※貴方という新人が中心になります
ゆるりと意識が覚醒していく。
少し痛む体に眉を潜めながら
のそりと起き上がると頭がズキッと痛む。
小さく呻いて頭を抱えた貴方は昨日の事を思い出した。
昨日貴方の所属していた海賊団はフーズ・フーに負け、百獣海賊団の傘下へと下った。
海の上での激しい戦闘で倒れ、意識を失ったのだった…
と全てをハッキリ思い出し体を硬くした。
しかし、思ったよりも体は良く動くし、痛むと言ってもほんの少しだけだ。
結構な大怪我だったはずではないのか?
と首を傾げた貴方と仲間達がいる病室へ褐色の男が勢い良く現れた。
「よぉ~!野郎共~!!と、女共~!!
調子はどうだ?
まっ!百獣海賊団の医術にかかりゃ、具合が悪い奴なんていねぇだろうけどな!」
ざわざわとし始めた貴方と仲間達を気にせず、褐色の男は続ける。
「まずは飯食え!
んで、その後に研修始めるぜ~!
一応、病み上がりの奴らばっかだし今日はウチのルールと雰囲気を見てもらうだけになると思うから気張らなくていいぜ?
よっし、コック達カモ~ン!
新しい仲間達に飯を運んでやってくれや!」
褐色の男の掛け声と同時にぞろぞろとワゴンを持った屈強なコック達が部屋へと入ってくる。
貴方の目の前にも美味しそうなスープとふかふかのパン、ジャガイモのサラダにバジル香るチキンが置かれる。
出来立てなのかほわほわと湯気のたつ昼食に、仲間達のゴクリ…と唾を飲む音が貴方の耳に聞こえてくる。
そんな中、困惑する貴方と仲間たちに褐色の男が声をかける。
「全員に配り終わったな?
んじゃ、せ~のっ…いただきま~す!!
死ぬほど美味いから覚悟して食えよテメェら!
おれはもう一人の担当呼んでくっからよ。」
ニカッと自分の事のように笑う褐色の男に周りも貴方も毒気を抜かれ、恐る恐る食事に手をつけた。
そして静かだったのが嘘のように周りから声が聞こえ始める。
「う、美味い…!!」
「なんだこれ…すげぇ柔らかい肉だな」
「んぐっ…モグモグ…」
「あったけぇ…」
感激するような声で溢れかえったが、すぐに仲間達は黙々と食事を口に運び始めた。
貴方も美味い料理に思わず手を進める。
綺麗に平らげた貴方と仲間達の皿を見てコック達は笑顔でカートを引いて部屋から出て行った。
満腹になり、一息ついた貴方達の元にまた褐色の男が現れる。
「どうだったよ、スゲェ美味ぇだろ!?
このメニューの発案者はレオヴァ様なんだぜ!
バランスの良い食事は心身を健康にするって仰っててよぉ!」
興奮気味に語り出す褐色の男に付いて行けずにいると、横から派手な服の筋肉質な男が口を挟んだ。
「ちょっと、ダイフゴー。
レオヴァ様語りは後にしましょ!
新人ちゃん達の案内が最優先でしょ~?」
「っと、そうだった!
テメェら、今回の研修はこのダイフゴー様と~…」
「この私、トネグマが担当するわ~!
トネグマちゃんとか、姐さんとか好きに呼んでちょうだいね♡」
褐色の男ダイフゴーと、派手な筋肉質の男トネグマのテンションに置き去りにされながら貴方と仲間達の研修が幕を開けたのだった。
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一通り百獣海賊団の決まりや、ナワバリの設備の説明を受けた貴方はこれから住むことになる部屋に来ていた。
話によると、その部屋は4人部屋らしい。
狭いのは嫌だけれど、仲間と一緒の部屋だという事に胸を撫で下ろしながら自室になる部屋へ向かう。
指示された場所につくと、とても大きな四角い建物があり、貴方はそこの扉をくぐった。
中は綺麗に掃除されエントランスのようになっており、受付に行くと30歳くらいの女性に笑顔で迎えられた。
「お帰りなさいませ、今日もお疲れ様です!」
貴方がその受付の女性に研修というものを終えて来たのだと伝えると、女性は明るい声で告げた。
「そうなんですね!百獣海賊団へようこそ!!
