運命のヒモ男《ヒモ・ファタール》   作:ヤン・デ・レェ

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11黄金色の嫉妬 後編

11黄金色の嫉妬 後編

 

 

 

川に流されたシャムハトは、流れ着いた先、とある森の辺りで目を覚ました。

 

シャムハトが嘆いて曰く、「どうして私がこんなに酷い目に遭わなければならないのでしょうか。慈悲深き神々よ、どうか私にその理由をお教えくださいませんか。でなければ、私は私の生まれたウルクを恨まねばなりません。恨んで死ぬことを、どうか選ばせないでください。賢者に卓越せし神々よ、どうか私にお答え下さい。」

 

シャムハトの願いは聞き届けられ、腹の底から愉快だという笑い声と、美しい美声が届いた。

 

美しい声は言って曰く、「まぁ、可哀想なシャムハト。貴女は運が無かったのね。この世で最も美しいからそうなってしまったのよ。忌々しいことね。もしも貴女が最も美しい女でなければ、貴女は醜い怪物に変わることもなかったでしょうに。運が悪かったと諦めると良いわ。さようなら。」

 

シャムハトは縋る気持ちで叩頭し、泥に服や顔を汚しながら、屈辱と涙を呑んで美しくも残酷な、この声の主人に「神よ!美しい神よ!貴女が私を救って下さらないのはわかりました!ですが、どうかお慈悲を下さい。私を救ってくれる方はこの世にいらっしゃるのですか?どうか、私を救ってくださる方がいるのかどうかだけ、いるのか、いないのか、ただそれだけでいいのです!最後の慈悲を与えてくださいませんか?」と問うた。

 

涙ぐむ声を隠そうともせずに縋り付くシャムハトの姿に美声の主人、イナンナは笑いに笑い、こう言って曰く、「あはははは!!!貴女は面白いわね!!こんなに美しくないのも初めて見たわ!!私の呪いの力ってすごいのね!じゃあ教えてあげる、貴女を救えるのは、全ての世界で最も美しいものよ!!その誰かだけが、唯一貴女の真の姿を知ることができるわ!!あっははは!!!貴女は世界で最も美しい女性だけど、貴女を救える人は、貴女を超える、全ての世界で一番の者よ!!全ての世界でね!!もしも最も美しいのであれば、例えそれが男でも、女でも、なんだったら牛でも良いわよ!!あはははは!!!まあ頑張りなさいねー!あはははは!!!」

 

イナンナの狂ったような笑い声は溶けるように消えてなくなり、沈黙だけが残った。

 

 

 

 

シャムハトは礼を取り払うと、自分を森まで運んできた川面に映る自分の姿を凝視した。

 

シャムハトは悲しんで曰く、「あぁ、なんと残酷なことでしょう。私の姿は少しも変わっていなかったのだわ。だと言うのに、どうして…醜い姿だから忌み嫌われるのなら、この苦しみもいずれ癒すことができたかもしれないと言うのに…あぁ、どうかこの世に救いがあるのなら、私を救ってくださる方が在るのならば、私はこの身全てを以てその方にお尽くし申し上げましょう。もしも叶えてくださるのなら、私は封じられた原始の母神にさえも祈りを捧げましょう。」

 

シャムハトは毎日毎日、辿り着いた森の中で、獣達や木々にすら恐れられ、避けられて、忌み嫌われて暮らさなければならなかった。

 

シャムハトが心安らげる時はただ一つ、自分を助け出してくれる救済者へとこの身を尽くすことに想いを馳せながら、ただ静寂の川面に映る、僅かの翳りも見せない曇りなく美しい自らの貌を眺めている間だけだった。

 

シャムハトは苦しみを吐き出すように、「私は生まれてから一度として美しくないと言われたことがない。古代の最も美しい原初の人間の血を最も色濃く受け継いだことを、何よりの誇りにして生きてきた。それは今も変わらない。だのに、今の私の苦しみの根源は他ならぬこの美しい容姿と、この色濃い血にある。」と言った。

 

