番外・俺がカイドウの息子?   作:もちお(もす)

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一水四見

 

 

 

百獣海賊団の大看板を担うキングとクイーン。

 

よくこの2人は周りからどこまでも相容れない、正反対の2人に見られるのだが

実はとある共通点がある。

 

 

それは何を隠そう数年以上の子育て経験(・・・・・)である。

 

それも時期も同じなら、育てた子どもも同じという深い共通点だ。

 

そんな2人に子育て経験を与えたのはカイドウの息子であるレオヴァであった。

 

 

ある日突然連れてきた赤ん坊を指差しカイドウは一言告げた。

 

『これの面倒みとけ、死なすんじゃねぇぞ。』

 

この時の正直なクイーンとキングの内心はこうだ。

 

『『カイドウさんが…赤ん坊……だと?』』

 

 

この驚愕の瞬間から二人の望まぬ育児ライフが幕を開けたのだった。

 

 

 

だが、2人の想像よりも赤ん坊のレオヴァは簡単に育っていった。

 

大変だったのは最初の身の回りの世話だけだ。

歩けるようになってからは、食事や服を置いておけば自ら着るし、走り回ったりなど騒ぐこともない。

 

赤ん坊の頃から静かな子どもだとは思っていたが、これは大丈夫なのか?

とキングとクイーンは首を傾げたのだが

レオヴァは順当に言葉も話せるようになり、文字も覚えた。

……いや、むしろ順当どころか早すぎるくらいの速度だった。

 

それに加え、力も他の子どもでは考えられぬほど強く

8歳の時に襲ってきた相手の頭蓋を握り潰すという芸当までやってみせた。

 

 

当初、クイーンはそのレオヴァの握力に驚き口が閉じなくなり、キングも珍しく目を見開いた。

 

そんな驚く2人にレオヴァはとても悲しそうな顔で言うのだ。

『こんなに簡単に潰れるなんて知らねぇ…ゆるせねぇ…

さいあくだ……父さんからもらった服が…』と。

 

これには思わずクイーンは吹き出した。

 

『ぶっ……ムハハハハハハハ~!!

人間の頭潰して第一声がそれってよォ!!

流石カイドウさんのガキ!最高に狂ってやがるぜェ!』

 

一方キングはそんなクイーンを押し退け、レオヴァの前に立つと冷静に告げた。

 

 

『レオヴァ坊っちゃん。

カイドウさん以外の人間は簡単に壊れるモンなんだ。

もっと人体について勉強してぇなら、付き合ってもいいが?』

 

そのキングの言葉にクイーンはゲッというような顔をし、レオヴァは食いぎみに応えた。

 

 

『こんなやわらかいなんて知らなかった!

ちしきとげんじつのギャップだ……ついおどろいた。

キングが教えてくれるなら、嬉しい!』

 

『なら、今から解体に使うのを調達するか。』

 

『しよう!

あっちにまだ海軍いるから、つかまえよう!いこう!』

 

『えぇー…知識と現実のギャップとか…その語彙力どこで吸収してきたんだよ……本の読ませ過ぎかァ?

おい、ところでアホキング!情操って言葉しってるかァ?

テメェのせいでレオヴァが変になったら、おれまで連帯責任でカイドウさんにぶっ飛ばされんだろうが!!』

 

『うるせぇ、ボール野郎。

そんなもんがレオヴァ坊っちゃんにあってもカイドウさんの役に立たねぇだろうが。

レオヴァ坊っちゃんに必要なのは、他を圧倒する“力”だ。

カイドウさんの息子だ、無様な死に様さらさねぇように指導すんのは当然だろうが。』

 

『はぁ~~、カイドウさんのガキを筋肉だけのバカにする気かァ?

テメェみてぇに殺すことしか能がねぇのが増えてもしょうがねぇだろうがよォ!!』

 

『おれが殺すことしか能がねぇ…だァ?

わかったような事をいいやがって、この全身コンプレックス野郎が…』

 

『テメェっ…このクソアホキング!!!

だァれが全身コンプレックスだァ!!?』

 

周りを顧みず喧嘩を始めている2人の耳に子どもの明るい声が届く。

 

 

『キング…!つかまえてきたぞ。

少しうでが取れたけど……つかえるか?』

 

そういって自分より大きな男を引きずって向こうからトテトテと走ってくるレオヴァに2人は押し黙った。

 

どうみても“アレ”は死んでいる。

レオヴァが足を持ってしまっているせいで、男の顔は細かい切り傷と打撲だらけであり、腕の失くなった肩からはあり得ないほどの血が出ている。

 

しかし、それを引きずっているレオヴァの瞳はキラキラと輝いていた。

 

今から知らない事を教えて貰えるんだ!とはしゃいでいるレオヴァに一瞬クイーンは言葉を探したが、キングはズバッと切り捨てた。

 

 

