フェレスがやってきて、一ヶ月ほどたった、ある日のこと、エヴァンジェリンはふと思ったことを聞く。
「そういえば、親父は誰か好きになったことがあるのか?」
「いきなりどうしたエヴァ?そんなことを聞いて?」
「いや、この間休憩時に恋愛小説を読んでふと親父にはこんな相手がいたのかなと思って」
まあ、気になっても仕方ないだろう。三年近く親子として過ごし、ついこの間話しすら聞かなかったフェレスと言う眷族がいたのだ。ほかにもエヴァンジェリンの知らぬことがないか気になるのだろう。特にディバルに妻がいた場合それは自身の母親であるわけなのだ。聞いてみたいと思っても不思議ではない。
「・・・・・・いたよ」
「本当か?いったいどんな奴なんだ?」
エヴァンジェリンは興味津々で聞いてくる。だが・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・結構昔にな。・・・・・・もう死んでしまったよ。・・・・・・それに、告白もできなかったな」
「・・・・・・なんか、すまん」
気まずい空気が流れる。エヴァンジェリンとしては時々聞く、ディバルの昔話のつもりだったのだが、こんな雰囲気になるとは思っていなかった。
「・・・・・・気にするな、ずいぶんと昔の話しだしな。それよりも食事がすんだのなら魔導書の続きを読むぞ。わからないところは質問しろよ」
「・・・・・・わかったよ」
食器などの片づけをフェレスに任し、魔法の修行に戻る。だが、ディバルの心中はかつて自身が恋した人のことを思い出していた。
まだ、ディバルが魔神となって二百年もたっていない頃の話だ。周りは荒野しか見えず、この時はそこまで人間離れしていなかったディバルは一週間道に迷い途方にくれていた。ついに限界が来て倒れてしまう。意識が朦朧としてると誰かが駆け寄ってくるのが見えた気がしたが、意識がそこで途切れた。
気がつくと、知らぬ天井が見えた。どうやら助けられたらしい。家の中はお世辞にもきれいとは言い難いが、汚れているやら整理できてないと言うものではなく、ただ単に家自体が古くぼろいように見えるためである。
「あ、気がついたんだね」
女性の声が聞こえる。おそらく自身を見つけここまで運んでくれた女性だろう。その女性は、かわいらしい顔で桃色の髪をし、服は少々ボロボロだが女性の上品な雰囲気があり、あまり気にはならない。
「・・・・・・」
ディバルはその女性の美しさに声が出なかった。
「えっと、どうしたのかな?」
「・・・・・・あ、えっとすまん。あなたが俺を助けてくれたんだよね?ありがとう助かったよ」
やっと我に返り、ディバルは礼をのべた。
「気にしなくていいよ。困ったときはお互い様なんだから」
女性はそう笑ってこたえる。そのひとつひとつのしぐさはやはり品がある。
「それよりも、お腹すいてるんだよね?もうすぐ食事ができるから少し待っててね」
「あ、いやそこまでは」
「駄目だよそんなことを言っちゃ。無理したら体こわすよ?遠慮しないで食べていってね」
と、半ば無理矢理に近いがディバルの世話をやいていく。
その後、食事を終えた後も、行く当てもなく、ただ旅をしているディバルに急ぎでないならここで少し暮らしてはどうかと女性が提案する。
当初ディバルは女性の家に暮らすのはどうかと言うが、女性は一人にすると無茶をしかねないと言い、そのままそこで暮らすこととなった。
女性の話を聞くと、今この国は腐敗しきっており、民は苦しみ賊に身を堕とす者も少なくなく、今は大きな賊の集団で混乱状態であるという。それこそ各地で義勇軍を募集するほどであるのだからかなりの規模だろう。
「私も、参加しようと思ったんだけど、沢山のすごく強い人たちに、甘すぎな私では邪魔で足手まといなだけって言われちゃってね。自分でもそう思うしね」
