「八雲紫…それは昨日の段階で返事をした筈だ……その件に関しては紅魔館は現在保留中と…」
「そう、でも何かが起きてからじゃ遅いんじゃないかしら?」
「…何も起きてない内に行動する気は無い……先の事なんて誰も解らないからね」
「あらっ、貴女は未来が見えるのじゃなかったの?」
「見えるのは運命よ……予知とは違うわ」
「似たような物でしょ?」
「…運命はその時の選択によって幾らでも変わるわ……シオンの場合は特にね…」
「……それはどう言う意味かしら?」
「……そうね…例えば、霊夢が明日の今頃、何をしているのか言ってみなさい」
「そんなの解る訳無いじゃない…」
「じゃあ今日、霊夢が風邪を引いて寝込んでいる場合、明日霊夢は何をしてるかしら?」
「それは………成る程、そう言う事ね…」
「そうよ…もっと解りやすく言うなら霊夢がグルグル巻きにされて何処かに閉じ込められていればもっと予想しやすくなるわ」
「つまり、あの坊やが出来る事の数だけ選択肢が存在するから、どの選択をするのか予測が困難と言う訳ね?」
「そうよ……それに、下手な干渉は危険よ……あの子の過去の運命を見たけど……多分、貴女が想像してるよりあの子は残酷よ」
「うぅぅぅぅ、気持ち悪い」
「てゐ、水頂戴…」
博麗霊夢と、うどんげちゃんが仲良く二日酔いでおねんねしていた。
あの後、皆各々の家に帰って行ったんだけど…皆フラフラだったから無事に帰れたのかな?
まぁ、萃香ちゃんとミスティアがついてるから大丈夫だと思うけど…
「て〜ゐ〜、水頂戴よ〜」
「知らないよ……自分でとれば?」
うどんげちゃんの懇願をてゐちゃんはバッサリ斬った。
てゐちゃん、昨日の事を根に持ってるねぇ〜……僕なんか一晩泣いたらスッとしたけど…
「はいはい、お水だよ♪」
「うぅ、シオンさん…ありがとう」
「てい(ゐ)!!」
僕が、うどんげちゃんに水を渡そうとしたら、てゐちゃんが横から手を突き出してコップを倒した。
「きゃっ!!…てゐ、何するの!!……いたたたた」
水を顔面から被った、うどんげちゃんが抗議をしたが……頭を押さえて踞った。
「あっ、ごめ〜ん♪…手が滑っちゃった♪…でも頭冷えて気持ちが良いでしょ?」
「て〜ゐ〜…私に怨みでもあるの?」
「自分の胸に手を当てて考えな!!」
てゐちゃんの言葉通り、うどんげちゃんは自分の胸に手を当てた。
「……まぁ、てゐよりは大きいよね」
「喧嘩売ってんのか!!…誰が胸のサイズの話をしてる!!」
「その意見は僕も賛成だね♪」
「やかましい!!…アンタは黙ってろ!!」
「てゐちゃん…怒り過ぎ…」
「てゐは精神の波長が短いから短気なのよ」
「ふ〜ん、そうなんだ……てゐちゃんは短波なんだね」
「私はラジオ放送か!!」
「あっ、それ良いね♪…てゐのラジオ放送局…僕が司会をやろうか?」
「何で私の放送でアンタが司会をやるのよ!!…って言うか誰がそんな放送やるかぁぁぁぁ!!」
僕達のやりとりを見て、博麗霊夢が僕達の事をジロリと睨んだ。
「アンタ達!!…いい加減にしなさい!!…頭に響くでしょうが!!……いたたた…」
博麗霊夢が僕達に怒鳴り付けてきた。
と、ここで永琳ちゃんが部屋に入ってきた。
「貴方達、ここは私が看るから戻りなさい……部屋の外まで声が聞こえたわよ」
永琳ちゃんは溜め息をついて言った。
「ん…解った…行こう、てゐちゃん」
「…はいよ」
僕とてゐちゃんは部屋を出て廊下をテクテク歩いて行った。
「全く、うどんげの奴…昨日の事、全然覚えて無いなんて…」
「……そうだね……!!……」
庭先から気配を感じる……この感覚……まさか!?
