Second death…   作:かの存在完全に消滅す

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綾波と弁当

 学校。

 

 そこはこの少年にとって最も楽しかったところ。同時に、寂しく悲しい場所。

 

 そこで親しくなった人々は皆消えてしまった。だから、彼はそこにはもう行きたくないと思っていた。

 

 

 

 

 

第参話

 

 

 

 

 

「シンジ君?学校…行かないの?」

 

 車を修理に出すついで、ミサトはシンジを学校に連れて行こうと、シンジの部屋の扉を開けた。ところが、シンジは布団の中で丸まって、出てくるつもりは無い様子。

 

「体調でも悪いの?」

 

 パイロットの体調管理も自分の仕事と思い、シンジに声をかけるが返事はない。

 

「…そう。行きたくないんだったら今日は行かなくて良いわ。じゃ、私は行ってくるからじゃあね」

 

 ドアを閉める。まったく、いつまであの調子なのだろう。

 

「ホント…困ったやつ…」

 

 ぼそりと、呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ぴーんぽーん…

 

 呼び出し音が鳴った。ミサトさんへの荷物だろうか?ミサトさんは先程出かけてしまったので、動きたくないが仕方なく布団を出る。

 

 パジャマ姿のままドアを開くと、そこには見知った顔。

 

 蒼い髪に紅い瞳。人間とは思えないほどの真っ白な肌。あらゆる所に包帯が巻かれていて、少々痛々しい。

 

「………綾波…?」

 

「…あなたが碇司令の子供?」

 

「あ…えと…うん…?」

 

 手を掴まれ、玄関から引っ張り出される。つまずいて転びそうになり、冷や汗をかく。

 

「な、なにすんだよっ」

 

「…学校…案内する。」

 

「え、ええっ…?」

 

 靴すら履いていない状態でマンションのエレベーターまで引っ張られる。

 

「ま、まってよ!」

 

「……何?」

 

「…えと、まだ制服に着替えてないんだけど…」

 

「…そう。ならここで待ってる。」

 

 そう言うと、綾波は立ち止まってシンジの手を放した。

 

「…あぁ…っ…えっと…」

 

「?」

 

「急いで支度するからっ!待ってて!」

 

「…?そう。」

 

 

 

 綾波がここにやって来たことに動揺しつつ、素早く制服に着替え、身支度を整える。

 

(ミサトさんの仕業かな…それとも…父さん?)

 

 どちらも可能性としては薄いが、現時点での綾波が自発的に迎えに来たとは思えない。

 たぶんミサトさんだろう。父さんはこんな事はしないだろうし。シンジはそう結論付けた。

 

「綾波…ごめん…待たせて」

 

 シンジが出てきたことを確認すると、綾波はまたシンジの手を掴んで、エレベーターに乗り込む。下へ降りる間、シンジは綾波に聞きたかった事を聞いてみる。

 

「綾波は…僕を迎えにきたのは…どうして?」

 

「………わからない」

 

「分からないって…父さんとかミサトさんに言われたんでしょ?」

 

「…いいえ。」

 

 驚きの回答。この時の綾波は他人、ましてや初対面の人間に干渉することは基本的に無かったはずなのに。

 

「どうして…綾波はここへ迎えに来ようと思ったの?」

 

「……わからないわ…」

 

 

 

 

 

 

 授業を受けるのは数ヶ月ぶりだった。特に新しい知識は無く、以前習った記憶があるものばかりなので新鮮味は無いが、なぜか安心した。

 

 エヴァや人類補完計画、それらを知らずただ勉強していたあの頃を思い出すからだろうか?

 

 何も知らなかったあの頃に戻りたい。自分も知らないうちにそう思いはじめているのだろうか。ろくな事はあの時にも無かったと言うのに。

 

 そんなことを考えていたら、いつの間にか昼休みになっていた。

 

 ──弁当、持ってきてないな…

 

 綾波に急に連れ出されたので、弁当など用意しておらず…購買に行こうとも思ったが、そんなお金は手元に無かった。

 

「これ、あげる」

 

 ことん、とナフキンに包まれた弁当が机の上に置かれる。見上げると、また綾波だ。

 

「…えっ」

 

「食べたら…返して」

 

「……あ………うん…」

 

 シンジはすっかり呆気に取られてしまった。これじゃまるで…いつもの綾波だ…

 

 ぐぅ、とお腹が鳴った。とりあえず細かいことは置いておいて、ひとまず弁当を食べる事とする。

 

 箱を開けると、焦げた卵焼きが不揃いな形で中央にどどんと据えてあった。それを囲むように、なんの野菜なのかよく分からないほど細かく刻まれたサラダが添えてある。

 

 だが、匂いは普通の料理だったので、一口、食べてみる。うん、悪くない。案外大丈夫な味だ。

 

