精霊幻想記 ~幼馴染みの春と冬~   作:月影海斗

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今回はほぼリオ視点です。
後半にちょっとユキヤ視点には戻ります。


第6話 親友

『ねぇ、春人』

 

『どうした?』

 

『僕たちって、親友だよね?』

 

『なに当たり前のこと言ってるんだよ……当然だろ? 俺にとって、お前はライバルで、弟分で、仲間で、掛け替えのない…大切な親友だよ』

 

『そっか……じゃあさ、約束しようよ』

 

『約束?』

 

『例え、生まれ変わっても、また会おうって――ずっと親友でいようって』

 

『そうだな……わかった、約束しよう』

 

『うん。どんなに離れていても、必ず――』

 

 

 天川春人にとって、最も仲の良い人は誰かと聞かれたらどう答えるか。

 ある時期までだったら、好きな人のことを思い浮かべていたのかもしれない。

 

 だが、彼が最も信頼する人間は他にいる。

 

 その少年と出会ったのは、物心がつく前からだったか。

 同じアパートに住み、部屋が隣同士で同い年だった春人と少年は家族ぐるみで付き合うようになり、自然と仲良くなっていったのだ。性格は大人しいが、自分絡みのことになると、しっかり者として行動していた。

 

 春人が惹かれていた少女――美春も交えて三人で過ごすことが当たり前の毎日。交流を始めてから一緒に過ごさなかった時間を数えた方が少ないだろう。

 

 両親は共働きだったが、寂しいと思うことなかった。二人の少年と少女――冬樹と美春がいつだって近くにいて、ずっとこの関係が続くと信じて疑わなかったから。

 

 でも、幸せは唐突に崩れ去ってしまう。

 

 7歳の時、母親の不貞が発覚したことで両親は離婚。春人は父方に引き取られることになったからだ。

 

 二人と一緒にいられたら幸せだった子供の春人には、それはどうすることも出来ない大人の事情。唯一春人を前向きにさせてくれたのは、自分と同じタイミングで引っ越すことになり、同じ地域で暮らすことになる冬樹との誓い。いつか必ず美春に会いに行くという男同士の決意だ。

 

 離れ離れになる際には、美春に結婚の約束と「死んでも守る」という誓いも残した。その光景を、冬樹はただじっと見守ってくれた。

 

 誰かを支え、助けるのが自分の生き甲斐だと常々言っていた冬樹。普段は内気で弱気なくせに、誰に対しても優しく、面倒見が良く、弱い者を庇っていた冬樹は、害意を持つ者にとっては鬱陶しく、悪意に呑まれかけて傷つきかけていたこともあった。

 

 そんな少年を心配に思った春人は、彼のことを助けようとした。弱気で内気な友の力になるなら何が良いかと悩み、ふと祖父に言ってみたら、「ならば儂が精神を鍛えてやろう!」と半ば強引に古流の武術に付き合わせてしまう。

 

 最初こそは辛い顔を浮かべていたが、祖父の教えと春人の励ましもあって、互いに切磋琢磨し合って見違えるほどに成長した友は優しさと強さを兼ね備えた誠実な少年として、いつしか春人にとっては掛け替えのない存在になっていった。

 

 

『師匠……流石にこれ以上は、僕の体が持ちませんよ!?』

 

『冬樹! 何を弛んだことを言っておるか! 素振り100本追加だ!』

 

『ええ!? それは横暴過ぎますよ!!』

 

『まあまあ、頑張れって。お前なら出来るさ』

 

『他人事みたいに言わないでよ、春人!』

 

 

 弱音や愚痴を聞かされることはあったが、自分の前では心を許し、対等でいてくれる友。

 

 自分が困っていれば迷わずに手を貸してくれて頼りになる。

 

 テストやスポーツ等で競い合って、彼に勝っていた自分に嫉妬をぶつけてくることもない。

 

 「悔しいな……でも次は負けないよ!」と口にして向上心も忘れずに、無邪気な笑顔を浮かべる幼馴染みが微笑ましく、大切。自分の知らない所で無茶をして、どこか放っておけない様子を見る度に、弟みたいに思うようになった。それに、あくまで春人の気持ちだが、冬樹も春人のことを信頼し、兄のように慕ってくれていたと思う。

