番外・俺がカイドウの息子?   作:もちお(もす)

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それは親心か所有欲か?

 

 

 

 

百獣海賊団の船員達において、レオヴァとは公私共に非の打ち所がない人物であるという印象が共通認識であった。

 

百獣幹部としてもワノ国の王としても多くの仕事をこなし休日も部下や民へのケアを優先し、空いた時間で趣味のモノ作りやペット達の世話をする。

 

性格もあらゆることに寛容であり、締めるところはキッチリと締め更には身分や立場も関係なく分け隔てなく接する。

 

正直、百獣海賊団の船員でなければ信じられないだろう人物。

それがレオヴァであった。

 

 

だが、百獣海賊団に10年以上所属している人間の中にはレオヴァが初めから“そう”だったのではないことを知っている者が存在する。

 

 

 

そもそも、レオヴァがここまでキッチリとしだしたのは10代の半ば頃からであった。

 

特に幼い頃のレオヴァは“イイ子”ではあったが、自己主張のあまりない子どもだった。

 

 

カイドウの言い付け通りに世話係からは離れず

カイドウが航海術を覚えろと言えば素直に机に座り教えを受け

カイドウが組手中に『立て!』と言えばどんなに怪我を負っても立ち上がってみせる。

 

カイドウの言葉には何処までも素直な子ども(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)であった。

 

 

修行で疲れていようとも、夜遅くの時間で寝ていようともカイドウが『レオヴァ!』と一声呼べば嬉しそうな顔をしてトテトテと走りよってくる姿は子どもらしかった。

だが、他の行動はあまりにも一般的な子どもと言う姿からはかけ離れていたのだ。

 

 

しかし、カイドウは普通とは言いがたいレオヴァの姿に特に疑問や違和感を持ってはいなかった。 

 

なにせ彼には一般的な子ども(・・・・・・・)の知識がほとんどない。

なので、この時カイドウは

『子どもも存外、悪くねぇじゃねぇか』

くらいに思っていた。

 

他にも7歳と言う幼い年齢で連れ去られても海軍の男数人を倒し、あっけらかんとしていたレオヴァの姿にも喜んだ、それでこそおれの息子だ!と。

 

それからどんどんレオヴァへの興味は強くなっていった。

赤ん坊の頃からカイドウを恐れず笑顔を向けてくるレオヴァへの興味や感心は、無意識に親心の様なモノへと変わりつつあったのだ。

 

もちろん、この頃のカイドウにその自覚はなかった。

この気持ちは『気に入った』という感覚だろう、くらいに思っていたのだ。

 

 

だが意図せずも少しずつ、歪ながらも親らしくなっていたカイドウの心境に変化が訪れた。

 

カイドウはあるきっかけから、レオヴァの振る舞いに悩み始めたのだ。

…それはレオヴァが9歳になった頃のことだった。

 

 

 

ある日、クイーンは何気なくカイドウにレオヴァの話題を振った。

 

 

「カイドウさん、明日の遠征にレオヴァを連れてってもいいスか?」

 

「遠征に?

なんだってレオヴァを連れてく。

キングに担当を変わりゃあいいだろう」

 

「いや、そう思ってたんスけど

レオヴァが遠征先にしかいない亀を見たいらしくて…

ほら、レオヴァって珍しい生き物が好き(・・・・・・・・・)じゃないっスか!」

 

この時にカイドウは初めてレオヴァが珍しい生き物が好きだと知った。

と、同時に感じた事のない言葉に表せぬ不快感がカイドウの胸中を占めた。

 

突然、ぐっと顔が険しくなったカイドウを見てクイーンはギョッとする。

 

 

「(えっ……おれなんか不味いこと言ったか!?

いやいやいや、どう考えても普通の会話だったよなァ!!?

……よし、レオヴァにゃ悪いがこの話はなかったことに…)」

 

クイーンはダラダラと冷や汗を流しながら、レオヴァとの約束を破棄することを決意した。

我らが船長の息子との約束より自分の身が優先だ、当たり前である。

 

 

「か、カイドウさん…やっぱ今の話ナシで…」 

 

鬼の形相のカイドウに恐る恐るクイーンは口を開いたが、その本人に言葉を遮られる。

 

 

「レオヴァが見たいってならァ、見せてやりゃあいい!