新しい船員さんを心から歓迎いたしますわ♡
では、説明をさせて頂きますね。
まず新人さん達は4人部屋を使っていただきます。
研修で聞いたと思いますが、ナワバリ資格を受けたり昇進などをすると1人部屋や2人部屋などに変更することができます~。
変更したい場合は各ナワバリにある宿舎の受付にて申請をお願いいたします!
続いて、宿舎のご利用方法ですが…
各ナワバリに滞在を始めるその日に受付にて鍵をお受け取りください。
その後は次のナワバリへ移動するまで鍵はお持ちになっておいてください。
もちろん、失くしたりなどが心配な方は受付に預けて頂くことも可能です!
…ここまでは宜しいでしょうか?」
貴方と仲間達は内心長い説明に疲れ始めていたが、早く休みたい一心で首を縦に振った。
受付の女性はニコニコと続きを話し始める。
「では、お食事の説明もさせて頂きます。
このナワバリでは宿舎の1階…ちょうどコチラから見て左手の方にあるのが食堂です。
朝6時から夜11時までやっていますので、お好きな時間にご利用くださいませ。
基本的には食堂で食べて頂くのですが、大勢での食事が苦手な方はお弁当にお詰めいたしますので遠慮なく食堂にてお声がけくださいね!
他にも細かいことはあるとは思いますが、今日は皆さん初日でお疲れだと思いますので終了させて頂きます。
お困り事やご質問などありましたら、いつでも私や係の者にお申し付けください!
では…右手奥にありますエレベーターから5階へどうぞ~!
こちら、部屋の鍵になります。」
貴方は鍵を受け取り、軽く会釈した。
受付の女性は貴方に笑いかけると、手で右奥を示し綺麗にお辞儀をしてみせた。
困惑しつつも貴方はエレベーターと言う初めて聞く物に乗り、恐る恐る5階のボタンを押す。
するとエレベーターはすぐに動き出した。
止まる時に少しふわっとした浮遊感を感じたが、一瞬で5階にたどり着いた。
そのことを貴方は不思議に感じるが、作りは全く予想がつかない。
エレベーターを降り、広い廊下を右に進んで行くと貴方の部屋番号と他3つの番号が書かれた部屋がある。
緊張気味に鍵を挿し、丁寧に回すとカチャりと音がなる。
その流れのまま部屋の扉を開けると、思っていたよりも広い部屋に貴方は少し驚いた。
部屋に入って行くとまずトイレがあり、その先にシャワールームと洗面台があるのが見えた。
そのまま歩くと大きな二段ベッドが2つ両端に置かれており、それぞれ4つの小さめな机と座椅子が置かれている。
良く見るとベッドの奥に物入れがあるようだ。
一番端の物入れの扉には貴方が貰った鍵と同じ番号が書いてある。
貴方はそれに近づき鍵穴に手に持っている鍵のうち小さい方の鍵をさしてみると、物入れの扉が開いた。
中を見たが、小物入れの様な物の他には特に何も入っていない。
貴方は研修中に手渡されていたルールなどが書いてある紙だけ中に入れると、物入れの扉を閉じた。
良く見るとベッドにも同じ番号が振ってある。
貴方は深く息をつくとベッドの上に倒れ込んだ。
……ベッドの布団はふかふかで、とても清潔な匂いがした。
貴方は少しずつ重くなってくる瞼をそのままおろす。
明日も百獣海賊団での研修が、貴方を待っている。
休息は大切だろう。
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「…ーー!……~!」
深い眠りの中にいた貴方を誰かが呼ぶ声が聞こえる。
「ーー!!……きろ!
あ~…駄目だ全然起きない……」
聞き覚えのある声に貴方がゆっくりと目をあけると、顔馴染みの仲間が此方を覗き込んでいた。
「やっと起きた…!!
そろそろ食堂行かないと、集合時間間に合わなくなる!」
その言葉に頷くと、貴方は起き上がる。
どうやら思ったよりじっくり眠ってしまっていたらしい。
起きるまで待ってくれていた顔馴染みの仲間と貴方は朝食へ向かった。
あれから朝食を終えた貴方は顔馴染みの仲間と集合場所に向かうべく、食堂を抜け宿舎の扉に手をかけた。
「いや~!朝御飯も本当に美味しかった~!!