 

 

 それからも美春との再会を夢見る春人は冬樹の力を借りながら己を磨き続け、父に生まれ育った街の高校に冬樹と一緒に進学することを認めてもらえた。ようやく彼女と出会う一歩を踏み出せたんだと思った矢先、同じ高校に進学していたことを知ったときは、春人は驚きと嬉しさがこみ上げた。

 

 そして入学式の日、彼女の姿を見たときに味わったのは、強い衝撃。

 美春と親しげに話している自分の知らない男子の存在が、春人を怯ませ、悩ませた。

 

 

(みーちゃんとの約束があったから、ここまで迷わずに来られたのに……、今まで俺があんなに頑張ってきたのは……一体どんな意味があったんだ!? 冬樹もずっと俺を応援してくれたのに。もう、あの頃のような関係には戻れないのか……?)

 

 

 気が沈んで、帰ってからずっと部屋に閉じこもっていた春人だが、そんな自分の元に駆けつけてくれたのは、唯一の親友の冬樹。彼の前では心の声が自然と口に出され、その話を聞いた彼は迷いなく自分の瞳をじっと見つめながら語り、背中を押してくれた。

 

 

『僕は信じてる。春人のことを、みーちゃんのことを。僕たち三人の『幼馴染み』の絆を』

 

(お前って奴は……敵わないよ、まったく…)

 

 

 しかし、翌日に意を決して美春のクラスに行けば、彼女の姿は無かった。その後も欠席が相次ぎ、やがて彼女が失踪していたことが判明する。

 

 冬樹が諦めずに彼女の足取りを掴もうとしたが、春人の中にはやり場のない想いと後悔が溢れ、次第に無気力になっていった。

 

 それでも、冬樹は決して春人のことを見捨てたりはしなかった。まるで、今度は自分が支える番だと……そんな親友がいたからこそ、完全に心が折れることは無かったのかもしれない。

 

 だからこそ、春人は残された親友だけは失いたくない…傍にいてやりたいという思いが芽生えていた。

 

 高校で同じ部活に入って二人で大会に進んだり、球技大会だと息の合うコンビプレーでクラスを勝利に導いたり、合唱コンクールでピアノを弾くことも出来た冬樹が伴奏を務めて春人が指揮者を務め、新しい男友達を築くこともできて、思い出を作れた。

 

 一方で、何度か異性から告白をされることがあった時は、彼女以外とそういう関係になることなんて出来なくて、心が苦しかった時もあったけれど、その度に親友は支えてくれたのだ。春人自身、情けないなと思うことも少なくなかった。

 

 冬樹だって辛い筈なのに、どうしてそこまで強くいられるのか……。

 

 

『僕は、強くなんかない。弱いままなんだよ。力を得ても、知識を得ても、内にある心の強さまでは変わらない。それに比べたら、春人の方が十分に強いよ。僕の常に一歩先を行く姿は、僕の憧れで、誇りでもあるんだ』

 

(違う……俺だって、強くない……! お前がいなかったら、あの時……みーちゃんがいなくなった時、お前がいてくれたから……俺は――)

 

 

 高校生活を終えた春人と冬樹は大学生になってからも、関係性は変わらない。同じ所で学び、働き、決して離れ離れにならない半身と共に代わり映えのしない毎日……ありふれた大学生活を送る――はずだった。

 

 

 ――当たり前の日常は、いつだって唐突に崩れ去る。

 

 

 春人たちは突如起こったバス事故によって、一度目の人生を絶たれたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 それが、スラム街で暮らしていた7歳のリオが熱から回復して目を覚ました時に思い出した――前世の記憶。

 

 リオの両親は既にこの世にはいない。父親は生まれからすぐに亡くなり、母が女手一つで育ててくれたが、その母もある男によって目の前で嬲り殺され、リオはスラム街に打ち捨てられた。それからは浮浪児として、復讐だけを目的に泥水をすすって生き延びる生活をしていた。

 

 

