番外・俺がカイドウの息子?   作:もちお(もす)

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前回『キラー、暖かい記憶』の続き、本編補完短編。




キラー、沈んでいく記憶

 

 

 

 

「うおおぉ~~!!邪魔だァ…!!!」

 

凄まじい破壊音と共に甲板が割れる。

 

おれは相変わらずの暴れッぷりを見せるキッドに負けまいと、敵海賊を切り伏せていく。

 

レオヴァさんから貰ったパニッシャーもだいぶ手に馴染んで来た。

 

敵船の上だから気にせず戦えるのも大きいのか、キッドは生き生きしている。

 

 

そして、あっという間にキッドとおれは敵を殲滅した。

 

 

「んだよ、弱ェ野郎ばっかだなァ……」

 

「そうだな、キッド。

これじゃあ戦闘訓練にもならない。」

 

「だよな、キラー!

さっさと帰ってレオヴァと組手しようぜ!!」

 

ニッと笑うキッドに続いて自分たちの船に戻ろうとした時だった。

 

暴れすぎたせいなのか、船がおもいっきり傾き、おれは海へ投げ出された。

 

まずいッ……そう思った時。

おれの腕をキッドが掴んでくれた。

 

だが、船は傾き続けている。

結局キッドもおれを助けようとしたばっかりに宙へ投げ出されてしまったんだ。

 

 

この時、おれは本気で焦った。

ここには海王類もいるし、何よりキッドは能力者(・・・)だ。

 

どんどん目の前に青が近付いてくる。

 

海面に叩き付けられる衝撃でおれが気を失ったら終わりだと、受け身を取ろうとした瞬間。

海面が眩しいほどに光を反射する。

 

思わず目を閉じると、次の瞬間には浮遊感ともふもふした感覚を全身で味わっていた。

 

 

「まったく……暴れるのは構わないが、ある程度考えて行動しねェと駄目だぞ。キッド、キラー。

せっかく無傷で敵を倒しても帰り道がなきゃ意味ねェだろう?」

 

聞きなれた声に目を開けると、おれとキッドは大きな鳥の上にいた。

 

 

「っ……別に迎えなくても帰れてた!!」 

 

「すまない、レオヴァさん…」

 

おれとキッドは同時に言葉を発したが、内容は真逆だった。

それに鳥の姿のレオヴァさんがくつくつと笑う。

 

 

「っとに、お前達は面白いなァ。

………キッドは船に着いたらおれと少し話だ。」

 

「ゲッ…」

 

低くなったレオヴァさんの声にキッドはくしゃりと顔を歪めた。

 

怒られるとつい反論してしまうキッドはいつもレオヴァさんに説教されるから、よくある見慣れた光景だ。

 

そんな光景に思わず小さく笑うと、キッドが恨めしげに軽く睨んで来た。

 

おれは目線だけで嫌なら謝れと伝えるが、キッドは不満げな顔をしてそっぽを向いてしまう。

 

 

「……素直じゃないな、キッドは。」

 

「本当にそうだよなァ、キラー。

ジャックの爪垢を煎じて飲ませてェくらいだ。」

 

おれの一人言に笑いながら返したレオヴァさんの言葉にキッドの顔が険しくなる。

 

 

「なんで、ジャックの野郎の……

てか、爪の垢って汚ぇだろ!!!」

 

「いや、キッド……レオヴァさんは別に本当に飲ませようとしてはないぞ?

そういう言い回しがあるんだ。」

 

「ん、キラーは良く知ってるな。

ワノ国の言葉なんだが…」

 

「だぁ!!長ぇ話はいいっての!

それよりレオヴァ、いつものやってくれよ!」

 

「仕方ねェなァ…キッド。

よし、二人とも落ちるなよ?」

 

「おう!!

ほら、キラー。そこに掴まれよ!」

 

笑顔で掴みやすい場所を指差すキッドに促されるままおれは手に力を入れる。

 

するとさっきまでゆったりと進んでいた景色が一変した。

 

全身に凄い重力の圧がかかり、前を見るのも大変だ。

縦横無尽に空を飛ぶレオヴァさんの背でキッドは楽しそうに笑う。

 

キッドは百獣海賊団に入る前からレオヴァさんの背に乗って、凄いスピードで空を飛ぶのが好きだった。

 

それをレオヴァさんも知っているから、こうしてキッドが頼むと普段はしないような飛び方をしてくれるんだが、正直……少し酔う。

 

けれど嬉しそうなキッドと、それを見て満足げなレオヴァさんを思えば苦じゃなかった。

 

 

これは、そんな楽しかった頃のおれの記憶だ。

 

 

 

────────────────────────────────────────────────────────────────────────

 

 

 

おれとキッドは海賊見習いとしてレオヴァさんと一瞬に遠征に行くか、ナワバリの警護を任されていた。

 

