機動戦士ガンダムー漆黒の流星ー   作:たれちゃん

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第8話

 前回オレがザクマシンガンから放った弾。

 お察しの通り、ただの弾では無い。

 

 『信号弾』

 

 通常であれば、ミノフスキー粒子の濃度が濃くて通信が出来ない場合に部隊間の連絡を取る為に使われるものである。

 生身の人間に対しては兎も角として、重厚な装甲を有するMSに当てたところで直接的なダメージを与えることは出来ない。

 そう、直接的には。

 

 実はこの信号弾だが、破裂した際に強力な光と音が出るように設計されているのだ。

 この点に着目したオレは、その光と音を利用してシャアのゲルググのモノアイカメラのシステムやモニターを焼いて一時的な麻痺を生じさせ、その間隙を突いて攻撃しようという作戦に出たわけである。

 特に高性能機のゲルググはザクと比べても光や音には非常に敏感であり、一度受けてしまうとしばらく行動不能に陥ることは容易に想像がついた。

 

 大量の信号弾をばらまいた瞬間、辺りは昼間のように明るくなる。

 7色の綺麗な光が瞬くと、オレのザクのモニターにノイズが走り始めた。

 真正面に撃ちまくったお陰で案の定オレのザクのモニターまで麻痺してしまったが、コックピットハッチを開放して視界を確保すると、すぐさまマシンガンの弾を通常のペイント弾に変え、再びドラムマガジンが空になる勢いで、停止したままのシャアのゲルググを撃つ。

 シャアが対応してしまうか、ゲルググのモニターが復活する前にケリを付けてしまうしかない!

 

『ええい!

やるなムサシ君!』

 

 それでもオレの射撃は数発当たったのみで撃破には至らず、すぐにシャアはオレの攻撃を察知して回避行動を取る。

 オレのザクと同じようにゲルググのモニターも麻痺していて、ろくに攻撃された位置なども把握出来ないはずなのに、なんで回避出来るんだよ!

 オレはシャアのチート具合に舌を巻くが、グズグズしてもいられない。

 ザクのスラスターを噴かして追撃に移った。

 

 ようやく一方的に狩られる側から狩る側になれたはずのオレだったが、ここで少々問題が発生する。

 これまでに弾薬を消費しすぎて、そろそろ尽きてしまいそうなのだ。

 

 オレは最後のマガジンに交換すると、ゲルググに照準を合わせる。

 モニターやセンサーがイカれている為に、目視で照準をしなければいけないわけだが、これがまた難しい。

 しかもシャアも絶えずゲルググを機動させていているのでなかなか狙いが定まらない。

 ようやく撃ち始めようとした時、シャアもゲルググのコックピットハッチを開放したところが見えた。

 距離も遠く、更にはヘルメット越しでシャアの表情をうかがい知ることは出来ない。

 

 しかし、シャアがハッチを開放した瞬間、オレのザクの位置を正確に察知されてしまったと確信する。

 じわりと悪い汗が流れ、シャアに見られているような感覚がしたのだ。

 

 バレてしまったものの、今更どうすることも出来ない。

 オレはマシンガンを連射しつつザクを最大加速までもっていき、腰部にマウントされていたヒートホークを抜き去る。

 ザクの加速力も上乗せした渾身の薙ぎ払いをするが、オレの動きに対応するようにナギナタを起動させたゲルググに簡単に防がれてしまい、更には返す刀でオレのザクを切りつけてきた

 ゲルググ流れるような反撃の動作に対応出来なかったオレは防御し損ない、脚部を切られてしまう。

 

 ナギナタも訓練用のものだった為に実際に機体が破損した訳ではなかったが、機体の状態をしらせるスライドに『脚部損傷:機動率15%低下』との文字が出ると、ザクの機動性が極端に落ちるのを感じた。

 ガクンとスピードが落ちたところを、加速してきたゲルググにコックピット周辺を蹴りつけられる。

 

「うわ!!!」

 

 コックピットが激しく揺さぶられ、ところどころ体をぶつけてしまった部分が痛い。

 なんとか開放したままのハッチからザクの外に放り出されるという最悪の事態は回避したものの、すでにザクもオレの体もボロボロだ。

 

 もうこうなってしまっては勝ち目は無いか...。

 一瞬、もう降参してしまった方が楽になるのではないかという考えが頭をよぎる。

 

