番外・俺がカイドウの息子?   作:もちお(もす)

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レオヴァ、初の体調不良

 

これは、まだレオヴァが幼かった頃の話である。

 

 

 

「ウオロロロロロロ!!

見ろ、レオヴァ!こんなにデカイ冬島は初めてだろ!?」

 

酒も入り上機嫌なカイドウはそう声を上げると龍の姿へ変身し、小さなレオヴァが潰れてしまうのではないかと心配になるほど繊細さのない動きで掴み上げた。

 

先ほどまでは父の脇で吹雪に耐えながらちんまりと大人しく白湯をすすっていたレオヴァはカイドウの大きな龍の手に連れ去られ、側に居たキングとクイーンの目では安否を確認することは出来ない。

 

 

「おい、アレ…レオヴァの奴潰れたんじゃね?」

 

「カイドウさんの血が入ってんだ、そんな簡単に死ぬとは思えねェ」

 

この頃はまだカイドウの息子としてしか見ていなかった二人の反応は冷めたものだったが、カイドウが吹雪く冬島へ向かい空を進み始めてやっとクイーンが慌て出す。

 

 

「ちょっ…!?

カイドウさん何処行くんスか!?

流石にこんな大荒れの雪山にガキ連れてったら凍死するんじゃ…」

 

クイーンの尤も過ぎる呼び掛けは悲しいかな、酔っぱらっているカイドウの耳に届くことはなかった。

虚しく宙に手を伸ばした姿のままクイーンは遠ざかって行く巨大な龍の尻尾を眺めた。

 

 

「…なぁ、これでレオヴァ凍死したとするじゃん?

酔いが覚めたカイドウさんが記憶なくておれらがボコられる……な~んて事にならねェよな?」

 

「………………」

 

「え、マジでヤバくね?

確かにレオヴァは頑丈だけどよォ……いやでも砂漠に置いてきぼり食らわしちまった時も虫食ったりしながら生きてたし案外問題ねェか?」

 

きっと大丈夫だろうと現実逃避を始めたクイーンの隣に立っていたキングが思い出したように口を開いた。

 

 

「……確か坊っちゃんが寒いのは苦手だってんでカイドウさんが暖めようと火を付けて火事になった事があったな…」

 

「アッ……そう言えば危うく船が全焼しかけてたっけか?

んん?じゃあやっぱ駄目じゃんかよ!?

お前飛んで行ってカイドウさん連れ戻して来い!!レオヴァが死んだら八つ当たりでおれが殺される!!」

 

「命令するんじゃねェ

そもそもカイドウさんを止められるワケねェだろうが、馬鹿なのか?

いや問うまでもなかったな、お前は馬鹿だった。」

 

「っとに、お前可愛くねェ!!」

 

クイーンの腹からの叫びは荒れに荒れている吹雪の音にかき消された。

 

 

────────────────────────────────────────────────────────────────────────

 

 

あれから数時間後、あまりの寒さに酔いが覚めたと帰って来たカイドウのしっかりと握られた手の中にはちゃんとレオヴァが入っていた。

 

だが、外出用の防寒着ではなかった為か少し長い髪の毛や靴が凍っており、まさかそんな事になっているなどと思いもせず慌てたカイドウによってお湯をかぶせられビショビショになったレオヴァは着替えるべく自室へ消えて行ったのだった。

 

 

無事、レオヴァが生きて帰って来たことに内心キングとクイーンは胸を撫で下ろしていたのだが、異変は次の日の昼頃に起こった。

 

 

今回はログポースを溜めるだけの停泊だったカイドウ達は特に何をするでもなく、船の中で過ごしていた。

その為、やることのないカイドウは退屈さに酒を呷っていたのだが、ここでレオヴァの様子を見に行くことを思い付いたのである。

 

自ら行かずともレオヴァは呼べばいつでも来るが、きっと自分が突然現れたとなればいつもの様に驚いた後、大袈裟なまでに喜ぶだろう。

 

そう思ったカイドウは記憶にあるレオヴァを思い浮かべながら酒瓶片手にのっそのっそと船の奥へと向かって行った。

 

そして目的の場所であるレオヴァの部屋をノックもなしに開けたのだが、普段ならば机で本を読んでいたり、地図の練習をしている筈の姿がない。

 

