この世界の才能あふれるメイン人物に囲まれる僕は才能なんてない 作:七時の権兵衛
読者の皆様を混乱させてしまい大変申し訳ありません。
勿論我が家のお風呂は一般家庭でよく見るような浴室なのでいくら僕がショタだとしても二人一緒に入ると窮屈なので先に髪と体を洗ってもらっている。
といっても危なっかしい手つきだったため結局僕も手伝って入るんだけど。まさか体洗うのにお風呂掃除用のブラシを手に取るとは思わず、さすがに口出ししちゃったよ。
勇者の傷一つない背中を柔らかいスポンジでこする。彼女の長い白髪は前に流してもらって体の後ろ側を洗わせてもらっている。
「ご、ごめんね。ボクが常識無いせいで昇君に……」
「言っておきますけど、この程度で謝られても迷惑ですよ。それでも申し訳なさが勝つようだったらうんと甘えてください」
「でも、ボクは君に返せるものなんて、ないよ」
「見返りを気にしてたらそもそも貴女に声なんてかけませんよ。僕はただ貴女が心配だったから助けたんです」
シャワーの温度を手で確かめて、ホースの中で少し冷めてぬるくなった水から一瞬熱くなり、温かいお湯に変わったのを確認してから翔子さんの背中についた泡を洗い流す。
頭からお湯を流すために声をかけて、目を閉じたのを正面にある鏡で確認してからお湯を髪にかける。一応お風呂に入る前に母さんのシャンプー類を使ってもいいと許可が出ていたので、使いすぎないように注意しながら手に取る。
手の上に少し伸ばしてから髪に触る。頭皮を痛めないように爪を立てず、指の腹で撫でるように皮脂を取り、髪の毛についた細かな汚れを泡にからめとる。しばらく洗えない環境にいたせいでまともに泡立つことはないけど、これで十分に落ちたため、洗い流し、トリートメントを馴染ませる。
馴染むまで時間がかかるため、長い髪を一纏めにし、フェイスタオルで固定する。
「よし、馴染むまで時間かかりますから先に湯船につかっててください。その間に僕も洗っちゃうので」
「ぁ、うん」
何か言いたげにしてるけど、これ以上フラグを立てたくないから心は少し痛むけど無視する。僕は別に俺TUEEEEEとかハーレム! とか求めてない。平凡なら平凡なりに通行人Bでもいいんだよ。今度こそ親孝行したいくらいの願いしかないよ!
しかし、どうするかな。翔子さんをうちに引き込むのは当然として、そのためにはお金の問題もあるし何より893が未来に幅を利かせかねないこの町にいさせるのも不安だ。
お金の問題に関しては父さんに協力を仰げば何とかなるけど893に関しては少しばかり危険を承知で踏み込まないとどうにもならない。
危険に踏み込むってなるとただの鉄球と鋼鉄製のまろほし十手だけだと心もとない。でもそれを何とかするにしてもお金が……父さん早く帰ってきてくんないかな…
そうこうしてるうちにトリートメントも洗い流していいくらいの時間になったので翔子さんに手招きする。
お風呂の椅子にちょこんと座っている姿を見ると人類種最強の勇者とは思えないけど、事実勇者だもんなぁ…フェイスタオルをほどき、髪をゆっくり下す。再びシャワーで髪を洗い流し、今度はコンディショナーをつけ、コンディショナーに関しては短時間で済むのですぐ洗い流す。フェイスタオルを少しゆすぎ、再び髪をまとめるのに使う。
「なれてる、ね」
「え? ああ、ええ。まあ、幼馴染と一緒に入る時にやらされますからね。何年も続けてると慣れました」
「……女の子?」
「はい。その子と幼馴染で仲良いからか新しい友達がなかなかできないんですよね。でもこれでようやく一人増えました」
そう言葉にすると翔子さんはキョトンとした顔で振り返って僕の方を見る。くっ、本当に顔がいいなこの世界の住民は。未だに慣れん。
翔子さんの手を引いて一緒に湯船につかる。といっても互いに膝を立てて向かい合わせるから少し窮屈ではあるけれど。
「翔子さんっていう新しいお友達が出来ました、と思ってたんですけど、迷惑でした?」