勝手に連れていきやがれェ!!」

 

ムスッとした顔に変わり、酒を煽るカイドウにクイーンはポカンとした。

こんな雰囲気のカイドウなど見たことがなかったからだ。

 

苛立っているような怒っているような…けれど酔って怒りだした時の特有の恐ろしさはあまりない。

 

もとよりカイドウは酒が入ると情緒が乱れる節はあった。

だが、目の前のカイドウはそこまで酔っているようには見えない。

 

 

クイーンは首をかしげた。

なんでカイドウの機嫌が突然悪くなったのか、見当もつかない。

なにせ今はレオヴァの話しかしていないのだ。

 

 

カイドウはどちらかと言うとレオヴァには寛容だった。

それはレオヴァのカイドウへの態度のおかげだろうとクイーンは思っているのだが、兎に角さっきの話にカイドウの機嫌を損ねる要素は皆無だった筈だ。

 

むしろ過去には、レオヴァが初めてハイハイをした時や一人で立てるようになった時の話はカイドウ自ら長々と話していたではないか。

 

その度にクイーンは

『レオヴァもうハイハイしてるんスか!?』やら

『レオヴァが立った!?そりゃスゲェ早いッスね。』

など、わざわざ大きくリアクションを取っていた。

 

正直、この時期のレオヴァにクイーンはなんの感情も無かった。

ただ“カイドウさんの息子”だから多少面倒を見てやっていただけだった。

 

しかし、7歳のあの海軍基地での出来事以降レオヴァへの印象は激変した。

 

クイーン達からしたら有象無象にすぎないが、少尉と一般海兵数名を相手にピンピンしていたのだ。

この時、クイーンは確信した。

このレオヴァは間違いなくカイドウさんの息子だ、と。

同時に少しずつ色々な発言が増えたレオヴァを“面白く”思っていた。

 

凡人には思い付かないことをレオヴァはたまにポロッと溢すのだ。

クイーンは昔の研究チームの奴らに吠え面かかせるのに、レオヴァなら良い助手に出来るかもしれないとすら思っていたし、実際にレオヴァの“科学”の知識の吸収の早さは目を見張るものがあった。

 

クイーンの話を真剣に聞き、1人の時も渡した研究関連の本を黙々と読む真面目さも良かった。

 

なにより、その読んだ研究書についてレオヴァは的確な質問や考えていなかった角度からの質問を次のクイーンの授業で毎回聞いて来るほど熱心な生徒だった。

優秀かつ素直な生徒をクイーンが気に入るのは早かった。

 

 

そんな事を考えながらも、不機嫌なカイドウを相手にしても被害が広がるだけだと知っているクイーンは部屋を出た。 

 

 

「よォ~し、カイドウさんから許可取ったぜェ!」  

 

ドヤ顔で小躍りしつつレオヴァの下へ向かうクイーンの頭には、もう怒るカイドウの事はすっかり抜け落ちているのだった。

 

 

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クイーンが出ていった部屋で1人で酒を煽るカイドウの下にキングが現れた。

 

どうやら出先で他の海賊団を幾つも潰したことで弾薬などが十分に確保できた事の報告に来たらしい。

 

 

「……ってワケだ、カイドウさん。

6ヶ所の保管庫が満タンになるだけは集まった。

暫くはその資金を別に回せばまたウチをデカくするのに……おい、カイドウさん聞いてるか?」

 

「ン?……あぁ聞いてる、問題ねぇ。」

 

「……はぁ」

 

報告書片手に話していたキングは頭を抱えてみせた。

カイドウはその対応にムッとした様な顔で口を開く。

 

 

「おい、なんだキング!

言いてぇことがあるならハッキリ言いやがれェ!!

 

そんなカイドウの言葉にキングは間髪入れずに答える。

 

 

「なら言わせてもらうが、カイドウさん。

アンタさっきから上の空じゃねぇか、ちっともおれの話を聞いちゃいない。

それで問題ねぇと言われて、ハイそうですかとはならねぇだろう。」

 

「……別に上の空じゃねぇ。」

 

先ほどの勢いをカイドウは完全に失っていた。

キングの発言は図星だったのだ。

 

理由は分からないがカイドウはあのクイーンとの会話以降、よく分からない感情を抱えているせいで集中出来ていなかった。

 

口を閉じてしまったカイドウの目をじっと見つめ、キングは口を開く。

 

 

「何があったんだ、カイドウさん。

アンタを煩わせるモンがあるなら、一言命令してくれ

…おれが跡形もなく消してくる。」

 

「別にそんなんじゃねぇよ、キング。

たいした事じゃねぇ……はずだ。」

 

歯切れの悪いカイドウの言葉にキングの背でゆらゆらと揺らめいていた炎が消える。

赤い瞳で真っ直ぐカイドウを捉え、キングは不満げな雰囲気を隠しもせず言葉を吐き出した。

 

 

「…カイドウさん、おれじゃ力不足ってことか?」

 

「そんなこと言ってねェだろう。」

 

「なら、なんで何も言ってくれねぇんだ。

アンタが考え込むだけで行動に移さねぇなんて可笑しいだろう。

それだけ、デカい問題ってことじゃねぇのか?

