目覚めると、そこには見知った天井。
嫌になるくらい見た、青白い天井。
「……また、ここか。」
頭が痛い。確か、戻ってきた後は前と同じように使徒と戦って…
「……………」
思い出せない、いや、思い出したく無い。
気分を変えるため病室を出る。しかし、病室の外も病室と対して変わらなかった。
青白い光に包まれた静かな空間。ここには嫌な思い出しかなく、不安感に襲われてしまう。
──そうだ。外に出よう。中に居るよりは幾分かマシかもしれない………
葛城ミサトは、サードチルドレンが目覚めたと聞き、病院に迎えに向かった。
大破したままの愛車を走らせている道中、昨日の事を思い起こす。
『エントリープラグ、挿入!』
『プラグ固定終了、第一次接続に入ります』
『L.C.L.注水!』
『シンジ君、それはL.C.L.と言って、肺をその液体で満たす事で直接酸素を取り込めるわ。』
『………はい…』
サードチルドレンは特に慌てた様子もなく、L.C.L.を肺に含ませた。
『良い子ね…主源電接続!』
『主電源接続全回路動力伝達!起動スタート!』
『A¹⁰神経接続異状なし、初期コンタクトオールグリーン!双方向回路、開きます!』
『シンクロ率……4%……』
やはり、か。
予想通りだ。いや、シンクロ出来ているだけマシかもしれない。
ともかく、こんなシンクロ率では手負いのレイを乗せる方がよっぽどいい。人道的な話は別として、人類の存亡が掛かった戦いで初号機を無駄に傷つけるわけにはいかなかった。
『碇司令!これではまともに戦えないと考えます!怪我をしていますが…ここはレイを出撃させるべきです!』
『ミサト!』
『…葛城一尉、作戦に変更は無い。』
『しかしっ』
『出撃だ』
『……っ……はい…』
なぜ碇司令はレイよりも希望が薄いサードチルドレンを出撃させるのだろうか…
『第一ロックボルト解除!』
『アンビリカルブリッジ移動!』
『第一第二拘束具除去、続いて1番から15番までの安全装置解除!』
『エヴァ初号機、射出口へ!』
…
耳を覆う聴き慣れた音楽。
シンジのS-DAT。それは外界との接触を禁じる重要な機械。
なので、シンジにとって音楽の内容は関係の無い話だった。
埃を被った様な古い音楽。かつては流行っていたのだろうか?どれもシンジの世代には縁のない音楽ばかりだった。
それもそのはず、この音楽プレイヤーは父である碇ゲンドウから貰った物なのだ。
病院の庭のベンチで音楽を聴く。
シンジは疲れ切っていた。状況がコロコロと変わり、ストレスは溜まって行く一方だった。
なので、ただぼうっとしている時間が欲しかった。誰にも邪魔されず…誰にも……
「シンジ君」
耳に染み付くほど聞いた声。
「…ミサトさん…」
「迎えに来たわ。怪我は大した事ないんだって?良かったわね。」
「…………」
「あなたの家まで送ってくわ。本部が貴方専用の個室を用意したみたいだから。」
「……………」
「…少しくらい返事してくれたって良いんじゃないの?シンジ君。」
「……………」
「…ったくしょーがないわね」
ミサトはポケットから携帯を取り出すと、電話をかけた。
「あ、もしもしリツコ?うん。あたし。」
「…!」
「シンジ君ねェ、あんまりにも暗すぎるからあたしのマンションで一緒に住むことにしたから」
「……………」
「だーいじょーぶだって、子供に手ェ出すほど飢えちゃいないわよ!」
そう言い終わると携帯をポケットにしまいシンジの手を掴む。
「さ、行こうかシンジ君!」
「………はい…」
「あーもうなんでそんなに暗いのよ!もう少し喜んだらどーなの?」
「………………」
「……はぁ……」
ミサトは大きなため息をした後、シンジを引きずり、駐車場へと向かった。
…
「…ミサトさん。」
「びくっ…な、なに?」
ミサトが愛車でマンションへと向かう途中、助手席でずっと静かに座っていたシンジが突然口を開いた。
「…昨日の戦闘…怪我人はどのくらい出ましたか…」
「……知りたいの?」
「……はい…」
「…あれだけの戦闘だったけど、幸い死者は出てないわ。怪我人も数えるほどしかいないそうよ。」
「………」
ミサトが答えを言い終わると、シンジはまた無言になってしまった。
(うぅむ、どうしたものか…)
こいつはなかなか手強い。そう思いながら駐車場に車を停める。
「さ、降りてシンジ君。着いたわよ」
家の扉を開け、シンジを手招きする。
「ここがあなたの家になるのよ。シンジ君、これからよろしく」