「う、ううん! 全然、むしろ私なんかが友達でいいのかなって…昇君、すごくいい子だからきっとみんなと仲良くなれるし」
はは、いい子だからこそ大人に媚び売ってるって悪ガキには敵視されるし、悪ガキに敵視されるせいで良い子にも避けられてるけどな。
その後はお風呂から上がり、二人ともバスタオルで体をふいて服を着始める。僕は何の需要もないだろうから略すけど、翔子さんは黒いブラウスとスカートを着て、所在無さげに目を泳がせている。アクセントに白い飾りがあるのもいいな。さすが母さんセンスがいい。
お昼ご飯はやきそばだった。父さんも外から帰ってきて、手ぬぐいで軽く汗を拭きながら翔子さんを見ると、あぁ! みたいな顔をして案内を始めた。
いや、連れてきたの僕だからあまり言いたくはないけど普通はもっと何か…ないの? 息子が女の子連れてきたとか、なぜか母さんの服着てる湯上りとか……うん、マクダネルちゃんの時と同じだ。そりゃ何にも言わないわあの時に言われたから。
みんなで大皿に乗ったやきそばをつついて、お腹一杯になったところで父さんが切り出した。
「それで、今回は何やったんだ? 昇」
「裏路地で座り込んでたから声かけて、あとは成り行きで……」
「次は?」
「家もないらしいから、居候させてあげて欲しい」
正直言ってしまうと、今言っているのは相当なわがままだ。お金だって、3人で暮らしていく分には十分に余裕があるけど、成人女性一人増えるとそうもいかなくなる。一軒家だから部屋の余裕がないわけでもないけどそれにしたって色々あるし、マクダネルちゃんの時とは色々事情が違う。
でもだからこそはっきりと父さんの目を見て言う。ここで遠慮してじゃあさよならってしたら翔子さんは今度こそ心折れてしまうだろう。何せすでに僕が温かさを感じさせちゃったから……いや、自業自得といわれようがそれでも見捨てるよりかは親に見放される方が……いや、どっちもきつい
「はあ……お金に関しては考えていることがあるようだな?」
「ゑ、なんで」
「息子のことだ。ある程度はわかってる。で、展望は?」
「……競機、今週末の11レース。5-11-9-1-6の5連単」
「よし、じゃあ皆で見に行くか」
競機とは、国営ギャンブルの一つで魔力によって駆動する魔動エンジン搭載の四足歩行ロボット【ウマ】に乗って速さを競う競技で今口に出した5-11-9-1-6の内5、11、9の上位三機は評価されておらず、倍率は相当高くなっている。だが、今週末の11レースにて上記の着順でレースが行われたため過去最高倍率の配当となり、5連単に至っては1と6もさほど注目されていなかったことから万馬券どころか億馬券になる。
本来の競機においてはおおよその着順と人気は一致するため、配当もさほど多くはないが、だからこそ人気の高い馬に賭けが集中し、こういった例外の時には相当なものになるため、国営ということを差っ引いても廃れないわけだ。実際、見ごたえもあるから賭けてはないけど毎週テレビでその日の最終レースは見る、という家庭も少なくない。
翔子さんが隣で驚きの顔で固まっているのが容易に想像できる。僕自身結構異端なことは自覚しているけどそれでもたかが子供の言ったことに、じゃあ行くかとなるのって相当珍しい親だ。だから今世では親孝行しようって思えるけど。
その後、翔子さんを客室に案内して、自室に戻ることになり、パソコンの電源をつける。
パソコンの画面からビデオカメラのマークを選び、とある番号に通話をかける。
『ぼん! お前から通話なんて久しぶりじゃねえか!』
「ええ、お久しぶりですお師匠。今日はお頼みしたいことがありまして」
『あぁ? 基礎は叩き込んだやろがぃ』
「そちらではなく、商談を」
画面に映るのは白い髭を沢山蓄え、側頭部に二本の角を生やしたいかにもなドワーフ。彼はドワーフの中でも珍しい良識派な鍛冶師アイゼン翁。彼から鍛冶技術の基礎を教えてもらい、結果おおよそのことが出来るようになった。
しかし、商談と聞くとアイゼン翁はにこやかな好々爺とした顔から鍛冶師としての顔に変わる。