あすぱらべーこん?っていうの、また食べたいな!」
ご機嫌に扉を開けながら笑う呑気な顔馴染みに貴方は少し呆れつつ、内心でここの食事の美味さには同意した。
すると開けた扉の正面にいた予想にない人物から声をかけられた。
「今日って朝飯はアスパラベーコンだったのか!?」
突然声をかけられ貴方と顔馴染みの仲間は驚いてそこに居た人物に目を向けた。
そこには緑の髪に特徴的な帽子と角、さらには大きな牙のある男が鬼気迫る顔でこちらを見ていた。
その人物が誰なのか気付いてしまった貴方は思わず固まってしまう。
間違いなく、目の前の大男は百獣海賊団幹部のササキである。
突然、億超えの男が現れたことに固まった2人を急かすようにササキが口を開く。
「おい、お前ら…朝飯にアスパラベーコン食ったのかって!!」
貴方が口を開こうとするより早く、顔馴染みの仲間が叫ぶように返した。
「は、はい!!
あさ、朝ご飯にあすぱらべーこんがありましたッ!!」
それを聞くとササキはパァと明るい表情になった。
「マジかよォ…!!
ナワバリについて早々にアスパラ食えるとかツイてるぜ!」
想像していたよりも親しみやすい雰囲気に変わったササキに2人が呆気にとられていると、こちらに歩みよってくる。
「良い情報感謝するぜ!どこの隊だ…って、お前ら研修組か!
ヘマやってフーズ・フーやキング辺りに目を付けられねぇよう気ぃつけろよ。」
2人が手に持っていたマニュアルに気付き、ニカッと笑うとササキは宿舎の中の食堂の方へと消えて行った。
貴方が肩の力を抜くと隣から、はぁ~と深い溜め息が聞こえる。
「いや…急に飛び六胞のササキ…様に会うなんて思わなかった……
百獣海賊団に入ったっていっても、やっぱり怖ぇもんは怖ぇ~!
まだまだ全然身内って感じしないよな?」
ビビり倒す顔馴染みの仲間を軽く流しつつ、貴方はまた歩みを進める。
別にササキと言う幹部は思ったほど怖そうでもないな…と思いながら歩いて行くと集合場所が見えてきた。
集合時間10分前だというのに、昨日の真打ちがいる事に気付き、慌てて貴方が駆け寄ると此方に気付いたようだ。
「よぉ~、新人!!
10分前行動が出来るとは……なかなかやるなァ!!
百獣海賊団においては、時間を守ることも重要視されるからな。
その調子で頼むぜ~!」
相変わらずハイテンションな褐色の真打ち、ダイフゴーにペコリと貴方は頭を下げる。
その姿に面白そうにダイフゴーは笑う。
「はははは~!
新入り、お前全然しゃべんねぇけど礼儀正しいなァ…!
お前みてぇなのはドレーク様とかスレイマン様に気に入られるタイプだぜ。
それとも緊張してて話せねぇだけかァ…?」
相変わらずフレンドリーに接してくるダイフゴーへの返答に迷っていると、だんだん人が集まって来た。
「っと…悪ぃな!
話し中だったが、集まって来たから指揮を取らなきゃなんねぇ。
まぁ、時間があればまた話そうぜ!」
昨日の研修の時の半分くらいの人が集まると、ダイフゴーは貴方に軽く声をかけて中心に向かっていった。
「よ~し、野郎共に女共~!!
今日は2班に別れて行動すっからな!
一応、昨日の研修の結果で戦闘が得意そうな奴らはこの班になったんだが~…
今、ここにいる奴で戦闘好きじゃねぇ奴は挙手ッ!!」
ダイフゴーの問い掛けに貴方も周りも手は上げなかった。
数秒待っても挙手する者は居なかった為、話が進んで行く。
「いねぇな!
なら、今日は訓練所に行くぜ!
訓練所ってのは昨日説明した通りだ。
まっ、見た方が早ぇし行くか~!」
そう言ったダイフゴーが手を叩くと大きなワニの様な生き物が数匹飛び出して来た。
周りの研修組の数名が腰を抜かす中、貴方は始めて見る生き物に興味を引かれ一歩前へ出た。
「おいおい……腰抜かしちまってる奴がいるじゃねぇか…
コイツらは移動を手伝ってくれるタクワニって生き物だからビビんなくて良いぜ?
こうやって~……タクワニの背中についてるヒモを持って股がりゃ良いだけだ!
