機動戦士ガンダムー漆黒の流星ー   作:たれちゃん

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文章力なくて申し訳ないです。


第3話

 

 シャア・アズナブル。

 あれは絶対に只者ではない。

 

 彼の強大なプレッシャーにあてられてしまったのか体調を崩してしまったオレは、ジオン軍の駐留基地からトト家の屋敷に戻るやいなや、しばらくの間病床に伏せることとなった。

 最近小さいながらもグレミーの部屋の隣に自室を与えられたので、そこに置かれた粗末なベットに横になっていったのだが、一度寝てしまうとしばらくしてからモヤがかかったように謎の光景が浮かび、激しい戦闘音のようなものも頭に浮かんでくるようになった。

 何度かそのような夢?を見るたびにモヤがかかっていたものは次第に鮮明になり、最後には額にビンディを付けたインド系の女性と天然パーマの少年、そして件のシャア・アズナブルが互いのMSで戦い、最終的に少年のMSの一撃からシャアをかばった女性が死亡してしまうというというイメージが浮かんでくるようになってしまった。

 しかも寝るたびにその光景が浮かび、頭を離れない。

 

 シャアの記憶が俺に流れ込んできた?それともオレが彼の記憶を読み取ってしまった?

 そんなESP能力者みたいなことをオレが出来るわけもないし、ましてやそんなのSF上にしかない設定だ。

 しかし、バカバカしいとは思いながらもどこか不安感をぬぐえなかったオレは、数日賭けて回復した後、シャア・アズナブルのデータを閲覧するためにトト家の保有する広大な資料室へと足を運んでみた。

 福利厚生の一環なのか、トト家の系譜に連なる者でなくても申請さえすれば使用人階級でも入ることが可能である。

 そこでオレは、1年戦争と呼ばれた大規模な戦争でのシャア自身の華々しい活躍と、衝撃の事実を知ることとなる。

 

 辺境のテキサスコロニーで生を受け成長、進学先をサイド3にあるジオンの士官学校に決める。

 士官学校では主席を狙えるほどの好成績をたたき出すが、ガルマ・ザビら同期の士官学校一同を扇動し、士官学校長のドズル・ザビを拘束した上で、連邦軍宿舎を奇襲して制圧した「暁の蜂起事件」を引き起こしたことで、ただの優秀な一士官候補生から一躍ジオンの英雄に。

 事件の責任を取らされる形で一時は軍籍を剥奪されるが、後にテストパイロットとして軍に復帰。

 コロニーを落下させることで地球連邦軍の本部、『ジャブロー』を破壊を目論むジオン軍と、それを阻止しようとする連邦軍の間で発生した大規模な会戦『ルウム戦役』において、乗機のザクⅡC型を駆って戦闘に参加。

 

 連邦軍の主力艦艇5隻と、多数の宇宙戦闘機を撃破した戦果で一気に少佐に昇進。

 乗機が赤いパーソナルカラーで塗られていたことと、通常のザクの3倍近いスピードで機動しているように見えたことから、『赤い彗星』という渾名で上級士官から末端に至るまでの多くの連邦軍兵士から恐れられるようになる。 

 ルウムでの功績から、ドズル・ザビより旗艦型に改装されたムサイ型巡洋艦『ファルメル』を与えられ特務についていたが、連邦軍のゲリラ活動を鎮圧した後、サイド7において連邦軍の一大反攻計画の一端、『V作戦』を察知。

 その過程で連邦軍の新型MS『ガンダム』と交戦したことで、1年戦争の最後まで続く、ガンダムとの因縁が始まる。

 ガンダムを搭載した連邦軍の新型強襲揚陸艦、『ホワイトベース』を当時のジオン軍の支配領域である北米大陸に追い落とすことに成功し、自身も北米大陸に降下し、士官学校時代の同期、ガルマ・ザビと共同して引き続きホワイトベースやガンダムと交戦するが、その過程でガルマ・ザビが死亡。