『なんだ?』
「ミスリル、合金でも可。700」
『じゃあ5だ』
「合金でもです3」
『それじゃほぼ只働きだ4.7』
「純ミスリルであれば倍支払います3.5」
『量は?』
「5分の4でも」
『んじゃ、純で成立だ。納品と納金は』
今行った交渉は翻訳すると『何をお買い求めですか』「ミスリル銀を、合金でもいいですけど、700g欲しいです」『それでは5000万ですね』「純ミスリル銀ではなくミスリル合金でということですまけてください3000万で」『それでは得はなくなるでしょう4700万です』「純ミスリル銀であれば言った額の倍は支払いますよ3500万で」『純ミスリル銀であれば量はどのぐらい必要ですか』「5分の4までなら受け入れます」という内容になる。これがアイゼン翁以外のドワーフだったらもっと毟り取られるから本当アイゼン翁と仲良くなってよかった。
「納品は今週末までに、納金は後払い5日後までにアイゼン翁の個人口座に振り込みで」
『それにしても、ぼんがミスリル求めるたあな、ついに嬢ちゃんに勝ちたくなったか?』
「それとは別件です。若干きな臭くなってるのとマクダネルちゃんとの訓練で身の危険を感じ始めたのでこの期にと」
『なるほどな。ああそうだ、うちの孫がなお前と話したい言うとるんだがいいか』
いやアイゼン翁、こちらがうんともすんとも言う前から呼びにいかないでください。別に話すこと自体はいいですけど相手方も迷惑でしょう。
マイクの遠くからアイゼン翁の人を呼ぶ声が聞こえる。俄かに慌ただしくなり、直後画面いっぱいに顔が映る。
『お前がノボルだな! 人間の身でアイゼン祖父ちゃんの鍛冶技術を身につけたってのは本当か!?』
「ええ、マクダネル卿と懇意にしているため、そこ伝いでお師匠と出会い、通信教育とはなりましたが一応お師匠からは及第点をいただきました」
『アイゼン祖父ちゃんから及第点もらえたのか? ノボルはすごいな!』
「ありがとうございます。ですがお孫様も僕より遅くに修業を始めたというのに、大変筋がいいとお師匠が褒めていらっしゃいました。怠けることなくいれば時機に及第点をいただけるでしょう」
少し落ち着いてきたのか、お孫さんは画面から少し離れ、後ろにいたアイゼン翁のほうに振り向き、キラキラした目をしているであろうことが想像できる。
アイゼン翁は少し疲れた様子でため息をつき、それでもお孫さんを愛していることが伝わる顔で優しく撫でる。
『ぼん、これからも何かあれば言え。遠く離れた地だがお前もまたオレの大事な弟子だ』
「ありがとうございます。何もないことを祈るばかりですよ」
ちなみにになってしまうが、もしアイゼン翁に僕の得物をミスリルで打ってもらうとなったら今回の50倍ほどになるだろう。これはアイゼン翁が金の亡者とかいうわけではなく、純粋に大金を積み上げてしかるべき技術者だからだ。むしろアイゼン翁は必要以上の金をとらないことから、ドワーフの上流階級の間では煙たがれているほどだ。
さすがにそこまでのお金の工面は競機を使うにしても元金がないため、原材料を仕入れることにした。
今週末が楽しみだ。
>>650は?
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暴力団潰し
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万馬券獲得
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ドワーフへの武器発注
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勇者来訪
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死亡イベント回避
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全部やるんだよ!