次乗る奴は……そうだ、お前乗れ!
周りの奴らにビビらなくていいっつー手本見せてやれ!」
指を差された貴方は先ほどのダイフゴーの様にタクワニに股がって見せた。
周りの仲間達からは小さく歓声があがる。
「よしよしよ~し!!
やっぱりお前見所あるなァ…!
テメェらも見てただろ!大丈夫だから順番に乗ってけ~!
全員乗ったら出発するからよォ。」
周りにいた仲間達が貴方に続くようにタクワニに股がって行く。
全員が乗り終わったのを確認すると手綱を握ったダイフゴーが楽しげな声をあげた。
「んじゃあ、飛ばすぜテメェらァ~~!!!
振り落とされんなよォ…!?」
バチンッという手綱の音と共にダイフゴーと貴方が乗ったタクワニが凄い勢いで走り始めた。
突然のことに一瞬貴方は姿勢を崩したが直ぐにバランスを取ると、後の仲間達の様子を伺った。
同じく凄い勢いで走っているタクワニの上になんとか仲間達も乗れているようだ。
……約1名見知った顔の仲間が落ちかけているが、奴は生命力が高い。
きっと死ぬことはないだろう。
仲間の安否を確かめ、前を向き直すとダイフゴーが此方を見てニッと笑っている。
「……お前、レオヴァさんに気に入られるタイプかもなァ…
体幹もいいみてぇだし、周りの状況に気を配る性格も悪くねぇ……いや、むしろイイ!!!
この後の測定も期待してるぜェ!」
グッとサムズアップしてくるダイフゴーにまた貴方が軽く会釈すると、彼は笑った。
前を向き直して更にスピードを上げるダイフゴーの背を見ること5分。
ついに訓練所へと辿り着いた。
ダイフゴーに続いてタクワニから降りて後方を振り向くと、半分以上の研修組が満身創痍であった。
大丈夫かと貴方が側によると、後からダイフゴーの声がかかる。
「あ~…なんか疲れてる奴もいるっぽいし
一旦、訓練所の休憩室に行くぞ!
そこで何か飲んで少し休め。」
「「「はいッ!」」」
「「「は……はい」」」
元気な返事と力のない返事に貴方は小さく苦笑いしつつ、訓練所の中へと入って行った。
あれから10分の休憩を経て、訓練所の組手部屋へと来ていた。
ダイフゴーの説明によると、この組手部屋とは
様々なルールや素手または武器を使い戦闘訓練を行う場所らしい。
他にも幹部訓練所という場所もあるらしいが、自分には関係ないと貴方は軽く聞き流した。
ダイフゴーがルールをどうするかと悩んでいると、組手部屋の扉が開いた。
音に導かれるように貴方がそちらに目をやると、そこには今朝会った飛び六胞のササキが立っている。
「お?
なんだよ、ダイフゴー。
お前が今回の研修組の指導員やってんのか?」
「あっ!ササキ様、そうなンですよ!
おれは戦闘員の担当で、トネグマが補佐とか船医…あとコック志望の奴らを。」
それを聞くとササキは良いことを思い付いたような顔でダイフゴーへ近付いて行く。
「じゃあ、今から組手である程度実力計るわけだよな?」
「そうっすけど…」
まさか、という表情をしたダイフゴーを見てササキはニッと笑う。
「なら今日は1日空いてるから、おれが組手の課題になってやるよ!
そうだなァ……旗形式でいくか!」
「マジすか、ササキ様……
死人とか出たらスゲェ困るんすけど…」
「問題ねぇって!
…それともンな柔な野郎ばっかなのかよ?
まぁ、新入りが怖ぇっつってビビってるなら考えるぜ。」
挑発するような雰囲気を醸し出すササキの言葉に、周りの仲間達はやってやると意気込んでいる。
あからさまな煽りに貴方は少し呆れたが、気持ちを切り替える。
どうやらササキという男は分かりやすい男のようだが、実力は本物だろう。
貴方は乗り気になってしまった仲間達と共に挑むべく、神経を集中させる。
研修組から否定の言葉が上がらなかった事に嬉しげにササキは笑うとダイフゴーに向き直った。
「そういう訳だからよ。
ダイフゴー、おれが旗用意してる間にコイツらに説明しとけよ!」
それだけ言うと上機嫌にササキは倉庫へと踵を返した。
その後でダイフゴーは大きな溜め息を吐き、呆れたように此方を見る。
「お前ら……勇気があンのか、無鉄砲なのか…
言っとくがササキ様はウチの幹部…それも飛び六胞だ!!
