プリズム☆シャイニングプリキュア!   作:砂糖ざらめ

2 / 12

真っ赤に輝く光の粒子が降り注ぐ中、キュアフランボワーズに変身した野苺なのかは自分の姿を見回した。
「私、変身しちゃった……!?」

呆然と立ち尽くすラピスラズリと、キュアフランボワーズの周りを嬉しそうに飛び回るピンク色の生物。


「……え、ぇぇえぇええええええええええええええ──────!?」

夢のようなこの出来事が現実なのだと理解した瞬間、キュアフランボワーズは大声を上げながらその場にヘタり込んだ。



第2話 真っ赤に輝く希望の光

何が何だか分からなくなり、慌てふためくキュアフランボワーズ。

「お前……よくも!」

ラピスラズリがキッと目を釣り上げ、バッと両手を突き出した。

「ラピスラズリインパクト!」

 

キュアフランボワーズに向かって黒い攻撃弾が放たれる。

「ぎゃああああああ!」

避ける事も出来ないまま、キュアフランボワーズはその攻撃を全身に食らう。

「フランボワーズ!」

ピンク色の生物が心配そうに叫ぶ。

キュアフランボワーズは地面に座り込んだまま、ジクジクと痛む全身を摩った。

 

「いたた……」

「大丈夫チェリ?」

「うん……」

(全然大丈夫じゃないよ──!)

そんな間にも、ラピスラズリは両手に力を込めながらキュアフランボワーズを睨み付けていた。

「お遊びは終わりだ、消えろ!ラピスラズリ――」

異常なまでの殺気に、キュアフランボワーズは本当に死ぬのではないかと不安になる。

「どうしよう!」

「気持ちを込めるチェリ!」

「気持ち……?」

「そうチェリ。強い気持ちは強大な力になるチェリ。

その力が限界に達し弾けると、さっきのラピスラズリみたいな攻撃魔法が発動するチェリ!」

「気持ち……分かった!」

(何だかもう分からないけど、やってみるしかないよね!)

 

キュアフランボワーズはゆっくりと息を吸い、素早く吐き、心臓辺りに両手を当てる。

「――――っ」

 

すると、胸のリボンに付いたハートの宝石が煌めき出した。

その煌めきがキュアフランボワーズの全身を包み込み、やがて両手の指先に集まる。

赤みがかったピンク色の宝石が瞬き、ラピスラズリに向かってきらりと光った。

 

キュアフランボワーズはキッとラピスラズリを見据え、

「プリキュア!フランボワーズレボリューション!」

喉が痛くなるほど大きな声で叫んだ。

 

無数のピンク色の花びらがラピスラズリを包みこむ。

全身が麻痺したような不快な感覚に、ラピスラズリは顔を顰めて唸り出す。

「う、っ……」

「はぁあああああああああああああ──────!」

宝石が指先から溢れ出す。それと同時に、キュアフランボワーズの胸の宝石も点滅する。

 

ラピスラズリは胸についた十字架を握り、何とか宝石の群れから逃れた。

十字架からは煙が上がり、ラピスラズリは肩を押さえゆらゆらと数歩後退る。

「くっ……これは本当に、あのキュアマーガレットの――くそっ、覚えてろ!」

ラピスラズリは空気に溶け込むように姿を消していった。

 

キュアフランボワーズの変身が解かれる。

なのかは半ば放心状態で、ぼーっと宙を見詰めている。

「はあ……はあ……」

乱れる息を整えながら、ゆっくりと地面に座り込む。

「フランボワーズ──ッ!」

ピンク色の生物が、目を不等号のようにしてなのかの元へ飛んで来た。

「あ、あの、今のは一体……」

「キミは世界を守る伝説の戦士、プリキュアになったんだチェリ!」

「私が、世界を守る……?」

「そうチェリ!私は真っ赤な光の妖精、チェリーチェリ。

そしてキミは、真っ赤な光のプリキュア、キュアフランボワーズチェリ。」

「わ、私は野苺なのか……。

私がそのキュアフランボワーズって言うのに変身したの?」

「そうチェリ。

じゃあなのか、一緒に他のプリキュアを探しに行くチェリ!」

チェリーはなのかの両手を小さな手で包み込んだ。

 

「他のプリキュア?私とキュアマーガレットの他にも、プリキュアがいるの?」

なのかの問いに、チェリーは力強く頷く。

「そうチェリ。正確にはなのかを含め4人居るはずチェリ。」

「そんなに――私、キュアマーガレット……あと2人は?」

「あとの2人……私はまだ会ったことがないから、分からないチェリ。

プリキュアになれるのは、キュアマーガレットの意思を継げる人なんだチェリ!」

なのかは何かが引っ掛かるような気がして、少しの間黙り込んでしまった。

チェリーが心配そうに見ている中、なのかはその違和感の正体を探り当てた。

「ねえ、キュアマーガレットの意思って――キュアマーガレットは今どうしてるの!?」

なのかの叫び声が、徐々に修復していく町に響き渡った。

 

 

 

 

なのかの叫びに、チェリーは表情を曇らせる。傾いていく夕日が2人の影をゆっくりと伸ばしていき、重い空気が更に重たくなるような気がする。

(どうして答えないの?

