ジンとウオッカが東京都高度育成学校に入学したら 作:ゆかりはるか
綾小路「どこから見ていた?」
ウオッカの前にいる綾小路は、教室で見たときのような腑抜けたような表情ではなく、どこか冷たい、それこそ自分達と同じ人間なのではないかと感じた。どう答えようかと迷っていると、近くから話し声が聞こえる。どうやら夜コンビニを利用した生徒達がこちらに来ているようだ。
綾小路「このことは内密に頼む」
さっきまでの殺気が無くなり、淡々と事を進めるように覇気のない声。ウオッカとしても、綾小路はただの高校生ではないと直感しているため
ウオッカ「分かった」
綾小路「じゃあ俺は部屋に戻る。また明日な」
ウオッカ「ああ」
短く会話を済ませ、綾小路は寮の方に戻って行った。去って行く綾小路の背中を見て考える。夜中に堀北涼音と堀北学と会っていた。しかも、和気藹々とした感じではなく、殺伐としていたような印象。このことから考えられるのは
ウオッカ「……まぁ、部屋に戻るか」
考えすぎたらドツボにハマりそうだったので、急いで寮に戻った
ジン「遅いぞウオッカ。料理が冷めちまったらどうしようかと思っていたところだぞ」
ウオッカ「すいやせん兄貴。ちょっとトラブってしまって」
ジン「トラブル?」
ウオッカ「実は……」
さっきの出来事を説明した
ジン「そういえば2人とも苗字が堀北だよな。まさか兄妹?」
ウオッカ「妾の子かもしれませんがね」
ジン「確かにそうだな。しかし、もし兄妹だとしても、妹に殴りかかるとは……。しかも綾小路までいるとはな。なんともきな臭い話に見えてきた」
ウオッカ「蹴られた時のダメージがまだ残っていやす。蹴る時の体重移動や、とっさの判断といい、やはり素人ではありませんぜ」
ジン「俺達の活動にも邪魔してきそうだなといいたいところだが、いざとなったら」
ウオッカ「ええ、分かっていやす」
2人は隠し持ってきていた拳銃を整備しながら話し続ける。組織の任務であるため、たとえ学校であったとしても、拳銃や薬物の持ち込みはしている。厳重な荷物検査があったが、それに引っかかるほど、間抜けな2人ではない。
ジン「とりあえず被らないようにするか。俺は堀北鈴音、櫛田桔梗をまず狙う。ウオッカは?」
ウオッカ「俺は佐倉愛理ですかね。まず1人からの方が良いのでは? どっちつかずになってしまうかもしれませんよ?」
ジン「仲良くなるとしたら櫛田の方が良いと思うんだが、どうもあの女……」
ウオッカ「においますね」
ジン「あぁ、俺の鼻は効くんでな。あいつからは、危ない匂いがするぜ」
ウオッカ「かといって堀北涼音も面倒な感じがしますぜ」
ジン「うーむ。とりあえず接しながら考えるとするよ。ウオッカも慎重にな」
ウオッカ「はい。もう遅いですし、俺は部屋に戻りますぜ」
ジン「あぁ。明日な」
ウオッカ「おやすみですぜ」
それから授業は進んでいき、放課後に好きなように過ごす生徒達。ある者は部活に入り、汗を流しながらも研鑽し、ある者は恋愛にうつつを抜かすなど、ほとんどの者達がポイントを浪費していった。ジンとウオッカもクラスメイトと少しずつ交流をしており、櫛田桔梗をパイプにして女子とも交流が増えてきた。そして4月から5月になり、今日はポイントが振り込まれる日となっているのだが…
ジン「ウオッカ、どのくらい残している?」
ウオッカ「6万くらいですかね」
ジン「俺は7万だ。しかしどいつもこいつもまぁ…慌てているな」
ウオッカ「あの男子とか、残りポイントは100ちょっととかほざいていますぜ」
ジン「腹がよじれそうだ」
ウオッカ「冷静なのは…」
ウオッカが視線を向けると、そこには綾小路と堀北が話していた。堀北は強張った顔をしており、綾小路はどうでもいいという感じの顔をしている。生徒達がポイントの振り込みが行われたかどうかと話をしていると、茶柱先生がやってきた。一部の生徒達が、担任とはいえ女性に失礼なことを言っていると、教室の空気が変わる。
茶柱「お前達は本当に愚かだな」
茶柱はこの学校の説明をしていると、生徒達は阿鼻叫喚。中には聞いていないと切れる者がいたが、いつから自分達の知っていることが当たり前だったと至極当然なことをいう茶柱。