マジで少しでも気ィ抜いたら死ぬと思えよ!?
おれも一応、サポートはすっけど……あ"~頼むから無茶だけはすんなよ!
研修中に死人なんて笑えねぇぜ…」
頭を抱えるダイフゴーに研修組がルールを問う。
「そうそう、ルールだったな…旗抜きは簡単だ。
そのまんまだよ、旗を抜きゃあお前らの勝ち!
制限時間以内に抜けなきゃあお前らの負け、以上!!」
余りに簡単すぎるルールに貴方が首をかしげていると、ダイフゴーが釘をさす。
「いいか、テメェら。
簡単だと思って気を抜くんじゃねぇぞ。
旗を守ってんのは、おれ達百獣海賊団の飛び六胞ササキ様なんだからな!?
ちょっとでもイイ打撃を食らっちまったら……良くてベッドとお友達か最悪は……まぁ、言わなくても分かンだろ?」
真剣なダイフゴーの表情と言葉に周りが息を呑む音が聞こえる。
一瞬、静寂に包まれていたが倉庫からデカい旗を抱えて出て来たササキの声が響いた。
「いい感じの旗あったし、やるぞ~!!」
ドスンと旗を置くとササキは竹刀を握った。
本物の刀剣ではなかった事に周りが安堵する気配を感じるが、次の瞬間また周りが青ざめる。
ササキが何気なしにスイングした竹刀は目の前の練習人形をへし折ったのだ。
へし折れたそれは、どう見ても頑丈そうな木製である。
貴方は額に汗が伝うのを感じた。
斜め前にいるダイフゴーを見ると彼も顔を引き吊らせているではないか。
若干の絶望を感じつつ、貴方は愛用の武器を構えた。
貴方が覚悟を決めたのを見て、周りの仲間達も次々に武器を構えて行く。
「それじゃあ、始めるぞ……よ~い、スタート!!」
ダイフゴーの掛け声と同時に全員が動き出した。
あれから3分。
既にこの場所で立っているのは貴方を含め5人だけになってしまった。
立てているだけで、既に満身創痍のものもいる。
貴方は肩で息をしながら注意深くササキを観察する。
幸い倒れた仲間達は凄い速さでダイフゴーが回収し、呼ばれた船医達によって運ばれて行った。
今、貴方が集中するべきは目の前の猛者のみである。
今までの言動や行動から察するに、おそらくササキは単純な性格だろう。
なら、実力は届かなくとも……やり方はある。
貴方がスッと目を細めると、顔馴染みの仲間がサッと横に飛び退いて来た。
「何か良い手を思い付いたって顔してるな!
……乗るぜ、お前の手に。
今までもお前には山ほど助けられてるからな。」
笑いかけてくる顔馴染みに貴方は頷く。
そうすると周りに他の仲間達も寄って来た。
1ヶ所に集まっては危ないと思い、ササキへ注意を向けた貴方だが
どうやら、ササキは此方の出方を見るつもりであるらしい。
旗の側にドカッと構え、何をするのかと楽しそうに此方を眺めていた。
……まだ、ササキは油断している。
そう確信した貴方は周りに考えていた案を伝えた。
仲間達はそれを聞き終えると、こちらを見て頷いた。
「なかなかキツい役回りだなぁ……」
貴方は、ただ1人文句を垂れる顔馴染みをジッと見つめる。
顔馴染みはニヤッと笑うと口を開いた。
「わかってるよ!おれは結構丈夫だもんな…
じゃあ、頼んだぜ。
お前の作戦なら命をかけるのも悪くないしな!」
大袈裟なやつだと貴方が呆れ顔をするが、顔馴染みは気にした素振りもなく動き出した。
4人がそれぞれ動き出したのを見計らって、貴方も素早く移動する。
視界の端ではササキが少し驚いた表情をしているのが見える。
貴方は一か八かの賭けにでたのだった。
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気が付くと貴方はベッドの上にいた。
腕が痛む感覚はあるが、体はちゃんと動く。
起き上がり辺りを見回すと隣のベッドの側にトネグマが居た。
貴方が起き上がった事に気付くと心配そうな表情でトネグマが駆け寄ってくる。
「ちょっとちょっと!
