友達でも仲良くしてはいけないと知ったのは、まだ幼い頃。周りにバレて理解する、なんてことにならなかったのは幸いだったと思う。
今落ち着いているからといって、何百年も争い事を繰り返してきたとなれば、一言に和解などできるはずもなかった。
こちらから見れば相手は擁護のしようがない悪で、向こうから見てもそれは同じ。
決して相容れない存在のはずなのだから。
可愛らしい外見から想像する声とはひと味違った、低くも愛嬌のある不思議な声は、いつもボクの心の奥に響き渡ってくるようで、とても魅力的だ。
悪魔なのに常識人で、優しくて、ちょっと、傷つきやすくて。それなのに自分のことを一流の(?)悪党だと思っているのだからこれまた可愛らしい。
とにかく彼女の魅力は百個でも二百個でも挙げられるが、さすがにキリがないのでここまでにしておこう。
自分で言うのもなんだが、天使学校の生徒会書記を担っているボクは、周りから見れば生きる世界が違う存在だと思われているらしい。結果としてボクは学校内での友だちがほとんどいないワケだが、ボクが普段一緒にいる生徒会のメンバーは全員が上級生。それでいて滅茶苦茶厳しいので、学校内にボクの心が休まる場所は存在しない。
そんなボクにとって、唯一の心の許せる友人である彼女は、本当にかけがえのない存在なのだ。
それが魔界学校1年、常闇トワだ。
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「トワ~」
「かなたーん!!」
あ~かなたんは可愛いな~
とにかく純真無垢で、ちっちゃくて、そしてそしてそして!トーーっても、可愛い!!
どういうわけだか、学校では人気者の先輩方ばかりと一緒にいる自分にとって、唯一の同い年の友人である彼女は、本当に貴重な存在なのだ。
天音かなた。天使学校1年にして、生徒会書記。学内の上級生に引けを取らない魔力と、自分に足りないことを素直に認め、改善しようと努力する心根は、1年生ながらもファンクラブができるのも納得のハイスペックだ。あと可愛い。
彼女との付き合いも長くなるが、未だに他の誰かに私たちの関係が知られたことはない。
昔はよく会って話をしていたが、今は怖くてそうそう会うことなどできない。
そもそもの話、あれだけ堂々としていてばれなかった幼少期がおかしかったのだ。
だからこそ、こうやって頻度を減らし、こっそりと会うようにしている。
私たちが落ち合っている場所は、天界と魔界の狭間にある。勘違いしそうになるが、人間界ではない。学生がそう簡単に人間界に行くことなどできない。この場所を説明しろと言われると難しいが、御遣いの管理する、中立の....場?みたいなものだと聞いている。正直な話よくわからない。
ただひとつ言えることは、私たちはなかなかに危ない橋を渡っているということだけだ。
この友人は、決してばれてはいけない。
この関係は、決して明かしてはいけない。
この約束は、決して違えてはいけない。
だけど、そんな窮屈な日々も今日までだ。
「いや~、うちの生徒会長ってホント怖くてさ。もう、トワと過ごす時間だけが癒しだよ」
「......かなたん」
「どうしたの、トワ?いつになく真面目な顔だけど」
「私たちさ、最近はずっと、こうやってこっそり会う関係を続けてきたじゃん?」
「......うん、そうだね。天界と魔界のいざこざは昔の話だけど、お互いへの敵意というか、対抗心?みたいなものはまだ残ってるからね」
突然の話に、かなたんは困惑しているようだった。
「それをさ、それを.....終わりにしようかなって、思って」
「え!?トワもう会えなくなっちゃうの!?やだよ!何かあったの?何でも力になるよ!?」
「違う、違う!そうじゃなくって!」
そう誤解されるとは思わなかった。
「違う?じゃあ、どうしたの?」
やばい。ここに来て、急に不安になってきた。
心臓がバクバクと音を立てているのが分かる。
落ち着け。私落ち着け。覚悟は決めたじゃないか。きっと分かってくれるはず。
「先輩にね?今の天界と魔界の関係を解消したいって考えてるひとがいて。そのひと、すっごい力をもってて、頭も良いから、その、私たちのことを相談したら、助けになってくれるんじゃないかって」
「え?私たちのことを誰かに話すの?」
「うん。てか、もう話しちゃった......」
「えぇ!?」
「そしたら、今度、その子をなんとか連れてきてくれないかって言われ.たの」
「罠じゃない?カツアゲとかされない?」
「大丈夫だよ!気遣いのできる優しいひとだから」
「............」
「信じて!お願い!!」
「...........分かったよ」
「!」
「ただし、ルートは気を付けてよ?私、魔界学校なんて行ったことないんだから」
「それについては大丈夫!ちゃんとしたルートがあるから」
答えを聞いて安堵した。私たちのこれからを左右する内容なだけに、拒否されれば今後の関係は気まずくなるし、最悪の場合絶縁なんてこともあり得るのだから。
「それじゃあ、来週の同じ時間、またここに来て」
私は、さっきまでの不安が嘘のような明るい声色でそう伝えた。
清々しい気分だった。来週どんなことになるのか。恐怖ももちろんあるが、同時に楽しみでもある。
それだけに、これを切っ掛けとして、天界と魔界、人間界を巻き込んだ大事件へと発展していくことなんて、予想もつくはずがなかったのである。
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「不浄......か。ずいぶんとひどいことになってるみたいだね」
獣の耳が小さく揺れる。
「うん。ウチも何度かコンタクトをとってみようとしたけど、こっちの意思は全く通じなかった。アレはもう、ウチの知ってる存在とは別の何かだと思ったね」
ここはどこなのか。常人に説明させるには難しい、不思議な雰囲気を漂わせる空間だ。
一つ言えるのは、どこか懐かしく、それでいて新しい、ポヤポヤとした感覚に陥るような場所、という曖昧なことだけである。
「このまま放置していたら、本当に取り返しがつかないことになっちゃう。いい加減に、私も腰を上げるべきかな」
会話する一対の存在たちは、何を思うのか、天を見上げ思いを募らせる。
片方が覚悟を決めたように立ち上がる。
「行くの?」
「うん。ちょうど御告げもあったしね」
「そっか。なら、ウチも手伝うよ」
「悪いね。おそらく私の、いや、私たちの案件だろうに」
「いいんだよ。同じ使命をもった仲間だし、それ以上に、友だちでしょ?」
「......ありがと」
この日初めて見せた優しくも恥ずかしげな笑顔に、たおやかな笑みが返された。
己が何をなさなければいけないのか。なんのために生ませてきたのか。自我をもったその瞬間から刻み込まれた意思は、何者にも譲り渡すことのできない、重要なもの。
輝くは白。
「しっかし、何年ぶりなんだろうね、こんなこと」
包み込むは黒。
「わからない。どのくらい前から存在していたのか、私たちにもわからないくらいだからね」
果てしない零の空間で、聖なる形は混ざりあい、一つの個となる。
「ただ、これだけは言える」
『これは、世界を巻き込んだ戦い。世界を守るための戦いになるよ』
ホロライブのファンタジー系二次創作小説です。今回は所謂プロローグになっております。本作は別サイトで投稿していたものを転載し直したものです。そこそこ前に書いたものなのでかなり拙いです。私自身、文章を書くことは不慣れなので、書き進めていく中で、成長していけたらなと思っていますので、暖かい目で見ていただければ幸いです。それではどうぞ、よろしくお願いします。