 ――この世界に救いなどない。平和で穏やかな世界などただの夢物語だ。

 

 

 スラム街で幅を利かせる何でも屋を営んでいる大人たちに拾われはしたが、使い勝手のいい捨て駒のように扱われる日々。気晴らしに暴力を受けることもあれば、犯罪の片棒を担がされ、こんなのは奴隷同然だ。

 

 利用価値がある分は養ってはもらえるが、切り捨てられるときは奴らに寛大な心なんて無いから、いつ死んでもおかしくない。

 

 そんな恐怖と隣り合わせの中、リオが生きてこられたのも……心の中で燻るドス黒い感情――復讐心があったから。

 

 

『よぉリオ。お前の母親は、ほんといい女だよなぁ。惜しいよなぁ、ほんと惜しい』

 

『母…さん』

 

『あの性悪女と比べたら、お優しいことだよ。父親もこんな女を嫁に出来て、さぞ鼻が高かかったことだろうよ』

 

『あ……あああ』

 

『どうだリオ、悔しいか? 大切な母親を目の前でいたぶられた様を見て何も出来ない自分が。憎いだろ? お前の母親を殺した男が』

 

 

 ――ああ憎い……憎いよ、お前のことは……!

 

 あの光景を思い出すだけで、母を殺した男への憎しみが溢れる。再び会うことがあれば、自らの手で殺したいとさえ思う。

 

 だが、天川春人の記憶を思い出したリオは揺れ動いていた。復讐は悪だという春人の価値観が嫌悪感を抱かせる。しかし、リオとしての価値観は復讐を望んでいる。

 

 頭では分かっていても、気持ちが納得出来ない、二律背反に感情が惑わされていた。

 

 

 ――復讐なんて、ただの自己満足だよ。春人

 

 

 相反する二つの思いに苛まれながら、井戸の水で身体を洗い流しているときに、ふと脳裏に過った一人の少年の言葉。

 

 あいつは人を傷つけることを何よりも嫌っていた。今の自分が復讐を糧に生きていたなんて知ったら、きっと悲しそうな顔をするだろう。

 

 

『冬樹……』

 

 

 ごく自然に、前世で当たり前のように使っていた日本語。ほぼ無意識にリオは呟いていた。

 

 その一言がリオの人生を大きく動かすことになるキッカケの一つだった。

 

 呟いてから少しして、リオの前に姿を現したのはユキヤという自分と同じ黒髪の少年。

 

 

『僕たち、どこかで会ったかな?』

 

(何を言っているんだ、こいつは……?)

 

 

 彼は開口一番にして、リオに会ったことはないかと訊いてきたのだ。

 その時に一瞬、違和感……いや、親友に似た雰囲気を感じたがすぐに気のせいかと思い至ったリオは否定した。

 

 

 ――日本人としての前世を持った者が……ましてや俺の親友が同じように転生したなんて天文学的な確率に等しいさ……

 

 

 その後は、彼の後を追ってきたと思われる見た目から明らかに上の身分である女性たちから、二人の少女についての情報を求められた。高圧的な態度が気に入らなかったし、貴族の面倒事に関わるのは御免で、勝手にしてくれと、心底どうでも良いと以前までは思っていたはずだが……

 

 

『驚かせてしまってごめんなさいね。あ、私の名前はセリアよ』

 

『そっか……スラム街ってやっぱり広いのよね?』

 

『これでも地味はローブを選んだつもりだったんだけどなぁ…』

 

 

 孤児で明らかに身分が下の自分に最低限の礼儀を持って接してくれ、放っておけない気がしたセリアと、先程話しかけてきたユキヤという少年に親友を重ねて情が湧いたのか、お人好しの春人の性格が作用したリオは彼女に少なからずの助言をした。

 

 その後で、彼女が使った魔法によって自分に魔法を使う素質があると分かり、他人の身体から溢れる光が魔力としてリオには可視化されていることも判明した時には驚いたものだが。

 

 

(魔力を使えば、何か出来るのかもしれないけど……何の知識もなく行使してできるほど簡単なものでもないだろうな)

 

 

 情報料として大銀貨五枚を渡され、彼女たちと別れて今後の予定を頭の中で立てながら、リオは男たちが住んでいる家に戻れば様子がおかしいことに気が付いた。それにリオの鼻が敏感に異臭を感じ取っていたのだ。

 

――この臭いは、血の臭い?……まさか!?

