機動戦士ガンダムー漆黒の流星ー   作:たれちゃん

8 / 25
第6話

 シャアについてMS格納庫まで来はしたが、流石にMSの実機の操縦を一度もしたことがない人間がいきなり模擬戦をすることは不味いということになり、まずはシャアの昔からの部下だというベテランパイロットのリカルド中尉に軽く訓練をしてもらうことになった。

 本当はジオンの英雄とまで言われるシャアに模擬戦だけでなく訓練もして貰いたかったのだが、彼の部下達曰く彼の操縦は全く参考にならないそうなので、リカルド中尉がオレの訓練、もといお守りを請け負うことになったのだ。

 ちなみにリカルド中尉は、鼻の下にちょびヒゲを生やした気の良いおっさんというような雰囲気を漂わせた人物である。

 リカルド中尉はニカッと一度笑うと、「気負うなよ~」といいながらオレの頭をポンと叩き、彼自身の機体の方へと歩いて行った。

 

 オレもノーマルスーツを着込むと、訓練用に急遽貸し出された機体へと歩いて行く。

 オレに貸し出されたのは、1年戦争時のジオン軍の傑作機、ザクⅡF型。

 1年戦争中において、ジオン軍で最も生産されたMSの一つであり、その安定性と汎用性はピカ一だ。

 武装はお馴染みのザクマシンガンとヒートホークにクラッカー。

 マニュアル通りに核融合炉に火を入れて各種システムや兵装を確認したが、特に問題は見られない。

 

「ムサシ・ミヤモト、ザクⅡシステムオールグリーン。

 いつでも出れます。」

 

 管制室へと通信が繋がっているモニターに向かってそう言うと、管制官とシャアが深く頷くのが見えた。

 

『ムサシさん、それでは電磁カタパルトにザクを乗せて下さい。』

 

 管制官の言う通りにザクをカタパルトに乗せると、管制官へと合図を送る。

 

『カタパルトへの接続を確認、発進を許可します。』

 

 管制官の許可を受け、オレはカタパルトに発進データを送る。

 次の瞬間、オレの乗るザクⅡは凄まじい速度で宇宙空間へと放り出された。

 

 半端ではないGだ。

 目はまともに開けることも出来ず、体全体がシートに縫い付けられるような気分さえしてくる。

 オレは胃の中身を吐き出しそうになるのをなんとかこらえて、シミュレーターでもやった通りにAMBACシステムを使用してザクの姿勢制御を試みると、なんとか機体を安定させることが出来た。

 

 オレが無事に発進したことを確認したリカルド中尉は乗機をオレのMSの近くまで寄せると、肩のショルダーシールド部分をマニピュレーターで掴んで通信を送ってくる。

 所謂、お肌の触れあい回線というやつだ。

 

『よし、いいぞ。

 カタパルト発進は問題ないようだな。

 次はそのままゆっくりとペダルを押し込んでスラスターを噴かしてみるんだ。』

 

「はい、分かりました。」

 

 オレはザクのスラスターに異常が無いことをモニターで確認した後に、リカルド中尉に言われた通りにフットペダルを軽く押し込んでみた。

 そうすると機体が加速を始めるとともに、Gによって体全体をシートに押しつけられるような感覚を再び感じた。

 シミュレーターでは味わうことの出来ないこの感覚。

 先程の発進時はGが強すぎて考える余裕も無かったが、こうしてリアルなGを感じたことで自身が本物のMSを操縦しているんだという実感が湧いてくる。

 

『基本的な動きにも問題は見られない。

次は指定のポイント数箇所を、俺の補助無しで回ってみてくれ。

 最後には射撃訓練も設定してある。

ザクマシンガンには実弾をセットしているから、射撃時には十分気を付けてくれ。』

 

 リカルド中尉から次なる指示が飛び、オレはデータリンクに反映された宙域マップデータを頼りに指定のポイントへと機体を滑らせていく。

 いくつかデブリなどの障害物があったが、シミュレーターでやった時の操作を思い出しながら危なげなく回避し、終了ポイントへと向かうことが出来た。

 