そう言い終わる前にシンジは家の中へ入り、靴を脱ぐ。
「…ただいま。」
「え?…あっ、お帰りなさい…」
シンジのあまりの自然な動作に、ミサトは少しキョトンとしてしまった。まるでずっと前からここに住んでいたようで…
(不思議な子……)
散らかった部屋に入る。もちろんミサトは同居人が出来る事など想定していなかったので、片付けはしていない。
「ちょっち散らかってるけど気にしないでね〜」
冷蔵庫の扉が開く。食事をしまっている方では無い、同居人(?)の住む大きな冷蔵庫。
自分を出迎えに来てくれたと思い、しゃがんで抱きしめようとするが、同居人(?)はミサトを素通りし、後ろにいたシンジに擦り寄った。
「あ、あらら?ご、ごめんシンジ君うちのペンギンが…あたっ!な、なにすんのよペンペン!」
同居人(?)をシンジから離すと、猛烈に嘴で腕をつつかれる。シンジにくっつくのを邪魔されて怒っているようだ。
(おっかしーわねェ…そんなに人懐っこく無いはずなんだけど…なんでシンジ君にこうも懐いてるのかしら)
「シンジ君、紹介するわ。この鳥はペンペン。新種の温泉ペンギンよ。」
「あ…はい。」
(…とんでもなく反応うっすいわね……セカンドインパクト前の世界を知らない人間にとっては珍しいはずなんだけどナ)
「じゃ、さっそく晩御飯といきましょーか!」
「…食べたく…無いです…」
「……ダメよ。育ち盛りなんだから。身長は伸ばせる時に伸ばしとかないと女子にモテないわよ?」
「……はい…」
食欲がなさそうなシンジの前にレトルトカレーを置き、食べるよう促す。
シンジはスプーンを手に取ると、ゆっくりとカレーを食べ始めた。
そのことをしっかり確認した後、ミサトも食事をとり始める。
「ぷっハァーー!くう〜〜ッ毎日の数少ない楽しみだわぁ〜〜!」
エビスビールを一気飲みし、至福に浸る。一日の疲れが消えていく感覚がたまらない。
「…………」
少し経った時、シンジのスプーンがカレーの三分の一ほどを食べたところで止まっていることに気がついた。
「……それ以上、食べれない?」
シンジが無言で頷く。
「じゃ、お風呂入ってきなさい。風呂は命の洗濯よ!」
「くわっ」
シンジが風呂へ入る為席を立つと、ペンペンも食事を中断してシンジの足の横に張り付く。
「…あら、ペンペンはシンジ君と一緒に入るの?」
「グワァっ」
どうやらシンジと風呂に行きたいらしい。ミサトとすら一緒に入ったのは飼い初めのころだけだったというのに、なぜシンジにはここまで懐くのだろうか?
「シンジ君、ペンペンと一緒にお風呂入ってもらってもいい?」
「……はい…」
…
湯船はペンペンに占領されてしまったのでシャワーを浴びていると、さまざまな記憶がシンジの頭を駆け巡る。
最初に思い出したのは、1番最近の使徒戦の事。エヴァとのシンクロ率がたったの4%しかなく、一歩を踏み出すことも出来なかった。
結果としてエヴァが暴走し、第三の使徒は殲滅された。結局前と同じで母に頼ったのだが、状況は前よりずっと悪かった。
(次の使徒戦…やっていけるんだろうか。)
前の十分の一のシンクロ率に不安が募る。
「くわっ」
ペンペンの鳴き声が狭い風呂場で反響する。どうやら湯船を譲ってくれるらしい。
「…ありがとうペンペン…」
お湯に浸かる。昔から、風呂は嫌なことを思い出す場所だった。それは今も変わらず、ここに至るまでの事がどっと溢れ出して、涙となって体外に出る。
「…くわぁ?」
ペンペンが首を傾げ、心配そうにこちらを見ている。
「……だいじょうぶだよペンペン…心配しないで…」
ペンペンの頭を撫でると、ペンペンは上機嫌な鳴き声を出す。手に触れるペンペンの体温が、シンジにひとときの安らぎをもたらした。
つづく
遅れた。すまない
もし私が失踪したら、続きを急かしてほしい。
でなければ書けない。
バレンタインが近い。あなたにこれのどれかをあげよう。
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アスカラングレー全種
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綾波レイ全種
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真希波マリ全種
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健康に気を使った腐らない食料三年分