「シオン…どうしたの?」
「………何でも無いよ♪…てゐちゃん、先に行ってて…」
「…?……解ったよ」
てゐちゃんが先に行ったのを見送って僕は庭に出て呼び掛けた。
「…狐さん…隠れてないで、出ておいで♪…ここには恐い猟師さんは居ないよ?」
僕が呼び掛けると木の陰から胸の大きい綺麗なお姉さんが現れた。
とても綺麗なお姉さんだけど……僕は違った意味で緊張した。
なぜなら、このお姉さんは九本の狐の尻尾が生えているからだ。
「ナインテール……幻想郷にも居たんだね…」
「ふむ、お前の居た世界では九尾の妖狐の事をそう呼ぶのか?」
「そうだよ…お姉さん誰?…見た所、僕の事を見張ってたみたいだけど」
「私は八雲藍、紫様の式だ……お察しの通り、お前を見張っていた」
「ふ〜ん、本当にそれだけなの?」
「……その質問に答える義理は無いな」
「答えさせる事なら出来るよ♪……ここには恐い猟師さんは居ないけど……悪い魔法使いなら居るからね」
僕の言葉を聞いて狐さんは殺気を放ちながら低い声で言った。
「…試して見るか?…人間」
「止めておきなよ♪…『今』の狐さんじゃ逆立ちしても敵わないよ♪……その証拠にほらっ…ライカに簡単に背後を取られてるよ」
「なっ!?」
狐さんは背後から首筋にナイフを突き付けてるライカの姿を見て驚愕した。
「…驚異値D−、この程度では勝負にすらなりませんよ?」
そして物陰からメリルも姿を現した。
「…成る程、確かに『今』の私では太刀打ち出来ないな…良いだろう、ここは引こう……今回は様子見だけしか紫様から命令されていないしな…」
「ライカ、離してあげて」
「了解ですぅ〜」
ライカはナイフを退けて、狐さんから離れた。
「…紫様が警戒するだけの事はあるな」
狐さんはそれだけ言って去って行った。
「……メリル、あの狐さんの驚異値の上限値は?」
「…推定でA以上と思われます…もっとも、本来の力を発揮するには特定の条件がある様ですが」
「A以上か…まぁ、ナインテールだからね……でも、それを使役する紫ちゃんはそれ以上の可能性があるね♪」
「驚異値S……終末の騎士並み…ですか?」
「…その位は覚悟する必要があるね」
「そうですね…場合によってはそれ以上かも……では私達はもう戻ります」
「何かあったら呼んでね、マスター♪」
ライカとメリルはそう言って、その場を後にした。
「……ねぇ、シオン…今の八雲藍でしょ?」
てゐちゃんが姿を現した……どうやら、物陰から覗いてたみたいだね…
「そうだよ、僕の事を見張ってたみたいなんだ」
「そう…気を付けなよ?……八雲紫に睨まれたら後が恐いよ?」
「博麗霊夢も同じ事を言ってたねぇ〜」
「それだけ恐ろしい相手なんだよ……あのスキマ妖怪は…」
「……そうだね…胡散臭い態度で影に隠れ勝ちだけど……あの人、相当な突っ込み属性だよ」
「アンタは漫才がしたいんか!?……幻想郷でも間違いなく三本指に入る実力者って言いたいのよ!!…私は!!」
「解ってるよ、てゐちゃん♪……本当に短波なんだねぇ〜♪」
「まだ引っ張るか!!」
てゐちゃんがポカポカ僕を叩いてきた。
「痛いよ、暴力反対」
「アンタが余計な事ばっか言うからよ!!」
てゐちゃんが頬っぺたを膨らませて言った。
「…所で、アンタ…今日一日どうする気?……うどんげは二日酔いでダウン、師匠はその看病で動けない…まぁ、元々師匠は忙しいから関係ないけど…」
「そうだねぇ〜、今日は屋台もやらないし……一応療養中だから遠出も出来ない……自主トレかな?」
「ふ〜ん…じゃあさ、私と鬼ごっこでもしない?……負けた方が何でも言う事を聞くってルールで……勿論、トレーニングも兼ねてるから魔法は禁止で」
「…それだと僕が圧倒的に不利だけど…」
「ハンデとして私は米俵を担いで逃げるよ♪……因みにフィールドは竹林よ」
「それならせめてサーチ系の魔法だけ有りにしてよ……じゃないと迷子になっちゃうよ」
「ん〜、解ったよ…じゃあ準備してくるから表で待ってて」
「ん…解った…」
僕はてゐちゃんにそう言って表に出た……待つこと数分、てゐちゃんが米俵を担いで現れた。
