──そう思ったのだ。

 そして僕は、僕の口から本音を告げた。

 

 

 

「改めて自己紹介しよう。僕の名前は斉木楠雄。超能力者にして、念花美翔──お前の初恋をプロデュースする者だ」

 

 

 

回想終了

 

 

 

 やれやれ、随分と恥ずかしいことを口走ったものだ。やはり簡単に口を開くもんじゃないな。……まあそんなことはどうでもいいか。僕らが無人島にいる経緯の説明に戻ろう。

 

 僕が念花美に超能力者であることを打ち明けた後、あいつは目を輝かせながら「すごい」と言ってきた。そして誰にも喋らないと約束してくれたし、テレパシーで心の声が聞こえると伝えたときも──「大変だね」と、ただそう言っただけだった。あいつは母さんと同じで心の澄んだ稀有なヤツだ──そう確信するのに、さほど時間は掛からなかった。

 

 その後、僕は照橋さんの存在を隠しながらも、最強のイケメンを育成したいという計画を伝えた。当然対象のイケメンとは念花美のことなのだが、それを聞いたあいつは「自分なんてかっこよくない」と謙遜した……が、頼み込んだら承諾してくれた。〝謙虚〟に〝押しに弱い〟……これらは後に必要なメンタルステータスだからな。まあ悪くはない。……と、念花美が現在、どれ程のスペックを持っているのか調査している間に季節は過ぎ──僕らの小学校は夏休みへと突入する。

 

 そして夏休み中、僕は念花美を毎日のように連れ出し様々な修行をつけた。無人島へと赴いたのは、それらの修行の一環というわけだ。

 

 

 

 と、まあこんな感じか。

 では説明も終わったことだし早速修行を……と言いたいところなのだが、今日は8月31日。つまり夏休み最終日である。そして、育成計画もすでにほぼ完遂状態だ。あとは日々の日課をこなしていくだけで最強のイケメンは出来上がる。

 ではなぜ無人島にいるのか──それは単純。これから最終チェックを行うのだ。〝僕と戦う〟──ただそれだけの為に。

 

 

 

 どちらが合図したわけでもなく、念花美翔は砂浜を蹴り斉木楠雄へと肉薄した。そして目にも留まらぬ速さで蹴りと突きを放つ。

 しかし、動きは完全に見切られており、全ての攻撃は空を切った。「ならば」と、念花美が次なる攻撃を放とうとする。だがその瞬間を見計らっていたかのようにナニカの気配を背後から感じ、直感的に体を低く保つ。すると、先ほどまで頭があった位置を巨大な流木が通過し、遥か数百メートル先まで吹き飛んでいった。

 「サイコキネシスか」──念花美は内心でそう呟きながらも斉木から距離を取る。遠距離からの決定打を持たない念花美にとっては悪手でしかないのだが、そうする他なかった。

 それもそのはず。斉木の足元の砂が、意志を持ったかのように動き出したのだ。そして、やがてそれは人の形を模していき──巨大な砂のゴーレムへと姿を変え、念花美へと襲い掛かる。

 自分の数倍はあろうかという巨体。しかし念花美は、足場の悪い砂浜であってなお驚異的な速度をもってゴーレムへと迫る。その瞳に恐怖の色はなく、ただ己の強さを確かめたい──そんな意思だけが宿っていたのだった。

 

 

 

 ……ん? 急にバトル小説になってるって? まあ確かに、今思えば少々強くし過ぎてしまったな。虎や熊なんかと戦わせるんじゃなかった。

 ……なに? 夏休みの間に何があったのかだって? そうだな、説明するべきか。しかし色々な場所を巡ったからな、どうしたものか。……よし、決めた。ダイジェストでいくぞ。

 

 

 

育成計画 修行編開始

 

 

 

「ぬおおおぉぉぉッ!!」──サハラ砂漠を横断中の念花美くん。

 

「ふおおおぉぉぉッ!!」──太平洋を横断中の念花美くん。

 

「ひいいいぃぃぃッ!!」──ジャングルの奥地で虎と格闘中の念花美くん。

 

「あぁ〜勉強っていいな」──夏休みの宿題消化中の念花美くん。

 

「うらああぁぁぁッ!!」──エベレスト登山中の念花美くん。

 

「そいやぁぁぁぁッ!!」──ナイル川逆流中の念花美くん。

 

「むりいぃぃぃぃッ!!」──山奥で熊と格闘中の念花美くん。

 

「ねえ、なんで登場人物の顎が尖ってるの?」『それはやらなくていい』──恋愛ゲームで勉強中の念花美くん。

 

「ぜぇ……はぁ……」──20kgの亀の甲羅を背負って登山中の念花美くん。

 

「どららぁぁぁあッ!!」──上記の甲羅を背負って素手で畑を耕す念花美くん。

 

「ふんんんんッッッ!!」──巨大な岩を動かそうとする念花美くん。

 

「ふっ……ふっ……」──普通に筋トレ中の念花美くん。

 

「料理する男子ってモテるんだ」──お料理勉強中の念花美くん。

 

「あの……なんか勝っちゃってごめんなさい」──斉木兄と対決後の念花美くん。

 

「いくぞぉぉぉぉッ!!」──斉木くんと戦う念花美くん。

 

 

 

育成計画 修行編終了

 

 

 

 大体こんな感じか。

 正直、冗談半分で組んだ修行プログラムだったのだが、よくもまあやり遂げたものだ。疲労を取り除く超能力などで手助けもしたが、それにしたってたいしたヤツに変わりない。

 

 さて、そんなこんなで終わった僕らの夏休み。

 僕との戦いで一応の終わりを迎えた肉体改造計画──

 そして高校生になるまで日課を欠かさず行い、爪を研ぎ続ける──

 

 ──これでやっと、対照橋心美用決戦兵器〝最強イケメン 念花美翔〟の育成完了だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして時は流れ、僕らはPK学園高校の門をくぐったのだった。

 

 

 




Ψオリキャラ名簿Ψ

・念花美くんの日課:早朝フルマラソン。帰宅後の勉強(宿題、予習復習など)。帰宅後の筋トレ(常人から見れば激ハードな内容)。寝る前の恋愛ゲーム。

・〝ぼくのかんがえたさいきょうのイケメン育成計画〟の進捗
●運動能力 SSS(スポーツ全般世界レベル)
●頭脳明晰 S (学年一位はなんとか)
●コミュ力 SS (誰とでも仲良くなれる)
●好感度  SS (性格に裏表がなく同性からも慕われる)
●顔面偏差値SSS(神)

※評価基準:D C B A S SSと上がっていき、最上評価がSSSとなる。
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