シャムハトは鏡面のような川面に拳を落とし、自らの顔を見えないようにすると、目を瞑った。

 

 

 

 

再び目を開いたシャムハトは、今一度川面を見つめた。

 

シャムハトが詠じて曰く、「私はこの身の美しさが咎めて誰よりも醜い者として扱われるようになってしまった。私は苦しみ悶えている。心の救いを求め、安らぎに乾いている。全ての苦しみを私に背負わせたのは私のこのかんばせに他ならない。この森には私を汚く罵る人間はいない。けれど、私は誰にも愛されず、獣にすら嫌悪されなければならない。心を尽くして仕えた神々は私を見捨てた。」

 

「私を散々に美しいと言ったのと同じ口で、同じ言葉で、同じ顔で私を口汚く罵った者たちが見ていたのは、彼らが美しいと言って褒めてくれた私の顔と少しも違わない。共に王に仕えた衛士達が罵舌と暴力をもって打擲したこの心体は、お前達が私の眼を盗んで邪な劣情を滾らせていた心体に少しも違わない。私は醜く生まれていれば、初めからこのような思いもしなかったのかもしれない。」

 

「あぁ、私を救って下さる方よ、お願いです、醜いままで私を愛して下さいまし。私のことを心から愛してくれるのならば、私は醜くても許されたはずです。けれど、許されなかったのだから、この世に私を心から愛してくれていた方は誰もおられなかったのです。」

 

「神よ、私を貶めになった神よ、貴女をお恨み申し上げます。どうして、この世にこれ以上に惨たらしいことが御座いましょうか。この絶望の底で、唯一私に残された救いが、私を苦しめるこの美しい貌だなんて。あぁ、あまりに酷い。死ぬ勇気すらない私にとって最も美しいものが、神が変えて下さらなかったこの顔だなんて…。」

 

 

シャムハトはそれ以来、シャマシュの加護から身を隠し、月の神が放つ光を共として暮らし始めた。

 

 

 

 

シャムハトの悲劇から十年が経った。

 

シャムハトという名の巫女が姿を消し、彼女の両親は悲しみに暮れてしまい、間もなく病にかかり亡くなってしまった。

 

今ではシャムハトのことを知る者は誰一人としていなかった。

 

ギルガメシュは王として、アマロは大神官として過ごしていた。

 

ある日、辺境の森の近くに住む狩人達から恐ろしい野獣が現れたという噂話が報告された。

 

野獣は女のように長い髪で、森に住み着き、恐ろしい鳴き声で獣と共に過ごしており、獲物を仕留めようとすると狩人達に素早く気づいて、獣達を散らしてしまうのだと言う。

 

ギルガメシュはこの話を面白い話であると言い、アマロは不思議なことだと思った。

 

 

 

 

噂話の一週間後、遂に狩人達自身がウルクへと助けを求めてやってきた。

 

狩人が言って曰く、「つい最近まで、あんな怪物はいなかった。あれほど醜い獣を私たちは見たことがない。悍しい姿のあの獣を、どうにかしないと私たちは暮らしていけないのです。どうか、王様、大神官様、私達をお救いください。」

 

ギルガメシュは答えて曰く、「全て我に任せておけ!アマロの暮らすウルクを脅かす獣には、我がこの手でしかと躾を施してやろう!」

 

勇ましい王の出立に狩人達は心底安心した。噂を聞きつけた民達は口々にそれらを広め、王が醜い怪物を殺すのだと喜び騒いだ。

 

アマロは眉を顰めて曰く、「殺すなんて一言も言っていないというのに、民はどうしてそんなに乱暴な言葉を好むのだろうか。」

 

ギルガメシュは気にした様子も無く、「己一人ではか弱い民は、恐れを揉み消すために、騒ぐことに必死なのだ!より突き放したような、耳に刺さるような言葉を好むのだ。アマロや我がそうである必要はない。我の愛しいアマロ、アマロはそのままでいてくれ。」と言った。

 

アマロは「確かにそうかもしれない。けれど、あまり聞いていて幸せな気分には慣れそうにないね。…彼らもまた、不安なだけなのだろうけれど。」と言った。

 

