番外・俺がカイドウの息子?   作:もちお(もす)

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バオファンのお仕事

 

 

真打ちであり偵察部隊のメンバーも務めるバオファンは少し他のメンバーと仕事内容が異なるのだが、今回はそんなバオファンの1日の話である。

 

 

 

 

バオファンの勤務開始時間は早い。

それは、朝6時30分ピッタリに朝食を食べ始める百獣海賊団の総督補佐官であるレオヴァに合わせるためだ。

 

側仕えやコック達と談笑しつつ箸を進めるレオヴァを眺め、一緒にデザートを食べるのがバオファンの楽しみでもある。

 

 

そして、30分ほどで食事と歯磨きを終えたレオヴァの呼び掛けで、その日のバオファンの仕事が本格的に始まるのだ。

 

 

「バオファン、今日は何か予定に変更はあるか?」

 

「あいよ~~レオヴァ様!!

ちょこっと変更があって!

今日はこの後、御用部屋にて~~~ 執務!!

その後は各町の大名と客間にて~~~ 会議!!

予定通り会議が終わったら~~~ 町で町人とのふれあい!!

それも終わったら研究室にて~~~ クイーン様との合同研究からの~発表!!

そしてそして~~!

1日の終わりには一番重要な~~

カイドウ様と晩餐からの晩酌!!

…あ、ジャック様が遠征から帰って来てたら晩餐に参加予定!以上です!!」

 

「ん、特に大きな変更は無しか。

ありがとうバオファン、助かるよ。」

 

微笑みかけてくるレオヴァにバオファンもお面の下で笑顔を浮かべた。

 

レオヴァは軽くバオファンの頭を撫でるとそのまま御用部屋へと歩みを進める。

 

一方、報告が終わったバオファンは鬼ヶ島の朝の見回りへと向かうのだ。

 

 

見回りと言っても鬼ヶ島はとても平和だ。

起こる事件といえば、うるティの暴走やカイドウの酒乱、クイーンやシーザーの実験による誤爆くらいである。

 

だが、それをキングやレオヴァに報告するのも大切な仕事だとバオファンはいつも目を光らせる。

百獣海賊団の偵察部隊の1人として、中途半端な仕事はしない!

というプライドをバオファンはしっかりと持っていた。

 

 

カランカランと下駄をならし、鼻歌まじりにバオファンは決まった巡回ルートを見回る。

 

 

「うんうん!

今日も鬼ヶ島は~~~ 異常なしっ!!」

 

約2時間ほどで巡回ルートを周り、担当の“動物”のメアリーズ達の確認を終え満足げに頷くとバオファンは次の目的の為にまたカランカランと下駄をならす。

 

 

そして、向かった先は大食堂だ。

ここでバオファンはいつも朝食を食べている。

“人間”のメアリーズの仲間や真打ち仲間と一緒に食べることもあれば、他の船員などと食べることもある。

 

大きな食堂なのでわいわいと楽しく食べることが出来るのがバオファンは嫌いじゃなかった。

 

何よりフレンドリーな人間が多い百獣海賊団では面識がない者同士で同じテーブルに座ると、そのまま何故か会話が始まり仲良くなるパターンも多く、バオファンには沢山の“友だち”がいるのだ。

 

今日も今日とて、大量のサンドイッチをトレーに乗せバオファンはお気に入りの席に着いた。

 

左斜め前には見知った顔の真打ちが食事をしていたが、バオファンに気づくとニコリと大きく歯を見せて笑った。

 

 

「おはよう、バオファン。

今日もレオヴァ様はお元気そうだったか?」

 

「ん、モグ…おはよ~スピード!

もちろん、今日もレオヴァ様は元気で最強だよ~~!!」

 

バオファンの返事を聞くとスピードは満足げに頷く。

 

 

「そうかそうか…!

レオヴァ様が今日もお元気ならばそれ以上に嬉しい報告はない!

この後はカイドウ様の所に?」

 

「うん!

いつも通りカイドウ様の所に行くよ。」

 

「なら、キング様を連れていくべきかもしれないな…

昨日はレオヴァ様が鬼ヶ島にいらっしゃらなくて、カイドウ様の“例のアレ(・・・・)”がな……

今朝は二日酔いで危ないかもしれない。」

 

「そう言えば、今朝から大工がいっぱい来てたもんね!