 空腹のせいですぐに食べ終わってしまった。弁当の蓋を閉じる。弁当をナフキンに包んでいる途中、肩に手が乗せられた。

 

「転校生、ちと顔かせや」

 

 …トウジだ。そうか確かに転校したあの日…僕はトウジに呼び出されて…殴られたんだ。

 

 その事を思うと席を立つのが億劫だが、トウジはこういう奴だから断るわけにもいかない。結局僕は殴られる事にした。

 

 トウジについていき、中庭に出る。僕の後ろから早足でケンスケもやってくる。

 

「転校生ェ、お前があのロボットのパイロットっちゅー話、本当か?」

 

「あ、うん…そうだよ…」

 

 途端トウジが僕を睨みつけたので、拳が飛んでくると確信し目を閉じる。

 

 ──だが、頬に痛みが走る事はなく。

 

 ぱんっ、と弾けるような音がしただけだった。恐る恐る目を開ける。

 

 見れば、白い手がトウジの拳を受け止めている。

 

「……暴力はだめ…」

 

 また綾波だった。

 

「なんで庇うんや…綾波。ワシはそいつを殴らなあかんのや!妹の美脚に傷を入れたケジメっちゅーもんをつけてもらわないかん!」

 

「……………」

 

 綾波はいつもの無表情を崩さず、ただ無言でトウジを見つめている。変な空気感に耐えかねて、トウジはくるりと向きを変える。

 

「……ちっ。ケンスケ、行くで!」

 

「あ、うん」

 

 そのまま2人は校舎に入っていった。残されて、綾波と目が合う。

 

「…………」

 

「…………」

 

 綾波に聞きたい事は山ほどあったが、無表情の綾波にはなかなか言いづらく、言葉が出てこない。

 

 沈黙を破ったのは、綾波の方だった。

 

「…授業、始まるわ。教室に戻りましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 家に帰ると、どっと疲れが押し寄せてきた。学校に行くだけでこんなにエネルギーを使ったのはいつぶりだろうか。

 

 リビングに座り、テレビをつける。特に面白いものはやっていなかったが、まあいい。

 

(なぜ、綾波があそこまで僕に気を使うのだろうか?)

 

 疑問。

 

(記憶を僕と同じで保持しているのか?)

 

(その上で隠しているのか?何の為に?)

 

 考えていると、膝の上にペンペンが寝転んできた。

 

(ペンペンも…前もこんなに甘える事はなかなか無かったのに、なぜここまで懐くのか?)

 

(世界が変わった事によって起きた差異なのか?ここまで綾波とペンペンが僕に優しいのは…)

 

 何も分からないまま、睡魔が襲ってくる。おそらく膝に温かい生物がいるからだろう。

 

 そうして僕は寝てしまった。

 

 

 

 

 

 

 起きた頃には時計は23時を回っていて、リビングの電気も消されていた。

 自分の体にはタオルケットがかかっていた。多分、ミサトさんがかけてくれたのだろう。

 

 冷蔵庫を開けて、何か食べようとする。相変わらずビールとつまみに占領されていたが、真ん中に『シンジ君起きたら食べてね』とマジックペンで書かれたコンビニのミートソーススパゲッティがあった。

 

 電子レンジに入れて適当に温める。凄くお腹が空いている。そういえば風呂にも入っていない。

 

 スパゲティを食べる。寝起きのせいか頭が痛い。それのせいで味はあまり美味しいとは思えなかった。しかし腹は空いていたので、すぐに食べ終えた。

 

 腹は膨れたので、シャワーを浴びる事にする。流石に風呂に入らないのは不潔だ。明日も学校があるわけだし。バスルームには何故か明かりがついていた。ミサトさんが起きているのかと思ったが、どうやらペンペンが入っているらしい。

 

 ペンペンだったらまあ一緒に入っても問題ないだろう。そう思って服を脱いでバスルームに入った。

 

 ペンペンが湯船を占領していたので、とっととシャワーだけ済ませてバスルームを出る。それに、早く寝たいと言う気持ちもあった。

 

 寝巻きに着替え、自分の部屋へ。布団に潜り込んで目を閉じる。

 

 ………妙だ。アルコールの強い匂いがする。

 嫌な予感がして、目を開けてみるとやっぱり。

 

 そこにはミサトさんが気持ち良さそうに寝ていた。

 

「…ミサトさん?」

 

 泥酔したミサトさんを起こすのは難しく、結局布団に戻る頃には眠気が覚めてしまった。

 

 

つづく




超絶遅筆!!

添い寝してもらうなら誰がいいんだろね

  • 惣流アスカ
  • 式波アスカ
  • 綾波レイ
  • 碇シンジ
  • 渚カヲル
  • 潤羽るしあ
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