元アクアビット社の狂人社員のIS転生録 作:コジマはいいぞぉ
攻撃目標はUSAに存在するエリア21と呼ばれる軍事施設。ISの登場以降、軍備費がそちらへ集中している為か以前に比べ、その機能を失っている場所だ。花火を上げるには最適だろう。
このミッションはキミへの資金石でもある。人類最強のなり損ないとは言え、基礎スペックは悪くないが、残念な事にリンクスとしては『粗製』だからねぇ。
使用兵装はコジマ兵装にしておいた、機体名は『レイス』是非僕に綺麗な花火を見せておくれ。
––––この世界で初のリンクスとなった少年は、ISを起動しながら研究所の周囲に設営されたカタパルトに両足をドッキングさせる。
彼は織斑計画の中で生み出された個体の中でAMSと呼ばれる技術への適性を有しており、それによって廃棄処分からは間逃れる事が出来たのだが……彼には一つ問題があった。
嘗ての超兵器ネクストを操る為にはAMSと言う人間と機械を物理的に接続する技術を必要としており、それによって既存の兵器では到達不可能な機動性・運動性を有して居た。
現在男が用意するISの全てにこの技術が流用されており、亡国企業から買い取った廃棄物達は全てリンクスへと改造されている。
だが、このAMS技術も万能と言う訳では無く、AMSに適性を持つ存在にしか使用が出来ない上、直接人間と機械を接続する事によって発生する負荷により、被験体が使い物にならなくなる可能があると言う中々に難しい技術であった。
その為AMS適性が高ければ高いほどそれによる負荷が少なく優秀であり、逆に低ければ負荷が多くなりリンクスとしても劣等となる。故に粗製と呼ばれており、少年もまたその一人。
––––そう言った意味では、戦力的な安定性はISと大差無いのかも知れないが……故郷の技術は色眼鏡が掛かるのだろう。
『砂漠の狼』『アナトリアの傭兵』嘗て粗製と呼ばれながらも多大な戦果を残し、例外として名を刻んだ者も存在するのだが……それは彼らには己が命よりも優先すべきなにかが存在しており、その過程で生み出された自己犠牲と決意による力量差であり、感情の死んだ彼では到達する事の出来ない領域。
生体CPU。ISの男性操縦者。この世界に合わせたリンクス化手術の実験体。技術試験用の男性個体であり、用意された機体も最凶最悪のコジマ技術の結集体。ただそれだけの存在であった。
少年の身に纏うISの様相は知る人間が見ればレイレナードの亡霊と称するかもしれない。アクアビット社がリンクス戦争時にはレイレナード社と親密な関係で会ったことからそのヒロイックなデザインが採用されている。
ただし–––右腕には
カタパルトが起動し、出撃の準備が整うと同時に少年は前傾姿勢となり、射出と同時に跳躍を行う。
––––その際に機体の周囲にコジマ粒子の輝きが見えた。
プライマルアーマーと呼ばれるそれは、コジマ粒子によって作り出された球体のフィールドであり、外部からの銃弾やミサイル等の攻撃を無効化する他、空気抵抗による速度減衰を無効化する能力を有している。
無論致命的な汚染物質であるコジマ粒子である以上、展開するだけですら環境へ深刻なダメージを与える兵装なのだが、少年もまた擦り切れてしまっている為だろう、自分の帰る場所だと言うにも関わらずそれを展開すると、反動によって高く飛び上がり、ブースターを点火する。
オーバードブーストとクイックブースト。ネクストが有して居た高速巡航能力と瞬間加速能力、少年は音すら置き去りにする様な超高速を持って目的地へと向かうのだった。
–––––一方、その様子を眺めて居た『博士』はオーバードブーストの起動音と、プライマルアーマーによるコジマ粒子の輝きに酷く満足そうな表情を浮かべていた。
隣には出撃した少年とは別の廃棄物が立っており、同じ様にモニターからネクスト技術を流用したISの動きを眺めている。
「博士。あれがネクスト、なのですか?」
「そうだよ。あれが
オペレーターの真似事を行いながら、AMS適性が優秀な個体であった彼女に向かってネクストについて博士は語り出す。
ネクスト以前の最強の称号はアーマード・コアであり、それを駆る傭兵『レイヴン』もまたその称号を欲しいがままにしてきた。
