僕はグレミー・トトという。
U.C.0071に生まれた、現在ピチピチの10歳だ。
僕はジオンの名家のトト家の生まれで、物心がついてからは常にパパとママから「トト家の人間なら全てで一番になり、この家系に恥じない人間になれ」という教えを受けてきた。
その教えに従うように、僕は家が雇った家庭教師達の指導に従って毎日のように勉強や体力づくりを続けてきた。
そのおかげもあってか、常に学校の成績は学年で一番。
正直、クラスメイト達と成績を競い合ったとしても、ほぼ確実に僕が首位になってしまう。
最初は僕に成績の順位比べや、体力比べを挑んできていたクラスメイト達も、次第に僕に勝負を挑んでくることは無くなり、自分達の身の程をわきまえたようだった。
そして僕は、常にトップを走るようになった。
僕に追随出来る者さえおらず、もはや独走状態。
僕は、自分自身が至高の人間であり、自分こそトト家を継ぐに値する人間だと思っていた。
しかし、僕がこのように素晴らしい成果を出すたびに、昔から仲良くしていたクラスメイト達はどこかよそよそしくなり、離れていってしまう。
僕はパパやママの言うように頑張っているだけなのに、なんで?
僕だってみんなとゲームをしたりして遊びたいのに。
そうした経験をしてしまった僕は、クラスメイト達よりも良い成績を取ることでしか、自分自身の価値を見いだせなくなってきていた。
そうしたある日、僕がトト家の送迎車に揺られていつものように学校から帰っていると、自身が暮らすアクシズの宇宙港に多くの軍艦が入港してきているのを見かけた。
今まで見たこともないような多くの軍艦。
大艦隊と言っても過言ではないような様子を見て、久しぶりに僕も心が躍るようだった。
艦隊が入港してからしばらく見学していると、憔悴しきっているような軍人達の列が軍艦から出てきて、それぞれに与えられていると思われる人員輸送用の車両へと分かれていく。
どの軍人たちもどこかしらに傷を負って、疲れ果てているようだった。
どうしてそんなことになっているのかが分からず、軍人達をどうにかして助けたい一心で列に駆け寄ろうとしたが、僕に付いてきていたトト家の使用人から止められてしまう。
しかたがなくしばらくその列を見続けていたのだが、軍人達の後に出てきた人間を見て、更に衝撃を受けることとなった。
ボロボロになった貫頭衣を身にまとい、手には手錠をされ、体には無数の傷跡がある。
よく見ると死んだような目つきをもしていて、あまりの悲惨さにおよそ生きている人間だとは最初は思えなかった。
しかも、年のころは僕と同じかその前後くらい。
まさかそんな子供たちまでそんな状態になってまで連れてこられているとは思わず、事情は分からずとも僕は絶句することとなった。
そんな様子を見て、僕の心に最初に灯った感情は怒り。
なんで僕と同じような子供たちまで、あんなに生をあきらめたような目をしているのか?
そうさせてしまった奴がいるなら、絶対に許せない!
僕は、その子供たちをどうにか助けたい一心で、トト家の本邸へと急いで帰るのであった。
帰るとすぐにパパの執務室まで一直線に歩いていき、そのドアを開け放つ。
普段大人しい僕がそんなことをすると思っていなかったのか、扉を開けた先にいたパパは少し驚いたような顔をしていたが、そんなことは関係ない。
僕は、先ほど見た痛いたしげな子供達の窮状を訴え、何とか助けてもらえないかと迫る。
しかし、パパの返した答えは自分の思いの外、非情なものであった。
その子供たちを引き取ったとして誰が養うのか。
トト家が名家といえど、そんなに多くの人間を養うほどの財力は無い。
その子供達は、すでにアクシズ内の研究所や軍に送られる手筈となっているはず、今更トト家として手出しをすることは難しい。
非情ではあるが、正論だ。
このくらいは子供の僕でも分かる。
だが、どの人間も信じられないように、そして幼いながらも生きることを諦めているような目をした彼らを目の当たりにしてしまっていた僕は、どこかその姿を学校で仲間もおらずに孤立した自身と重ねてしまい、完全に見捨てるということは出来なかった。
パパと何時間も話し合った。
僕が子供たちを救う為の提案をしては、パパから現実的な目線から不可能であるという事実を突きつけられる。
しかし、いつもは自己主張がほぼない僕だったが、何故か今回は諦めることが出来なかった。
パパとそんなやりとりを何回繰り返しただろうか?
僕が、子供達を助けようとするあまり、すでに支離滅裂なことまで言い始めていたその時。
パパが、はぁ。とため息をつくと。
「分かった、グレミーは優しい子なんだな。
今までわがままも何も言わずに頑張ってきたお前へのご褒美でプレゼントしよう。
一人だけ。そう、一人だけあの子供達の中からトト家に貰ってくる。
ただし、飛び切り優秀な子がいた時のみだし、もし優秀だったとしても、トト家の役に立たないと分かれば容赦なく切り捨てる。
それでもいいかい?」
条件は厳しいものの、パパとしてはこれが最大限の譲歩である。
そう感じ取った僕は、パパのその言葉にゆっくりと頷くのであった。