この世界の才能あふれるメイン人物に囲まれる僕は才能なんてない 作:七時の権兵衛
なーんで神様にも会ってないのにこんな目に合わなきゃいけないんだせめて魔力をくれ魔力を。一般人程度の魔力しかないから天才のマクダネルちゃんと戦うときにもう少し魔力があればと何度思ったことか。
あの模擬戦の後、ジョンさんはマクダネルちゃんの習い事についていって闘技場の中に僕一人だけになったことで闘技場の安全システムが作動して管理人のおじさんにホログラム越しに早く出る支度しなさいと警告受けたためいまだ痛む体を引きずって外に出て、近所の自然公園の中のベンチに腰かけているところだ。手拭いを冷水で湿らせ、首に巻くことで熱中症対策もして公園内のシステムに武具点検申請を出す。この世界において刀剣類などの所持及び持ち運びは制限されていないが、点検や私闘などの際申請をせずに出そうとすると警備ロボが飛んできて拘束するようになっているからあらかじめ申請を出す。この公園は申請が受理されるとちょっとした道具の貸し出しもあるからよく利用している。
申請が受理され、雑務ロボが水の入ったバケツやボロ布等を持ってきてくれる。ボロ布に鉄粉の混ざったクリーム状の固形油を載せてまろほし十手を撫でる。打ち合ったまろほし十手は至る所に傷があったり、少し歪みも見える。これでも製法は日本刀を真似て堅い鋼と柔らかい地金とで頑丈に作ったんだけど、さすがにミスリル製のロングソードと打ち合うには少しばかり心もとないか…
鉄の混ざった油が傷のある凹みに馴染んで表面が平らになる。それを全体に施した後、まろほし十手全体に錬金術でもって再構成を施す。油分だけが鉄材に代わり、黒錆も新しいから周りと比べると少し色が明るいけど元通りの傷なしになった。歪みはまだ少しあるからロボから金槌と金床を借り受け、歪みを叩いて戻す。なんとか使い方のおかげで刃がつぶれるといったことが起こっていないから研ぎはあまり必要ではない…で歪みもこれで直って傷もない、整備はこれで大丈夫かな?
金槌と金床、バケツをロボットの上に乗せ、点検終了の届け出を出せば速やかにロボットが離れていく。紙袋の中に使い終わったボロ布を入れ、回収かごの中に入れればその後の処理としても終わり。再びベンチでゆっくりするか帰るか逡巡していると端末に通知が届く。
母さんからショートメッセージサービスで『そろそろお昼ご飯できるから早く帰ってきなさい』とかわいらしいスタンプと一緒に送られてきた。それに対して了解という文字と一緒に敬礼している猫のような公式キャラクターが描かれているスタンプを送って返事する。
自然公園から出て、自宅に向けて歩いていると裏路地から細い悲鳴のようなものがうっすら聞こえる。
何事かと路地をのぞき込むと雀に頭をついばまれている真っ白な女性だった。
さて、いったん意識を奥に潜ませ、高速思考の中で説明をしよう。この世界において髪の色を決定づけるのは魔力親和数値という魔力という性質にどれだけ体質として近いかを表す数値によって変わる。故に黒髪の両親から金髪の子供や緑色の髪の子供が生まれることもこの世界においてはよくあることなのだ。そのため護衛などをする人の中には髪色から実力を推定されないようにと髪を剃る人が一定数存在し、ジョンさんはその一例だ。
でだ、主に彩度・明度の二つからおおよその性質が計れる。彩度が高い人物ほど魔力の放出が得意であり、明度が高い人物ほど魔力の吸着が得意という大まかなことが言える。そのため血液型占いならぬ髪色占いも存在する。
では真っ白ということは何を示すのか。元居た世界ではアルビノを想起するがこの世界において一切のくすみのない白い髪を持つ人物は一人だけだ。
こんなところで小鳥に苛められてるとか思う訳無いだろ何やってるんだよ勇者だろ別に魔王倒せとかそんな酷なこと言わねえからせめて小鳥に苛められるとかいうイメージ総崩れなことはやめてくれよ
「大丈夫ですか?」
「ぇ、ぁ」
「すごい汚れてますけど…家はどこにありますか何なら送りますけど」
「ぁの、ぇと……」
女性、勇者は黙り込む。ゲーム内の彼女の発言によると今から十年ちょっと後の時代の時点で1世紀ほど誰とも話さずにいたらしい。要は、あまり人と話さない生活を送ったがゆえにコミュニケーションが苦手になった引きこもりと同じというわけだ。
「ぃぇ……なぃです」
「…? あっ、なるほど旅行者さんですね、宿泊はどちらでしょう?」
ちなみに僕自身は彼女が家族をすでに寿命で亡くしていることを知っているしきょうだいに相続を譲ったせいで家もないことを知っている。きょうだいの子供も全員100歳越えの大往生したわけで。
「……ぁぅ」
「……あー、僕の家が近くにあるんです。お風呂はちょっと難しいですけどシャワーだけでも浴びていきませんか」
「でも!」
急に大きな声を出さないでほしいな。彼女が親切をしようとしている子供相手に力を発揮する人柄ではないことを知っていたとしても本能でびくついてしまうから。
勇者の子供の体に対して大きい体をそっと抱きしめる。ほれほれ、子供のポカポカ体温は暖かろ?