「・・・・・・甘すぎる?」
「・・・・・・うん。私ね、すべての人が笑って暮せる世の中にしたいと思っていたんだけど、沢山の人に偽善だし実現不可能なことを言うなって、怒られたりしちゃってね」
声が少し震えている。泣くのを堪えているのかもしれない。
「・・・・・・私のこの理想は、間違っているのかなって、思って」
「・・・・・・」
「ごめんね。変に話し込んじゃって。私自身も無理なんだなって考えたし」
女性は謝罪し笑って言うが、まだ声は震えているし、目も潤んでいた。
「・・・・・・間違ってないと思うよ」
「・・・・・・え?」
ディバルは彼自身が思ったことを口にしていく。
「・・・・・・あなたの理想は間違ってないと思うよ」
「・・・・・・でも・・・」
「無理だと思っててもそれを願って動こうとする人はそういない。それに・・・・・・」
「・・・それに?」
「・・・・・・少なくとも、それが届かないとわかってても、それを目指して少しでも多くの人がと行動すれば間違いじゃないとおもうよ」
ディバルはそういった。確かに届かぬとわかっていても、やはり一番の理想は女性が言ってることだろう。叶わぬとしてもそれを目標とし頑張っていけば、それは間違いとは言い切れないだろう。
「・・・・・・・・・・・・ありがとう」
自身を励ましてくれたディバルに女性は感謝した。
女性は義勇軍に志願することを決意し、ディバルもそれに付き合うことを決めた。この時すでに女性に心惹かれていたのだろう。そしてこの世界で戦っていき、彼女の味方も増えていき、多大な戦果をあげいく。女性は一躍有名になり、さらにはこの国の皇帝の血筋であることがわかり重役になることができた。
これで自分の理想のにわずかでも近づけた思ったやさき、この国の有力者が彼女を妬み、暴君として祭り上げ彼女を討とうとした。ディバルはこれを調べていくと転生者も関わっている事がわかった。
多くのことを女性と仲間たちに伝え有力者達を返り討ちにしようと提案する。仲間たちは賛同するも、彼女は自身の首で戦が起こらないならという。
さすがにそれは駄目だとみんなで説得し、有力者たちと戦争となった。しかし、数が違いすぎだんだん劣勢になる。
そして最後の砦で悲劇が起こる。転生者が誰にも気づかれること無く潜入し、女性を暗殺したのだ、これに激怒したディバルは転生者を殺害し、仲間達と共に女性の遺体を運び丁重に埋葬した。
トップが暗殺され、戦う意味を無くし、有力者たちに降伏した。しかし、彼女と共に戦った古参の者よ重役になった後親しくしていた仲間達と共に脱出し、仲間たちは遠く離れた国に静かに暮すことにし、ディバルは旅を再開することにした。
「・・・・・・ちょっと女々しかったかな?」
修行を終え、昔を思い出していたディバルは誰に言うでもなくそうつぶやく。結局彼女との関係が壊れるのが怖くて告白できなかったのだ。あの時ほど後悔したこともない。力が足りないことを悔しく思い今まで以上に修行した。
「・・・・・・ま、両思い・・・・・・ではあったんだがな」
実はディバル、彼女の最後の言葉を聞いている。傷が深くもう助からない。だが、最後に伝えたことがあった。それは・・・・・・
『・・・・・・あなたと会えて・・・・・・幸せでした。・・・・・・どうかこれから先・・・・・・私の分まで・・・・・・・・・・・・幸せでいてね』
「・・・・・・・・・・・・俺は今、家族や仲間もできてすごい幸せだよ” ”」
聞こえないところはおそらく、彼女の名を言ったのだろう、そう小さく月を見ながらつぶやいた。
かなりわかりずらいと思いますが、一からチャントしたのを書こうとしたら、かなりの長編になるのでこうなりました。後、主人公の口調が少し違いますがかなり昔の話ですので大分変わったとと言う設定です。