機動戦士ガンダムー漆黒の流星ー   作:たれちゃん

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後半部分をかなり修正致しました。
昨日修正前のものを読んで下さった方、大変申し訳ありませんでした。


第7話

 リカルド中尉から、換えの模擬弾が装填されたザクマシンガンのマガジンや、訓練用に加工されたヒートホーク、スモークタイプに換装された非殺傷型のクラッカーを受け取る。 

 

「すみません中尉、もう一つこの装備を準備して頂きたいのですが....。」

 

「ん?こんなものなんの為に...、近くに抜錨してるムサイ級まで取りに行かないと...。

いや、分かった。準備しよう。」

 

 オレは、ザクのデータベースに登録されていたジオン軍の装備品の中から、とある一つの装備を選択すると、その装備の情報を端末に反映させてリカルド中尉に送る。

 正直、こんなものが現在物資不足のアクシズのMS格納庫に準備されているような気はしなかったが、どうやら地球圏から戻ってきた近くの艦船まで行けばあるらしい。 

 一瞬迷う素振りを見せた中尉だったものの、なんとか準備してくれるようだ。

 なんやかんやで面倒見良さそうだなこの人。

 

 しばらくしてその武装もリカルド中尉から受け取ると、オレは再度機体と武装の最終チェックをし、機体が万全な状態であることを改めて確認する。

 先程の戦闘を経ても特に損傷も見られず、機体の調子は悪くない。

 寧ろ、先程のガガウル級との戦闘によってザクの各部は程よく暖まってきており、核融合炉も調子が出てきたのか、アクシズから発進させる前に起動させたばかりの時よりも幾分か動きやすくなっているようにも感じた。

 

 ランドセルに残る推進剤の量には未だ余裕があったので、少しでもザクを機動させてシャア戦へのイメージを膨らませようかとも思ったが、今更少しやったところでどうにもならないだろうし、あのシャアと戦うとなるとどれくらい推進剤を消費してしまうのか皆目見当もつかない。

 

 シャアが本当にするとは思えなかったが、模擬戦中に推進剤が切れて動けなくなったところを狙われてボコボコにされては目も当てられないので、念の為ここは温存させておくことを選び、オレはザクを近くのデブリに固定してシャアを待つことにした。

 待っている間に自前で持ち込んだラジオに電源を入れて放送を流していると、景気のいい音楽が流れ始める。

 

『哀 ふるえる哀 それは別れ唄~♪

拾う骨も燃え尽きて、濡れる肌も土にかえる♪』

 

 模擬戦ということでミノフスキー粒子もそこまで高濃度には散布されていないようで、少し音質がかすれてはいるがアクシズで放送されているラジオ番組の電波を受信出来ているようだった。

 ラジオから流れている音楽をBGMにして心を落ち着かせていると、急に背筋にぞわりと寒気が走る。

 

 急いでラジオを消してザクのセンサーの感度を最大限まで上げると、アクシズのMS発信口から凄まじいスピードで何かが飛び出していくのが見える。

 その何かが通った後の跡には赤い残像が残り、彼が、あの赤い彗星シャア・アズナブルが出撃したことに気付くのに、そう時間は掛からなかった。

 

「赤い彗星....、実際に機動を見てみると、この渾名を付けた人の気持ちが分かるな。」

 

 シャアの乗る赤いゲルググは高速で俺のザクの近くまで来ると、デブリに張り付くオレを見下ろすような位置に陣取り、通信を送ってくる。

 

『待たせた、ムサシ君。

それでは見せてもらおうか、君のニュータイプとしての力を!この私に!』

 

 そう言い終わるや否や、一瞬でオレのザクへと模擬戦用ライフルの照準を合わせると、躊躇なく攻撃してきた。

 

 「うわっ!」

 

 オレは慌てて操作スティックを押し込むと、既のところで攻撃を回避することが出来た。

 こちらもどうにかして反撃しなければと思い、牽制用にマシンガンの模擬弾を撃って弾幕を張るが、シャアはそれを意に介することもなく、迫りくる弾をごく最小限の動きで回避して接近してくる。

 

 ザクのコックピット内にはゲルググの接近を知らせるアラートが鳴り響き、一気に間合いを詰められたオレは近接戦闘を余儀なくされる。

 ヒートホークを抜いて迎撃するが、シャアのゲルググの猛攻の全てを受け切ることは出来ず、ショルダーシールドに破壊判定が出たことがモニターに表示された。

 

 そもそも実戦経験皆無で初心者同然のオレがザクに乗ってるのに、ジオンの赤い彗星様が高性能機のゲルググって普通におかしくないか?

