元アクアビット社の狂人社員のIS転生録   作:コジマはいいぞぉ

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 ––––エリア21。高濃度コジマ粒子に汚染された世界初のネクストによる惨禍を篠ノ之束はモニター越しに眺めていた。

 

 無人探査機はエリアに突入して暫くして機能を停止し、計器によって観測された値は核汚染など非にならない惨状である。

 

 彼女自身もデモンストレーションとして世界中のミサイルを利用した事があったが……博士の行いに比べれば児戯の様な物だった。

 

 そう言った意味ではISを使ったデモンストレーションをもっと派手に行っておけば良かったかもしれない、彼女は冗談めかした考えを浮かべながら、博士が作ったISの戦闘記録をループ再生する。

 

 No.9によるエリア21襲撃以後、世界へ対してその存在を示すかの如くに世界各地にて破壊活動を行う博士のIS達。

 

 各国はその対策を取ろうとしているが、コジマ粒子による実弾兵器の無力化や、No.9の装備を筆頭としたコジマ兵装の前にまるで歯が立たずに敗戦を繰り返している。

 

 その為、コジマ粒子の研究が急務とされているものの、多大な環境汚染物質であるコジマ粒子をノウハウも無しに取り扱う事に対しては慎重にならざるを得ず、世界情勢は『博士』一人にコントロールされつつあった。

 

 束は亡国企業からの裏取引で入手した情報によって、それらのISを博士が『ネクスト』と呼称している事、戦力としてプロジェクト・モザイカの失敗作達を流用している事を知り、様々な思考を巡らせる。

 

 初対面時に彼の世界についての情報をある程度聞かされた。それは所謂今後引き起こす異種格闘技戦(PvP)への前提条件の擦り合わせに近い物だったのだろうが、それによって得た事前知識から推察するに彼はISの技術を自分の技術による視点から研究しているに近いだろうと予測した。

 

 大まかな分類分けをするならばISの技術は所謂ハイサイエンス。既存の物理法則だけではない自己進化や搭乗者の願いを叶える為の機能等を搭載しており、それ以前の科学では再現不可能な分類に属している。

 

 一方で博士の技術はローサイエンス。既存の物理法則から逸脱しない代物であり、コジマ技術とその異常な技術力以外は特筆する物は無い。

 

  

 だが、博士の狂気を見る限り彼の宇宙はとてもろくでもない場所である事は想像に難くなく、そう言った意味では彼女は博士を歓迎していた。

 

 自分のヘイトをぶつける事の出来る相手。不満を解消出来る相手。共犯者とは違い一切の親愛を必要とせず、感情のままに技術力をぶつける事が可能な好敵手。

 

 そう、このゲームは世界を舞台とした二人の科学者の技術力マウントの取り合い。SNSで発生する低俗な喧嘩に近い。

 

 尤も、互いに実際に大言を放てるだけの技術力を有しており、互いの技術力を吸収し合える柔軟さも併せ持つが故にその傍迷惑さは桁違いなのだが。

 

 

 「さてさて、暫く動きを見てたけど世界的にも対応出来てないみたいだし、NPC(有象無象)を動かすのはこの辺で切り上げて束さんも動いちゃうぞー」

 

 

 連日連夜騒がれているネクストによる襲撃事件のニュースを聞き流しながら軽い口調でそう呟く束。彼女は新しく作った無人機を見つめながら、自分の側近が作った黒焦げとなり煎餅状になったミートパスタを口にしつつ指を鳴らす。

 

 その音と同時にゴーレムと名付けられた機体が起動し、ブースターを吹かせながらラボを発進して行く。

 

 

 「––––対ネクスト(ローサイエンス)用に再設計したゴーレム(ハイサイエンス)だよ? 楽しんでね、博士?」

 

 

 嘲笑を浮かべながら彼女は誰に聞かせる訳でも無くそう呟く。––––どうやら私も、あの博士の狂気に当てられて気が触れ始めているらしい。

 

