さよならデスゲーム、こんにちはくそったれな異世界 作:霧ケ峰リョク
主にTS転生人外美少女とイチャイチャしたい為だけの作品です。
ほんのりシリアスとなっています。
ゲームをする理由は人それぞれで様々だ。
ただ共通しているのは皆、辛い事が好きなわけでは無いと言う事。
どれだけそれが苦行だったとしても目的があるから頑張れるのだって、それを達成出来た時、充足感に満たされる。
『君達がこのゲームから解放される方法はたった一つ。このゲームのメインストーリー、ダンジョン【クリフォト】を登り、攻略する事だ』
だからこそ、他者からやる事を強制されるゲーム等学校の勉強にも等しい。
訂正――――命が掛かってるのだからこっちの方が地獄だ。
――――僕こと朝比奈悠がこのデスゲームに強制的に参加させられたのは今から二年前の出来事だった。
当時の僕はVRMMORPG【ゴッドライズ】を友人に誘われて購入し、このゲームにログインした。
――――『ゴッドライズ』
それは世界で初めて誕生したフルダイブ型のVRMMORPG。
プレイヤーは様々な種族となってこの世界のダンジョンを攻略し、クリフォトを登るという作品である。
種族は様々で、その種族によって強い点や弱い点、あるいはデメリットが存在する。
『汝、天を目指して登れ』の謳い文句と共に世界で同時に発売されたこのゲームは五万人のユーザーが遊ぶ、大ヒットゲームとなった。
そしてGMと名乗る存在によって【ゴッドライズ】の世界に閉じ込められ、命懸けのデスゲームをやる羽目になったのである。
今思えば何て馬鹿な事をしたのだと思ったが当時はデスゲームと知らなかった為、友人を責める事は出来ない。と、言うより悪いのはこのゲームをデスゲームに変えたGMだ。
自分を責める友人を慰めながらレベルを上げ、スキルを磨き、只管安全に攻略した。メインダンジョン以外のサブダンジョンに挑んだりもした。と、いうよりメインダンジョンに挑む為にサブダンジョンでレベルアップや金銭集め、装備のグレードを上げたりしたといった方が正しいだろうか。
皮肉にもあのファッキンGMの思いのままになってしまったが、結果から言って僕達がこのデスゲームを尤もゲームとして遊んだプレイヤーと言っても良いだろう。
そして現在、このゲームの最後のダンジョンであるキムラヌートを攻略し、ラスボスであるナヘマーを倒すことに成功した。
「まさか、この我を倒すとは…………」
ナヘマーはそう言って地に倒れ伏す。
「だが覚えておくが良い。貴様等は自ら困難に足を踏み込んだのだ。ここで我の手にかかって死んでいた方が良かったと後悔する事になるぞ.。ふふ、はははははははははは――――」
ありきたりな最後と無性に腹立つ高笑いと共にナヘマーが消滅する。
「や、やったのか…………?」
宙に浮かぶ文字を見て僕は、プレイヤーネーム:ユウは空を見上げる。
正直な話、現実感が無かった。だがラスボスであるナヘマーをこの手で倒した事は間違いなく事実だった。
その証拠に、宙には《ゲームクリア》の文字が書かれている。
つまり、あんのファッキン
「――――やったぁあああああああああ!!」
手に持っていた剣を放り投げて歓喜の叫びを上げる。
長年僕達を苦しめていたこのデスゲームを終わらせることが出来るのだ。
嬉しく無いわけがなかった。
「ようやく、現実に帰れるんだ」
現実への帰還は我等ゴッドライズのユーザーの悲願と言っても過言では無い。
事実、さっきからチャット欄が凄いことなっている。
中にはそれを邪魔する者が居ないわけではなかったが、基本的には帰りたいと思うだろう。それも叶わず、命を落とした人も沢山居るが。
「でも、少しだけ怖く感じるよな」
ラスボスを倒した事で歓喜しているチャット欄に少し未来だけ引いていると、一緒にラスボスに挑んでいた友人がそんな事を呟く。
其方に視線を向けると、白いシスターの装いをした赤い瞳と金色の髪を有した吸血鬼の美少女が寂しそうにしていた。
一見、絵にもないそうな美少女が憂いているようにしか見えないが僕は知っている。
コイツの中身が僕と同い年の男であると言う事を。
「お前、やっぱりその美少女ぼでーとさよならしたくなかったのか。やっぱり女になりたかったのか」
「そういう意味じゃねえよ」
僕の発言に少女のアバターを持つ友人、高科千草、プレイヤーネーム:メアリーが怒気を込めてそう言った。
可愛らしい少女の声だが、その実態は身長180超えの筋肉ムキムキのマッチョメンである。