 

 

 

ギルガメシュとアマロは不別の誓いに従い、決して別れることなく、野獣の元へと向かった。

 

野獣が現れたとされる所には森が鬱蒼と茂っていた。

 

ギルガメシュは叫んで曰く、「平原の野獣よ!!貴様に問う!!どうして我が狩人を脅かすのか!!」

 

森からの返答はなく、しかし、狩人達の必死な様子が嘘だったとも思えない。ギルガメシュは再び声を上げようとして、微かに叫びのようなものが聞こえるのが分かった。

 

ギルガメシュはアマロに言って曰く、「遠くに叫びのようなものが聞こえるぞ!!耳を覆いたくなるような、醜い声が響いておる!!」

 

アマロとギルガメシュは耳を澄ませて叫びを聞いた。

 

ギルガメシュは叫びが聞こえる方へと向かおうとしたが、ギルガメシュの腕をアマロが掴んで止めた。

 

ギルガメシュは問うて曰く、「アマロよ、我が伴侶よ、どうして我を引き止めるのだ。不安なのであるか。片時も離れた時などないというのに。」

 

ギルガメシュの問いにアマロは首を振り、ただ穏やかに答えて曰く、「そんなことは勿論心配していないさ。けれど、この叫びは決して醜いものなんかには聞こえないよ。だって私はこの叫びを知っている。」

 

 

 

 

ギルガメシュは驚き問うて曰く、「アマロよ、どうして貴方が野獣の叫びを知るのか。」

 

アマロは答えて曰く、「野獣の叫びなどではない。この叫びは間違いなく、私の子キングゥの声だ。」

 

ギルガメシュは「ではどうするのだ、いや、アマロはどうしたいのだ。」と問うた。

 

アマロは「私の記憶が間違えていなければ、間違いなく私の子は大昔に命を落としてしまった。悲しいことだが、私はそれを受け入れていままで生きてきた。けれど、もしもう一度あの子に会えるのなら、私は手を尽くして会いに行きたい。」

 

ギルガメシュは一笑し、勿論であるとアマロに向き合った。

 

アマロは「ギル、ありがとう。どうか、私のために君の力を貸してくれ。」と言い、ギルガメシュは喜んで肯んじ、二人は並んで森へと駆け出した。

 

 

 

 

 

シャムハトは十年も昔に仕えていた王が亡くなったことを、新たに名乗った王の名前がルガルバンダではかったことで理解した。

 

シャムハトは、自分を探しにきたのが分別のある王であるならば、もしかしたら救いの人であるかもしれないと希望を抱き、それと同時に王の手で楽にしてくれるのならば、それはそれで受け入れられそうであると思い、ギルガメシュ王からの呼びかけに、唯一残された言葉、蝶が瞬くことを忘れるほどに美しいその声が見る影もない、悲痛な叫び声で答えたのだ。

 

十年の間に、獣達は時間をかけてだが、シャムハトが決して自分達の命を脅かすような危険な余所者ではないのだと理解し、シャムハトの孤独を慰めるだけの寛大さを胸に開いていた。

 

獣はシャムハトが醜いからではなく、余所者であり、未知のものゆえに恐れていたのだ。けして、獣は美しいからシャムハトを褒めるわけでもなく、醜いからでは貶すこともなかった。

 

シャムハトは森の先住者達に敬意を払い、彼らの暮らしに従うようになった。

 

身綺麗さを忘れたことはなかったが、例え美しく着飾っていたとしても誰も愛してくれないのだ。シャムハトは逞しく、野に生きることを自らの当面の生きる目標とした。

 

罵詈雑言の聞こえない森の静かさはシャムハトの心を癒したが、決してその悲しみまでを忘れさせるほどの幸福も与えなかった。

 

シャムハトは川面に拳を落とし、体の泥を払った。

 

 

 

 

 

森は鬱々としていて、獣達が暮らすには最も道理の通った環境だった。

 