『駄目だレオヴァ坊っちゃん、そりゃ死んでる。

解体すんのに死んでちゃつまらねぇだろう。』

 

『いや、解体するんだからどっちでも良くね?』

 

クイーンの尤もな呟きは華麗にスルーし、キングはレオヴァの手から死体を奪うと浜辺へ投げ捨てた。

 

小さな肩を落として申し訳なさそうな顔をするレオヴァにキングがまた口を開く。

 

 

『レオヴァ坊っちゃんはまだ力の加減がわかってねぇ。

おれが適当なのを調達してくるから、待ってろ。』

 

『わかった、キングに任せる。』

 

空を飛んで行ったキングを見送り、レオヴァはクイーンの側にある岩の上にちょこんと腰かけた。

 

こんな風に行儀よくキングを待つ姿は本当に大人しい子どもなんだがなァ、とクイーンは思う。

しかし、返り血がつく服を纏うレオヴァは確実に大人しい子どもではないだろう。

 

 

そんなこんなでレオヴァはキングに人間の体の構造や強度を実践で教えて貰う事となり。

それ以降、キングから指導を受けたレオヴァは力の加減というものを覚え、生き物を不注意で握り潰してしまうこともなくなった。

 

 

そして、レオヴァが10代に入ってからはキングもクイーンもその掌握力に舌を巻いた。

百獣海賊団の船員からの信頼は無論、ナワバリやワノ国の侍達まで取り込んでいったのだ。

 

キングとクイーンが苦労した侍達を従わせる作業も、気付けばレオヴァによってどんどん進められている。

 

他にも海戦での活躍やカイドウとの組み手を見てきた2人はついにレオヴァをカイドウの息子としてだけではなく、ひとりの男として認めた。

 

 

クイーンはレオヴァの特異性と開発物の独創性を強く気に入り

キングはレオヴァの戦略性とカイドウに通ずる性格を強く気に入ったのだ。

 

 

何よりレオヴァの行動には一貫性があったのも2人には好印象であった。

 

部下達への甘すぎる態度も、ナワバリの民に対する慈悲深さにも偽りなどないのだ。

ただ、その条件にカイドウの役に立つなら(・・・・・・・・・・・)という言葉が前置きで付くだけである。

 

レオヴァの身内を想う心はほんの少し歪ではあったが、どこまでも純粋であった。

 

それがクイーンには面白く映り、キングには共感を与えた。

 

 

 

まず、クイーンの視点ではレオヴァは酷く残酷に見えた。

それもレオヴァ本人には自覚のない残酷さだ。

 

あれだけ他人の心の中を占めておいて、自分の中にはさほど入れないのだ。

いや、入れないと言うのは正しくない。

入る余地がないのだ。

何故ならレオヴァの中はカイドウの事で大半が占められているのだから。

 

綺麗に微笑みながらその他の大勢に喜んで命を捧げさせるレオヴァは見ていて飽きない!

それがクイーンの見解だった。

 

 

逆にキングから見ればレオヴァの(おこな)いには共感が持てた。

何故ならレオヴァの行動は全て一貫して“カイドウの為”である。

部下への優しさも、ナワバリの民に対する慈悲もカイドウの役に立たせる為に。

 

それはキングも同じである。

部下への厳しさも、ナワバリの民に対する残虐さもカイドウの役に立たせる為なのだ。

 

そう理解したキングはレオヴァを認めた。

共にカイドウの役に立つ存在(・・・・・・・・・・・・・)だと。

 

おれはおれのやり方で、レオヴァ坊っちゃんはレオヴァ坊っちゃんのやり方で

あの人を……カイドウさんを海賊王にする。

それがキングの見解だった。

 

 

2人はそれぞれの“価値”をレオヴァに見出だし、形は違えど“自分なりの信頼”を差し出した。

 

 

そして、大人になったレオヴァは2人の期待以上の存在になった。

 

実力もカイドウの息子として申し分なく、戦略や掌握もさらに上手くなった。

更には数多の貿易を始め、あらゆる角度から百獣海賊団をカイドウの傍らで支える存在になっていったのだ。

 

ただ一つ、懸念点があるとすれば成長と共にカイドウへの想いも限度なく膨れ上がっている事だろうか。

 

 

一水四見(いっすいしけん)

同じモノでも見る立場や心の持ちようによって、それぞれ違うように見えるものである。

 

2人が犬猿の仲だと思うも、案外ピッタリなコンビだと思うも

全ては受け手次第なのである。

…勿論、それはレオヴァに対してもだろう。

 

 

兎に角、これでキングとクイーンの育児経験は幕を下ろしたのだった。

 

 

 

 




ー補足ー
この話のレオヴァはキングとクイーンから見たレオヴァの印象なので実際のレオヴァとは少し違うかもしれないし、その通りかもしれない。

人のイメージや行動は対面する人(受け手)によって変わる。
なので、これは2人のレオヴァという人物の捉え方の話である。
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