「…ねぇ、あの人の言葉……信用出来るの?」
「さぁな…どの道当てなんか無いんだ……行ってみるしかないさ…」
「そうね、でも…あの人、かなり胡散臭いわよ」
「それは否定しない……息子を探してると言ったら、いきなりこの世界に放り込まれたしな…」
「…私達、担がれてるんじゃないかしら?」
「我々を謀って何の益がある」
「それはそうだけど…」
「!?……あそこに小屋に反応がある、行ってみるぞ!!」
「解ったわ」
竹林に朝日が登る。
僕は窓から射す朝日を浴びて目を覚ました。
「起きたみたいだね、朝食の準備なら出来てるから食べな」
てゐちゃんが声を掛けてきた。
…どうやら、てゐちゃんは一足早く起きて朝食の準備をしてくれたみたいだ。
僕は起き上がって朝食を食べる事にした。
「…ん…美味しい…てゐちゃん料理出来たんだね?」
「当たり前よ、師匠や鈴仙達が幻想郷に来る前まではずっと自炊してたんだから」
「?……永琳ちゃん達って外来人だったの?」
「そうだよ、師匠達は元々月に住んでたからね…」
「ふ〜ん…そうなんだ、じゃあ永琳ちゃん達は異星人になるんだね」
「…そうなるねぇ……それにしても、アンタあんまり驚かないんだね?」
てゐちゃんの言葉に僕はクスクス笑いながら言った。
「異星人なんて僕の居た世界じゃ、ありふれてるからね……それに、輝夜って聞いた時点で何と無く想像がついたよ♪」
「…どうやらアンタの居た世界も常識に囚われていない様だね…」
てゐちゃんはジト目で言った。
「でもまぁ、一番の決め手は永遠亭で使われてる機材かな?……アレ、この星の技術の物じゃないから」
「……成る程、さすが技術屋さんだね」
「僕は魔法使い(見習い)だよ……そんな事より永遠亭の皆心配してないかな?」
「それなら、今日迎えに来る筈だから心配無いよ」
「なら良いけど……でも迎えに来させて良かったの?…ここって隠れ家じゃ無かったっけ?」
「構わないよ…別に隠れ家はここだけじゃ無いからね」
「ふ〜ん……秘密基地は他にもあるんだね?」
「…その呼び方は止めて欲しいな………っと、誰か来たみたいだね」
てゐちゃんはそう言って小屋の入り口を開けた。
迎えが来たのかな?……と思ったけど、入り口には知らない人が二人立っていた。
一人は真っ黒い服と長ズボンを着込んだ金髪の男性……もう一人は白いブラウスに青いズボンを着込んだ金髪の女性……ドチラも見た目は40代前半の歳に見えた。
……何だ?…この二人、見てると凄い嫌な気分になる…
「アンタ達は誰だい?」
てゐちゃんの質問に男性が答えた。
「…失礼、私はレンドルと言います…こちらは家内のアミラです」
「初めまして、アミラです」
男性の紹介を受けて女性が名乗りをあげた………何なの?…初対面の筈なのに嫌な感じがする。
「実は八雲紫と言う女性にシオンと言う名の少年が、この辺りに居ると聞いたのですが…」
!?…何で、この人僕の名前を知ってるの!?…それに紫ちゃんの案内!?