それを聞いても怒るものがいたが、金髪の生徒…高円寺がバカにするようにクラスメイトと言い争っている。更にこの前行われた小テストの点数が全体公開された。上位勢は大体85点から90点程度で、下位の者は15点程度しかとっていない者もいる。
ちなみにジンとウオッカは60点程度だ。2人とも高校の勉強は欠かしておらず、点を取りすぎないようにした。ちなみに各教科の最後の方の問題が明らかに高校1年生の学ぶ範囲外の問題が出ていた。2人ともそこに関しては分かったものの、明らかにおかしな問題であったため、頑張って解こうとしたけど解けなかった風に答案を書いた。
それからHRが終わり、平田がクラスメイトに授業中に私語をしない、遅刻をしないことなどを言うと、軽井沢が同調するように女子にも話している。どうやらこの一か月の間に、男子のリーダーは平田、女子のリーダーは軽井沢となっているようだ。ちなみにジンとウオッカはクラスカーストでいうと、中間程度の位置にいた。2人とも体格が大きく、ウオッカのサングラスでかなり注目を集めており、話もそこそこは出来るためだ。
(ウオッカside)
時刻は昼休みという事なので、学食にいた。学食は幅広いメニューが揃えられており、どれも美味しいと評判であるため、多くの生徒が利用している。ジンとは別行動をとっており、今日は1人で昼食を摂っていた。席に着いて注文したうどんを食べようとすると
???「相席いいかな」
ウオッカ「ん?」
顔を上げると、どういうわけかウオッカの所に松下千秋がやってきた。狙っていた女の1人がやってきたころに心の中でガッツポーズを取りながら
ウオッカ「いいぞ」
松下「ありがとね~。ウオッカ君はうどんなんだ~。私はサンドイッチなんだー」
ウオッカ「おいしそうだな。それいくらくらいなんだ?」
松下「大体300ポイントかなー。値段の割にボリュームがあるから、私はお得だと思っているよ~」
ウオッカ「そうなのか。機会があったら是非食べてみたいな」
松下「一口食べてみる? ほら」
松下は自分が口をつけたところをウオッカの前に突きだす。ニヤニヤとしながらしているため、揶揄っているのはわかるが、松下は美人だ。男は美人に弱く、もちろん組織で見慣れたウオッカであっても、彼女を意識してしまう
松下「なーんてね。冗談だよ~。ウオッカ君でもこういうのにひっかかるんだね~」
ウオッカ「からかったのか!?」
松下「あはは。それにしても、赤点一つで退学なんて厳しいよね~。救済措置があるのかも分からないしさ~」
ウオッカ「そうだなー。松下はどの科目も平均点くらいだったよな?」
松下「お、よく見ているんだね~。そうだよ、大体50点くらいかなー。私勉強が苦手だからさ、赤点を取らないか不安だよー」
ウオッカ「確か平田と櫛田が中心となって勉強会を開くと言っていたし、そこに参加するほうがいいだろうな」
松下「うん、それに参加するつもりだよー。ウオッカ君は? 参加するの?」
ウオッカ「うーん」
勉強会に参加すれば、女子生徒とお近づきになれる。特に断る理由がないために
ウオッカ「そうだな。参加するつもりだ」
松下「そうなんだ。一緒に頑張ろうね~」
そんな感じで松下と昼休みを過ごした。
(ジンside)
俺は昼休みになると、ウオッカと別れて図書室に向かっていた。昨日接触出来たのは、橘茜だけでおり(ウオッカは堀北鈴音とも接触している)、他にも良い女がいるかもしれないと思ったからだ。人によっては、人がいる場所が苦手で人気のないところに行く人もいる。そして、人気のないところで時間を潰せる場所となると、場所は限られているわけだ。
ジン「誰がいるだろうか…」
期待半分で図書室に入室。中はとても大きな構造となっており、本棚にギッシリと本が詰められている。入り口から見えるだけでも、卒業まで毎日通っても読み切れないのではないか? そう思うくらいの本があった。
とりあえず誰かいないかなと思って、本を探すふりをして見渡すと、1人の少女を見つける。どうやら、本を取ろうとしているが、少女の慎重では取ることが難しいらしく、背伸びをして手を伸ばしている。ジンは少女に近づき、彼女が取ろうとしていた本を取ってあげた。
ジン「これでいいか?」
少女「ありがとうございます。これ読みたかった本なんですよ」