まさか部屋を出て何処かに行ったのか!?と一瞬目を丸くしたカイドウだったが、部屋の奥のベッドの上が僅かに膨らんでいる事に気が付き思考を切り替えた。

 

 

「なんだ、レオヴァ

こんな真っ昼間まで寝てるなんて珍しいじゃねェか」

 

自分のことを棚に上げながら、珍しく寝ているレオヴァの方へ歩み寄る。

 

そして寝ている相手の都合など考えずにカイドウは毛布を持ち上げてレオヴァを起こそうと声をかけた。

 

 

「おい、起きろレオヴァ!来てやったぞ!!」

 

カイドウからすれば対して大きな声ではないが、7mの巨体から発せられる音はなかなかに強い振動を持っている。

びっくりした様に目を開いた姿に満足げに笑っていると、レオヴァが口を開いた。

 

 

「…と、さん?

どうしたんだ?おれ、なにかした?」

 

「別に特に用があったワケじゃねェ

自分の息子に会うのにわざわざ理由がいるのかァ?」

 

可笑しな事を言うやつだとレオヴァの頭を乱暴にわしわしと撫でた時だった。

カイドウは違和感に気が付いた。

 

とてつもなく熱いのだ、レオヴァの頭が。

 

もともとレオヴァはカイドウ譲りかは不明であるが体温が高い方ではあった。

だがそれも触れていればじんわりと温もりが伝わってくる程度である。

 

しかし今は触れた瞬間、熱燗のように温度が手に移ってくるではないか。

 

何故、部屋は冷えているのにこんなにも体温が上がっているのか。

カイドウは答えが分からず首をかしげた。

 

 

「レオヴァ、お前熱いのか?」

 

「……あ、あつくない…だいじょうぶだ」

 

珍しくカイドウから目を逸らすと、普段よりも少し元気なくにこっと笑うレオヴァに更に違和感を感じる。

 

 

いつものレオヴァならおれから目を逸らすなんざ有り得ねェし、既にベッドから出て俺の足下でソワソワし出している筈だ。

だが目の前のレオヴァは動きが鈍く、声にも心なしかハリがねェ。

 

普段戦闘以外ではあまり活躍させることのない洞察力を存分に発揮したカイドウはある考えに辿り着いた。

 

 

「…レオヴァ、二日酔いかァ?」

 

「……へ?ふつかよい?」

 

「飲み過ぎるとたまにダルくなるだろォ?」

 

分かるぜ!とレオヴァの頭を撫でると、起き上がろうとする小さな体を再びベッドへ寝かせカイドウは立ち上がった。

 

 

「安心しろ、レオヴァ!

すぐにおれがクイーンのやつに酔い止めをもらって来てやる」

 

「ケホッ…と、とうさん……その、おれは…さけのんでないぞ…?」

 

レオヴァの制止も虚しく、意気揚々と部屋を出たカイドウはクイーンが居るだろう部屋へ向かった。

 

そしてまたノックもなく部屋の扉を開く。

 

 

「ぅお!?

え、カイドウさん!?何スか、急に……てかノックして下さいよ…手元が狂うんで!」

 

謎の器具片手に何かを作っているクイーンは驚いたように此方を見ていたが、カイドウは気にせず要件を述べた。

 

 

「前に言ってた二日酔いの薬はまだあるかァ?」

 

「二日酔いの薬ィ?

え、カイドウさんすぐ治るから要らねぇって言ってたような…」

 

「おれじゃねェ、レオヴァに飲ませンだよ」

 

「あぁ、なるほどレオヴァに………ん?

あれ、聞き間違いッスかね?なんか今レオヴァに飲ませるって…」

 

「だから、そう言ってんだろう!!」

 

早くしろと鬼の形相になっているカイドウにクイーンは訳が分からないと目を点にする。

 

 

「いや、あれはカイドウさん用に作ったやつなんで他の奴らに飲ませたら寧ろ毒っつーか…

それにレオヴァってまだ3歳だったような?二日酔いとかあり得なくないッスか?」

 

「おい、クイーン!レオヴァは4つだ!!!」

 

「あ、スイマセン…」

 

1歳くらい誤差だろと内心で思いながらも、クイーンは大事な事を聞き返す。

 

 

「レオヴァはまだ酒飲むには早すぎるけど、飲ませたんスか?」

 

「おれは飲ませてねェが…」

 

「じゃあ、多分二日酔いはあり得ないんで」

 

キッパリ言いきられたカイドウは口をムッとさせて不満げな顔で器具を弄るクイーンを見下ろす。

 

 

「なんでそう言いきれる!