「……そのシオンって少年がどうかしたの?」
「……私の息子なんです…ずっと昔に生き別れになってしまって、私達はずっと探しているのですが…未だに見つからなくて…」
!?……何で!?…何で親がここに!?…でも、僕は知らない……親なんて知らない……会った事無いから解らないよ…
「………そうなんだ、大変だね……悪いけど、シオンなんて子は知らないよ」
「……そうですか………解りました……私達はもう暫くこの辺りを探していみます…」
二人は再び竹林の奥へ消えていった。
「……行ったね……!?…シオン!?…アンタ大丈夫!?」
僕は知らず知らずの内に震えていた。
「何で!?…何で今更になって親が現れるの!?…紫ちゃん、これは何のつもり!?……何で!?…何でだよ!!」
「シオン!!…落ち着きな!!…混乱するのは解るけど…」
「あっ……ゴメン、てゐちゃん…」
僕は力無く、てゐちゃんに答えた。
「ねぇ、シオン…あの二人、本当に両親なの?」
「……解らない」
「そうか、赤ん坊の時に別れたから覚えて無いんだね……なんたらコードってヤツの記録には載ってないの?」
「アカシックレコードの事を言ってるの?……確かに記録にある筈だけど……僕はアカシックレコードの情報を30%しかダウンロード出来ないから、その情報は知らないんだ…」
「そのアカシックレコード全体の三割しか解らないから両親の情報が得られなかったって訳?」
「ううん、そうじゃないんだ……1つの情報に対して30%までしかダウンロードが出来ないって意味………全体の三割なんて引き出したらパンクして脳死しちゃうよ」
「…よく解んないけど、引き出す情報量に制限があるって事だね?」
「うん、そう言う事………でも、何で僕の両親が揃って幻想郷に居るんだろ?」
「……さぁね、もしかしたら八雲紫が連れ込んだのかもね」
てゐちゃんは肩を竦めて言った。
「……だけど、どうするんだい?…今日は追っ払ったけど、このまま会わないで帰るつもり?」
「…うん、そのつもり……紫ちゃんは僕に会わせたいみたいだけど、正直御免被るよ」
「…まぁ、好きにすると良いさ……それにしても、遅いね……そろそろ迎えが来てもいい頃なんだけど」
と、その時小屋の入り口から誰かがノックしてきた。
「今度は誰かな?」
てゐちゃんはそう言ってドアを開けた。
「居た!!…シオン、迎えに来たわよ!!」
「シオンさん、迎えに来ました」
博麗霊夢と、うどんげちゃんが姿を見せた。
「…どうやら今度こそ迎えが来たみたいだね…」
「うん、そうだね」
ホッと胸を撫で下ろした所で博麗霊夢に頭を小突かれた。
「全く、あんまり心配掛けないでよ…療養に来て怪我してどうすんのよ!!」
「痛いよ、博麗霊夢……傷口の上を叩かないで」
「皆に心配掛けた罰よ……少しは反省しなさい」
「まぁまぁ霊夢さん、もうその位で……さぁ帰りましょう」
説教を始める博麗霊夢を押し止めて、うどんげちゃんが促した。
「うん、じゃあ帰ろう…………あっ!…通信端末!!」
「それは私の方で探しとくからシオンは永遠亭に帰りな」
「解ったよ、てゐちゃん……色々とありがとね♪」
「別に良いさ……それよりも気を付けて帰りな…まだ、あの二人この辺に居ると思うから」
「うん、かち合わない様気を付ける」
僕とてゐちゃんのやり取りを見て博麗霊夢と、うどんげちゃんが訝しげな表情を浮かべた。
「?…シオン、何かあったの?」
「…何でも無いよ、博麗霊夢……帰ろう♪」
僕はそう答えて帰路についた。
「それにしても落とし穴に落ちて怪我するなんて、アンタ意外に間抜けね」
竹林を歩きながら博麗霊夢が僕に話し掛けてきた。
「落ちたんじゃなく落とされたんだけどね」
「どっちにしろ間抜けでしょ?……まぁ、そんな事よりライカとメリルが心配してたから、ちゃんと謝んなさいよ」
「……そう言えば、あの二人はどうしたの?…いつもなら迎えに来るのに…」
「あの二人は今、竹林を見回ってるわ……何か、良くない者が竹林に居るって言ってたわね」
「………そう」
…ライカとメリルのセンサーに僕の両親の魔力が引っ掛かったのかな?……あの禍々しい魔力に…
……あれは多分、禁術や生け贄の儀式で得た物だね……我が親が外法に堕ちてたなんて…
「シオンさん、どうしましたか?」
「えっ?……何でも無いよ、うどんげちゃん♪」
僕はそう答えた時、突然目の前に二人のコート姿の男女が現れた。
!?……僕の両親だ!!…この二人、透過の魔法(要は光学迷彩)と魔力を遮断するコートを着て尾行してたな!!
