後輩達の教育係を命じられてから、白兵戦の訓練などが減ることになった。
最初こそ、やった!あの筋肉モリモリマッチョマンの変態(白兵戦教官)とCQCの訓練をしないで済む!
教育係とは言っても、要はちびっ子の世話をすればいいんだろ?そんなの楽勝だよ!
そう思っていたのだが、オレの考えが完全に甘かったのだとすぐに思い知らされることになる。
「なんとぉー!」
とある日の早朝。
突如として、トト家のMSシミュレーター室に叫び声がこだまする。
その後、ガコンと一つのシミュレーターのハッチが開くと、子供が息も絶え絶えの状態で這い出てきた。
その子供の名前はムサシ・ミヤモト、そう、オレのことだ。
「ハァ...ハァ...。
ちょっと待って噓でしょ...。」
全身は汗でびっしょりで、手足は長時間にわたる激しいシミュレーターの操縦で震えている。
あの子たちがこんなに強いなんて聞いてないって...。
オレが乱れた息を整えようと躍起になっていると、近くのシミュレーターのハッチも次々と開いて少女達が飛び出してきた。
ボロボロ状態のオレとは正反対で、彼女達の額には汗一つ浮かんでいない。
全員が外に出終わるとその数は実に12人にも及び、しかも全員が似た顔だちをしている。
グレミーにこの前聞いたところによると、彼女達は全員姉妹らしい。
これが前世なら12人姉妹(しかも同じ歳)など絶対にありえないと思うが、ここはあのガンダム世界。
こんなこともあるのかと、少し胸はモヤモヤしているが渋々納得することにしている。
「お兄ちゃん強いんだね!
あたし達が負けるなんて久しぶり。」
少女の一人がオレの近くに歩み寄ってくる。
この天真爛漫な感じは長女のプルか?
顔は似ているが一人ひとりに特徴があって、姉妹の中の誰であるのかを見分けるのはそこまで難しくは無い。
天真爛漫なのがプル、ちょっとキツめの顔立ちをしているのがプルツー、不安そうなのがプルスリー等々...。
「いや、でも君達全く疲れてないじゃん。
全然本気じゃなかったでしょ。」
オレが思わず突っ込むが、彼女はそんなことどうでもいいという風にオレの腕を取ると、どこかへと走り始めた。
しかし疲労しきった足はプルの走りについていけず、オレはズルズルと引きずられていく。
「えっ、どこに行くんだ?」
突然のプルの行動に驚いて問いかけるが、プルはルンルン♪プルプル♪と言って自分の世界に入ってしまっている様子。
オレの声届いていないなこれ。
助けを求めて他の姉妹達に目を向けると、何人かに諦めろとでも言う風に目を背けられた後、最後にクールな雰囲気で落ち着いた子と目が合った。
この子は...,確かプルトゥエルブだ!
助けてトゥエルブ!と心の中で念じながら、オレは精一杯の助けを求める目をする。
「はぁ...。プル姉さん、マスターが困っている。
どこに行くのかちゃんと言ってあげて欲しい。」
オレの祈りが通じたのか、トゥエルブは走り去ろうとするプルの肩を掴んで止めてくれた。
ありがたい!
トゥエルブにはお礼に後で3段重ねのアイスクリームをあげよう!
「お風呂!みんなも一緒に行こう!
あはは~プルプルプル~♪」
お風呂?なんだお風呂か。
汗でべとべとだし、丁度オレも入りたいと思ってたんだよなぁ...って、
「ちがーう!そっちはオレが入れない女湯のある方向だろ!