わかった、キング様に声かけてみるよ~。

ありがとうスピード~!」

 

「どういたしまして、それじゃあお先に。」

 

手振りで感謝を伝えるバオファンにまたニコリと笑顔を向けるとスピードは空になったトレーをコックに手渡し、立ち上がると下半身を馬に変化させ走り去って行った。

 

バオファンはバイバイと手を振ると、またサンドイッチをパクッと頬張る。

 

しゃきしゃきのレタスと肉厚なハム、そしてまろやかなチーズが甘味のあるふわふわのパンに挟まれている。

 

 

「美味し~~い!!」

 

幸せそうにサンドイッチをどんどん平らげていくバオファンの声と姿にトレーを片付けているコック達も笑顔が隠せずにいる。

 

 

そんな和気あいあいとした大食堂での朝食を終えると、バオファンはトレーを片付け仕事の続きに向かう。

目指すは百獣海賊団総督、カイドウの寝室だ。

 

 

カランカランと音を立てながら歩いていたバオファンだが、あることに気付き慌ててポケットに手を突っ込んだ。

 

 

「あ!忘れてた…危ない危ない~

まずはキング様に連絡しなくちゃだよね!」

 

 

さっとスマシを取り出しバオファンはキングへ連絡を取る。

数秒プルルと鳴った後、スマシから低い声が聞こえる。

 

 

「…なんだ。」

 

「おはよう、キング様~!

今からカイドウ様の所へ行くんだけど…」

 

「なるほど……わかった。

おれが行くからお前は呼ぶまで入り口の近くで待機していろ。」

 

「は~~い!」

 

ガチャリと切れたスマシを手にバオファンはカイドウの寝室へとまたゆっくりと歩きだしたのだった。

 

 

「のんびり行こう。

早く行っても邪魔になるだけだし~。」

 

 

 

そして、バオファンが辿り着いた時にはそこに有る筈の扉は壊れ、廊下の壁にまでヒビが入っているという荒れ具合であった。

 

扉の無くなった入り口から出てきたキングにバオファンが駆け寄ると、部屋の中からは地を這うような低い唸り声が聞こえて来る。

 

 

「…キング様、これ入っても大丈夫かな?」

 

「問題ない、いつものやつだ。」

 

「は~い!」

 

元気良く返事を返し、そのままスタスタと歩きさって行くキングと入れ替わりでバオファンは部屋に入った。

 

中では機嫌の悪そうなカイドウが寝間着のまま座椅子に腰掛けている。

 

 

「あ"~~……(しつ)の悪ぃ酒は味が薄いからつい飲み過ぎちまう、あそこの酒は駄目だなァ……

レオヴァの酒は浴びるほど飲まなくても満足出来るってのによぉ…」

 

こめかみをぐっと押しながら唸っているカイドウにバオファンは声をかける。

 

 

「カイドウ様、おはよう!

今日の予定を言いに来たよ!!」

 

バオファンの声にゆっくりとカイドウは視線を下げ、肘掛けに寄り掛かっていた体を起こすと口を開いた。

 

 

「バオファン、声のトーンを下げろ……頭に響きやがる…」

 

「ごめんなさい~!」

 

「それで…今日は何かあったかァ?」

 

「あいよ~!

この後は酔い醒ましの入浴に~~ 朝食!

その後は各ナワバリの事をまとめた書類を読んでもらって~~ ナワバリのランク付け!

それが終わり次第、研究室にて~~ クイーン様とレオヴァ様による成果発表!!

そして!それが終わったら~~ レオヴァ様との晩餐と晩酌!!

ジャック様も間に合えば参加予定!以上です!!」

 

バオファンから予定を聞き終えるとカイドウはへの字だった口をニッと吊り上げた。

 

 

そうか…!!

今日はレオヴァとの晩酌だったなァ!!

なら、しょうがねぇ……さっさと面倒事は終わらせて部屋で待っててやるかァ。」

 

あんなに気だるげだったカイドウがすっと立ち上がり、部屋の側にある風呂場へと一歩踏み出した。

 

 

「ご苦労だったな、バオファン。」

 

そう一言声をかけるとカイドウは壊れた入り口から出て行った。

バオファンはそれにペコリとお辞儀で返すと、カイドウの出ていった入り口から廊下へ出てその背を見送った。

 

 

「うんうん、カイドウ様も起きたしこれでよし!と。」

 

バオファンはくるっと踵を返すと、廊下の高窓に飛び乗り空へと飛び出した。

 

鬼ヶ島の上部から滑空しつつワノ国本土へ向かう船を見つけ、そこにバオファンは華麗に着地する。

 

 

「みんな、おはよ~~!」

 

空から降ってきたバオファンに船に乗っていた百獣海賊団の船員達は特に驚く様子もなく、口々に挨拶を返している。

 

 

「あ、おはようございます!」

 

「お疲れ様っす、バオファン様~。」

 

「あら?バオファン様、おはよう。」 

 

「おはようごぜぇます、バオファン様!」

 

一度手を止めて挨拶をしてくる部下達に手を振りながらバオファンはいつもの質問をする。

 

 

「今日はどうかな?

