転生と天災は紙一重   作:どもです。

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三人称視点難しいけど文字数稼げる
一人称視点簡単だけど文字数少なくなる

どうすればええんやろか……


幕間 スライムと悪魔とドラゴンと。

 浮遊大陸から少し離れた場所で、浮遊大陸よりも遥かに大きい金属の塊が作られた。作られた時点で既にこの世のどんな金属よりも硬度の高い魔力金属が、光を吸収して真っ黒に塗り潰されている。

 

 直方体だったそれがとある膨大な魔力に押し曲げられて変形し、また流し込まれた魔力によってより硬度を増しながらも鎚を形作った。

 まるでパン生地でも延ばすかのような光景だったが、その生地は先述した通り何よりも硬い物質で創られていた。

 

「あー、本当に気分最悪」

 

 その鎚の下で、ドロドロに溶けているスライムが声を発した。厳密には魔法で空気を震わせているので声ではないのだが、それを気にするのは遠くの地上で鎚を見上げているあの天使くらいだ。

 

「……」

 

「グルルォ?」

 

 四本の腕を組んで、残りの一本を鎚の方に向けている悪魔は何も喋らず、スライムに咎めるような視線だけ向けた。恐らくはそのスライムのために口を開くことが億劫だったのだろう。いや、もしかすると、問うことによって発生する面倒ごとを察知していたのかもしれない。

 しかしドラゴンの方はその察知能力を備えておらず──したがってスライムが牙を剥いた。

 

「べっつにアタシだってカイシーに死んでもらいたい訳じゃなかったんだっての。悼むくらいするわバーカ」

 

「グルォ!?グオッ、グオオオッ!!」

 

 鱗を剥がされそうになった龍が抵抗し、その身を捩る。べりべりべりりと剥がされていくその鱗は本来何物をも通さず、況してや剥がれることなどありえないはずだったのだが。

 

「やめろ。今は魔法に集中しろ」

 

「はいはい、分かってますって」

 

 悪魔の練り上げた魔力とスライムの練り上げた魔力が鎚の中へと入っていき、その輝きが更に増した。

 スライムが形の制御を行なっているのだろう、スライムが体の形を変えると鎚の形も変わる。

 

 実用的な物ではなく、ただ一撃に全て注げる鎚を。

 

 口と呼ばれる平べったい部分が更に広がり、柄の部分は細く、それでいて長くなる。折れる心配がカケラも必要ないくらいには魔力が込められているため、スライムの変形は容赦や緊張から無縁のものだった。

 

「思ったんだけどさ、アタシが二番手とか最近のチート弱くない?」

 

「……俺は知らん」

 

「グルォ」

 

「あ、やっぱそう思う?んー、でもそういえば人外ニキってこの中なら最年少なのに最強だよね」

 

「黙ってろ」

 

「あいあーい」

 

 気の抜けた返事をして、スライムは雰囲気を引き締めた。悪魔の組んでいた腕はその全てが既に鎚へと向けられていて、龍もまた敵である地上のスライムを睨みつける。

 

「終わらせる」

 

 スライムがその存在感をより一層増して、口のような形の穴を大きく開けた。魔王もまた全身の筋肉を隆起させ、魔力を迸らせる。

 

「さあ、潰れて消えろ!」

 

「死んで詫びろ!」

 

 スライムの動きが止まり移動を中断した。一瞬の逡巡を押し退けて、スライムと悪魔──魔王と呼ばれる悪魔の王が魔力を一等強く出力した。

 

「ぽい技名・ハンマーインパクトッ!」

 

「うおおおおおおおおお!!!」

 

 振り上げられた鎚がまるで空気の障害なんてないかのような速度で地面を叩き、植わっていたはずの木々が衝撃に吹っ飛び、土が舞い散って地面が網目状に割れた。

 

 そしてもう一度、振り上げられた。

 

「せいっ☆」

 

「そういえば叫ぶ必要はないな」

 

 また同じ速度で同じ場所を寸分違わず打ち抜いた。

 

 大地が揺れる。

 

 大気が震える。

 

 もう一度。

 

 もう一度。

 

 

「……ねえ、そろそろいいんじゃないの?」

 

「口を閉じろ」

 

「うぇ〜い」

 

 