「はぁ、いくらゲームを無事に攻略しても、オレ達は2年間もゲームの中に居たんだ。現実に戻ったら間違いなくリハビリ必要だろ。それに、2年も知らなかったんだ。現実が今どうなってるのか、知る方が怖いだろ」
「まぁそれもそうだね」
メアリーの言う事も理解出来る。
ぶっちゃけた話、このまま現実に戻ってハッピーエンドなんてことにはならないだろう。と、いうか間違いなく困難が待っている。
当時このゲームをやり始めた時は高校二年生の時だ。間違いなく留年している。
それを考えると帰りたくなくなってくる。
でも――――、
「生きてれば何とかなるよ」
未来永劫このままゲームの世界に居て腐ったように生きるくらいなら困難でも現実で生きてやる。
僕はやりたい事が沢山あるんだから。
「多分」
「そこは自信を持って言えよ」
「うるさいな。千草は現実に帰った時の事考えろよ。ずっと女のアバターだったから、間違いなく帰還した時に違和感が出て来ると思うよ。そしてその違和感に耐えきれなくなり自らちょん切って」
「やめろって! ちくしょう、こんな事なら女のアバターにするんじゃなかった。ゲームだからって自分の欲望を詰め込むんじゃなかった」
「で、実際のところ本当にどうなの?」
「最近はこの身体に違和感を持てなくなってきた」
等と下らない話をしていると、互いのアバターが光に包まれる。
「どうやら、時間のようだね」
ゲームをクリアしたことによる現実への帰還に心の底から安堵する。
恐らく他の人も似たような感じなのだろう。
「でもあのGM、一体何がしたかったんだろうか」
デスゲームなんてものをやらかしたのにも関わらず、あのGMは最初のデスゲーム宣告以来、姿を見せる事は無かった。
一体何を考えているのだろうか。
「さてな、狂人の考える事はわ分からん。それよりも本当にごめんな。こんなものに誘っちまって……………」
「それ、何度も聞いたよ。そしてその度に気にするなって言ってる」
全て悪いのはあのクソゴミだ。千草が罪悪感を感じる理由も、必要も無い。
「じゃあ、次会う時は
「ああ、そうだな」
短く淡々と別れを告げる。現実に戻ればいつだって会えるのだ。
まぁ、この身体では無いから最初は間違いなく違和感を覚えるだろうが。殆ど現実と変わらない僕と違って、ゲーム内では女で過ごしてきた千草に慣れるのはかなり大変だろうが。
そんな事を考えながら僕の、僕達のアバターは消失し、現実に帰還する。
命を賭けたデスゲームからようやく解放されたのだ――――そう、思った。
+++
気が付いたら僕達は知らない場所に立っていた。
「――――はっ?」
デスゲームをクリアしたのだから現実に帰れる、そう思っていたのにも関わらず僕の身体はゲームの時と全く変わっていなかった。
そう、変わっていなかったのだ。
「どういうこと?」
ラスボスを攻略したのだ、あのクソ
まさかあのクズ、嘘をついていたのか?
「ぶざけんじゃねぇ!! 元に戻しやがれ!!」
「ラスボスは倒したでしょ!! 何で現実に帰れないの!!?」
僕と同じ考えに至った人達が怒声を上げ、他の人達もそれに続く。
自分も同じように怒声を上げて抗議しようとした時、隣に居た千草が青い顔をして僕の服の裾を掴んでいた。
「どうしたのち――――いや、メアリー。今ゴミカスに文句を言おうとしてたんだけど」
ショックな理由は分かるし、絶望するのも理解できる。
現実に帰れると思ってたのにこの様だ。希望から絶望への落差が大き過ぎる。
そう思いながら慰めの言葉を考えていた時だった。
「太陽…………めっちゃアツい…………痛い…………」
フルフルと震えながら呟くその姿に何とも言えなくなる。
そりゃ使ってるキャラの種族が吸血鬼だから陽の光に弱いのは当然――――、
「…………熱くて、痛いだって?」
このデスゲームは死ねば現実でも死ぬというクソデメリットがある。
だけど、それ以外では親切で痛覚や熱い、寒いといった感覚は一切感じない仕様だった。
なのに感じるということは、明らかな異常であるということ。
と、いうよりも仮想現実が作れるようになったとはいえ、ここまでリアルに作る事は不可能な筈だ。
「まさか…………」
メアリーを連れて人混みから離れ、日の当たらない影に隠れる。
そして剣を使って自らの身体を軽く傷付ける。
すると痛みと共に身体には傷が出来て、そこから血が流れ始めた。
「マジかよ…………」
「嘘でしょ…………?」
あまりにもあんまりな現実に絶句する。
どうやら僕達はゲームのキャラになってしまったらしい。
「さよならデスゲーム、こんにちはくそったれな異世界ってか? ふざけんなよ」
まだここが異世界だと決まったわけじゃないが、そう思わざるおえなかった。