元アクアビット社の狂人社員のIS転生録   作:コジマはいいぞぉ

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 ––––––フランスのとある街の中を人混みに紛れながらNo.9は当てもなく彷徨っていた。

 

 彼はリンクス達の中で唯一自由外出が許されており、博士からは明確な特別扱いを受けている。

 

 その理由はNo.9には分からない。だが、博士の言葉をそのままの通り受け取るのなら『イレギュラー』と言う存在になる事を期待されている、らしい。

 

 例外と言う意味ならば女性にしか動かせないISを強引な手段とは言え動かす事が出来る自身は例外と言えよう、しかし博士の語る『イレギュラー』はもっと別のナニカだと言う。

 

 『先天的な戦闘適応者。まぁ分かりやすい言い方をするならば、戦いの天才と呼ばれる者達の事だねぇ。国家解体戦争以前に存在していたレイヴンの中にはそういった者が少数ながらも存在していてね、それらの事をイレギュラー、或いはドミナントと呼んでいたのさ』

 

 博士はそう嘯いており、それ故に他の個体とは違う『ナニカ』を感じさせたNo.9にはある種の優遇を行い、その赴くままに行動を許している。

 

 それはある意味では彼の手綱を手放すと言う行為であり、ふらりと出掛けてそのまま離反する可能性を否定出来ないのだが……元より『博士』は破滅主義者であり、自身の蒔いた災いの種に焼かれる事すら、彼にとっては憂慮すべき事では無かった。

 

 

 しかし、その様な思惑をNo.9は知るよしも無く。自らが力と引き換えに失ったナニカを探すかの様に行き交う人々を避けながら、待機状態のISをアクセサリーに偽装した彼は失った心が僅かに揺れる物を探す。

 

 空を見ると僅かに心が揺れる。しかしそれだけで大きくナニカが変わる訳では無い。

 

 新たな刺激を求めて外出した彼だが、その行き先をフランスと定めた理由は至極単純な物で、つい先日自分達の秘密基地が破壊されたと言う話を聞いたが故に、それに関連付けてフランスへと足を向けただけである。

 

 従って彼には特別この地でなければならない理由がある訳では無かったのだが……外出する前に目敏く自身を見つけたNo.10からは『土産よろしく!!』と背中を叩かれた上に、またしてもくしゃくしゃのメモを握らされていた為、一通り街を見回った彼はNo.10の言う『土産』を探そうと目的を切り替えた。

 

 自身にその手の物を選ぶ感性が残って居ない事を理解している彼は、それを見越して渡されたであろうメモを開いて困惑の表情を浮かべる。

 

 ミミズののたくった様な悪筆な事はまだ許容範囲内ではある、しかしそこに書かれていた文面は機械的な行動・思考に偏っているNo.9には到底理解できる物では無く、自身の知識の中で該当する物品を検討しながら立ち往生する羽目になった。

 

 そんな風に数分間棒立ちでメモ用紙を眺めている少年を見兼ねたのか、一人の少女が彼に声を掛ける。

 

 

 「あの、お困りですか?」

 

 

 その言葉に反応したNo.9が振り向くと、そこには同年代らしきブロンドの少女が立っていた。

 

 彼女はNo.9の顔を見ると、同じく同年代であると気が付いたのか、にこりと笑顔を浮べながら『私は地元の人間だから、もし迷子とかで困ってるなら案内できるよ?』と話しかける。

 

 No.9は考える。自身の存在はある種のトップシークレット、No.1からはくれぐれも素性をバラすなと命令されており、外出時も極力他者との接触は必要の無い限り控えろと言い付けられている為、このまま彼女に同行を依頼するのは可能かと悩んでいた。

 

 しかし、このままでは自身に渡されたメモに該当する物品を持って帰ると言うおつかい(ミッション)は達成不可能と判断し、コミニュケーション能力の欠陥故にNo.9は突きつける様に少女へとそのメモを見せ付ける。

 

 そこには乱雑な文字でたった一言『土産:なんか』と書かれており、少女もまた思いの外雑な内容に乾いた笑いを溢してしまう。

 