 

『私のゲルググは今回の為に最大性能が通常時の60%前後になるようにリミッターを付けている。

 現状では、君のザクと性能に大きな差がある訳では無いはずだ。』

 

 有能なシャアだからこそ出来る芸当なんだろうが、相変わらず人の思考を読んだようにこっちの考えを予測して話してくるの辞めて貰えませんかねぇ。

 心の中で悪態を付きながらも、そんなことを言っても状況が変わるわけでは無いので、回避と撹乱に集中する。

 

 正面からやり合っても勝ち目が無いことは明白なので様々な戦法を試した結果、オレはスモークタイプに換装したクラッカーを投げてはシャアの目を撹乱し、デブリの影から狙撃するスタイルを早々に確立することに成功した。

 オレの射撃はゲルググ本体にはまるで当たる気配は無かったが、それでも盾には数発当たっている!

 

 流石のシャアも、オレのこの戦法攻めあぐねているような.....、いや無いな。

 MSの装甲越しに、彼からどこか喜びのような感情を感じる。

 どうやら彼はオレの戦法を見切りながらも、ニュータイプとの戦いが楽しくてすぐに勝負を終わらせるつもりが無く、それで付き合ってくれているだけの様だ。

 

 要するに、ある意味舐めプされてる。

 しかも質の悪いバトルジャンキーに。

 

 その事実に少しショックを受けるが、相手が油断している今が逆に好機なのではないだろうか?

 そう気付いたオレは、頭をフル回転させて戦術を練っていく。

 

「よし!」

 

 ある程度自身の思考を纏めると、オレはザクを最大加速させて急速に現在の戦闘宙域を離脱する。

 元々指定されていた宙域から逃げるというオレの予想外の行動にシャアのゲルググも一瞬戸惑った様な動きを見せたが、すぐに牽制射をしつつオレのザクを追いかけてきた。 

 

 『逃げるだけではすぐに追いついてしまうぞ!』 

 

 オレがザクのモノアイを一瞬後方へと向けると、シャアがデブリを足場にしてゲルググに加速を掛け、みるみる内にオレとの距離を縮めてくるのが見えた。

 これが噂に聞くシャアの八艘飛びか。

 急速に接近してくるシャアに少し焦るが、これも作戦の内だと自分に言い聞かせてひたすらにザクを前へと進める。

 それでも彼我の速度差は如何ともしがたい。

 シャアのスーパーエースとしての力量をビリビリと感じながらも、少しでもシャアを足止めをしようとザクの各部からSマインを射出する。

 ザクの各部に収納されていたSマイン全てを一気に出したことで、流石のニュータイプのシャアもSマインから放出された大量の極小の小型ペイント弾を完全に避けきることは出来なかったようで若干の被弾がシャアのゲルググにも見られた。

 しかし、シャアの戦術機動にはなんら影響を与えることが出来ず、彼の機体はそれまでと変わらない速度でオレを追跡し続け、Sマインの効果がほぼ見られなかったことにオレは内心舌打ちする。

 

 ただ、そのSマインはあくまで足止めの為に出しただけであり、目的地までオレが先についてしまえば何も問題ない。

 

 「見えた!」

 

 シャアから逃げ回って数分。

 オレの目に、あるものが飛び込んでくる。

 ガガウル級MS運用巡洋艦。

 オレが先程の訓練で撃沈した船だ。

 

 なんとかシャアに追いつかれる前にそこへと着くと、オレはガガウル級の残骸の影へとザクを滑らせる。

 まだギリギリ間に合うだろうか?

 そう思いながら狙撃しやすい位置にザクを固定すると、ザクマシンガンのドラムマガジンを交換した。

 

 

『ガガウルを盾にするつもりか...?

だが、そこに隠れた時点で君の負けだ!

君は優れたニュータイプではあったが、やはり実戦経験の差が勝敗を決めてしまったようだな!』

 

 シャアはここで勝負を決めにくるつもりらしい。

 ミノフスキー粒子の薄さ故にシャアのゲルググの動きはザクのセンサーでもハッキリと分かる。

 後はオレが上手くすれば!

 瞬間的に息を止めることによって手ぶれを少なくすると、シャアの機体がオレの射撃範囲に入った瞬間。

 

 ドドドドドドドド!

 

 と、オレは現在のマシンガンに装填されているマガジンを空にする勢いで射撃し続けた。

 

『そんなものを避けるなど造作も無い!

いやこれは...、も、モニターが...死ぬ!

何が起こった!』

 

 辺りに激しい光の奔流が流れ込むとともに、シャアの焦ったような声が通信機越しに聞こえてくる。

 条件はクリアされた。

 ここからが反撃の時だ!

 

 オレがシャアに一矢報いた瞬間だった。

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