あのレオヴァが昼まで寝ててダルそうにしてンだぞ!!!」

 

「レオヴァは酒飲もうとするようなガキ…奴じゃないですし?

アンタの息子に無理やり酒飲まそうとする馬鹿はいねェんで」

 

「…確かにレオヴァは飲みてェとも言わねェな」

 

「まだ3……4歳なんでそりゃそうっスよ

それよりダルそうってどんな感じスか?」

 

「いつもより動きと反応が鈍かった。

あとは…体温も普段より高い感じはあったな。」

 

「なるほど、ダルそうな感じで……ん?更に熱もある?」

 

クイーンの天才的な頭脳はカイドウでは辿り着けなかった答えを導き出した。

そう、それはレオヴァが病気になっているかもしれないという可能性だ。

 

そして、クイーンのハイスペック脳は昨日のカイドウの行動を思い出していた。

 

完全な防寒着なしでの数時間に及ぶ雪山探索と吹雪のセットからのお湯をかけてびしゃびしゃにする一連の流れの記憶だ。

 

 

「いやそれ完全に風邪じゃねーか!?!」

 

「かぜ、だァ?」

 

答えが出ると同時に思わず叫んだクイーンの言葉にカイドウは首をかしげる。

 

かぜ、聞き覚えのない単語だ。

そうカイドウが思っていると、それが顔に出ていたのかクイーンが説明を始める。

 

 

「あ~、おれ医者じゃないんでそこまで詳しくないんスけど

風邪ってのは正式名称が風邪症候群ってやつで、上気道の急性炎症の総称ッスね」

 

「きゅうせいえんしょ…?

待てクイーン、どういう事だ?」

 

「まぁ、簡単に言えば病気ッス」

 

「……病気、だと?」

 

珍しく目を見開き驚いたように固まるカイドウを横目にクイーンは電伝虫で部下に指示を出す。

 

 

「……ってワケだ、至急レオヴァの所へ言って容体確認してこい!マスクするの忘れんなよ!?」

 

クイーンの声にやっと我にかえったカイドウは険しい顔で詰めよって行く。

 

 

「絶対に治せ!!!」

 

「ぉ、oh…治します…」

 

あまりの迫力に思わず即答してしまったクイーンはある事実(・・・・)を言葉にせずに飲み込むのだった。

 

────────────────────────────────────────────────────────────────────────

 

 

あれからクイーンの素早い対応により、船医から診察を受けたレオヴァは風邪であることが確定し、大事を取り栄養剤を打つこととなった。

 

他の部屋と比べるとあまり広いとは言えない部屋にカイドウ、クイーン、キングと巨大な男達が集まっていると殆どスペースがない。

 

そんなとんでもない圧の中、船医は元気のないレオヴァの腕に針をあてがった。

 

普段であれば簡単に通らない筈の細い針が、皮膚が少し抵抗しただけですんなりと小さな腕の中へ入っていく。

 

部屋のベッドの上で顔を赤くし荒い息を繰り返すレオヴァが針を刺される姿をカイドウは落ち着きなく見下ろしていた。

 

 

「おい、クイーン。ありゃあ何してンだ?」

 

「栄養剤ってやつッスね

レオヴァのヤツ、喉がめちゃくちゃ炎症起こしちまってるんで飯食えるか微妙なんスよ。」

 

「栄養剤ってのを打てば良くなんのかァ?」

 

「薬は飲ませたし良くなるんじゃないッスかね~

ま、カイドウさんのガキだし問題ないと思いますけど。」

 

クイーンの曖昧な答えに一瞬不満そうな顔をしたが、カイドウはすぐに目線をレオヴァへと戻す。

 

こんなにも顔を赤くし、息苦しそうにベッドに横たわる姿は初めて見るものであった。

 

ソワソワと落ち着きがないカイドウを物珍しげに見上げるクイーンとキングだったが、栄養剤の針を付け終えた船医が口を開いた為、顔を下へ向ける。

 

 

「こ、これで処置は終わりました。

あとはそっとしてあげれば…」

 

