「別にルーナは、殺戮をエンジョイするのが好きってわけではないのら」
「はい。そんな感じの見た目してます」
「テメー!ルーナたんを簡単に語るな!」
「併合した周辺諸国のお偉いさんも多く雇っているこの城で、万が一にも、法を破った者を許すわけにはいかないのら。ケジメがつかないのら」
「はい。よくわかります」
「テメー!ルーナたんの言葉を雑に理解すんじゃねぇ!」
「だから女の子だからって理由で贔屓をするわけにはいかないし、それにはとっても心を痛めてるのら」
「はい。そうだと思います」
「テメー!ルーナたんの気持ちを簡単にわかった気になるな!」
「ココちゃんはちょっと黙っててほしいのら」
「............わかったのら」
「強引な手段だとはいえ、単独でこの城に乗り込んできたことは誉めてやるのら。いい度胸なのら」
「はい。ありがとうございます」
「うるせぇのら!誉めてねーのら!」
「どっちだよ!」
「光輝く女の子の未来を奪うのは非常に心が痛むのら。イタイタなのら」
「はい」
「じゃ、首を跳ねてぶち転がすのら」
「イヤだァ!ヤメテェ!!!」
どうしてこんなことになってしまったのか。
それは五秒前に遡る。
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「お前は何者だ?」
「待つのら。そんなことはどうでもいいのら」
「姫!しかし......」
「さっさと首を跳ねるのら」
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「あ、回想終わった?」
「お陰さまであっという間に」
「じゃあもう思い残すこともないはずなのら。やるのら」
「ホントスンマセンマジやめてください」
「じゃあはぐらかさずにちゃんと答えるのら。お前は誰なのら?」
「さっき自分でどうでもいいって......ピィ!」
隣に立つ騎士が持っていた剣を床に打ち付ける。そんなことしたら剣も床も傷つくぞ。
「天音かなた17歳天使学校で生徒会書記やってましたどうもです!」
「天使学校?落ちてきたときに頭ぶっけておかしくなったのら?」
そういえばここは人界だった。天界と違ってこの名乗りは通じない。
しかし今のボクには、他に命を繋ぎ止めることのできるカードは無い。不思議なポッケから文明を超越したチートアイテムでも出せれば話は別だが、ないものはない。
天使であることを証明して周囲の興味を引き、なんとか延命するしかない。
「聞いてください!ボクは本当に天使なんです!ホラ、この羽!超美しい羽!人間にはこんなの生えてないでしょ!」
「どうせ鳥の獣人か何かなのら。そもそも美しいどころか埃まみれで汚ならしいのら。ばっちいのら」
「うぐっ......」
そうだ。人界には獣人種がいることを忘れていた。いや、でも汚ならしい羽は違うだろ、汚ならしい羽は。
そう思ってなんとなく背中の羽を触る。
「............」
埃まみれでした。そうだね。天井突き破って床に叩きつけられたもんね。ボクの周り瓦礫まみれだもんね。
「世迷言はおしまいなのら?」
「いや!まだあります!......って、世迷言じゃないですから」
「いいから見せてみるのら」
「はい......いきます............」
こんなときは、あのとっておきの魔法でわからせるしかない。
《
ポッと小さな炎が点ったかと思うと、それが様々な色の火花を散らしながらパチパチと音を立てる。
宴会芸にしかならない下級魔法だけど、美しさなら一級品だ。
さあ!この魅力に捕らわれ
「フレアのが良い花火を出せるのら」
「..................」
どうやら腕のいい花火師がいるらしい。
万策つきたな。ボクの命乞いデッキ、少なすぎ。
「こんなペテン師はじわじわとなぶり殺しにしてもいいところではあるのらけど、特別に一瞬で逝かせてやるのら。白銀団長、やるのら」
ごめん、トワ。ごめん皆。ボクの冒険はここで終わってしまうよ。
「じゃあなペテン師。1日ぐらいは覚えておいてやるのら」
「あ、天使ってのは本当ですよ?」
............................................................
「え?まじ?」
「はい」
「なんで言わんの?」
「黙れと言われましたので」
「............ちょっと面白そうなのら。よし。首ちょんはなしなのら」
よ、よかったぁ......
確か......ココっていったっけ。ありがとうございます!本当にありがとうございます!