「やはり居たか……あの兎、謀りよって」
レンドルと名乗った男が吐き捨てる様に言った。
「まぁまぁ、良いじゃないの……結果的に見つかったんだし」
アミラと名乗った女がレンドルを宥めた。
「アンタ達…誰!?」
博麗霊夢が二人を警戒して質問した。
さっきと違って、二人は禍々しい魔力を隠そうともせず放出している……博麗霊夢はその魔力に警戒している様だ。
「シオンさんに何か用事でもあるのですか?」
うどんげちゃんも警戒して……と言うより二人に恐怖を感じている様だね。
「…ああ、済まない……私達はシオンの親だ……息子が居ると聞いて迎えに来たのだよ」
「息子!?…アンタ達、この子の親なの?」
「そうだ……シオン、さぁ一緒に帰ろう」
レンドルは僕にそう呼び掛けた。
………今更何を言い出す…
「……ヤダ♪…僕帰らない☆」
「シオン!?…何を言うの?……信じられないのは解るわ……でも私達は嘘を言って無いわ」
…この場合、嘘じゃないなくても帰りたいと思わないんだけどね♪
「断るよ、だって……二人とも僕の事を生け贄にしようとしたじゃない……そんな人と一緒に居られないよ♪」
「い、生け贄!?…シオン、それ本当なの!?」
僕の言葉に博麗霊夢が驚きの声をあげた。
「シオン!!…何を言ってるんだ!?…私達がそんな真似するわけ無いだろ!!」
「そうよ!!…可哀想に、大方あの男に騙されてるのね…」
二人は血相を変えて否定した……だけどね…
「アカシックレコードにその事実が記録されてた……二人とも、言い逃れは出来ないよ」
僕の言葉に二人は衝撃を受けた様だ……そして…
「…成る程、あの男に見せて貰ったのか……ふん!!…忌々しい奴め!!」
「……しょうがないわね…こうなったら力ずくで連れて帰るわ!!」
二人はそう言って身構えた。
と、そこへ博麗霊夢が間に入って二人に言った。
「ちょっと待ちなさい!!……バカな真似は止しなさい!!…命が惜しく無いの!?」
「…そうです、霊夢さんの言う通りです……貴方達が強いのは気配で解ります……でも、シオンさんを誘拐だなんて、自分から破滅する様なものですよ!?」
……二人とも、僕よりこの二人を心配してるみたいだね……
「邪魔立てするな!!……召喚、ワイバーン!!」
レンドルの言葉に応じて一体の飛竜が現れる。
「その二人を殺せ!!」
「シュギャァァァァ!!」
レンドルの命令を受けてワイバーンが博麗霊夢とうどんげちゃんに襲い掛かる。
「ちょっ!!…もう、ウザったいわね!!」
「シオンさん!!…その二人を殺しちゃダメですよ!!」
二人はそう言って応戦した……しばらくは手が離せない様だね…
「さぁシオン、一緒に帰るぞ…」
「嫌だ、しつこいよ」
「ふん!!…聞き分けの無い餓鬼が!!……これでも食らって大人しくしろ!!」
レンドルの掌から電光が迸った……が、僕の結界に阻まれてアッサリ弾かれた。
「!?…成る程、魔法の手解きは受けていたのか……なら、これならどうだ!!」
今度は掌からビームが放たれた……が、やはり結界に阻まれてアッサリ弾かれた。
「なっ!?…これも弾くか…」
「…魔理ちゃんのマスタースパーク並の出力じゃないと傷1つ付かないよ♪」
「減らず口を…ピアシング・ブラスター!!」
今度は集束させて貫通に特化したビームを撃ってきた。
ビームは一枚目の結界を貫通したが二枚目で止まった。
「凄い凄い♪…でも残念☆……結界は十三層あるから届かないよ♪」
「…積層型多重結界…だと!?……その歳でウィザード級の実力者か…」
「一応、見習いなんだけどね……じゃあ、僕の番だね♪……!!」
反撃しようとした時、突然力が抜けて動けなくなった。
「そこまでよ……悪いけど動きを封じさせて貰ったわ」
「!!…これは!?」