 

 飛び込むように小屋に入ると待ち受けていたのは血塗れの男たちの死体。その中にはリーダー格の男に気に入られていて、スラム街では珍しい温厚な大人の女性でもあり、いつか妹と店を開くのだと語ってくれた人も血を流しながら亡くなっていた。

 

 

「ジジ……さん」

 

 

 いつか恩を返すつもりで、よく世話を焼いてくれた彼女の亡骸を見て、心が痛んだリオだが、我を取り戻して気付くことがあった。

 

 リオが井戸に行く前に男たちが金貨十枚の仕事で運んできたという二つの袋。その内の一つからくぐもった声が聞こえたのだ。袋を開けて中に入っていたのはセリアたちが捜していた少女の一人で、

 

 

 ――ああ、やっぱり…この世界は残酷なんだ。

 

 

 諦めに似たものを抱きながらも、リオは少女を見捨てて逃げる気になれず、拘束を解いて水を飲ませると、彼女は気を失ってしまう。その直後、窓が割れて外から誰かが侵入……いや、飛ばされてきたようだった。

 

 部屋に入ってきた人物に目を向ければ、先程出会ったユキヤだったことに言葉を失ってしまう。

 

 ユキヤから漂う剣呑に、ただならぬ何かが起きているのだと察したリオは、戸惑いに身を任せたままユキヤに話を聞こうとする。が、部屋に潜んでいた仮面を着けた暗殺者が襲来。このままでは殺される絶望を味わっていたとき、リオの脳内に聞き覚えのない少女の声が響き、目の前に薄い桃色の髪をした美少女が現れた。

 

 彼女は自分以外が知らないはずの、春人の名前を知っていた。

 

 

(今は、時間がない。オド――魔力の使い方……教えるから、感覚で覚えて)

 

 

 彼女のサポートの元、魔力の使い方を伝授される。

 そして、魔力を使って身体能力と肉体を強化して戦い、暗殺者を気絶させることに成功できたのだ。

 

 初めての実戦。興奮も冷め止まないまま、これからどうするか周囲を見渡すと、リオの視界にナイフを持ったまま逡巡しているユキヤが映る。その刃先はユキヤが倒した男に向けている。

 

 殺すのか?他人がやるなら別に止めはしないけど…と思っていたが、ユキヤの顔を見てその考えは霧散した。

 

 ユキヤの辛そうな…命を奪うことを忌避して、葛藤している顔が、あの時……傷ついていた親友と再び重なって見えたのだ。

 

 そんな顔をした奴に人殺しの罪を着せることは、春人の記憶を持ったリオには見過ごせなかった。すぐさま彼の元に駆けつけ、その手を掴む。

 

 

「……よせ。そんな顔してナイフを持つな。お前みたいに優しい奴が…」

 

 

 これで、思いとどまってくれれば良い。

 だが、彼が発した次の言葉は――。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「春人……」

 

「……はっ? なんで俺のことを……っ!」

 

「え……今の反応、やっぱり君は……!」

 

 

 普通なら「なんだそれ?」とか「誰のことだ?」と言うのが、自然だと思う。

 でも、リオは確実に俺のこと、と口にした。それはつまり肯定を表す。

 僕はもう一押しが欲しくて仕掛けてみることにした。

 

 

『この言葉に、聞き覚えは?』

 

『日本語……!』

 

『僕には、前世の記憶があるんだ。その記憶だと、僕は日本人だった』

 

『お前も、なのか…』

 

 

 久しぶりに長く使ったから少し拙くはあるけど、日本語で話してみれば、リオは日本語で返してくれた。もう今 のやり取りで半ば確信した僕は何かが段々と胸から込み上げてくるのを感じた。

 

 

『あ、あのさ……お前の前世の名前は?』

 

 

 聞きづらそうに尋ねてくるリオに、僕は一旦彼から目を逸らして気持ちを落ち着かせて、真正面から彼に向かい合う。

 