「で、何か面白い話題はないのら?」
「......面白い話題?」
「侵入者を生かしておくだけの何か。話してみろよ」
「何かって............」
なんだよ。
「じゃあな、エセ天使」
「ちょっ!待ってください!!」
ヤベェ。この子供、話が一切通用しない。
「まぁまぁ。少し落ち着いてください。私もこの天使公に興味がありますし、生かしておいてもいいんじゃないですかね」
どこまでもいい人だなぁ!この子!
「ココちゃんがそこまで言うなら......」
お姫様は少しだけ考える素振りを見せると。
「じゃあココちゃんが面倒を見るのら」
「はぁ!」
「ココちゃんが言ったことだし、ココちゃんちは大きいから一人くらい増えても問題ないのら」
「家がでかい分私も家ではでかくなるんですが!?」
「じゃ、そゆこと~今回は解散でいいのら」
「待ってくださ~い!!」
............え?僕助かったの?
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叩きつけるように降り注ぐ雨粒が、少女の体から容赦なく体温を奪っていく。
どうこうしようにも、意識の覚醒していない彼女には何をすることもできない。
やがてゆっくりと目を開けた彼女は、自分の置かれている状況を目だけで理解するしかない。
(体が......動かない............)
指先を動かそうとするだけで、全身に痛みが走る。
全身が水と泥でグチャグチャ。呼吸も安定しない。
(かなたんは、無事かな......)
こんな状況下で自分より友人の安否を気にする自分の心が絆によるものなのか、それとも単に能天気なだけか、彼女にはわからなかった。
その時だ。
ぴちゃ、ぴちゃと濡れた地面を歩く音が聞こえる。
獣の類いではないように思えるが、敵でないとは限らない。
それこそ野党であるならば一貫の終わりだ。
人影が自分を見下ろしていることがなんとなくわかる。
体つきからして女性だろう。
女性はぶつぶつと何かを呟いたかと思うと、常闇トワを抱えてどこかに歩いていくのだった。
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「桐生の家は、この先の角を曲がれば見えてくるはずです」
今はココという女性とも最初の女騎士とも違う人が城下町を案内してくれていた。
いや、人ではないのだろう。
人間とは違う長い耳がその証拠だ。褐色の肌から察するに、ダークエルフなのだろう。
スラリと伸びた美脚や艶のある金髪も、エルフ属らしい外見といえる。
「ずいぶんと兵士が多いんですね。かといって、住民も怖がるようすがないですし.......活気があるというか」
「はい。ここ"お菓子の国"は軍事力の向上と科学技術の発展を主眼に置いた政策を展開しています。特に騎士団の戦力は周辺諸国最強の名をほしいままにしてるんですよ」
「.......お菓子の国なのにですか?」
ずいぶんとアグレッシブなお菓子作りを行っているようで。
「姫様からご紹介あがりましたが、私、不知火フレアが白銀騎士団の副団長をしてます。自慢ではないですが、こう見えて騎士団所属から最短で幹部入りした異種属なんですよ?一人を除いて」
「それは......すごいですね」
緊張でそれどころではなかった。曖昧な返答しかできない。
しかし考えてみれば、プライドが高く長寿なエルフが人間組織に属し、それなりの地位に就いているというのはかなり珍しいことだ。
エルフは異種属の下に就きたがらないし、人間は異種属を恐れ、忌み嫌う傾向にある。
「う~ん......やっぱり敬語はやめた!あなたも緊張するでしょ?」
「はいっ!?え?」
「あはは。面白い反応だねぇ」
突然大きな声を出されれば、それは驚く。
「改めて、私、不知火フレア。どこにでもいる普通のエルフだから、気軽にフレアって呼んで」
やや高い声だが、響くというより優しく包み込むようなトーンだ。
「しっかし、よく考えてみれば、天使様なんだから、私が敬語を使われるのも変だよね~」
「信じてくれるんですか?」
「もちろん。というか、人間なのにあんなに強いノエルを見た後だと、何を見ても驚かないよ。というかそれ以前に」
「ノエル......?」
「あぁ、ごめんごめん。ノエルっていうのは、うちの白銀騎士団の団長。最初にあなたに剣を向けた銀髪の女の子」
「あーあの」
「せっかくだから、この国のことをもっとよく話しておこうか。その方が不便しないでしょ?」
フレアさん曰く、この国は先程言っていたように軍事力と科学技術で成り立っているガチガチの先進国で、特に軍事力に関しては他の追随を許さないらしい。
白銀騎士団と桐生会という二つの組織が国内最高戦力であり、片方が白銀ノエルと不知火フレアをトップとするエリート騎士団で、桐生会はお姫様の御前でボクを助けてくれた桐生ココをトップとする荒くれ集団。姫を守り、姫の為に働く忠実な下部であり、いざというときには互いが互いにとっての抑止力となる。
城の地下には兵器開発を主とする研究機関もあるのだそう。
聞けば聞くほどバイオレンスな国家だ。
「っと。着いたよ。ここがココちゃんの家。後は2人で仲良くね」
「あの......」
「それじゃあまた!」
「いや、あの、これ......」
行ってしまった。
ぶっちゃけ眼前に広がる巨人の家みたいな建物について入る前にもっと詳しく教えてほしかったのだけれど。
先程までは賑やかな城下町だったのに、ここに来て一気に童話の世界に紛れ込んだような感覚だ。
この扉の向こうがどうなっているのか。入らなければいけないのは分かっているが、正直怖い。
「............ええい!ままよ!」
ボクは覚悟を決め、扉を開けるのだった!