ジン「そうか、本が好きなのか?」
少女「はい、暇さえあれば本を読みますよ。あなたは本が好きですか?」
ジン「時々読むぞ……。最近は全く読んでいないが……」
少女「そうなんですね。あ、私は椎名ひよりといいます。Cクラスです。あなたは?」
ジン「俺はジン。Dクラスだ」
椎名「そうですか。私のクラスでは本を読む人が全くいないので、知り合いが出来て嬉しいです。もしよろしければ、一緒に本を読みませんか?」
ジン「俺で良ければ一緒に読もう。少し待っていてくれ、俺も何か読む本を探してみる」
椎名「分かりました。それではあちらの席でお待ちしております」
椎名は少し離れた丸いテーブル席を指さす。そこは、かなり閉鎖的な場所だった。
もしかして誘っているのか……そんなわけないか
椎名の目は、同じ趣味を持った人間を見つけた時のようにキラキラと輝かせており、とてもそういう雰囲気ではないことが分かる。しかし、雰囲気自体はなんというか、不思議なオーラを放っており、油断したらこっちが寝首を掛けられそうだとジンは思う。今は少しずつ好感度を上げることに専念するべきだろう。
適当に恋愛小説を取って椎名の所に向かう。
椎名「何を読まれるんですか?」
ジン「恋愛小説だ」
椎名「恋愛系が好きなんですか?」
ジン「あぁ。禁断の恋とか結構良いなと思っている」
椎名「なるほど。倫理的にもしてはいけない恋なのに、逆にそれで燃え上がってしまうような感じが好きなんですか?」
ジン「学園系も好きだが、オフィス系も好きだな。椎名が読んでいるのは……推理系か?」
椎名「はい。これはとても人気な作品で、買おうと思ったのですが、この前のSシステムを聞いて、少しは節約しないとなと思ったんです。出来るなら全部本につぎ込みたいのですが、何があるか分からないので」
ジン「C組は確か500クラスポイントくらいだったよな」
椎名「そうですね。ジンさんは大丈夫ですか? Dクラスは0だったらしいですけど」
ジン「俺はそこまで物を買っていないからな。致命傷にはなっていないぞ」
椎名「それは良かったです。試験も一つでも赤点を取ると、退学とは厳しいですよね」
ジン「あぁ。物によっては、かなり厳しいだろうな」
椎名「…物? 学力以外に何かあるんですかね?」
ジン「体育とか」
椎名「あぁ……」
そういうと椎名はどこか遠い目をしていた
ジン「運動が苦手なのか?」
椎名「はい。一番嫌いな授業が体育です」
ジン「そうなのか。俺も運動は苦手だ」
銃撃戦などは出来るが、近接戦闘は得意ではないため、嘘は言っていない
ジン「まぁ学力があるならなんとかなるんじゃないか? 運動は団体戦のイメージがあるからな。椎名が苦手でも、他の人が頑張ればなんとかなるかもしれない」
椎名「そうですね。確かにその通りかもしれません」
ジン「Cクラスは運動出来る人はどのくらいいるんだ?」
椎名「私同じクラスで友達がいないので分からないです」
ジン「そ、そうか。まぁ、まだ一か月だもんな」
椎名「はい」
そんなこんなで会話をしながら、本を読んでいく。ジンとしては読書よりも、目の前の美少女の情報を集める方が最優先なので、椎名に話しかけるが、少しだけ椎名は鬱陶しいそうだ。
それを察知したジンは会話を減らし、本を読んでいく。気が付くと予冷が鳴り、また機会があったら話をしようということになって解散した。なお、連絡先を手に入れることは出来なかった。まだ一回目だからしょうがない
午後の授業の合間の休み時間。Dクラスではあることが話題になっていた。どうも、平田と軽井沢が付き合うことになったらしい。突き合っているのかは分からないが。女子達は興味津々に平田と軽井沢に付き合うことになった経緯を聞いており、男子達はどちらかというと不機嫌になっている人が多い。なお綾小路はどうでもよさげに平田達を見ていた。
ジン「一か月で付き合うのか」
ウオッカ「これぐらいがスタンダードなんですかね?」
最後尾に座っているジンとウオッカ。ちなみに佐倉、堀北は席を外していた。2人で話をしていると、松下がウオッカに話しかけてきた
松下「やっほーウオッカ君」
松下がウオッカに話しかけたのをジンが見る
ジン(堕とせそうか?)