と言っても、ナワバリにいる間はあまり仕事はない。

基本的には、レオヴァさんから渡されている勉強道具を使ったり、キッドと二人で組手をするか他の船員と組手をするか……くらいだった。

 

だから、おれとキッドはナワバリ警護があまり好きではなかった。

 

当たり前だがレオヴァさんとの遠征に勝る楽しいことなど、ナワバリの中ではないのだ。

 

 

それと、おれは仲良くしていたがキッドはとある一部の船員とあまり相性が良くなかった。

 

中でもジャックとローとの相性は最悪だ。

2人ともキッドより年上という事もあり、ある程度は流してくれていたんだが…

その態度がまたキッドを逆撫でしてしまうという、どうしようも出来ない状態だった。

 

だが、その2人の存在はキッドにとって良いことだったと思う。

 

負けまいと踏ん張ることで、キッドは更に強くなっていってた。

……と行っても、結局ジャックに一対一の組手で勝てたことはなかったみたいだが。

 

 

ある日、いつもの様に遠征に行こうと迎えに来てくれたレオヴァさんにキッドが駆けよって行った時。

その隣にトラファルガーを見つけて一瞬で機嫌が悪くなった姿を見て、レオヴァさんが吹き出した事もあった。

 

確かにおれから見てもあからさまに態度が変わったキッドはちょっと面白かったが、レオヴァさんが声を上げて笑う姿はなかなか珍しい。

 

おれもキッドも、トラファルガーも思わずレオヴァさんをじっと見てしまった。

 

 

『ふははははは!!

キッド…お前、分かりやす過ぎるんじゃねェか?……ふふふ。』

 

そう言って肩を揺らすレオヴァさんにキッドは顔を赤くしながら怒鳴っていたのを覚えてる。

 

トラファルガーも言っていたと思うが、レオヴァさんは意外と悪戯好きと言うか……少しおれ達をからかう時があるんだが…

まさか、あの日トラファルガーを連れてきたのもちょっとした悪戯だったのだろうか?

 

 

あの人を理解するのは難しい。

上品に王族の相手をしてたかと思えば、海賊らしい顔で海軍と()りあっていたり、威厳たっぷりにナワバリの人々を導いている。

 

かと思えば、まるで弟をからかう兄の様にキッドをからかって笑っていたり、先生の様におれに優しく知識を与えてくれる。

 

だが、おれは……いや、キッドも。

そんなレオヴァさんが好きだった。

 

おれ達に向けてくれる偽りなき優しさと言葉が

海賊として無類の強さを誇る姿が

……おれ達は好きで、憧れていた。

 

 

けれど、キッドは満足しなかった。

 

初めて尊敬し、憧れた男から向けられる“その感情”はキッドが本当に欲したもの(・・・・・・・・)ではなかったんだろう。

 

 

それは必然だったんだ。

キッドは“部下”で収まることに、満足できるような男じゃなかったから。

 

 

……そして、おれも。

 

懐かしい記憶に蓋をしよう。

キッドの願うものはこれではないんだ。

 

たとえ、もう二度と。

レオヴァさん……アンタの微笑む顔が見れなくても。

 

そこ(・・)で止まってしまうくらいなら。

レオヴァさん、おれとキッドは自分たちで道を作るよ。

 

 

……なぁ、キッド。そうだろ。

それでお前の望んだものが手に入るなら、おれは地獄への道だろうと共に進もう。

 

キッド、おれはお前の相棒だからな。

 

 

 

 

────────────────────────────────────────────────────────────────────────

 

 

ーレオヴァsideー

 

 

キッド、お前がまだ今よりも幼かった頃。

おれがガキの頃に父さんを見ていたような顔で、いつも見上げてくれていたな。

 

 

『見ろよ、レオヴァ!

これおれが作ったんだぜ、すげぇだろ!!』

 

そう言って褒めて欲しそうな顔をするお前を素直に褒めたり、たまに少しからかってみたり。

 

悪くない日々だった。

 

 

まだ身内でもなんでもない。

ナワバリに住んでいるただのガキ相手にあそこまで素を見せたのは初めてだ。

無論それに、ウチに欲しい人材だという欲目がなかったと言えば嘘になるが。

 

 

 

『なぁ、レオヴァ。

おれを船に乗せてくれよ!』

 

そう言って期待に満ちた瞳を向けてくるお前に、駄目だと告げたのは何故だったか。

 

ずっとウチの幹部候補にしたいと思い、ナワバリに通い詰めていた筈なんだ。

だから、お前の申し出は願ったり叶ったりの筈だったのに。

気付けば駄目だと、まだお前には早いと突っぱねていた。

 

あの時の思考を、今自分で冷静に分析するなら。

きっと……おれは少し恐かったんだろう。

懐に入れてしまった相手に、裏切られることが。

 

だから、おれは無意識にお前を懐に入れまいとしたんだろう。

 

キッド、お前は覇王色の素質がある。

それに性格も向上心に溢れた野心家だ。

いつか仕える立場では物足りなくなる日が来るかもしれない。

 

その時。

お前は、どうする?