 だがそこで思い出したのは、シャアに勝ってやろうと奮起した時の記憶と、オレの為に入手の難しい信号弾まで用意してくれたリカルド中尉のちょびひげ顔。

 こんな時に好きな女の子の顔でも思い浮かんだのならまだ格好がつくが、よりにもよってリカルド中尉が浮かぶなんてな。

 まあオレの為に頑張ってくれたのは確かだけど。

 頭に浮かんだ予想外の人物に一瞬苦笑を漏らして吹っ切れたオレは、ボロボロのザクでもなんとかシャアに食らいついてやろうと再びゲルググに向かっていくのであった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「知らない天井だ・・・・・」

 

 気付いたら、酷く真っ白に塗装されて天井が見えてきた。

 オレは痛む頭を押さえながら、体を起す。

 あれ、オレって今までなにしてたんだっけ...。

 

 そう思いながらぼんやりとしたままの頭で考えるが、上手く思い出せない。

 近くを見回すと、綺麗なピンクの髪をツインテールに結えた可愛らしい少女が、目を見開きながらオレを見ているのに気がついた。

 歳のころは...、10代中盤にさしかかるか否かと言ったところか。

 

「あの。」

 

 いまいち自身の置かれている状況が読めなかったオレは、その少女に話しかけてみる。

 しかしその少女はオレの言葉に何か返すことはなく、ピョン!と飛び上がると一目散に部屋を出て廊下を駆けていった。

 

「シャア大佐!

ムサシ君、目が覚めたみたいですよ!」

 

 廊下にでた少女が何やら叫ぶと、ドタドタと数人の人間が近づいてくる音が聞こえてきた。

 何事かと思って身構えるが、部屋に入ってきた人物達を見て警戒を解く。

 一人目はシャアで、二人目がリカルド中尉、三人目は白衣着ているし医者か?

 そして最後に先程の少女が入ってきて、オレの寝ているベットを取り囲む。

 

「ムサシ君、すまなかった。

私としたことが、つい熱くなりすぎてしまったようだ。」

 

 シャアはそう言うと、丁寧に頭を下げてくる。

 ん、あのシャアが謝るだと!?

 

 あまりの状況に逆に頭が冴え、オレは気を失う前の記憶を少しずつ思い出してきた。

 そうか、ボロボロのザクで無謀にもシャアに最後の戦いを挑んでボコボコに返り討ちにされてしまったのか...。

 

 だが、最後まであがこうとしたオレにも責任はあるからな。

 シャアの謝罪を素直に受け止めて、「大丈夫ですよ。」と言っておく。

 

 そうすると、少女が「まったく!子供にケガさせちゃダメですよ大佐!」と言って頬を膨らませプンプンと怒り始めた。

 シャアは少し気まずそうな顔をすると、その少女にもすまないと謝っている。

 シャアに頭を下げさせるとか凄まじい子だな。

 

 しばらくプンプンしたままの少女だったが、何か途中で用事を思い出したのか、あっ!言いながら立ち上がると、お大事に!といってオレの頭を撫でて足早に再び部屋を出て行った。

 

 疑問に思ったオレは、その少女の足音が遠ざかったのを見計らって、残ったシャアとリカルド中尉に彼女の素性を聞いてみる。

 

「彼女はハマーン・カーンだよ。

このアクシズの総督、マハラジャ・カーンの娘で、彼女自身もニュータイプ能力を持っている可能性がある。

 後学の為にと私と君の模擬戦を見せていて、その関係でこの病室にいたんだ。」

 

「ちなみにお前を看病してたのも彼女だぜ!

あんな可愛い子に看病して貰えて、く~幸せ者だなあ!」

 

 シャアから説明を受けて納得した(リカルド中尉の方の話はどうでも良かったが)。

 マハラジャ総督に娘がいるという話は聞いていたが、彼女がそうだったのか。

 どこか優しいそうな感じがする子だったな...。

 またもし会う機会があるのであれば、是非とも仲良くしてもらいたいものだ。

 

 その後は医者から軽く検査を受けて問題が無いことを確認すると、寝せられていた部屋を出て帰路につくこととなった。

 シャアはエレカで送ると言ってくれたのだが、今回の模擬戦の反省をゆったりとしたかったオレは、その誘いを丁重に断って歩いて帰ることにする。

 しかし、ジオン軍基地を出たところで何故か泣きじゃくっていたグレミーを発見すると彼から突撃され、オレは結局反省点をまとめることも出来ずにグレミーに先導されてトト家へと戻るのであった。

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