アンタにとって邪魔な存在は、おれにとっても邪魔だ

……それは絶対におれに言えねぇ話なのか?」

 

キングの訴えにカイドウは少し唸ったあと、徐に口を開いた。

 

 

「…………わからねぇ。」

 

「…?

わからねぇって…どういうことだ、カイドウさん。」

 

「分からねェんだよ!!

なんだか知らねぇが、クイーンの奴と話した後からだ!」

 

カイドウの口から出た、クイーンの名前にキングは顔をしかめた。

 

 

「あの馬鹿がなにかしやがったのか?」

 

唸るようなキングの言葉にカイドウは首を横にふる。

 

 

「違ェ、クイーンが問題なんじゃねぇ。

レオヴァの……いや、そうだキング。

お前、レオヴァが生き物が好きだって知ってたか?」

 

突然、変わった話にキングは少し困惑したがすぐに答えを返した。

 

 

「あぁ、確かにレオヴァ坊っちゃんは珍しい生き物が好きだが……」

 

「…キング、てめぇも知ってやがったのか!?」

 

驚きを露にするカイドウに更にキングは困惑する。

しかし、そんな困惑するキングを置いてカイドウはぶつぶつと考え込んでいる。

 

 

「じゃあなんだ、おれだけが知らなかったってのかァ?

レオヴァはおれのモンだぞ、なんだっておれが知らねぇことがあるんだ…」

 

ぶつぶつと呟きながら、カイドウの中で自分だけが知らなかったという驚きが怒りに似た感情に変わっていく。

 

ふつふつと不満が溜まってきたカイドウはキングの方を見て低い声を出した。

 

 

「レオヴァのことだってのに、おれァ今初めて知ったぞ!!」

 

「そりゃあ、レオヴァ坊っちゃんの世話は基本的にはおれとクイーンの馬鹿が担当してるんだ。

カイドウさんよりレオヴァ坊っちゃんについて知ってるのは当たり前じゃないのか…?」

 

カイドウの怒気に怯むことなく、キングはさらっと返した。

まったくもって当たり前の言い分である。

 

午前中、下手をすれば1日中レオヴァの世話役として時間を共にするキングとクイーンと比べ

カイドウは夜や予定がない時しかレオヴァとの時間はないのだ。

レオヴァに対しての情報量に差がでるのは必然である。

 

それに気づいたカイドウは固まった。

まさに目から鱗という表現がぴったりだろう。

 

黙ったままのカイドウにキングがまた口を開く。

 

 

「なんだカイドウさん、まさか……レオヴァ坊っちゃんのことで考え込んでたのか?」

 

「…まぁ、なんだ……違くはねぇなァ…」

 

キングの半信半疑の問い掛けにカイドウは目を反らしながら答えた。

キングはその答えに、あり得ないものをみる様な目でカイドウを凝視する。

 

二人の間に重い沈黙がながれる中、突如部屋の扉を勢い良く開ける音が響き、キングの背の炎がまた燃え上がる。

 

 

「失礼するぜェ~!カイドウさ~ん!!

準備出来たしおれはこのままレオヴァとォ~!

……って、えぇぇ…なに?

ど、どうしたんスか、カイドウさん……なんでこんな暗い雰囲気?」

 

腕に小さなレオヴァを抱えたままクイーンは動きを止めた。

部屋には考えられないほど重い空気が漂っているではないか。

 

この時クイーンはやっと思い出したのだ。

今朝、カイドウの機嫌が良くなかったことを。

 

 

沈黙が続く部屋では思いっきり“やっちまった感”を顔に出すクイーンと

殺気を滲ませながら“空気を読めボール野郎感”を顔に出すキングの、無言の目線での会話が繰り広げられている。

 

数秒の沈黙の後、カイドウはクイーンに抱かれるレオヴァに目線をやった。

 

そこにはクイーンの趣味で選ばれた少しカラフルな色の服を来たレオヴァがいる。

 

カイドウの目線に気付きレオヴァはにぱっと嬉しそうに笑ったかと思うと、今度はハッとしたように眉を下げながら口を開いた。

 

 

「とうさん、仕事中にジャマしてすまない……

その…クイーンに今から連れてってもらうって、言いにきただけなんだ。」

 

レオヴァの言葉に便乗するようにクイーンも口を開く。

 

 

「そうそう!それを言いに来ただけなんで!