 幾度となく鎚が大地を割り、未だ粘性を保つ、かつて最強だったモンスターの体を抉った。神に賜った超常の力によって創り上げた武器はその威信を示すかのように淡く輝き、どうにか自分の感じている退屈を表そうと身を捩っているスライムも神々しく見える。

 

 悪魔の王が口を開く。

 

「……なぁ、アズサ」

 

「やめて」

 

「……スライムネキ」

 

「なんかネキって違和感なくなくない?」

 

 苛立ちによって、翳していた腕の血管が浮き出る。人とかけ離れたその相貌は、しかし人の目にもハッキリと怒りが表されていた。

 

 短気に怒っていることを自覚して、頭を振ることで脳内を占領している怒りをどうにか追い出すことに成功する──が、視界の端に映るスライムが煽るようにくすくす笑っていた。

 

「グルルォ!!?」

 

 仕方なしにドラゴンの鱗を剥ぐと幾分か落ち着く。

 

「なぁ、アレのことをどう思う?」

 

「アレ?……あのスライム?」

 

「違う、最後の書き込みだ」

 

「だ、か、ら、それがあのスライムでしょ?バカなの?ねえねえ、バカなの?」

 

 ゴン、と音がした。悪魔の王がドラゴンを殴って鬱憤を晴らした音だった。ドラゴンはその痛みに少しフラついたが、どうにか中空に留まる。

 ドラゴンが泣きそうになりながら──生態的に感情によって涙を流すことは不可能であるはずなのだが──二名、いや二体のモンスターを恨みの乗った視線で貫く。

 

 だが残念、攻撃力不足だ。

 澄ました顔をした悪魔の王と、イマイチ感情の読み取れない動きをするスライムが見えただけに終わる。

 

「それで、どうなんだ」

 

「あー、イッチのことね。まあ世界のバグなんかがあるんだし、そういうことがあってもおかしくないでしょ」

 

「転生のショックで、か?今までそんなことを言った転生者が居たか?俺はこの280年一度も聞いたことはない」

 

「そりゃそうでしょ、頭の中で視てるんだから」

 

「揚げ足を取るな」

 

 ドラゴンは顔を元に戻した。神龍として600年以上の時を生きて、全ての生物の中でかなり大きい自負のあったドラゴンの目の前で、その全長を遥かに超える面積が振り下ろされ何度も地面を均していた。

 周囲には真っ直ぐに立っている木が一本も見当たらず、固められた大地は真っ平らになっているが、与えられる衝撃によってあちらこちらがひび割れている。

 

 スライムの姿は、散り散りになっている破片でしか目視できなかった。

 

「グルルルル……」

 

「ん?どしたん?あ、ほとんど終わってる?」

 

「さっきから思っていたんだが、どうして理解できているんだお前は。俺の知識からしてもドラゴンの鳴き声など判別がつかないのだが」

 

「うわー、結構陥没してるね〜」

 

「聞けよ。それか反応しろ」

 

 スライムがドラゴンの背から滑り落ちると、べちゃ、という音がして着地した。着地時の衝撃でシミのように平べったくなったスライムを悪魔は念入りに踏み締めて着地した。

 ドラゴンが鼻で匂いを嗅ぐ。大地に響くあの鎚撃は止んでいるが、野生の動物が戻って来ている匂いはしなかった。スライムが体表に触れた生物に纏わりついて吸収することは有名であり、このスライムのせいで恐らく数十個以上の山が犠牲になっているので、野生の動物が戻って来ようが来まいがほとんど関係はないのだが。

 

「正に残り(かす)だな。それ以外に何と呼べばいいか」

 

「ふつーにスライムで良くね?」

 

「……もうお前は必要ない。帰れ」

 

「ひっど!?一応これカイシーの弔いだからね!?」

 

「お前に弔われるカイシーの気持ちにもなれ」

 

「えぇー、言うようになったねぇ魔王くーん」

 

「チッ、これだからスライムババアは」

 

 チッ、早くしろよ。ってかもう帰っていいか?