 

『冬樹、雨宮冬樹……それが、僕の前世の名前だよ』

 

『冬樹……なのか……?』

 

『うん。君の、前世での名前は?』

 

『俺は、春人……天川春人だ』

 

 

 リオ……否、春人の名が僕の中に溶け込んだ気がした。彼と過ごした思い出が脳内で一気にフラッシュバックされ、目尻からポツポツと涙が溢れてくる。

 

 

「はる……と……!」

 

「お、おい! なんで泣いてるんだよ…」

 

「な、泣いてなんかないよ! ただ目にちょっとゴミが入っただけだから!」

 

 

 手を伸ばしかけてオドオドするリオ。

 

 懐かしい。確か小学生の時だっただろうか。春人と美春の二人に誕生日をお祝いされて、二人が自分たちで作った思いの籠ったプレゼントを渡してくれたことが、何よりも嬉しくて、つい泣いてしまったんだ。それで、春人を不安にさせていたんだっけ。

 

 

「だ、大丈夫か、ふゆ……じゃなくて、ユキヤか」

 

「ごめん。懐かしくなって。春人が……今はリオだけど、生きていてくれたのが嬉しくて」

 

「生きていたっていうのは、違うかな。俺は、あのバス事故で多分死んだと、思うから」

 

「そっか、やっぱりそれが原因なんだね」

 

 

 ここにいる二人は奇しくも同じバス事故に居合わせた親友同士。

 何の因果か、それとも運命の女神の悪戯なのか、こうして再会できたことが僕にとっては前世の記憶を取り戻しても心の中で欠けていた穴に、リオの存在が収まったような気がする。そう思ったら、止まった涙が再び溢れ出て、リオが苦笑した。

 

 

「いつまで泣いてるんだよ……」

 

「だ、だって……涙が止まらないんだよ……」

 

「ああもう、相変わらず泣き虫な奴だな。わかったから一旦落ち着け、な?」

 

 

 不器用そうに僕の両肩を掴んで泣き止ませようとしてくるのに、安心さえ感じた。ここにいるのは、紛れもない春人なんだって。

 

 今まで何をしていたのか話したいことは色々あったけど、僕たちは今置かれている状況に意識を戻し、情報を共有した。その際に、部屋の隅にまだ縛られたままの子供が一人ぐらい入れそうな袋を開けたら、プラチナブロンドの髪が真っ先に目に入り、予想通りだったけれど、義姉さんであるエリンシアが入っていた。気を失ってはいたが、呼吸をしていることからまだ生きているんだと安心できた。

 

 一言で言うなら、僕たちはどちらも巻き込まれたのだと思う。暗殺者にとって、僕たちは邪魔者だったから消そうとしたんだ。リオに二人のことを知っているのかと聞かれたときは正直に答えて、エリンシアが僕の義理の姉だと話したときはかなり驚かれた。

 

 まあ、前世は一人っ子だったからね。

 

 議論の結果、この場から一刻も早く逃げだそうということになり、僕は義姉さんの拘束を解いて背負い、フローラ様と思われる薄紫髪の少女も置いていくわけにはいかないので、彼女はリオに背負ってもらうことにした。

 

 外に出るのは危険かもしれないけど、窓から見てジノとあの女が何処にもいないことから、遠くに移動してまだ戦っているのか、或いは生きているんだと信じてこの場所を出るしかない。万が一あの女がここに来て、この狭い空間の中で一戦交える方が危険だとあの二人の攻防で判断したからでもある。

 

 二人の少女の格好は目立つから、義姉さんには僕が着ていたローブを、フローラ様には入っていた袋で覆いながら、小屋を出る。とはいえ、スラム街にはそんなに詳しくはないから、リオに先導してもらいながら、歩き始めた。

 

 

「約束……」

 

「うん?」 

 

「約束、守れて良かったよ、冬樹」

 

「僕もだよ、春人」

 

 

 




心強い味方がいるから、このままいったらリオはあんな目に遭わなくても済みそうやなー

次回「冤罪」


↑世の中は非情である
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