何か仕事の変更とかあった~?」

 

「いえ、今日もいつも通りです!

(みやこ)の港に行って外のナワバリで作ったモンを商人の奴らと取引して、(みやこ)での出店料を回収します!

その後は今日の“百獣特産店”の担当の奴らが残って店番して、担当以外は鬼ヶ島に戻って荷積み…って予定のままです。」

 

「そっか~!

じゃあ、頑張ってね。」

 

「はい!」

 

部下の返事を聞くとバオファンは船のメインマストへ駆け上がり、また空へ飛び出した。

滑空しながら次に向かうのは正面に見える都だ。

 

 

スタッと地面に降り立つと同時にバオファンは目の前に見慣れた長髪の人物を見つけ、ちょうど良いと声をかける。

 

 

「ホーキンス様~~!

編笠村行くから(コマ)鹿貸して~~。」

 

狛鹿の手綱を引いていたホーキンスは声の方へ振り向くと、少し眉をしかめた。

 

 

「コイツはおれの狛鹿だ、他を当たれ。」

 

「え~」

 

バオファンの不満げな声にホーキンスは小さく溜め息をつくと、少し先を指差した。

 

 

「…あっちにドレークの部下達がいる。

狛鶏や移動用の動物たちの貸し出しをしているから、そこで借りたら良い。」

 

「あ、そうなんだ!

ありがとう、ホーキンス様。」

 

ペコリと頭を下げたバオファンに小さく頷くとホーキンスは狛鹿に乗り、走り去って行くのだった。

 

 

 

あれから狛デーンを借りたバオファンは編笠村にやって来ていた。

 

この編笠村の外れには未来の百獣海賊団の船員を育てる訓練所があるのだ。

 

その訓練所にはワノ国の国民はもちろん元敵海賊や、元ならず者など身分や種族を問わず多くの人が通ってくる場所である。

 

 

そんな場所で問題が起きないか見回るのもバオファンの仕事だ。

 

 

だが、それとは別に実はこの訓練所にはバオファンを“親友”と呼ぶ少女がいる。

 

今、目の前に凄い速度でこちらに向かってくる物体があるが

その上に乗っている純粋な子どもらしい笑みを浮かべ突っ込んでくる少女が、そうである。

 

 

「バオファンちゃ~ん!!

お久しぶりでやんす~!!」

 

「ワンッ!」

 

砂煙を上げながらバオファンに当たらぬギリギリの位置に狛犬はピタッと止まって見せ、一声鳴いた。

 

少女は狛犬を撫でると、背から飛び降りる。

……が、上手く着地は出来なかった。

 

 

「あははは~!

お玉、着地も出来ないんじゃ百獣海賊団どころか近衛隊にも入れないよ!」

 

「いてて……だ、大丈夫でやんす!

最近は近衛隊の人達にも稽古を付けてもらってるでやんすし!」

 

パッパッと砂を叩き、お玉は無邪気に笑って見せた。

何を言ってもいつもニコニコしているお玉にバオファンは不思議な気持ちになるのだが、それは口に出さない。

 

 

「ふ~ん、そっか。

なら近衛隊になれたら、トモダチって言っても良いよ~。」

 

「え!もう友だちじゃないでやんすか!?」

 

「お玉が言ってるだけだよ。

じゃあね~~!」

 

「あっ、バオファンちゃん!

…行っちゃったでやんす……」

 

シュバッと音だけを残して行ってしまったバオファンにお玉は少し肩を落としたが、狛犬に跨がると気を取り直し訓練所へと向かって行く。

訓練所でたくさん頑張って近衛隊になれれば、レオヴァの役に立つという夢も叶い更にはバオファンとも友だちになれるのだ。

そう思い、お玉はいつもの様に気合いを入れたのだった。

 

 

 

あの後、お玉と別れたバオファンは訓練所の放送室に来ていた。

 

訓練所内の見回りと言っても基本的に問題はあまり起きない。

その為、敷地内をブラブラするか放送室や休憩室などで監視の為の意識はしっかりと張りつつ自由に過ごす、と言うのがバオファンの行動パターンである。

 

お菓子をつまみ食いしながら、まったりしているバオファンは今日も施設の終了時間である午後4時までヒマをもて余すのだろうと頬杖をついた。

 

何故なら、ここ最近の何か大きな事件は全てレオヴァと数人の幹部による“緊急訓練”だ。

だか、それもそうだろう。

 