んじゃあ、おれとレオヴァはこれで…」

 

クルッと向きを変えて出口へ逃げようとしたクイーンの腕から、カイドウはレオヴァを奪い取る様に掴んだ。

 

「ちょっ…!?カイドウさん!?」

 

「んむっ…」

 

クイーンは驚き、急に掴まれたレオヴァの口からは声が漏れる。

キングも首をかしげてカイドウを見上げている。

 

そんな中カイドウはレオヴァを自分の腕に抱き直すと、注目してくる部下2人をスルーして会話を始めた。

 

 

「レオヴァ、お前生き物が好きなのか。」

 

なんの脈絡もない問いにレオヴァは驚きに大きな瞳をさらに見開いたが、コクりと頷きカイドウの目を見て答える。

 

 

「好きだ。

見たことない、いきものは凄い。

使えるのも、強いのもいる。」

 

笑顔で話すレオヴァの言葉に『そうか…』と小さく返すと、カイドウはまた問いかける。

 

 

「キングやクイーンにも言ってねぇ事はねぇのかァ?」

 

「言ってないこと…?

…おれは父さんに隠し事なんてしないぞ!」

 

目を真っ直ぐ見つめ返して答えたレオヴァにカイドウは違うと首をふる。

 

 

「そりゃあ分かってる。

おれが言ってんのは好きなモンとか、嫌いなモンの話だ。」

 

その言葉に納得したような顔をした後に少し考えて口を開こうとしたレオヴァだったが、カイドウの言葉がそれを遮る。

 

 

「キング、クイーン!

一回テメェらは耳を塞いでろ!!」

 

意味の分からない指示に2人は更に困惑したが

クイーンは面倒事は御免だと素直に耳を塞ぎ、キングもカイドウさんの言葉ならと素直に耳を塞いだ。

 

きょとんとするレオヴァだったが促すようにこちらを見るカイドウに気付き、先ほど閉じた口をまた開いた。

 

 

「めずらしい物とか、ハクセイが好きだ。」

 

「珍しいモンと剥製か…

珍しいモンっつーと、どんなのだ?」

 

「ん~…みんぞくのお面とか」

 

「地域特有のモンってことか…

その剥製と珍しいモンが好きってのは、おれしか知らねぇんだな?」

 

「ん。今はじめてそう言う話したから、父さんだけだ。」

 

父さんだけ(・・・・・)と言う言葉を聞くとカイドウは愉快そうに笑い、キングとクイーンに手振りでもう耳は塞がなくて良いと伝えた。

 

そして自慢げな顔で2人に語りかける。

 

 

「おい!キング、クイーン。」

 

「なんスか?」

 

「なんだ、カイドウさん。」

 

「いいか?

レオヴァは剥製と珍しいモンが好きだ!!」

 

「え、あ~…そうッスか……」

 

「はぁ…それは初耳だが……」

 

「ウオロロロロ…!!」

 

急に上機嫌になったカイドウにレオヴァとキング、クイーンは本当に困惑していた。

 

だが、そんな中カイドウは意味の分からないモヤモヤが消えて気分が良かった。

 

レオヴァは自分の息子だ。

自分こそがレオヴァの事を誰よりも知っていて然るべき(・・・・・・・・・・・・・)なのだ。

 

そして、今。 

キングやクイーンの知らなかった事を、自分が誰よりも先に(・・・・・・)知った。

その事実は何故かカイドウの気分を良くさせた。

 

一通り笑うとカイドウはレオヴァを抱いたまま立ち上がった。

 

未だに困惑している3人を置き去りにカイドウの思考はどんどん進んで行く。

 

 

「クイーン…お前、今回の遠征はなしだ!!」

 

「へ…?

いやいや、カイドウさん!?

もう食料とか積んじまって準備万端なんスけど!!」

 

困り顔のクイーンにドヤ顔でカイドウは告げた。

 

 

「分かってる!!

だから、今回の遠征はおれが行く。

レオヴァもおれが連れていく!