まさかキュアマーガレットは、あの時死んじゃったんじゃ――)

なのかの顔がサアッと青ざめていく。このまま答えを聞かない方が良いのかも知れない。

 

もし本当にキュアマーガレットが死んでいて、それをチェリーの口から聞いてしまえば、きっとショックでもうプリキュアはやっていけなくなるだろう。

(それなら、まだ聞かない方がいいよね。

私はキュアマーガレットの意思を継ぐんだから。何が何でも立ち向かっていかないと……)

「何でもないっ。行こ、チェリー」

募る不安を必死に振り払いながら、なのかはゆっくりと立ち上がり、そばに転がっていたランドセルを背負って、家に向かって歩き出した。

 

 

 

 

その日の夜。

なのかは眠たそうに目を擦り、ベッドに腰掛けながらうつらうつらしている。

「うー、眠い……」

まだ8時にもならないうちに、なのかはうとうとしていた。

 

「まだ7時40分チェリよ?」

チェリーも心配そうに声を掛ける。

「精神も肉体もボロボロだよ……。もうダメ」

つい弱音を吐いてしまう。

「きっと、ヘイトリッドグリーフにされた後にいきなり変身したから疲れたんだチェリ」

「そのヘイトリッドグリーフって何なの?長いし嫌な響きだし」

「それはチェリーね――」

 

そのとき。

ドシーンと大きな地響きが起こった。

なのかははっと立ち上がり、窓を全開にして外を見回す。

まだ春先の夜の風は冷たく、なのかの力んだ頬を容赦なく叩き通り過ぎていく。

 

「なに!?」

チェリーも飛んで来て、

「あいつらチェリ!」

「あいつらって――ラピスラズリ!?」

「きっとそうチェリ!」

なのかは大きく溜め息を吐いて、ピンク色のカーディガンを羽織った。

「もー、こんなときにっ!」

(少しぐらい休ませてよっ)

 

 

「ラピスラズリだかヘイトリッドグリーフだか知らないけど、もう何なの!?」

「ヘイトリッドグリーフは、人の心に宿る宝石『ハートストーン』が悪に染まる時に出てくる、持ち主の心の闇が形になったものチェリ。

悪に染まると、怪物は狂って暴れるんだチェリ!」

「それを利用して、あいつらは世界を征服しようとしてるの?」

「恐らくそうチェリ。本当の目的は分からないけど……」

「よく分からないけど、人の心を弄んで喜ぶなんて頭おかしいよ……」

なのかの脳裏に、鮮血に全身を染め黒い宝石へと姿を変えた大切な人の姿が浮かんでくる。

固く唇を噛み締め、両手を心臓辺りに当てる。

(そんな事のために、私のお母さんとお父さんは――)

 

なのかは手の中に力を込めた。

そして大きな声で叫ぶ。

「プリキュア・ステップアップ!」

なのかから赤い光が溢れ出してくる。

「1 up!」

 

「真っ赤に輝く正義の光!

キュアフランボワーズ!」

次の瞬間、光の中からキュアフランボワーズが現れる。

「いくチェリ!」

「うん、今度は絶対に反省してもらわなきゃ」

キュアフランボワーズのハートストーンに、僅かな黒ずみが蠢いていた。

 

 

「グリ────フ!」

町の人々が逃げ惑う中、灰色の怪物が徘徊していた。

怪物の向かう方には、怯えて動けないでいるお婆さんの姿があった。

それを見たキュアフランボワーズは、まだ慣れないヒールで怪物に突進していく。

「はあああああっ!」

 

キュアフランボワーズは加速し思いっ切りジャンプし、怪物の横から渾身の体当たりをお見舞いする。柔らかくムニムニと形を変える怪物に、その体の半分が埋まってしまった。

なんとか引き抜こうとするも、なかなか取れない。

「早く逃げて!あなたを死なせたりしないからっ!」

キュアフランボワーズは必死に叫ぶ。

 

お婆さんははっと我に返り、慌てて走り去っていった。

その後ろ姿を見て安心したのか、キュアフランボワーズの強ばっていた顔の筋肉が、自然に綻んだ。

(あれ、これって…… 。

キュアマーガレットと私みたいだ)

「フランボワーズ!後ろチェリ!」

チェリーの声に、はっと後ろを振り返る。

「え?――っ!」

 

いつの間にかフランボワーズの後ろには、細く伸びた巨大な腕が迫っていた。

(私をこの中に押し込もうとしてるの――!?)