 

我慢してウチに居続けるのか?

……いや、あり得ない。

お前は我慢するような男じゃない。

海賊らしく野望の為にがむしゃらに進める男だ。

 

 

しかし、時は来た。

 

お前の実力を父さんが気に入り、武装色も扱えるようになった。

最後の組手の試練も、お前はキラーと共に乗り越えた。

 

おれはキッドとキラー……お前達に嘘はつかない。

だから、約束通り見習いとして百獣海賊団に迎え入れた。

 

それでも、キッド。

お前を懐に入れることは出来なかった。

 

それは。

おれを見る目が、昔とは違ったからだ。

もう、ガキの頃のおれが父さんを仰ぐような目でキッドが此方を見ることはなかった。

 

憧れを見るような雰囲気は変わらない。

それでも、何かが決定的に違う。

 

……お前はウチを出ていく。

 

そう、おれは感じていた。

 

 

そして、その予感は的中する。

 

 

『レオヴァおれは──────────────…!!』

 

そう言って、面と向かって啖呵きられた時は少し驚いた。

 

おれが

 

『そうか、好きにすりゃいい。』

 

と素っ気なく返すと、お前は予想外の対応だったのか、少し驚いたような困ったような何とも言えない顔をしてたな。

 

 

『なんだ、キッド。

…引き止めて欲しかったのか?』

 

『っ……んなワケねェだろ!!!

じゃあな、レオヴァ。

もう馴れ馴れしくすんじゃねェぞ!!』

 

一瞬動揺した顔をした後、すぐに踵を返したお前をおれはどんな顔で見送ったのか記憶はない。

 

……キッドが百獣海賊団の一員だった最後の日。

おれがお前をからかう為に意地悪を言えた、最後の瞬間。

 

 

そして、キッドとキラーが船から出ていった時。

おれはもう身内ではないと、部下達に知らせようとしていた。

 

連絡しなければ、何も知らない部下達がお前達に情報を渡したり、ナワバリにも入れてしまうかもしれない。

だから、おれは総督補佐官として。

キッドとキラーはウチを抜けたのだと、報告する義務があった。

 

だが、それは隣に座っていた父さんによって止められた。

 

 

『…レオヴァ、アイツらは家出しただけだ。

ガキの癇癪みてェなもんだ、すぐ戻ってくる。

……だから、んな顔する必要はねェ。』

 

『家出……?

父さん、キッドとキラーはもう…』

 

戻ってくる筈がない、そう口にしようとしたが父さんが先に口を開いた。

 

 

『戻ってくる。』

 

言いきった父さんをおれは見上げた。

真っ直ぐな強い目でおれを見下ろして、父さんは言葉を続ける。

 

 

『それに正面からあれだけデカイ口を叩くなんて面白ェじゃねェか!

レオヴァ、おれ達に挑もうってんなら受けて立とうぜ。

それで分からせてやりゃあいい、キッドとキラーの小僧に。

おれ達は越えられねェってなァ…!!

そうすりゃ、家出なんて馬鹿なことは止めるだろ。』

 

『…そうだな、父さん。』

 

短く返した言葉に父さんは笑うと、わしゃわしゃとおれの髪をかきまぜた。

 

 

『楽しみじゃねェか、レオヴァ。

キッドの小僧は海軍なんかより、おれ達を楽しませてくれるだろうからなァ!!』

 

 

あぁ、本当に。父さんの言う通りだ。

 

キッドとキラーは父さんを楽しませてくれるほどに強くなるだろう。

 

このまま行けば、百獣海賊団(おれ達)に逆らう猛者はいなくなる。

そうおれは昔、思っていた。

 

だから、父さんに挑もうと言う根性のある者が居なければ育てれば良いのだ、と。

色々策を巡らせて来たのではないか。

 

 

なら、キッドとキラー。

お前達がそれ(・・)になってくれ。

 

その後、全てが終わったら戻ってくればいい。

また、昔みたいに。

ジャックやローと賑やかに喧嘩する姿を見せてくれ。

 

 

……それでも、まだお前が意地を張るなら。

おれは選ばなければならない。

いや、選ぶという言葉は正しくないな。

 

何故なら、最初から選択肢は決まってる。

おれが選ぶのは“父さん”以外、あり得ない。

 

 

それはお前達も知ってるだろう……キッド、キラー。

 

 

 





ー後書きー

『父さんに挑もうと言う根性のある者が居なければ育てれば良いのだ』
本編の“龍の子は鯉と偽る”で言っていたことを。その役目をキッドに。
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