「大丈夫ですよ。あなたを害そうとする人からは僕が守ります。こう見えても僕、普通の人より強いんです」
嘘です。盛ってます。普通よりかはマシだけど才能ある人に襲い掛かられたら現状だと体の小ささも相まって手も足も出ません。
でもさぁー、盛ってもしょうがないじゃん。この人魔王を殺すっていう勇者としての使命果たせなくて結果実質不老不死だから行く先々で迫害されて食べる物すらなくなっても死ねなくて、生きる意味すら見失った状態の人を悪人ではないと自覚している僕が主人公のためになるからと放置? そんなことするくらいだったら甘やかすわ。
「ぅ、ぁぁぁあああああああ」
大きな声で大きな涙の粒を流す彼女は迷子になっていた小さな子供がようやくおうちに帰れて、耐えていた涙が思わず溢れ出てくる様と重なった。
ひしと小さなしょたぼでーに抱き着く勇者の髪を近い方である右手で撫でながら反対の手で背を鼓動に合わせるようにゆっくりとやさしく叩く。
それと同時に浮遊型携帯デバイスを思考操作で目の前に持ってくるように動かし、視線タイピングでショートメッセージサービスに字を打ち込んでいく。
『ごめんなさい、いろいろあって帰るのが少し遅れそうなのとお風呂沸かしておいてほしいです。怪我はありません』という文章で送信したところすぐさま既読が付き1分経たないうちに『怪我がないならよし。今日はちょうどご飯多めに作っといてよかったわ』と返信が返ってきた。
ああ、やっぱり母さんには敵わないな。お風呂を沸かしてほしいとしか言ってないのにご飯もあったほうがいいって察してる。
あとは、抱きしめる力が割と強くてマシュマロの感触が割と直に伝わってるのがまずい。いや、しょたぼでーだから立ち上がりはしないけど
「僕は
「ウグ、ヒク……
彼女の顔をウェットティッシュで拭きながら改めて自己紹介をし合う。
おそらく小さな子供相手に大泣きしてしまったことに対する羞恥からか表情が若干堅くなっているがまあ問題はないだろう。
顔も拭き終わり、彼女に立ち上がるよう手の動きで示す。すると手を握られたまますっと立ち上がられた。
あの、手……いいか。
「僕の家はこっちです。ついたらとりあえずお風呂に入りましょう」
インカメラとして起動したままの携帯デバイスに写る鬼柳さんは不安そうな顔をしながらも決して僕の手を離さないという強い意志が見て取れた。
……なんで? いや、そりゃ親愛注ぐって決めたよ? 決めたけどさ、なんで泣かせただけの男に好感度が高くなってんの? 告白イベント3歩手前の状況だぞ確か。
まぁ、あのまま家に帰るだけだったので何ら障害はなく家につき、勇者につながれている手とは逆の手で玄関の生体認証を行う。脈拍などから脅迫で無理やりという可能性も有意に無いといえる状況であるため鍵が開く。
ただいまーと大きめの声で言いながら玄関に入ると母さんが仁王立ちをして立っていた。あまりの圧に若干たじろいでいると母さんは僕の方ではなく鬼柳さんのほうを見て深く頷くと優しい声で早くお風呂に入っちゃいなさいと声をかける。
といっても鬼柳さんは母さんと僕を見比べながら借りてきた子犬のように縮こまってしまっている。そんな彼女の様子が少しおかしくてほほえましく思うのも程々にしておいて家を案内する。
というわけで此処の廊下をまっすぐそのまま行ったらリビングダイニングで右手にある扉がお手洗い、左手奥の扉がキッチンへの入り口その1、左手手前が脱衣所でその先にお風呂があることを伝えてリビングのほうに行こうとするとびくともしない力で手をつながれたままであり、話してもらおうと鬼柳さんのほうを見ると寂しそうな顔でこちらの方を見下ろしてくる。
あー、もうわかりましたよ一緒に入ればいいんでしょ
コクリと頷いたら鬼柳さんは割と早い勢いで僕を脱衣所に連れて行く。なんだろうこの感覚。あれだ、大型犬の散歩に行った後にプールの準備してるの見て楽しみでしょうがなくてリード諸共引っ張られた時のアレに似ているんだ。
>>650は?
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暴力団潰し
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万馬券獲得
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ドワーフへの武器発注
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勇者来訪
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死亡イベント回避
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全部やるんだよ!