 彼女はそう自己分析すると『くーちゃん!! 一緒にお風呂入ろー!!』と抱き付くのだった。

 

 

 

 –––––世界を破滅へと導くコジマ技術。それを有し、躊躇なくそれを使用する博士は間違い無く狂った人間であると言える。

 

 しかし、世の中には博士が語る様に狂気に惹かれる愚か者達も存在する。それは純粋な好奇心か、破綻した人間性か、或いは()()()()()()()()()()()()()()と勘違いした策謀家気取りかは定かでは無い。

 

 だが、そいういった者達は水面下で博士との接触を行なっており、その戦力を享受していた。

 

 フランス某所に存在するこの秘密基地もまたその様な場所であり、博士から提供された『00–2B』とコジマキャノンを装備したマッスルトレーサーを使用している。

 

 博士からすれば必要の無い戦力ではあるものの、資源や資金の回収をする為にはこう言った取引をしなければならない事と、敢えて自分の技術を鹵獲させてそれを流用させようと言う魂胆もあり、だからこそこの施設が襲撃された時、博士はその光景を眺めるだけで自分の戦力を動かす事は無かった。

 

 PvPである以上、相手の出方を伺わなくてはならない。自分の戦力を育てるつもりならば動いても良いのだが、博士からすれば手駒のリンクス達ですら使い潰す予定である以上、破壊の手際を確認する事にしたのである。

 

 

 襲撃を行ったゴーレムに対し、施設の者達は提供されたMTによって迎撃を試みるが、人間とは思えない反射速度でコジマキャノンを回避した上で両腕のビーム砲を放ち、的確にコクピットを貫通させて行く。

 

 爆発と共に散るコジマ粒子。その危険性を十分に理解している為か、緑色のその粒子から研究者達は逃げ惑う。

 

 縦横無尽に空を機動しながら、施設を全て更地に変える勢いを持って敷地内全てにビームの雨を降らせて行く。

 

 熱量が周囲を焼き尽くす中で彼らもまた00-2Bを起動させ、無人機へ対して迎撃に向かわせた。

 

 自律型ネクスト。最高戦力であるそれはOBを使用して超速力で接近すると、超高出力のレーザーブレードを展開しながらゴーレムへと斬り掛かる。

 

 その一閃は出力だけなら世界最強クラスの威力を持ち、それは世界最強の扱った一種の伝説『零落白夜』も劣らない物であった。

 

 だが、その一閃はゴーレムを切断する事は無く、寧ろ慣性や遠心力を無視した曲線軌道によって瞬間的に裏に回り込み、同じくレーザーブレードで横一閃を放つ。

 

 放たれた一撃によって動力炉のみを切断され、誘爆する事無く墜落して行く。これによってこの秘密基地はその機能を失ったが––––その間、僅か二十秒足らずであった。

 

 

 ––––その光景を眺めていた博士は愉快そうに笑みを浮かべ、『まるでアステリズムのようだ』と呟き、モニターの電源を落とす。

 

 

 「博士。あのままでは00-2Bが鹵獲される可能性がありますが宜しいのですか?」

 

 「もとよりそのつもりだからねぇ。篠ノ之束が作りだしたインフィニット・ストラトス(ハイサイエンス)よりも我々のネクスト(ローサイエンス)の方が人は理解し易く、また技術流用もしやすいだろう?」

 

 

 博士はNo.1からの問い掛けを笑う。00-2Bが撃墜された事も、自身の技術が漏洩する事も、ゲーム内のイベントの様な物だと言う。

 

 それは企業間の経済戦争と私利私欲による潰し合いによって経済発展を成してきた世界の人間としての思考であり、より端的に言うのであれば彼はこの世界でもまた国家解体戦争の様な大事件を引き起こそうとしているらしい。

 

 戦争を手段としている世界の狂気。この世界に浸透するのが先か、自分が倒れるのが先か、実に楽しみだと彼は笑うのだった。

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