 土産物を頼まれたにも関わらずその頼まれものがなんともアバウトな事に同情しつつも、一身上の都合で鬱屈した日々を送っている最中での丁度いい息抜きになると判断したのか、彼女は『良かったらお土産、一緒に選んであげようか?』と続けて言った。

 

 ––––これが、No.9とシャルロット・デュノアとの初邂逅であり、後に彼の人生を大きく変える出会いであった。

 

 

 

 No.9が運命をしている最中、一方の土産を依頼した張本人は暇を持て余しながら研究所内を歩き回っていた。

 

 彼女は他の『きょうだい』とは一風変わった価値観と性格をしており、無駄話が非常に多くて良く口が回る。

 

 その為他のメンバーからは敬遠されており、研究所内でも変わり者扱いを受けていた。

 

 それは無感情となったNo.9ですら例外では無く、感情が揺れる存在と認識しながらも、嫌悪感というベクトルに振り切っているからか姿を見ると踵を返す。

 

 …………尤も、No.10はその様な状態であろうとあまり気に留めておらず、見つけ次第他のきょうだいへ絡みに行っているのだが。

 

 そして、そんな風に話し相手を探して迷路のような研究所を彷徨う事数分間。自分よりも上位ナンバーであるNo.2を発見し、無音のまま接近して彼女の背中を思いっきり引っ叩いた。

 

 

 「よぉNo.2!! 何してんだこんなところで!!」

 

 「……No.10。いきなり背中を叩くな。それとお前には関係の無い話だ」

 

 「つれない事言うなよ〜。今暇なんだわオレ、ちょっと付き合ってくれよ〜」

 

 

 そう言いながら肩を組み馴れ馴れしく接するNo.10。そんな彼女の様子に深い深い溜息を溢すと、No.2はその手を払い、壁に凭れる様にしてNo.10へと振り返る。

 

 彼女からすれば会話に応じる必要は無いのだが、彼女もまた他のきょうだいとは違い、少々面倒見の良い性格をしており、暇そうにしているNo.10を放っておけなかったのだろう。

 

 ……もしかすると、下手に無視するよりは会話に応じた方が楽だと判断したのかもしれないが。

 

 

 「No.9を探していてな。屋上を見に行ったが珍しく不在なんだ。何処に居るか知らないか?」

 

 「ん? ああ、アイツなら今フランスに出掛けてっけど?」

 

 「フランスか……まぁいい。帰って来なければ奴抜きで話を進めるだけだ」

 

 「おっ、なんかあんのか? その口振りだとよ」

 

 No.2の思わせ振りな発言にNo.10が食い付く。その反応は予想済みだったのか、少し躊躇うような仕草を見せながらもNo.2は口を開く。

 

 

 「…………近い内に襲撃任務があってな。その僚機として奴を連れて行く事になっていたんだが、居ないなら仕方がないだろう」

 

 「ほーん。ならオレが僚機で出てやるよ、丁度暇してっし」

 

 「残念ながら、今回の任務は単純な破壊目的じゃなくてな」

 

 

 彼女曰く、とある国の軍部から秘密裏に依頼された内容であり、ある種のマッチポンプ的な側面を持っていると言う。

 

 コジマ技術を搭載したISによる襲撃によって、それを対策する為にその技術を研究しなければならないと言う建前を作るための任務。

 

 そもそも、軍部から秘密裏に依頼された任務と言う時点で内容の真偽があやふやであり、こちらへどうやって接触したのかと言うのも不明、博士やNo.1に詳細の開示を求めても回答は返って来ない。

 

 No.2はこの任務が酷くきな臭く感じており、それ故に他のきょうだいに向かわせるよりは自分が出向いた方が良いと判断していた。

 

 No.9を僚機に求めたのも、彼のISは全兵装がコジマ兵器である為、なりふりを構わないのであれば作意を上から捩じ伏せられると判断した為である。

 

 

 「そう言う訳だ。壊す専門のお前では壊し過ぎる上に罠だった時の引き際に不安が残る、私が単騎で出撃するよ」

 

 「へーへー、どーせオレは短気ですよーだ」

 

 

 そう言ってNo.10は拗ねてしまう。そんな様子に『手の掛かるきょうだいだ』と呆れるNo.2だった。

 

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