元アクアビット社の狂人社員のIS転生録   作:コジマはいいぞぉ

1 / 7

 転生理由等はカット。気が付いたらIS世界に居た為説明不可。


#1

 

 

 何処とも知れない暗い部屋の中で、一人の男が満足そうにPCを操作していた。

 

 男の見た目は三十代半ば程、よれた白衣に身を包み、縁眼鏡を掛けた中肉中背の一般的な男性の様に見える。

 

 しかし、それはあくまで外見上の物。男の研究している物を知ればその男が悪魔の化身のようにも思えるかもしれない。

 

 

 ––––コジマ粒子。それはとある世界に於いて発見された特殊な物質であり、主に軍事的な技術に使用されていた代物。

 

 生態系へ深刻なダメージを与える極悪な環境汚染物質としての側面を持っており、この物質が発見されて数十年もしない内に世界は汚染され、地上から人類が姿を消してしまった程の代物。

 

 その緑に輝く粒子は人類を間違いなく衰退させ、世界を荒廃へと導く悪魔の砂とも呼べるだろう。

 

 

 「––––篠ノ之博士。これが、私の『世界』を破滅に導いたコジマ粒子だよ。これで私がこの世界の人間では無い事を証明出来たかな?」

 

 「––––へぇ。多元宇宙から来た技術者って、嘘じゃ無かったんだね」

 

 

 男に声を掛けられた女性の名前は『篠ノ之束』この世界に於ける技術革新を引き起こした天才科学者であり、既存の兵器を過去の遺物へと置き去りにした超兵器『インフィニット・ストラトス』の生みの親である。

 

 彼女は不機嫌そうな、しかし未知への興味を持ったような、そんな二色の瞳を向けながら男を睨む。

 

 彼女がこの男の元を訪ねた理由。それはインフィニット・ストラトスの心臓部である『コア』を()()されたからである。

 

 しかし、彼女はその事自体は別にどうでも良いと感じており、寧ろ複製一つ出来ない世界の科学者気取りに失笑していた所であった為、最初は好意的であった。

 

 IS。世界の社会通念すらひっくり返した超兵器はそれ以前の閉塞的な世界をある程度破壊し、自分と言う突出した天才––––イレギュラーが呼吸出来る程度には息苦しさを払拭する事が出来たと言える。

 

 しかしまだ足りない。まだ息苦しい。篠ノ之束は未だに世界の閉塞感に煩わしさを感じていたが、嘗ての共犯者は既にこの世界に馴染んでしまった。

 

 世界を基盤としたボードゲーム。自身はゲームマスターでありプレイヤーでは無い。故にプレイヤーレスシナリオが始まるかに思えた矢先に見つけたプレイヤーになり得る存在。そう思い接触を図ったが、その存在はGMを殺すルーニーであった。

 

 

 「僕はキミを高く評価しているんだ。このISと言う物は間違いなくそれまでの世界を破壊した。兵器としての有用性には少々疑問に感じる部分はあるが、ネクストやアームズフォートと比べてはいけないだろうし、()()()()()()十分な性能と言える。素晴らしい手際だ篠ノ之博士」

 

 

 パチパチと小馬鹿にする様に彼は拍手を送る。その仕草に束は明らかな苛立ちの表情を浮かべるが、彼は構わず話を続ける。

 

 

 「しかし、世界の破壊と言う点に於いてはまるで素人。お粗末としか言いようがない」

 

 「は? それまでの固定観念や兵器群の性能を過去にした上で技術革新も引き起こしてるんだ。馬鹿にしているわけ?」

 

 「いいや馬鹿にはしていないよ? だが僕は純粋に、物理的に、世界はもっと荒廃してこそ真の破壊と呼べるとそう思うのさ」

 

 

 そう言って彼は立ち上がり、まるで演説者を気取る様な足取りで持論を展開していく。最凶兵器『ネクスト』が空を支配し、世界を蹂躙していた平行宇宙の男の持論を。

 

 