 終了ポイント付近で最後の試練、実弾での射撃を行う。

 標的は、事前に準備されていた老朽化したガガウル級MS運用駆逐艦。

 MSが開発されたばかりのごく初期に通常駆逐艦から改修されて誕生した、これまた最初期のMS運用艦である。

 MSを運用できるだけの広さを持った艦というだけあって、的はかなり大きい。

 シミュレーターでの戦闘訓練でも射撃はかなり得意だったので、弾を外すことは無いだろうが...。

 勿論、訓練の的用に準備されてものなので人は乗っておらず、コンピュータに登録されてた一定の回避パターンと攻撃パターンしかしてこないようになっているので、無力化することは難しくは無いだろう。

 しかし、ザクバズーカならともかく、更に威力の低いザクマシンガンで轟沈させることは出来るのだろうか?

 

 だが態々こんなものを的に用意したということは、オレがこの艦を轟沈させることが出来るかどうかで、オレのパイロットとしての力量や、敵の弱点を見極める力を測ろうとしているのかもしれない。

 いいだろう、そんなに見たいというのなら、いっちょ本気でぶつかってやろうではないか。

 

 まずは自身へと向かってくる攻撃を回避しながらガガウル級の数少ない対空火器を射線上に捉えると、マシンガンで次々にそれを破壊していく。

 ガガウル級が無力化されたことを確認してから悠々と艦橋を狙撃すると、指揮所を失ったガガウル級内部は大混乱(実際は人が乗ってないので混乱などは起きないが)。

 

 ガガウル級が艦橋を破壊されて操艦が上手く出来なくなったところで、オレはザクのフットペダルを力強く踏みこんで最大まで加速させると、腰部にマウントしていたヒートホークを抜き去り、すれ違いざまにガガウル級のエンジン部へ向けて振り下ろす。

 その攻撃によってガガウル級は腹部に大きな穴を空けるが、それではまだ撃沈に至らない。

 オレは体勢を立て直すと、続いてガガウル級に空けた穴の中に向けてザクが持っていたクラッカー全てを投げつけるとともに、そのクラッカーが穴に入っていった瞬間を狙ってマシンガンでクラッカーを爆破する。

 

 それを数度繰り返したことで、ようやくクラッカーの爆発がエンジン部の核融合炉に達したのか、ガガウル級は船体をくの字に折り曲げて大爆発した。

 周囲に飛び散る数多くの残骸。

 オレの方に向かってきたものもショルダーシールドで防ぐと、後に宙域に残ったのは原型をとどめないほどまで崩壊したガガウル級の船体だった。

 状況が終了したと思ったオレは、次の指示を受けるためにザクをリカルド中尉のMSの方向へと向かわせる。

 

 初となるMSの実機の操縦。

 最初こそ慣れないGなどに少し戸惑いはしたが、一度それに適応してしまうとそこまで気にならない。

 自身が巨大なMSを操縦しているというのも楽しいし、オレは案外MSの操縦に関しては性に合ってるのかもな。

 

『上達のスピードがすごいな。

とてもMSの操縦が初めて、しかも子供とは思えないですよ大佐。』

 

『ああ、私の思った通りだ。

機付長、私のゲルググを準備してくれ。

私もすぐに出る。』

 

 リカルド中尉から与えられた課題を一通りこなしてから、次の指示が出されるまでザクを自分の好きなように動かしていたのだが、ちょうど中尉とシャアの通信をセンサーが拾ったようだった。

 どうやらそろそろシャアもMSを駆ってこの宙域にお出ましらしい。

 これから本番の模擬戦が始まるかと思うと、以前のシャアの強大なプレッシャーを思い出して緊張と恐怖が心を支配し始め、手が少し震えてくる。

 

 だが、先程のガガウル級を轟沈させたことを思いだして、オレだってある程度やれるんだと自身に言い聞かせることでその震えを強制的に止めることが出来た。

 オレはこれから勝ちに行くんだ。

 逆にこの前のお返しに、今度はシャアに一矢報いてやろうではないか。

 そう思うと不思議と心は軽くなり、機体を次のシャアとの模擬戦場所へと指定された宙域へ向けた時には、震えは武者震いへと置き換わり、心には強い火が灯っていた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。