早く止まれ!間に合わなくなっても知らんぞーーっ!!」
なんとかプルを引きはがしてほうぼうの体で逃げて男湯に入ることが出来たオレは、風呂を出た後にグレミーやプル達姉妹とショッピングに繰り出すことになった。
実はプル達だが、服をろくに持っていないことが判明したのだ。
グレミーの家に来たばかりのオレと全く同じ状況である。なんだか懐かしい。
とまあそういう事情があったので、言い間違え(?)で教育係兼兄になってしまったオレと、プル達がムサシの妹なら、当然ムサシの兄的ポジションの自分からしてもプル達は妹だと言う謎理論(ある意味正論?)を振りかざしたグレミーとで新しい服を買ってあげようということになったのである。
居住区のモウサにあるショッピングモールまでプル達を引率したオレとグレミーは子供服売り場に到着した後、プル達に各々気に入った服を持ってくるように伝え、二人で店の前のベンチで少々休むことにした。
プルプルと言いながら店内のあちらこちらに移動して商品を物色していく彼女達を見ていると、なんだか平和とはこんなことなのだと漠然と感じてくる。
「平和だな...。」
「あぁ、でもいきなり12人も妹が出来るのは大変だな。
特にプルは手がかかる。」
オレが無意識に口に出した言葉に、律儀にグレミーが返してくる。
確かにプル達の世話は大変だ。
オレ達はお互いに顔を見合わせてフッと薄く笑うと、近くの自販機で買ったドリンクを飲みながらプル達が服を携えて戻ってくるのを待つことにした。
ずぞぞぞぞ...、うーん。このコーヒーなかなかいける。
オレが自販機の缶コーヒーの味に舌鼓を打っていると、プル姉妹の一人がトコトコとこちらに来るのが見えた。
手には服が握られているので、早速お気に入りの物を見つけたのだろう。
「よ!プルツーはそれがいいのか?」
ちょっとキツめの顔立ちをしている子...、プルツーの持ってきた服をグレミーと一緒に品定めするが、なんか...うーん。
「...地味と言うか何と言うか、機能性を重視しすぎじゃないか?
せっかくプルツーは可愛い顔してるんだから、もっとそれに合った服にしようぜ。
あの動物の絵が小さくプリントしてあるのとか、そこのフリフリのやつ、いいと思うぞ。」
グレミーもオレと同意見だったようで、うんうんと頷いている。
プルツーが持ってきたのは、まさかのピタピタのジャージみたいな服だった。
これじゃ私服は私服でも運動服みたいじゃないか。
「ふん!
あんなプリントは何のタクティカル・アドバンテージもないんだよ。
この動きやすい服が一番さ。」
オレがすすめた服を一蹴し、プルツーはさあジャージを買う金をだせと、ずいと右手を差し出してくる。
しかし、オレはこんな服を買うのは認めない。
アドバンテージがなんだ!プルツーには可愛い服が似合う!
「オレが抑えるから、お兄ちゃんは服を。」
オレが短くグレミーに伝えると、彼は全てを理解したというように大きくサムズアップした。
二人でジリジリとプルツーとの距離を詰めると、一気に飛び掛かる。
「な、なんだ!?
私に何をしようと!」
プルツーが抵抗するが、オレ達が止まることは無い。
ええい!大人しくしろプルツー!
力ずくでプルツーを下着姿にすると、瞬く間に可愛い服を着せていく。
数秒後には、フリフリの服に身を包んだ激カワ美少女の完成だ。
羞恥心やらなんやらで真っ赤な顔をしながらオレ達を睨むプルツーの視線が痛いが、オレ達は彼女をコーディネート出来た達成感に酔いしれ、ニマニマとした笑みがどうしても顔に浮かんでしまう。
「やっぱりすごく似合ってるじゃないか!」
「成功だね。写真撮って保存するよ。」
「プルプル~!
わー可愛い!いいなぁ、お兄ちゃんたちに服を選んでもらって。」
いつの間にか傍にいたプルも一緒になって褒めまくっていると、プルツーは顔を朱に染めたままトボトボとショッピングモールの外へと歩き始めた。
「ニヤニヤと気持ち悪いんだよアンタ達。
私は先に帰ってるよ...。」
ふむ、どうやらプルツーは褒められ慣れていないらしいな。
良いことを知ったぞ。
それと、まだ帰ってもらう訳にはいかない。
「あ、ちょっと待てよ。
全員で記念写真撮るんだからさ。」
帰ろうとするプルツーを引き留めて、その後プル姉妹が全員服を買ったのを確認すると、写真館へと移動する。
最後に記念の集合写真を撮って、その日はトト家へ帰ることになった。
写真が現像されたら、今度ロケットペンダントにでも入れて全員に配るとするか。
フリフリの服着たプル姉妹って絶対に可愛いと思うんですよね。