アナトリアの傭兵がそう言った意味では有名だろう、しかしアーマード・コア単騎では世界を滅ぼす事など出来ない。
「人類は往々にして罪深い好奇心にその身を委ねる。必ずしもそれが悪と言う訳では無いが、コジマ技術に関しては悪と呼べるだろう。もちろん、そのコジマ技術が惜しげもなく使用されているネクストもまた、悪の兵器と定義する事が出来る。一般的にはね」
「では博士は悪党と言う訳ですか」
「世間的にはそうだろうねぇ。尤も、その悪党の駒であるネクストを使うキミ達もまた悪人となる訳だがね」
「我々は元より廃棄物。こうして生き永らえる事が出来るのは博士のおかげです。悪意の中に我々は喜んで沈みましょう」
「期待しているよ?」
そう言って博士は笑う。自分がリンクスの素体とした廃棄物達は今出撃している少年を除いて皆このように恩を感じている、利己的な改造だったにも関わらずだ。
それほど織斑計画の目標ラインは高かったのだろう、嘲笑のような笑いを一つ溢すと、モニターに集中する。
視界に映るのはエリア21に突入した少年のISの姿。––さぁ最凶を見せてくれ。
––––エリア21に到着した少年は、基地内からの警告を無視してバックウェポンを起動する。
そしてコジマミサイルを放ちながらコジマキャノンのチャージを開始。放たれた一発のミサイルは推進剤にすらコジマ粒子を使用している為か、真昼の空であっても緑の軌跡を辿らせながら目に付いた格納庫へと着弾する。
きのこ雲が出来上がる程の大爆発と、それによって撒き散らかされるコジマ粒子の輝き、それは爆心地の周囲に存在する全てを閃光と共に消し去ってしまう。
––––それは圧倒的な強さであった。地上からの砲撃はプライマルアーマーによって遮られ、IS本体のSEを1%たりとも削る事が出来ず、また既存の兵器を遥かに超えた超高出力の緑色のエネルギー兵器による広範囲破壊。
コジマミサイルとコジマキャノンによる空爆に晒されながら基地内に鳴り響くアラート。その中でも簡単に消えて行く仲間の命を一人でも救うべくひっきりなしに駆け回る通信。
『所属不明のISによる襲撃を受けている、至急援護されたし』その様な内容が他の基地へと向かうまでの数十秒、その数十秒の間でエリア21は陥落した。
粗製のリンクスによる一方的な蹂躙。AMS技術によって齎された超高機動と、コジマ兵器の爆風による範囲破壊。
毒々しい緑色の輝きを少年は無感情に見下ろしながら、作戦の終了と共に帰投しようとした時だった。
「––––防衛部隊が全滅? 僅か数十秒足らずで? ファング・クエイク!! 黒いISを撃破する!!」
アメリカ合衆国第三世代機ファング・クエイク。安定性と稼働率を重視し汎用性を高めている他、四基のスラスターによる
ハードポイント各種にブースターを追加しており、先行して来たのだろうが、それを駆る彼女には知らない事が一つ存在していた。
––––それはコジマ兵器の性質。
作戦領域に突入した瞬間、瞬時加速を行おうとした彼女はISのSEが急速に減少して行く事に気が付き、思わず立ち止まってしまう。
ハイパーセンサーに投影された情報には高濃度の放射線汚染と重金属汚染による腐食と分解。見れば地上に存在する残骸や人間の遺体は急激な崩壊を始めており、突入して数十秒も立たないのにも関わらず、彼女の機体も外装がボロボロと朽ちている。
急速なSE減少は搭乗者を守る為に絶対防御が発動している為、そして空中を漂うこの緑色のナニカがその元凶であると、そう思考したまでは良かった。
しかし、此処は戦場。その思考へ意識を割かれた一瞬の隙に、少年はクイックブーストを吹かせて彼女へと急接近する。
気が付いた瞬間には遅く。左手に装備されたコジマブレードが輝きと共にその体へと突き刺さり、コジマ爆発と共に機体ごと地上へ叩き落とされた。
ノンリミッターである筈の軍用機であったが、コジマ粒子の性質が災いし、搭乗者を守る為の絶対防御が更に発動。ダメージと合わさる事で一瞬の内に彼女の機体はエネルギー切れを引き起こし、高濃度のコジマ汚染によって穢されたエリア21の大地に生身で晒される事となる。
あっさりとした結末、それを一瞥すると少年は今度こそ帰投した。
––––後にこのエリア21は完全な立ち入り禁止区域に指定され、後世まで多くの被害者が埋葬されずに打ち捨てられる事となる。