キングは引き続きこの島を管理しとけェ!」

 

そう言うとカイドウは意気揚々とレオヴァを抱えたまま部屋から出て行った。

 

そんな中残されたキングとクイーンは珍しく互いに顔を合わせ、同じ様な表情をしていた。

 

 

「マジで意味が分かんねぇんだけど…

キング、てめぇカイドウさんに何したんだよ。」

 

「うるせぇ、お前がレオヴァ坊っちゃんの事で話したのが原因なんじゃねぇのかァ?」

 

「確かに朝は機嫌悪そうだったが……おれェ?」

 

濡れ衣だ!と騒ぐクイーンを置いてキングは部屋の書類をまとめ始めた。

 

 

「…まぁ、結局。

自分のモンが侵害されたようで気分が悪かっただけだろ。」

 

「つってもなァ…

カイドウさん、レオヴァがこの船来てからちょっと変わったからな。

どちらにせよ、今回の件はホントに謎だけどよォ…」

 

「もうこの話は終わりだ。

テメェもさっさと仕事に戻れ。」

 

「年下のクセに生意気に命令すんじゃねぇ…!!

はぁ~、マジで可愛くねぇ!

テメェは一回レオヴァの素直さ分けてもらってこい。」

 

「フンッ…

おれよりもテメェがレオヴァ坊っちゃんから賢さを分けて貰えば良いんじゃねぇか? 

幸い、レオヴァ坊っちゃんなら賢さは腐るほど有るだろうからな。」

 

「……よし、表出ろ。

マジでちゃんと上下関係ってのを覚えさせてやる!!」

 

「笑わせんじゃねぇ。

カイドウさん以外におれが負ける訳ねぇだろうが。」

 

そんな拠点内部で殺気立つ2人に気付きもせず、カイドウはレオヴァと船に乗り込むのだった。

 

 

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そしてレオヴァのと遠征を続けていく内に、例の悩みが生まれたのだ。

 

その内容は

“レオヴァが何も欲しがらない”

というものだった。

 

 

レオヴァはカイドウの想像以上に我が儘を言わず、何を欲しがることもない。

 

必要なものは自分で調達し、海戦や略奪で忙しい時は静かにカイドウの部屋で本を読む。

そんな子どもだった。

 

 

だが、カイドウは知っていた。

レオヴァが大人しい子どもではないことを。

 

何故ならクイーンの実験に付き合う時は歳さながらにはしゃいでいるのを見たことがあるし、キングの解体作業でさえ興味深げに手伝っている。

なにより、カイドウとの命懸けと言っても過言ではない組手の時には目をギラつかせるような子だ。

 

そんなレオヴァが“ただの大人しい性格のイイ子”ではないことはカイドウでも予想がついた。

 

 

しかし、ならば何故レオヴァはこんなに大人しいのか?

それはカイドウの中で疑問となり、少しずつ不満へと変わっていった。

 

そして遠征から1ヶ月経った時、ついにカイドウの我慢は限界に達したのだ。

 

 

「おい、レオヴァ!!

お前はなんで我が儘のひとつも言いやしねぇんだ!!!」

 

目を吊り上げて叫んだカイドウのとなりで、昼食の串焼きを片手にレオヴァは固まった。

 

突然の怒気に周りの部下達が腰を抜かす中レオヴァは頬張っていたモノを飲み込むと、じっとカイドウを見て不思議そうな声を出した。

 

 

「とうさん、おれ言ってるぞ?

わがままならたくさん!」

 

今度はカイドウが固まる番であった。

1度も我が儘など言われた覚えのないカイドウは怪訝そうに眉をしかめながら口を開いた。

 

 

「沢山言ってるだとォ…?

そりゃあいつだ、おれの記憶にゃあねぇぞ?

…まさかキングとクイーンとの記憶と間違えてんじゃねぇだろうなァ!?」

 

ドスンと大きな音を立てて拳を床に叩き付けたカイドウの迫力に部下が失神していくが、レオヴァは可笑しそうに笑いながら口を開いた。

 

 

「ふはははっ!

とうさん、おれが間違えるはずないだろ。

おれにとって とうさんとの記憶は大切なんだ、いちばん!

キングもクイーンも好きだけど、とうさんには敵わない!!」

 

「………じゃあ、おれに言ったっていう我が儘の内容を言ってみろ。」

 

カイドウが強く握っていた拳をほどくと同時にレオヴァが口を開く。

 

 

「きのう、一緒にいきもの探してほしいって言っただろ?