「準備出来たよ♪…じゃあ十数えてから追ってきてね♪」
てゐちゃんはそう言うとダッシュで竹林の中を駆けて行った……凄いスピードだねぇ〜、もう見えなくなっちゃったよ。
「い〜ち、に〜、さ〜ん、し〜、ご〜、ろ〜く、し〜ち、は〜ち、きゅ〜び、じゅ〜う!!……行くよ♪」
僕も竹林の中を駆けて行った。
「どれっ…マキの『眼』を借りるか♪」
僕はマキの『眼』を借りてサーチ魔法を発動させた。
「てゐちゃんは…アッチか……罠の反応が有るな……迂回して追い掛けよう…」
僕は罠の有る方向を避けて追跡した…が…
「ぜぇ…ぜぇ…やっぱり、魔法抜きだとキツいね…」
僕は早々にバテた……むぅ…これじゃあ追い付けない…てゐちゃんの進行方向を予測して待ち伏せるしかないね…
僕はそう思い直して歩き出したら…
「今だ!!…それっ!!」
と言う掛け声と共に僕の足元にロープがピンッと張られた。
「うわっ!!」
僕はロープに引っ掛かり盛大に転んだ。
「う〜、いたた…何なの?」
見ると草むらに兎のモブ妖怪が居た……あれは確か…てゐちゃんの子分じゃ…
「何するんだよ!!」
「ボスの命令でお前を邪魔しろと言われてるんだ♪」
モブ兎はそう答えた。
「反則じゃん」
「何言ってんの?…助っ人無しなんて言って無いよ♪……ってボスが言ってたよ♪」
モブ兎はそう言って姿を消した。
口八丁、流石因幡だねぇ〜……でも、それは僕も助っ人を使って良いって事だよね?
僕は通信端末でマキに連絡を取った。
「マキ…指定の座標に僕を転移させて」
「御命了承」
僕はてゐちゃんの進行方向に転移した……草むらに隠れて待ち伏せしよう。
暫くすると、てゐちゃんの声が聞こえてきた。
「ふふん、ここまで逃げれば大丈夫だね♪」
てゐちゃんは僕が隠れてる草むらに接近してきた……今だ!!
「それっ!!」
「ウサぁ!!」
僕はてゐちゃんに抱き付く様に躍り掛かった。
「つ〜か〜ま〜え〜た♪」
「ちょっと!!…何でアンタがここに居るのよ!!…さては魔法を使ったな!!」
「使ってないよ♪…知り合いに近くまで転移して貰ったんだよ♪」
「知り合いって誰よ!?…まさか、八雲紫?」
「違うよ、神様だよ♪」
…もっとも、人造の神様だけどね♪
「はぁ!?…何を言ってんのよ!!…幻想郷の神に空間を越える力を持ってる奴なんて……あっ!!…もしかしてアンタが造った神の事!?」
「そうだよ、てゐちゃん♪」
「チートよ!!…そんなのズルい!!」
「ズルくないよ♪…だって、てゐちゃんが言ってたじゃん…助っ人は有りだって」
「むぐっ!!…た、確かに言ったけど……でも…」
「ダ〜メ、言い訳は無しだよ♪」
「むぅ…解ったよ、しょうがない…何でも言う事を聞くよ……でも、えっちなのは止めてよね」
……別にそんなの望んで無いんだけど……あっ、でも…
「つれないなぁ〜、てゐちゃん……昨日あんなに激しい接吻を交わした仲なのに♪」
「あ、あれは別に他意があった訳じゃ……って言うか人が聞いたら誤解するから止めろ!!」
「誰も聞いて無いよ」
と、僕が言った瞬間アチコチの草むらからモブ兎達が現れた。
そして、その内の1人が口を開いた。
「ボス、リア充乙です……でも春が来ましたね♪」
「コラァ!!…勘違いするな!!…私とシオンはそんな仲じゃない!!……大体何で私が、こんな子供に…」
「僕……あの夜が忘れられないんだ(はぁと)」
「ウサぁ!!」
フッフッフッ、戸惑ってる戸惑ってる♪
「このっ!!…いい加減にしろぉぉぉぉ!!」
てゐちゃんが僕の事を突き飛ばした。
僕がよろけて尻餅をついた瞬間、地面が無くなり大きな穴に落ちていった。
「うわぁぁぁぁ!!」
「あっ、しまった!!…そこには落とし穴が仕掛けていたんだった!!」
落とし穴の底で僕は頭を打って気絶した。
「シオン!!…しっかりして!!」
てゐちゃんの言葉に僕は反応出来なかった。
そして意識を取り戻した時、見知らぬ風景が僕の目に映った……どうやら何処かの小屋の中みたいだね。
誰かがここまで運んで僕を布団に寝かしたみたいだ。