開け......あけ......あ......
開けられない。
「うっそおっも............」
乙女の細腕に身の丈をかるく越えるこの扉は少々荷が重い。
うんとこしょ。どっこいしょ。それでも扉は開きませんキレそう。
「ふンンン~~~!ふにゅにゅにゅにゅにゅ~!ふんぎゅいィィィィィィ!!~~~~ッはぁ、はぁ、はぁ、はぁ............」
むりぽ。
これはもう諦めて一度お城に戻るしかないのかもしれない。でもあの狂暴なお姫さまにまた会わなければいけないというのは不安がある。気が変わって四肢を逆パカとかされてしまうかもしれない。
そうしてボクが途方に暮れていると 、、、
「なンですか。こっちは仕事終わりで疲れてるんで寝たいんですけど~」
「ピャーーー!?」
なんかでっかいドラゴンが出てきた。
ヤバイ。死ぬ。殺されてまう。もしくは一飲みに食べられ......
「ああ。天使公か。面倒くさいけど、ルーナたんの頼みだからな。仕方なくお前の面倒みてやるから感謝しな!」
「......えっと」
「?なんだよ」
「桐生ココ......さん?」
「そうだけど......っていうかそう聞かされてきたんじゃねぇのかよ」
「ハイ」
「あ~立ち話もなんだし、とりあえず中入んな」
「ハイ」
そんなこんなで、偉大なドラゴンと、ちっぽけな天使の共同生活が始まった。
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「んっ......ここは......」
常闇トワが目を覚ましたのは、薄暗くじめじめした洞窟の中だった。
日の光は差し込まず、頼りになるのはパチパチと小さな音を立てる焚き火だけ。
静寂が場を包んでいた。
「あぁ......起きましたか」
「っ!?」
「そんなに驚くことないでしょう。一応助けてあげたんですから」
声の主は眼帯をした少女だった。
愛らしいミニスカートに目が行くが、腰に待機するサーベルと銃は、使い込まれているものの、キッチリと手入れがされている。
少女に話しかけようとするが、ぐぅとお腹から音が鳴り、赤面する。
混乱しているのもあるが、空腹が酷くて頭が働かない。
「食べ物でしたら、少しだけ待ってください。もう少しで戻ってくるはずです。おや、噂をすればなんとやら......いや、それは悪い話をしているときのやつか......」
「ただいまペコ~」
「わためぇ大活躍だったよ~」
姿を見せたのは2人の獣人。兎と羊だろう。ファーのある愛らしい衣装に身を包み、両手いっぱいに持った食べ物を自慢するかのように前に着き出す。
「ハイハイ。この娘衰弱してるのでお静かに」
「倒れてた娘!よかった~目を覚ましたんだ!」
「大丈夫ペコか?何があったペコ?」
「あの......えっと......」
「その娘今起きたばかりで何も分からないから」
「そうなんだ。じゃあ自己紹介しないとね」
「人間ひとりに獣人ふたり。我ら天下の宝鐘海賊団!船もないけど仲良くしてね!!」
そうしてもう一方の物語も幕を開けた。
会長は卒業してしまっておりますが、本二次創作ではこの話から会長がレギュラーキャラとなります。Vの卒業は寂しいものではありますが、推しである限り、ふれてはならないタブーのような扱いをするのではなく、私の「好き」なんだと語り続けることは間違いではないと思っているので、プロットから展開は動かさず、このまま会長を書いていきたいと思っています。本人が活動をやめてもキャラクターとして残り続けることは、Vのある種の魅力であるとも思っているためです。ご理解いただければ幸いです。
言うてこの作品読む人がどれだけいるかって話なんですけどね。