あと、こうやって一緒にご飯もたべたいとも言ったし…えんせいにも連れてきてくれた!」

 

レオヴァの答えにカイドウは低く唸った。

その答えはカイドウの思う我が儘とは駆け離れていたのだ。

 

凄い宝石や豪華な装飾が欲しいやら強い武器や自分の奴隷が欲しい、自分の土地や軍が欲しいと言う我が儘を言われるとカイドウは想定していた。

 

しかし、実際レオヴァの我が儘とは

共に食事を取ることや、共に遠征先や途中の島を回ることだと言う。

 

カイドウはそのまま思った事を口に出した。

 

 

「……そんなことが我が儘だと…?

金や財宝、武器が欲しいとか…そういうのはねぇのかァ?」

 

とうさんとの時間より嬉しいものはねぇ!!

金も財宝もべつに自分で奪ってこれるし、武器はクイーンとつくる。

それに、とうさんと一緒になにかする時間は金じゃ買えない!世界で一番の財宝だ!」

 

ニコニコと無邪気に話すレオヴァを見てカイドウはまた良く分からない感情が沸き上がってくる感覚を覚えたが、それは前のように不快なものではなかった。

寧ろ気分の良いものである。

 

 

戦闘での高揚感とは違う、じんわりとした気持ちの上昇にカイドウは困惑したがレオヴァの顔を見ればその困惑もスッと消えていった。

 

 

「……なら今度からはキングとクイーンじゃなく、おれの遠征に付いてくるか?」

 

カイドウの言葉にレオヴァは大きく目を見開いた。

 

今まではカイドウの遠征には殆ど付いていく事はなく、キングかクイーンと留守番しているか2人のどちらかの遠征に付いていくばかりだったレオヴァにとってこの提案は何よりも魅力的に移ったのだろう。

 

レオヴァの普段の子どもらしくない表情は消え去り、キラキラと目を輝かせている。

 

 

「いいのか、とうさん!!」

 

「あぁ、構わねぇ。」

 

カイドウの返事を聞くとレオヴァは思わずと言った様に声を上げた。

 

 

「~ッ!やった…!!

ありがとうとうさん!!

おれ、足をひっぱらないように もっと強くなるよ!

勉強もがんばるし、料理ももっとできるようにする!!」

 

「ウオロロロロロ…

そうか、ならさっさと強くなれ!!

そうすりゃ海軍基地を潰しに行くのにも連れてってやる。」

 

がんばるよ!!

 

はしゃぐレオヴァを見て思わずカイドウは笑った。

 

そう、こういう子どもらしい姿がカイドウは見たかった。

いつも大人の様に振る舞うレオヴァの“素”を見たかったのだ。

 

 

この後、はしゃいでしまったと顔を赤らめるレオヴァにカイドウはそんな事を気にするなと一蹴(いっしゅう)したことで

レオヴァはこの日以降、カイドウの前で取り繕うことは少なくなっていった。

 

その取り繕っていた理由も

『とうさんの息子として、恥ずかしくないようにしたかったんだ…』

というものでカイドウのモヤモヤは吹き飛んだ。

 

“カイドウが何よりも一番”

それがレオヴァの根本にあることを薄々と感じ取ったからだろう。

 

 

レオヴァはカイドウにとって我が儘とは言い難いが一応“我が儘”を言うようになり、取り繕うという真似もなくなりカイドウはレオヴァの“息子”らしくなってきた振る舞いに満足したのだ。

 

 

……だが、この時カイドウは数年後から始まるレオヴァの“休まない”という悪癖に悩まされる事になるなど知るよしもないのだった。

 

 

 




ー後書きー

幼少期レオヴァ:とうさん大好き! 
息子として恥じない行動を心掛けている&父さんの言うことは絶対!
状態だったので本編よりもネコ被り気味だったが、今回の件でネコ被りは止めた。
素でも良いと言ってくれるカイドウを更に好きになる。

若カイドウぱぱ:子育てに初挑戦したのは良いものの、レオヴァが聞き分けが良すぎて逆に不満がたまっていた。
(自分の幼少期とのギャップもあった)
小さいながらも我が儘を言うようになったのでニッコリ
必死に着いてくる姿は悪くないと思い始めている頃。

若キング:今よりもカイドウさん過激派の面が表に出がち
この頃はカイドウさんの息子&結構有能というくらいの認識で、側に居ても不快ではない。
キング基準で見ればそこそこ好感触だが、カイドウが殺せと言えば殺す。

若クイーン:このまま育てば良い助手になるかも!?と期待。
この頃からカイドウの息子という肩書より“レオヴァ自身”に興味を持ち始めたが、興味関心があるだけで信頼など殆どはない。
カイドウが使って良いと言えばサイボーグ化したいなァ…とか考えてた時期。
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