 ドラゴンは賢明であったので、鳴き声には出さず鼻を鳴らすのみに留めた。伊達に数百年生きてはいないのだからこれくらいの分別はつく。

 

 っていうか割とマジで鱗が剥がされ過ぎているので里に帰ると他のドラゴンに大騒ぎされるかもしれない。一応神龍種の中では最強なのだから。

 

「んー、まあ核も残ってないよね。焼いて終わる?」

 

「それが無難だろう。ああ、そういえば最近延焼するが消えることのない炎を魔法で生み出すことに成功してだな」

 

 そんなモンを人里近くの(元)森に放ったらそれこそ魔王だろ。

 そのドラゴンはかしこかったので、アホたちのはなしにはまざりませんでした。

 

「あ、アタシ結構前に、燃焼だけを取り出せたよ。燃えるものがなくても、更に言えば空気がなくても無理矢理光と熱が出せる」

 

「ん?それを混ぜるとどうなるんだ?」

 

「おっ、いいねそれ」

 

 ドラゴンはいい加減話を進めろよと尻尾でビタンビタンした。注意を引くために態々低空飛行して地を叩いているあたり、段々と二体の行動に毒されている。

 ドラゴンは気付いていない。重症である。

 

「あー、はいはい。なんとかファイアー」

 

 気の抜けた詠唱によって展開された三重の魔法陣。

 一コンマほど遅れて魔法陣から先の空気が勢いよく膨張して爆発する。魔法陣の直線上にに僅かでも木が当たっていると、生木であるにも拘らず幹が葉と共に発火する。

 

「これが熱だけバージョン。風が強いのが難点かな」

 

「それも含めて良い魔法だな。制圧力が高い」

 

 とりあえずスライムを叩こうかと尻尾を振り上げる。

 

「射程はどうなんだ?」

 

「無限。なんか最近無限が流行──ぼえっ」

 

 ドラゴンは尻尾と地面でスライムをサンドイッチした後、振り返ることなく去って行った。もうこんな化け物共とはやっていけない。そんな決意の滲み出る、とても良い決別だった。

 その尻尾にスライムが引っ付いていなければ。

 

「……まったく、後始末はいつも俺か」

 

 スライムの展開していた魔法陣の位置に、少しだけそれを弄った魔法陣を浮かべる。常温まできっちりと温度が冷却され、残るは少しの小火と、延焼していただけの熱気。

 そして遠くに見える城の方を向いてからは悪魔もまた振り返ることなく、その場から去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 隠していた核を地面から出して、その表面に分厚く粘液を纏う。仄かにチリチリと焦げる匂いがして姿が歪んでしまう。

 ああ、それにしても詰めが甘くて助かった。ギリギリでこの体の使い方を思い出す……厳密には少し違うが、何はともあれ思い出すことができて良かったと沁々(しみじみ)思う。何分ここまで広範囲の記憶を失うことは初めてだったのだから、それも仕方がないだろう。

 

 自分は誇り高き『暴食』のモンスター。

 神の遺した家畜( 人類 )神に味方する異端者達(モンスターの転生者)を絶滅まで追い込み、あの高みで見ているらしき創世神を我が王の御前へと引きずり落とすことこそ使命。

 

 何はともあれ、忘却していたものはもう全て核の中に戻っている。ああいや、頭の中、と使うのだったか?しかしこのスライムの体に頭はないし、どうしたものか。

 

 どうでもいいか。

 

 自分の今の目的はあくまであの転生者と呼ばれる者達の情報収集だ。1,500年ほど前のエンヴィースネークの失敗を忘れずに自分のことへと活かしていかなければ。

 いや、一番新しいものでは1,100年前のプライドオウルか。まだ次の継承者が出現していないあたり、プライドオウルとの連携は不可能だな。アレは中々便利なスキルなのだが。

 

 さて、今回の活動で分かったことと言えば、転生者達の利用する掲示板は隙が多いということか。自分のみならず今代のエンヴィースネークやグリードスパイダーも顔を出していた。

 転生者達は、なぜアレだけ穴塗れであるというのに掲示板を信用しているのだろうか。自分達で性能のテストはしていないのか?まさか真性のアホなのか?

 

 そのアホに自分は殺されかけたのだった。

 

 まあ、いい。あの厄介者共がアホだったのだとしても、それは相手のディスアドバンテージであって、自分はむしろそれを歓迎したい側のモンスターだ。

 

 

 ……長々と考え込んでしまっていたが、そろそろ棲家へ帰らねば。

 

 

 

 待っていろ、創世神ども。




二スレ目はちょっと待っててくださいストックないなった
それもこれも全部間違ってアプリのデータ消した挙句戻し方を把握してないワイが悪いんや……

幕間って必要?

  • 早よスレを書け
  • 掲示板より幕間を書いて、どうぞ
  • どっちも書くんだよオラァン!
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