その言葉に軽く頷くとキングとクイーンは踵を返し部屋のドアノブに手を掛けたが、カイドウが共に来ていないことに気付き振り返る。

 

 

「カイドウさん?」

 

キングの声かけにカイドウは背中越しに答える。

 

 

「どうせログたまるまでは暇だからな、おれはもう少しここにいる。

手の空いてる奴に酒を持って来させろ。」

 

「……分かった、すぐに運ばせる。」

 

カイドウの命令に頷くとキングとクイーンは歩き出す。

 

2人が遠ざかっていく足音を聞きながら、カイドウはレオヴァが寝るベッドの横の床へ座り込んだ。

 

ドスンという音と振動でゆっくりとレオヴァの目蓋が開く。

 

 

「起こしちまったかァ?」

 

自分を覗き込んでくる大きな顔に一瞬ポカンとした後、レオヴァは慌てて起き上がろうとする。

 

 

「と、とうさん…!?」

 

「あぁ…いいから寝てろ。

動くと治るモンも治らねェとクイーンが言ってたからなァ。」

 

小さな体を軽く指で押すと呆気なくまたベッドへと沈んだ。

 

いつもよりも抵抗力を感じなかったことにまたカイドウは心がざわつく感覚を覚え、眉間に皺を寄せた。

 

表情が険しくなったカイドウの顔にレオヴァの大きな瞳が揺れる。

 

 

「……す、すまない…とうさん……おれ……」

 

今にも泣きそうな声にハッとしたようにカイドウはレオヴァを見た。

 

普段は見せない不安と悲しみが混ざったような子どもらしい顔をしているレオヴァの頭を安心させるように指でそっと撫でる。

 

 

「謝る必要なんざねェだろうが。」

 

「……でも、おれ…あしでまといだ」

 

「ウォロロロロ!

足手まといなんて言葉も覚えたのか!!」

 

深刻そうなレオヴァとは打って変わってケタケタと笑う。

 

 

「どうせ暫く暇だからなァ。

やることもねェから此処にいるだけだ、いちいち気にするんじゃねェ。」

 

「………ありがとう、とうさん」

 

笑いながらまたそっと頭を撫でてやるとレオヴァはやっと肩の力を抜き安心したように顔を綻ばせた。

そんな姿に、いつものレオヴァだとカイドウも無意識に安心したのか笑みが深まる。

 

 

「ほら、さっさと寝ろレオヴァ!

この島に滞在してるうちに治せば探索に連れてってやる。」

 

「ほんと!?

おれ、すぐなおすよ!」

 

「おう…約束だ、レオヴァ。」

 

「ん、やくそく…ケホッ」

 

「…ほら、もう一度寝とけ。

食って寝りゃ大抵どうにかなるモンだ。」

 

カイドウは嬉しそうにしながらも咳き込んだ姿の息子にかかっている毛布を指先で掴み、掛けなおす。

 

 

「うん、ありがとう。

……とうさんはもう、へやに戻るの?」

 

「いや、もうすぐここに酒が届くからなァ。」

 

「そっか…!」

 

「あぁ、レオヴァが起きるまでは酒盛りしてるだろうなァ!ウォロロロロ!」

 

不器用ながらも気を使わせないように明るく言ったカイドウにレオヴァは幸せそうに笑った。

 

床に伏せるレオヴァの瞳は僅かに潤んでいたが、それは果たして熱のせいなのか嬉しさからなのか。

それは本人のみぞ知る。

 

 

────────────────────────────────────────────────────────────────────────

 

 

今回の冬島にてカイドウの無茶により免疫力が下がっていたレオヴァだったが、それでも常人の数十倍は頑丈であった。

ならば何故、今回風邪を拗らせたのか。

その原因の一端にはクイーンが関わっていた。

 

風邪とはウイルスが粘膜から感染して炎症を起こし、それによって起こる免疫活動の結果であるのだが

そう、その“ウイルス”が問題なのである。

 

通常、周りにあるようなウイルスならばレオヴァが熱を出すことなどなかっただろう。

しかし、クイーンはちょうどレオヴァが着替えに行った後に実験をしていたのだ。

 

小さなフラスコで行っていたウイルス実験は失敗し爆発してしまったが、ほんの少し机が焦げただけであった。

被害も少なく特に気にも留めて居なかったのだが、その夜にレオヴァはクイーンに頼まれ部屋へ甘味を届けていた。

 