ギルガメシュはアマロの後について、森の中を進んだ。森の中に響く叫びは止んでいたが、アマロは迷うそぶりも見せずに進んでいく。

 

ギルガメシュは前を一生懸命に進むアマロの手を握った。どうか、置いていかないでくれと思いを込めて握ったのだ。

 

ギルガメシュの不安は、森の奥へと進むほどに、暗がりと湿った空気が満ちていくのにともない深まった。まるで、アマロを木々や蔦が囲んで呑み込んでしまうのではないかと、ギルガメシュは気が気ではなかった。

 

更に進み、遂に開けた場所に出たギルガメシュとアマロは辺りを見渡した。

 

ギルガメシュは目の前で自分達を待ち受けていたであろう毛むくじゃらの魔物に対して「貴様がアマロの子か?」と剣呑な雰囲気を殺さずに言った。

 

僅かに後退りした魔物からの視線を、ギルガメシュはアマロから遮ろうと前に出た。それは反射だったが、アマロの温かい手に制止されたギルガメシュは振り返った。

 

ギルガメシュは聞いて曰く、「どうしたのだアマロ。あれは本当にアマロの、お前の子なのか。」

 

アマロは何も言わずに泣いていた。

 

ギルガメシュは驚いて問うた「何があったのだ!何か辛いことがあったのか!我は何をすればいい!アマロ!頼む!泣くな!悲しそうな顔をするな!あぁ、アマロ!我のアマロ!我に教えてくれ!我はお前のことになると、ほんの些細なことでも堪らないのだ!!」

 

ギルガメシュの肩を優しく押して、アマロは野獣の前に出た。

 

アマロは言って曰く、「君は、キングゥではないね?けれど、君は私の可愛いキングゥに瓜二つだ。全く同じだ。違うのは瞳の色だけだ。君は誰なのかな?」

 

魔物は叫びを上げた。

 

言葉はわからないが、その声が伝えようとするのが苦しみや悲しみであること、心からの叫びであることはギルガメシュにもわかった。アマロの、親しげな声に落ち着きを取り戻したギルガメシュは、アマロと魔物のやり取りを何も言わずに見守ることにした。

 

アマロは我慢できないという様子で駆け寄ると、その悍しい魔物を力一杯に抱きしめた。

 

呆然と抱きしめられた魔物は天を貫く絶叫を上げた。安堵と、驚嘆と、それら全てを上回る歓喜に打ち震える、空が晴れるような、空飛ぶ鳥が鳴くような爽やかで透き通った叫びだった。

 

アマロは抱きしめた魔物に向けて「美しい人よ、どうかその重苦しい靄を掻き分けて私の胸においで。どうか君のその本当の姿を見せておくれ。」と言い、魔物は煌々と瞬いて美しい女に変わった。

 

美しい女、シャムハトは涙を流して膝立ちになり、呆然と、信じられないものを見たような顔をして、アマロの柔らかい笑みを凝視していた。

 

どれだけの時間が経ったか、シャムハトは止まらない涙を自由のままにして、アマロとギルガメシュに頭を下げ、「新しき王よ、そして私を救って下さった方よ、全ての世界においてたった一人の御方よ、私をお救いいただき心から感謝いたします。私の名前はシャムハトと申します。女神に姿を醜く変えられて絶望しておりましたところ、貴方様に救って頂きました。私に出来ることならば、例えどのような過酷なことであっても従います。私は今日より貴方様のものです。」と言葉尻まで石に深く彫り込むように強く言った。

 

ギルガメシュは「十年も昔、巫女の一人が居なくなったのだ。それは、お前だったのか。」と聞き、シャムハトは「はい、新たな王よ。」と答えた。

 

シャムハトはギルガメシュに一礼すると、アマロに向かい合い、「全ての世界でただ一人の、私を救って下さる方、私はこの身の全てを貴方に捧げましょう。これはその誓いの証です。」と言って、アマロの胸に飛び込むように抱きついて、その唇を捧げた。

 