 ガルマ・ザビを溺愛していたドズル・ザビの不興を買ったことで左遷されるが、キシリア・ザビの突撃機動軍に編入されたことで再び現場復帰を果たす。

 

 自身にキシリア・ザビより与えられたマッドアングラー隊を掌握し、ホワイトベース隊を追尾したことで連邦軍の本部ジャブローへの侵入口を発見。

 シャアの情報に基づいてジオン軍の攻勢がジャブローへとかけられるが失敗。

 これを境に次第にジオン軍は追い詰められていくことになる。

 オデッサでのジオン軍敗退を機に、シャアを含めた多くのジオン兵は宇宙へと離脱。

 

 ジオン軍の宇宙要塞『ソロモン』が連邦軍の攻勢によって陥落した後、腹心の部下(一説によると愛人だったとされる)であるララァ・スンとともに数度にわたって連邦軍宇宙艦隊を急襲するが、ホワイトベース隊及びガンダムと再び交戦し、急激に戦闘力を増しつつあったガンダムの前に敗退。腹心のララァ・スンを弔うこととなる...。

 

 「これだ!!!」

 

 ここまでシャアのデータを見ていたオレは確信した。

 オレの脳裏に何度も浮かんだあのイメージ。

 ビンディを付けた女性というのがこのララァ・スン、そして天然パーマの少年が初代ガンダムの主人公であると仮定すれば、自ずと話が読めてくる。

 先日出会ったシャア・アズナブルという軍人は、ガンダムを操る主人公の敵役であり、ライバルキャラクター。

 まさかそんな重要人物であったなんて思いもしなかったが、そう考えるとあの強大なプレッシャーにもうなずける。

 正直そんなおっかない人物と関わり合いになりたくはなかったので、しばらくジオン駐留軍の基地に見学に行くことは控えようと心に決めるのであった。

 グレミーに誘われたとしてももう絶対に行かない。

 オレの決意は鋼のごとく硬いのだ。

 

 ついでだと思ってシャアのデータを最後まで読んでみたのだが、その後の展開は特に特別なことも無く、ア・バオア・クーでの連邦軍とジオン軍の最終決戦でガンダムを相打ちに持ち込んだのちに、敗残兵達をともなって戦域を離脱。

 月とサイド3の間に存在するというカラマ・ポイントで多数のジオン残党軍と合流して、地球圏での潜伏よりも最終的にはアクシズへと向かうことを決意、そして今に至るということだった。

 最後の最後で主人公機を相打ちとはいえ撃墜するとは、流石はガンダムをほとんど知らない人間にも名前を知られている大人気キャラクターと言えよう。

 

 なぜ、夢の中にシャア本人の記憶と思われるものが出てきてしまったのかは全くの謎であったものの、機動戦士ガンダムという世界自体、オレがよく見ていたガンダムSEEDを含めたどの作品でも何かしらの不思議な現象が起きるということを前世の記憶からなんとなく思い出したので、今回は最強ライバルキャラのシャアの特殊能力を受けてしまったのだと思うことにした。

 

 ともあれ、ジオン軍の駐留基地に見学に行くことも控えるし、ジオン軍と関わりさえしなければ彼と再び会ってしまうことは無いだろう。

 アクシズも広いので、道端で偶然会ってしまうということもなかなかないだろうし。

 病床から復活した今でもたまにあの例のイメージが頭をよぎることがあるが、そちらに関しても気にしさえしなければ何も問題はない。

 オレは今まで通り、トト家の私兵兼グレミーのボディーガードとしての使命を全うするのみだ。

 ノーモア・シャアアズナブル、ノーモア・ジオン軍。

 

 そう思いながら資料室を出たところ、鬼のような形相をした筋肉モリモリマッチョマンの変態(白兵戦闘の教官)に見つかってしまい、数日戦闘訓練を休んでしまった分までみっちりとCQCを叩き込まれるのであった。

 わざとサボっていたわけではないのに、理不尽だ!

 


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