歯を食いしばって何とか逃れようとするも、時すでに遅し。

キュアフランボワーズの背中に重い衝撃が走り、むりゅっと鈍い音を立てて体がヘイトリッドグリーフの胴体に埋まっていく。

視界が灰色に染まる。

「うぐぐぐ、ぐ」

苦しそうに呻き声を上げても、重たい液体の中では腕を上げるのも精一杯だ。

 

口や鼻の中にも闇色の液体が入り込んでくる。

(苦し――うううっ)

息苦しさからお腹の底に力が入り、頭のてっぺんがじんじんと熱くなっていく。

 

粘度の高い液体に、キュアフランボワーズの吐息が気泡となってぼこっと浮かび上がる。

(もう、ダメ――!)

 

「諦めちゃダメだチェリ!町が壊されちゃうチェリよ!?」

遠くの方で、ノイズのようなチェリーの声が聞こえてくる。

「キュアマーガレットの意思はっ!

なのかが継ぐって決めたチェリ!」

(キュアマーガレットの意思……?

キュアマーガレットがしたみたいに敵からみんなを守るなんて、弱虫の私にはやっぱり出来ないよ……)

その間にも、絶え間なく口の中には液体が入り込んでいる。

キュアフランボワーズの胸元のハートの石から、鈍く発光した黒い靄が漏れだした。

 

それを見たチェリーが叫ぶ。

「フランボワーズ!闇に飲まれちゃだめチェリ────!」

「あははっ、やっぱりあんたはプリキュアになっても、弱虫でちっぽけな臆病者のままなんだよ!」

ラピスラズリが何も無かった空間に現れる。

腕を組みながら闇に飲まれていくキュアフランボワーズを見下ろしている。

「今のうちに潰しちゃえ!」

(こんなに苦しいなら、もう弱虫でもいいから――もう、いいよ)

 

フランボワーズが諦め掛けたその時だった。怪物の体がぐにゃりと歪曲し、分散しながら遥か彼方へふき飛んでいった。

 

「なっ――!?」

ラピスラズリが目を見開いて後退る。

ぬけがら状態のキュアフランボワーズがどさりと音を立てて倒れ込んだ。

そこへふわりと着地する1人の少女。

「チェリー、その子を安全な場所へ運んであげなさい」

その少女の声に、チェリーは即座にキュアフランボワーズの体を掴む。

「分かったチェリ!」

「……全く、ダメダメじゃない」

少女は気を失っているキュアフランボワーズを睨みながら、ラピスラズリに向かって歩いていく。

 

美しく輝く黄色い髪を靡かせ、優雅な動きで敵を圧倒していく。

パンチ1つでも、まるでダンスのワンシーンのような可憐さに、チェリーは思わず見惚れてしまう。

 

「す、すごいチェリ……!」

「く、この……貴様は!」

何かを言い掛けたラピスラズリを無視し、ひらりとジャンプする。

そして両手を構え、

「プリキュア!スターライトフラワー!」

 

無数の星くずと花びらが、ラピスラズリを包み込む。

「ううぅぅう……」

苦しそうに呻くラピスラズリを、無言で攻撃し続けていく。

「あ、ぁ……」

ラピスラズリは朦朧とした眼で宙を見る。

「はぁっ!」

少女はぐいっと両手を持ち上げる。

ラピスラズリの姿が黄色く発光しながら消滅した。

 

「……大丈夫?」

少女がキュアフランボワーズに手を当てると、乳白色の光がその体を包み込んだ。

黒く変色した石は元の色に戻り、キュアフランボワーズも目を開ける。

「……あなたは、あの時の」

「あなたはまだプリキュアのヒヨッコ。あなたにはまだあいつらとの戦いは早いみたい。

キュアマーガレットの意思だか何だか知らないけど、あなたには無理だわ」

冷たい口調でそう言うと、彼女は姿を消してしまった。

 

 

キュアフランボワーズの変身が自動的に解かれる。

(私、プリキュアなんて無理なんだ)

なのかの表情からその心情を読み取ったチェリーは、優しく傍に寄り添った。

「なのかは、さっきお婆さんを助けたチェリ。」

「そんな、ちっぽけなこと」

「ちっぽけなんかじゃないチェリよ、なのかは――」

「ごめん、少し休ませて。」

なのかは静かな声でそう言い、ゆっくりと自宅へ歩いていく。

「……わかったチェリ」

チェリーも少し距離を置いて、その後を追い掛ける。

 

2人は一定の距離を保ちながら、ゆっくりと歩いていった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。