ギルガメシュは驚き、次いで憤慨し「シャムハトよ!巫女よ!お前は自分がしたことを理解しているのか!我の至宝に何の狼藉か!!!」と怒鳴った。

 

シャムハトはギルガメシュの怒りを気にすることなく、いやむしろ見せつけるように、アマロと深く舌先を交わらせて見せた。

 

ギルガメシュは怒り、宝具の鎖をシャムハトに目がけて投げつけた。

 

 

 

 

ギルガメシュの怒りを纏い、煌々と眩い天の鎖は、太陽神シャマシュが時として人々を飢えさせるような苛烈さで叩きつけられ、気象の神アダドの雷よりも一直線にシャムハトを貫いてしまうはずであった。

 

だが、ギルガメシュの怒りを、その剛力を根拠に、天の鎖がシャムハトへと伝えることは無かったのである。アマロ以外の誰しもが理解できない、実に不可思議なことが起きた。

 

シャムハトは貫かれようとも、アマロから離れるつもりは毛頭無かったので、驚いたが、自身の肉体が過不足なく無事であると知り、生涯を捧げてアマロに、生者として尽くすことが出来るとわかると、全く好都合だと喜んだ。

 

対して、ギルガメシュは口をあんぐりと開け、呆然と鎖が力なく、革の鞭のように垂れ下がり、しなるだけになってしまったことに愕然として、息することすら忘れて、縋るようにアマロへと視線を送ったのだった。

 

唯一何事の不思議がこの場で起きたのか、ギルガメシュの鎖に何が起きたのかを知る、アマロは、「ギルガメシュ、君が手にしている鎖は、私が私の子供に譲ったものの一欠片なんだ。」とギルガメシュへ、幼子へ伝えるように、ゆっくりと優しく言った。

 

ギルガメシュは我に返って「シャムハトよ、我も頭に血が上りすぎた…」と言った。ギルガメシュはシャムハトの応を待たずに顔を背けた。

 

シャムハトはギルガメシュの声を耳に収めていたが、応ずる素振りもなく、一心不乱に、アマロに縋り付く勢いで抱きついていた。

 

ギルガメシュは不満げに顔を歪め、アマロはギルガメシュに気を配ってから、シャムハトに「ねぇシャムハト、君はキングゥの血を、一際濃く継いでいるね。あぁ、でなければこんなに似ているわけがないもの。」と嬉しそうに言い、こうも続けて「だからギルの鎖は力を無くしてしまったんだね、キングゥの、私の子の血に反応したんだ。」と言った。

 

シャムハトは、「私の体に流れるこの血も、全てアマロ様に捧げます。ですからどうか、私を貴方のお側に置いて下さい。」と言い、これにギルガメシュは「シャムハトよ、お前の呪いは解けたのだ、呪いが解けたのだからお前は今すぐに家族の元へと帰るべきではないか。全てはそれからであろう。」と言った。

 

シャムハトは歯を噛み締めて、ギルガメシュは不機嫌を隠そうともしなかった。アマロは怯む素振りもなく、不安げな表情もなく、ただ「この森にもう用はない。獣達が獣達の家に帰るように、一度、私たちも私たちが帰るべき家に帰ろう。」と言った。

 

ギルガメシュは「その通りだアマロよ。我は一早く狩人達の心を安心させてやらねばならぬ。」と胸を張ってアマロの左手を取った。

 

シャムハトは「私の帰る場所はもうアマロ様にしかございません。」と冷たい水をギルガメシュに浴びせるように言い、アマロの右手を握った。

 

アマロは「それじゃぁ今度こそ、私たちの家に帰ろうか。」と言い、不機嫌な、けれど頗る幸福げな二人の伴の手を引いて、元来た道のりを辿った。

 

アマロが呪いを解いたことは天の主人となった豊穣の女神イナンナにすぐさま伝わり、イナンナは「この世界には、全ての世界で最も美しい存在がいるということよね、なら、どうして私の夫にならないことがあるのかしら。いいえ、そんなこと、絶対にあり得ないわ。」と言って、月の神の元へと、次の新月の時は何時であるかと問い質しに向かった。

 

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