「うっ……ここは?」
起き上がろうとした時、頭に痛みが走った。
「あいたたた!!」
僕は頭を押さえた。
「ん?…包帯?…誰か治療してくれたみたいだね…」
…ちゃんとした応急処置が施されている所を見ると……医療を習った事がある人がやったみたいだね…
「シオン、気が付いたみたいだね」
てゐちゃんが声を掛けてきた。
「てゐちゃん?……もしかして、てゐちゃんがこの小屋に僕を運んだの?」
「そうだよ、この小屋は私の隠れ家だよ………それにしても、アンタ軽いわね…霊夢にちゃんと食べさせて貰ってんの?」
「…人並みに食べてるよ…そう言う体質なんだ……それより、コレ…てゐちゃんがやったの?」
僕は頭の包帯を指差して質問した。
「そうだよ、こう見えても応急処置の心得はあるからね」
「そうなんだ、一応礼は言うよ…ありがと」
「……一応って何?」
「突き飛ばされたからね」
「それはアンタが余計な事を言うからだよ!!……まぁ、怪我させるつもりは無かったけどさ…」
「…僕も別にこれ以上、恨み言を言う気は無いよ…」
僕は窓の外をボンヤリと眺めた……外は既に日が落ちて真っ暗だった。
「てゐちゃん……僕の通信端末にライカかメリルから連絡無かった?」
「通信端末?…知らないよ、何の連絡も来てないけど…」
?…変だな…ここまで時間が経ってるのなら連絡があっても良い筈なのに…
僕はポケットから通信端末を取り出そうとしたが……
「!!…無い…通信端末が無い!!……そうか、あの時落とし穴に落ちた時に落としたんだな……探さなきゃ…」
僕は立ち上がろうとして、てゐちゃんに押し止められた。
「無理はするもんじゃ無いよ…今日は諦めな……今、部下に永遠亭に行かせて師匠に連絡を取ってるから安心しな」
「ん…解った……っと、そうだ薬飲まなきゃ…てゐちゃん、水頂戴」
「はいよ」
僕はてゐちゃんから水を受け取って薬を飲んだ。
「しかし、アンタも難儀な体質だね……早い所故郷に帰れると良いね…親御さんだって心配してるだろうし…」
「………どうだろうねぇ〜」
「んん?…どう言う意味?」
「僕は生まれた時に親と生き別れてるから、あそこには親は居ないんだ……まぁ、仮に居たとしても心配はしないんじゃないかな?」
「…もしかして、口減らしで捨てられた口かい?」
「口減らしかどうかは知らないけど、捨てられたのは間違いないかな?…生け贄にされかけた所を師匠に助けられたから…」
「生け贄って、本当かい?」
「……アカシックレコードに、その記録があったから間違いないよ」
「…良く解らないけど確証があって言ってるんだね?」
「うん」
僕が頷くと、てゐちゃんは何とも言えない表情を浮かべて言った。
「……悪い事を聞いたね…」
「別に良いよ…気にした事なんて無いからね♪」
「…親を恨んだりしてないの?」
「してないよ……と言うより、その時の記憶なんて当然無いから恨みように無いよ……だって、会った事が無いのと変わらないからね」
「そう、それはそれで気の毒だね」
「そうかな?」
「そうだよ、それじゃあ文句の1つも言えないじゃん……それに家族が居ないなんて寂しく無いの?」
「家族なら居るよ……ライカとメリル…それにマキの三人が…」
「……そう、確かにその三人の産みの親はアンタだもんね……家族と言えば家族か…」
「うん、そうだよ」
僕はそう言った後、欠伸をした……うぅ…眠い(´д⊂)‥
「……今日はもう寝な…私も疲れたよ…」
「うん……そうする……でも…」
「でも何?」
「襲っちゃや〜よ♪」
「襲うかバカ!!…さっさと寝ろ!!」
「アハハ♪…じゃあ、おやすみ〜♪」
「…全く、減らず口ばっか……おやすみ」
てゐちゃんが灯りを消した……そして僕達は狭い小屋の中で二人っきり、一夜を共に…
「コラッ!!…だから誤解を招く言い回しをするな!!」
「アハハ♪」
ここまで読んで戴いて有り難うございます。
今回は因幡てゐとの掛け合いの回でしたが如何でしたか?
…しかし、見ようによってはリア充ですね。
次回、何かが起きるかも?