この時、クイーンの実験失敗による爆発で宙を舞っていたウイルスがレオヴァの体内へ侵入したのだ。

 

それは日常茶飯事の出来事で特筆すべき点ではない。

しかし、運悪くもこの日はカイドウの無茶によってレオヴァの免疫が普段の半分ほどまでに下がっていた。

 

結果、通常であればなんの問題もなかった筈のウイルスにやられてレオヴァは熱を出したのである。

 

だからこそクイーンの薬作りはスムーズに進んだのだが、これは語られることのない真実だ。

 

 

────────────────────────────────────────────────────────────────────────

 

 

凍えるような風とは裏腹に一面に広がる白が暖かな太陽の光を反射し、思わず眩しさに目を細める。

 

珍しい生き物がいると言う噂に毎度の如く吊られたレオヴァは冬島へ足を運んでいたのだが、目の前に広がる雪景色に懐かしい記憶が甦っていた。

 

 

「冬島でこれだけの快晴は珍しいんじゃねェかァ?」

 

船室から出てきたカイドウはソワソワした様子で一番に甲板へ出ていった息子の姿を見つけ、そう声をかけた。

 

するとカイドウの予想通り振り返ったレオヴァは少年のように目を輝かせ、満面の笑みを浮かべている。

 

どれだけ大きくなろうとも、二人で出かけると昔の面影が強く残る笑みを見せる息子にカイドウもつられる様に笑うと、手にもっている特注で作らせたコートをレオヴァの肩にかけた。

 

 

「部屋に忘れてたぞ。」

 

「…!

すまない父さん、ありがとう。」

 

笑顔で礼を述べるとそのままコートに袖を通す息子にカイドウは少し昔を思い浮かべ、言葉を続ける。

 

 

「昔みてェに風邪を拗らせちまったら大変だからなァ?」

 

「っ……あ、あの時はまだガキだったんだ。

今は自己管理もちゃんとしてるし、父さんに迷惑をかけたりしねェ。」

 

レオヴァが恥ずかしそうに目線を泳がせると、カイドウは穏やかな視線を送る。

 

 

「あの時はおれも悪かった。

吹雪でガキが弱るたァ知らなかったからよ。

今考えりゃあ、分かりきった話なんだが

如何せん身近なガキはキングぐれェだったもんで基準がズレてたなァ。」

 

「いや、あれはおれが貧弱だっただけだ。

それに…おれ、凄く嬉しかったんだ。父さんが雪山に連れて行ってくれて。

空から真っ白な島を見下ろすなんて初めてだったから。」  

 

懐かしむように目を細めるレオヴァにカイドウも同じ表情になる。

互いに同じ記憶を脳裏に思い起こし、顔を見合わせるとどちらともなく笑う。 

 

 

あの頃と比べるとカイドウもレオヴァも変わった。

お互いの立場も、見た目も、価値観も。

 

けれども二人の“親子”の関係は揺らがない。

父は息子を信頼し、自慢に思っているし。

息子も父を愛し、誇りに思っている。

 

世界とは変わりゆくものだが、変わらないものも確かにあるのかもしれない。

 

 

カイドウは巨大な青龍の姿になると相変わらず繊細さのない動きでレオヴァを掴み上げる。

 

 

「行くぞ、レオヴァ!

久々の休暇遠征だ、楽しもうじゃねェか!!」

 

弾むような声を上げ、カイドウは冬島の中へ向かって空を駆けた。

 

手の中から聞こえる息子の楽しげな笑い声を聞きながら進む。

雪山から流れてくる風は体を冷やしたが胸の中はじんわりと温かく、不思議な感覚を覚えた。

 

しかし、それは嫌な感覚ではない。

寧ろ息子と共に過ごすと起こる不思議なこの現象がカイドウは好きであった。

 

 

風を切り進む。

今日はどんな1日になるのだろうか。

 

何が起こるかは予想出来ないが、なんであれ悪くない日になるとカイドウは確信していた。

 

なにせ、自慢の息子と一緒なのだから。

 

 

 





ー後書きー

今回はリクエストにありました幼少期編を投稿させて頂きました!
来月か再来月は本編を進められるよう頑張って参ります~!

今回も読んで下さりありがとうございました!
番外編まで目を通して下さる方々には頭が上がりませぬ…感謝!!
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