 「技術は闘争によって進歩する。それは規模の大小に関わらず、他者と競い合い奪い合うが故に発生する競争性だ。故に戦争は発明の母であり、その流れで生じる技術革新は時代の流れを動かすのだよ」

 

 

 軽薄な笑みを浮かべ、10は離れた年下の束へと近付く男。その目には好奇心と加虐性の二色が滲み出ており、語る口調からも極め付けのエゴイストである事が肌で感じ取れる。人間の、最も醜い狂気。対峙する束は反吐が出そうな感覚に襲われていた。

 

 

 「世界の破壊など、その過程で引き起こしてしまえばいい。世界中の全てを巻き込んだ大戦火。だからこそ真に世界を破壊したかったのならISコアを467個しか用意しなかったのは正にお粗末。設計図を丸ごと世界に公開してしまえばそれだけで更に世界は捻じ曲がり、やがて反IS機運が高まる事で対IS兵器の開発とそれによって醜く増幅した男性蔑視から来る男女間の大戦争の引き金を引いてしまったら良かったのにねぇ? それとも––––キミの中にある良心がそれを咎めたのかな?」

 

 

 嘲笑。『国家解体戦争』『リンクス戦争』二つの巨大な戦争を経験し、世界の荒廃と人類の衰退の中に生きた男の嘲りは束を酷く不愉快にさせる。

 

 

 「–––––私をお前みたいな破滅主義者と一緒にしないでくれる?」

 

 「これは失敬。なにぶん私はつい最近までORCA旅団と言う狂信的なテロリスト集団にメカニックとして所属していてねぇ。思考がそちらによってしまっているのだよ」

 

 

 くつくつと笑う男に露骨な舌打ちを打つ束。男の表情、声色、仕草。何もかもが気に入らず、それ以上にこの僅かな時間で把握したこの男の人となりから()()()()()()()()である事を理解してしまい、更に苛立ちが募る。––––こんな狂人がプレイヤーなんて、と。

 

 

 「当時は『人類に黄金の時代を』などと使命感に酔った事を言っていたが、私としては世界を破壊する為に非常に都合の良い謳い文句でねぇ。空の上の揺籠が地面に落ちる様は何度思い返しても素晴らしい物だったよ。だがそれ以上にイェルネフェルト博士の設計した00–ARETHAを調整できた事は至福と言っていい、アレこそ技術革新に於ける人間の狂気の産物であり、科学者の果ては狂人である証拠に––––」

 

 「もういい。黙れよ」

 

 

 そう言って、束は指を鳴らす。パチンと言う乾いた音と共に彼女が自身用に作成したISの兵器が起動し、目の前の狂人を粉々に吹き飛ばす。

 

 肉片と大量の血液で汚れた部屋。態々出向いてまでストレスを溜めなければならなかった事にため息を吐きながらプレイヤーとして『失格』とした男を忘れようとした時だった。

 

 

 「––––––人の話は最後まで聞く物だよ」

 

 

 背後から今しがた殺害した男の声がし、彼女は反射的に振り返ってしまう。

 

 目の前には大量の肉片と夥しい量の血液がそこにある。だが同時に、先程殺害した男が変わらずそこに立っていた。

 

 混乱は数瞬。しかし『天災』と渾名される頭脳は瞬間的に答えへと辿り着く。

 

 

 「……クローン」

 

 「ご名答。流石は希代の天災」

 

 

 ニヤリと笑う彼に舌打ちをする束。この世界では未発見の物質を見つけるだけの施設やISコアを作成する為の資金繰り、それの回答もこの技術である。

 

 人格・思考能力・その他パーソナルデータを全て電子化し、それらを完全にトレースするなど()()()()()()()()()()()()()()()。またそれと同じく、どの世界にも若返りを求める者は居るのだ。

 

 そして、男は軽薄な笑みを浮かべながら束に向かってこう言った。

 

 

 ––––ゲームをしようじゃないか。僕とキミとで、世界を使って。

 

 

 こうして、天災と災厄によるプレイヤー対プレイヤーのゲームが始まるのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。