起き上がってるけど、アンタ大丈夫なの!?
聞いたわよ!ササキ様の一撃でスゴイ吹っ飛んだんでしょ!?
もう少し寝てなさいよ~!」
押しの強いトネグマに押されるまま、またベッドに横になった。
「ホント、ササキ様も危ないことするわよねぇ…
この子達はまだ入団して一週間も経ってないのに!!
災難だったわね、ダイフゴーを呼ぶからちゃんと安静にしてるのよ?いいわね!」
凄い剣幕のトネグマに大人しく貴方は頷く。
それを確認するとスタスタとトネグマはヒールの音を響かせながら出ていった。
最近良く見ている真っ白な天井を見上げながら、ゆっくりと記憶を掘り起こす。
……結局、飛び六胞であるササキから旗を奪うことに失敗してしまったようだ。
まぁ、そうだろうな…という気持ちと
もう少しで手が届いたという悔しさが半々ぐらいだろうか。
貴方がゆっくりと息を吐くと、部屋に人が入って来た。
「お、目ぇ覚めたみてぇだな!
いや~…お前がササキ様に吹っ飛ばされた時はビビったぜ!!
けど、スゲェな……あの速さの攻撃に反応して腕で受けるなんてよ!
ギフターズでもなかなか出来ねぇと思うぜ?
お前マジで見込みあるから、修行組に移行する気ねぇ?」
満面の笑みで詰め寄ってくるダイフゴーに軽く引いていると、トネグマが後から現れた。
貴方に迫っていたダイフゴーをグイッと引っ張ると鬼の形相で口を開く。
「ちょっと…ダイフゴー…?
アンタ、そんな話より先にこの子の心配が先じゃないの!?
腕の怪我だって完治してるワケじゃないんだから、移動の話はもう少し後にしなさいよ!!
ごめんね?今は色々考えなくていいから。
私はこの馬鹿つれて研修戻るけど、アンタはゆっくりしててね。」
「く、首締まってっから……」
ズルズルと引きずられていくダイフゴーの姿に貴方はなんとも言えない顔をした。
おそらく、トネグマは真打ちの中で特に怒らせてはいけない部類だろう。
今後、怒らせることの無いように努めようと心に誓い貴方は瞳を閉じた。
自分が思っている以上に、体は疲労しているようだ。
移動や他の事は起きてから考えよう。
そう決めるとゆっくりと眠りについた。
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あれから1週間が経ち腕も完治し、移動も決まった貴方は船で別のナワバリへと向かっていた。
出港前の顔馴染みの仲間との会話を思い出す。
「お前…たった数日で昇進コースって……
いや、けどすぐに追い付くから!
別々の隊になるのは寂しいけど一生の別れってわけじゃないし、ジメジメするのは変だよな。
お前なら何処行っても上手くやれる、なんかそう思うんだよ!
…風邪引くなよ~!」
そう言って笑顔で送り出してくれた顔馴染みは元気だろうか?
……いや、元気じゃない姿が浮かばないな…と貴方は小さく笑った。
なんやかんやで修行組として新しいナワバリに行く事が決まった貴方だが、少しの不安があった。
なんでも修行組とは新人の中から見込みアリと言われた者を集め、仕事も雑用よりも戦闘や訓練を中心に
貴方は自分が弱いとは思わないが、強いと過信するつもりもなかった。
修行組とはどんな場所なのかと、思考を巡らせているうちに船の中に到着間近の声が響く。
「島が見えて来たぞぉ~~!
貴方は停泊の為の作業へ向かうべく、走り出した。
あれから船を降り、指示を受けた場所へと貴方は歩いていた。
ナワバリにある基地に今後、暫く世話になる人物がいるらしいのだ。
基地の入り口で顔認証を済ませ、執務室へと歩みを進める。
目的地と思わしき表札のある扉の前に立ち、軽くノックをする。
「……入れ。」
低いが良く通る声に促されるまま扉を開けると、書類が山のように積まれている机に眼帯をした男が腰掛けていた。
貴方が自己紹介をし終わると、男は立ち上がり目の前にまで来た。
「お前がトネグマが言っていた新人か。
暫くはおれ、X・ドレークがお前の担当…直属の上司になる。
とは言っても、今後のお前次第で色んな道が選べる。
研修初日に説明を受けたと思うが、百獣海賊団では戦闘だけでなく様々な特技や能力も重宝される。
進みたい道があるなら遠慮なく申請するように。
……何か質問はあるか?