他のナワバリならまだしも、百獣海賊団の本拠地と言っても過言ではないワノ国に何かを仕掛けてくる馬鹿者は珍しい。

仮に何かを仕掛けて来たとしてもワノ国内部に入る前に滝登りで淘汰され、それを越えてもワノ国や鬼ヶ島の周りにある見張り台に発見され即時撃破されるのがオチなのだ。

 

このワノ国内にある訓練所で起きる問題など、喧嘩や規則違反くらいである。

そして、その程度の問題であればバオファンが出るまでもなく、部下達が速やかに解決するだろう。

 

バオファンが出向き、飛び六胞や近衛隊隊長、大看板達に報告をしなければならない問題をあえて上げるとするなら、うるティの癇癪やカイドウの酒乱くらいである。

……この2件については大看板以上またはレオヴァの出動が余儀なくされるのでバオファンや他の見張りメンバーの報告の速さが重要視されるのだが、これは例外中の例外だ。

 

 

そんなこんなでバオファンは、今日もなにも起きない平和な見張りを終え自分の部屋へと戻るべく歩みを進める。

 

 

「問題がないのは良いことだけど~……やっぱり、ちょっと退屈だよね。」

 

小さく呟きながら部屋へ入ると、ポストに明日の任務変更を知らせる紙が入っている。

 

バオファンはお面の下の目を少し見開き、それを手に取り中身を読む。

 

 

──────────────────

真打ち・バオファン 任命者:レオヴァ

 

3ヶ月のナワバリ周回任務

主:ハチノス 副:周りの孤島及び国 

任務主導者:うるティ・ページワン

内容:任務主導者の状況確認の補佐、ナワバリでの情報収集や暴動の沈静化など。

その他不明な事項等あればスマシにて確認するように。

 

追伸:今回はナワバリの保守点検を重視した任務だ。

ページワンは問題ないが、うるティがナワバリを破壊しないように見ていてやって欲しい。

何かあった場合はトネグマを部下としてうるティにつけているから、彼女を現場に向かわせるように。

 

ハチノスでは嬉しい事に、未だに血気盛んな者が多い。

たまにはバオファンも暴れて羽を伸ばしてくれ。

それと面白い者がいれば“確保”し、おれまで報告を頼む。

        

 レオヴァ

──────────────────

 

 

 

「はわ~~…」

 

読み終わったバオファンの口からは思わず声が漏れていた。

 

 

「レオヴァ様って不思議だな~…心が読めるのかな?

それにしても、久しぶりの遠征任務楽しみ~~!」

 

たまに心を読んだかの様なタイミングでレオヴァから遠征任務が届くのがバオファンは前から不思議であった。

だが、暴れられる遠征任務へのワクワクからバオファンはその不思議さについて考える事をやめた。

 

なにせ、いくら考えてもレオヴァの“これ”の理由なんてわからないのだから。

 

 

バオファンはウキウキした様子を隠すこともなく、スマシを手に取る。

 

 

「ん~…前にレオヴァ様なんて言ってたっけ?

……あっ、そうそう!

壁に耳あり障子にめあり~~、だ!」

 

バオファンの嬉しげな声は廊下にまで届いていた。

 

 

 




ー後書きー

バオファン:真打ちの中では飛び抜けてカイドウ&レオヴァとの関わりが多い
普通にタメ口で話すが、結構可愛がられている様子
スピードと特に仲が良い

お玉:近衛隊になる為に訓練所に通っている
訓練所では少ないが賃金が支払われるので、そのお金で親に美味しい物をご馳走したり貯金している良い子
バオファンと友だちになりたい

カイドウ:絶賛二日酔い
飲み過ぎた次の日は寝起きの機嫌が最悪なのでキングorレオヴァが必要
いない場合は相応の被害が出る模様

ホーキンス:ドレークが不在だった為、残っているドレークの部下の様子を見に来ていた
ワノ国で初めて乗った狛鹿との相性が良かったという話をレオヴァにしたら、ホーキンス専用の狛鹿になった
実は名前をつけているのだが、それは秘密

百獣特産店:定期的に都に出店しており
外のナワバリで作ったモノや、レオヴァが作った便利グッズの販売をしている

・真打ちと幹部以外の船員の任務について
基本的に任務はシフト表の様なもので決まっているが、変更などがある場合は1~2日前に部屋のポストまたは配達係から通知が手渡される

・配達係
戦闘が得意ではない者達が働いている
任務通知やワノ国内での物資運びなどを担っており
レオヴァ曰く
戦闘員達が不自由なく行動できるように支える縁の下の力持ち、ということらしい
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