僕の体中に茨の模様が浮かび上がっていた…まるで入れ墨の様に…
「それは呪縛の茨……貴方が産まれた時に仕込んでおいたのだけど……まさか本当に使う時が来るなんてね…」
「でかしたぞ、アミラ……良し、このまま連れてくぞ」
レンドルが僕に近付いてくる。
「待ちなさい!!…アンタ達、シオンをどうするつもり!?」
ワイバーンの毒霧を避けながら博麗霊夢が聞いてきた。
「お前達には関係無い……我が子をどう扱おうと親の勝手だろ?」
「そうよ…私達の物を好きに扱って何が悪いの?」
……コイツら、僕の事を『物』扱いでしか見てないね…
「自分の息子を物扱いだなんて……貴方達は何を考えてるのよ!?」
「…お前達はそこでワイバーンに食い殺されるが良い……さてと…」
レンドルの手が僕に触れようとした瞬間……レンドルの手が宙に舞った。
「ぎゃああああああ!!」
レンドルは斬り落とされた手を押さえて踞った。
「ダメですよ〜、マスターを誘拐だなんて……ほらっ、悪いお手々が無くなっちゃったじゃない♪」
いつの間にか、ライカが傍に立っていた。
「自動人形!!…それも自律型……高位の錬金術じゃない!!…シオン、貴方は一体!?」
ライカを見てアミラは恐れ戦いた。
「まだ殺るつもりなら……斬っちゃうぞ♪」
「舐めないでよね!!…召喚、レッサードラゴン!!」
アミラの呼び掛けに応じて赤銅色の大きなドラゴンが姿を現し……その瞬間に真っ二つになった。
「グガァァァァァ!!」
竹林にレッサードラゴンの断末魔が響き渡った。
見ると、いつの間にか巨大なレーザーブレードをライカは手にしていた。
「そんな!?…下位とは言えドラゴンをアッサリと」
「出オチ乙……何てね♪」
「…信じられないわね」
と、ここで博麗霊夢とうどんげちゃんが合流してきた……どうやらワイバーンを倒した様だね。
「ワイバーンを短時間で倒すだなんて……貴女達、何者なの!?」
「それはこっちの台詞よ!!…いきなり、あんなのをけしかけてきて!!」
「霊夢さんの言う通りです!!…非常識ですよ!!」
…まぁ、この二人ならワイバーンごとき足止めにもならないよ……そもそも、こんな竹林の中に飛竜を呼び出すなんてナンセンスだよ。
「くっ!!……こうなったら寿命を少し対価にして邪神を…」
アミラが再び召喚しようとした時、上空から足元にレーザーが撃ち込まれた。
「そこまでです…無駄な抵抗は止めて投降しなさい」
上空からメリルが警告してきた。
その時、辺り一面に閃光が走った……どうやら目眩ましの様だね。
「……アミラ…ここは引くぞ…」
「…解ったわ」
光が収まった時、二人の姿は消えていた。
魔力の発生源が遠ざかった為、僕に掛けられていた呪縛の茨が収まった。
「ライカ、メリル…助かったよ」
「いえ、無事で何よりです……それより、今の二人は何者ですか?」
「…詳しい事は永遠亭に着いてから話すよ」
僕はメリルにそう答えた。
奇しくも幻想郷で自分の両親と再会するなんてね……それに、紫ちゃんがこの一件に絡んでるみたいだね。
…一体、何を企んでるのやらね…
ここまで読んで戴いて有り難うございます。
今回は少々シリアスな回でしたが……また次回からギャグに戻ります……って言うか戻します。
書いてて蕁麻疹が……やはり馴れない事はするものじゃないですね。
ここで作中に有ったアカシックレコードのダウンロードについて補則させて貰います。
これはアカシックレコードをインターネットと見立てて描写しました。
シオンはアカシックレコード(インターネット)から記録を引き出す事が出来ますが、1つの記録から三割程度の情報しか得る事が出来ません。
まぁ、PC(シオン)の性能の限界と言う訳です。
取り敢えず、こう言った解釈で今後も逝きたいと思います。
次回、そろそろ永遠亭編終了かな?