どんな事でも、おれで答えられる内容なら答えよう。」
思わず背筋を伸ばしてしまうような声と雰囲気に少し押されながらも、貴方は気になっていた今後の自分の仕事を聞いた。
「なるほど、仕事内容についてか。
最初の数週間は他の者達と訓練に励んでもらう。
その後トーナメント形式で行われる組手を終えたら遠征に同行し、能力や性格によって所属先や仕事内容を吟味していく事になるな。
トーナメントの結果次第では“
……お前は何かの能力者か?」
貴方は違うと首を横に振る。
「そうか。
なら、“
まぁ…そこは自由にやればいい。
中には上位に入っても、“SMILE”を受け取らない者もいる。
…他には何かあるか?」
考え込む貴方を見て、ドレークは柔らかい声色で続ける。
「今すぐに質問がないならそれで構わない。
何かあればその度におれや、他の者に聞いてくれれば良い。
今日はもう宿舎に戻って明日に備えるように。」
軽く会釈した貴方にドレークは頷く。
そのまま挨拶をし、部屋を出て貴方は新しい宿舎に向かって行く。
フーズ・フーに所属していた海賊団が負けてから目まぐるしい日々だ。
だが、何かと待遇も船の雰囲気も悪くない。
裕福ではない家庭に生まれ
そのままあの顔馴染みの仲間と出会い、成り行きで海賊になったが案外悪くないかもしれない。
そんな事を思いながら歩みを進める。
いったい貴方はこの百獣海賊団でどんな人材になって行くのだろうか。
どんな道に進むのだろうか。
貴方の可能性は数えきれないほどある。
これは奇しくも百獣海賊団に入った貴方の物語だ。
ー後書きなどー
[宿舎で働く人々]
・受付や清掃員
基本的にはそのナワバリの島や国の人をワノ国の王が雇っている。
非戦闘員だが宿舎に百獣海賊団がいる為、あまり問題はない。
雇うにあたって2回面接があり
第1は真打ちの面接官資格のある誰か
第2はレオヴァ・ドレーク・フーズフー・スレイマン・ロー・カヅチの内の誰かが担当する。
実際に働くには面接に受かった後、受付なら受付検定を取り、清掃なら清掃基礎という検定を受けなければならない。
給料:その島の平均月収の1.5~2.5倍(貧富の差によって上下)
(仕事への執着を持たせる為と、心に余裕をもって生活をおくれるように+検定&資格手当て昇給含む)
(統一しない理由:物価など場所によって生活水準が違う為)
保証:仕事による怪我や病気時の医療費5~9割負担(理由によって上下)
出産や育児休暇手当て、6ヶ月間育児や出産で休んでも給料の半分が手当てとして振り込まれる。
その後は託児所を利用するか、午前or午後のみ出勤または幼児が1歳6ヶ月になるまで休暇を取ることも可能で毎月月給の4分の1が振り込まれる。
(託児所については産後以降も8歳までは利用可能)
・食堂のコック
百獣海賊団にて、料理検定または料理免許を取った者がここで働いている。
しかしナワバリによっては宿舎の外のレストランを専用として買い取り雇っている場合は、その島や国の人が働いている。
給料や保証は上記と同じ
[宿舎の作り]
ナワバリによって大きさが違う場合もあるが
基本的には7~9階建て。
1階はエントランスと食堂
2階は娯楽施設(温泉や模擬札部屋、テーブルゲームなど)
3階から宿泊場所となっている。
基本的には屋上もあり、好きに出入り出来る。
[部屋について]
宿舎内は清掃員が綺麗にしているが
各部屋の中の掃除は申請制である
時間や日にちなどを言っておけば清掃してもらえる
貴重品など心配な者は掃除に同席することも可
[宿舎でのルール]
不当な理由で宿舎職員や食堂の調理人に手を出した場合
減給+厳重注意<ジャックorローによる指導<退団(死刑)
やむを得ない、または職員側の不備だった場合
注意のみ→職員に内容に応じた罰(減給~死刑)
[後書き]
少し違う書き方をしたくて書いたモノです
ゲーム風というかなんとも変な文章になってしまい申し訳ないです…
最後まで読んで下さりありがとうございます!!