ウオッカ(この女、一筋縄ではいかなそうなので、気長にやりますぜ)
一瞬だけ視線が合うが、すぐに切る。松下はジンとウオッカが目を合わせていたことに気付いていないようだ。
(ウオッカside)
ウオッカ「おうどうした松下?」
松下「平田君と軽井沢さんが付き合うことになったんだってー」
ウオッカ「あぁ、俺もさっき知った。1ヶ月で付き合うことになったんだから、早い方なのか?」
松下「んー、どうだろうね? 人によるとしか…。私は早い方だと思うけどね~。ウオッカ君は付き合っている人はいないのかなー?」
ウオッカ「残念ながらいないな。まぁ、まだ一か月さ」
松下「ふっふーん。そんなにのんびりしていると、いつのまにか時間は過ぎていくものだよー」
ウオッカ「そういう松下こそ、気になっている人はいないのか?」
松下「私? 私はいないかなー」
ウオッカ「そうか。松下ならきっとすぐに見つかるだろうよ」
松下「…口説いているの?」
ウオッカ「さー、どうだろうな?」
松下「…もうっ! からかうのはほどほどにね~」
松下はウオッカの肩を軽く突くと、自分のグループに戻って行った。
(ジンside)
ジン「あの2人は付き合っているのか」
佐藤「あ、ジン君。そうらしいよー。いいなー軽井沢さん」
ジン「佐藤さんもすぐに付き合えるんじゃないか?」
佐藤「えー、そうかなー。このクラスの女子、みんな可愛いしさー。自信無くなるんだよねー」
ジン「佐藤さんもとてもかわいいと思うぞ」
佐藤「お世辞だとしても嬉しいなー」
ジンは佐藤と雑談が出来る程度の仲にはなっていた。佐藤は制服を着崩しており、彼女なりのおしゃれが感じられる。彼女はどうやらファッションに強い関心を抱いているようで、ポイントは服や小物に使っていたようだが、5月に明かされた学校の仕組みにより、クラスメイトからポイントを借りているようだ。ジンも少しだけ貸している。返してくれない可能性はあるが、その時はその時で都合がいいので、ジンは黙っていることにした。
ジン「佐藤さんは男性服に詳しいか?」
佐藤「男物? うーん、まぁほどほどだと思うよ?」
ジン「もしよければ俺に服を見繕ってくれないだろうか? 私服はシンプルなものしか買っていなくてな、女子から見て見栄えのいいものを少しは用意しておきたいんだ」
佐藤「へー? 何、誰かとデートでもするの~?」
ジン「そうだな」
佐藤「そ、そうなんだ。まぁいいよ? いつにする?」
ジン「今度の休日とかどうだろうか?」
佐藤「おっけー、詳しいことは連絡してねー」
ジン「あぁ」
女と遊べる約束が出来た事に、ジンは心の中でガッツポーズをした
それから授業は進み、勉強会にジンとウオッカは参加していた。かなりの人数が参加しているが、ある問題が起きた。それは……
堀北「あなた達、中学時代は何をしていたの? この程度の問題も出来ないようなんて話にならないわ」
須藤「んだと!」
櫛田「堀北さん、須藤君達も頑張っているのにそんな言い方は酷いよ…」
堀北「いいえ櫛田さん。この程度の問題も解けないようなら、時間の無駄という意味よ」
どうやら堀北と櫛田、綾小路、他男子数名があるテーブルに座っていたが、何やら揉めた後に、堀北達3人以外には図書室から出て行った。
ジン「揉めているようだな」
佐藤「ね。堀北さん感じ悪いし」
軽井沢「人の気持ちを考えることが出来ないのかな堀北さん」
平田「まぁまぁ。堀北さんが悪いと決まったわけでないしさ」
軽井沢「えー、でもねー?」
佐藤「うん」
松下「ちょっと厳しいよね」
ウオッカ「そんなに厳しいのか。俺は堀北さんと話したことがないんだが」
松下「クラスで話しているのを聞いたことないよー。あ、でも綾小路君とは話していたかなー?」
佐藤「綾小路君? 誰?」
松下「ほら、櫛田さんの隣にいる茶髪の男子」
佐藤「へー…」
軽井沢「彼陰薄いよね~」
陰が薄い? とんでもない
ジンとウオッカは綾小路を見ると、綾小路も視線に気付いたのかジンたちの方を見る。その後櫛田が綾小路と共に図書室から出て行った。ジンとウオッカも追いかけるような真似はしない。それから、勉強会は進み、ジンとウオッカは女子達と交流を深めることが出来た。
ジン「俺は周辺を調べたい。ウオッカは先に帰っていてくれ」
ウオッカ「わかりやした。こっちは、任せておいてください」
ジン「ああ。上手い飯を期待しているぞ」
ジンは、外出用の服に着替えて外に出る。ちなみに全身真っ黒。組織にいたコートを持ち込もうとしたが、コートは大きく、隠すのは少し面倒であったため、持ち込みはしていない。ウオッカは近くを探索していたようなので、今回は少し離れたところを探索しようと歩き始める。
ジン「あ?」
何か蹴りつけているような音が聞こえる。しかも、何か叫んでいる?
???「ざっけんな! ……で………」
まさか喧嘩? 決闘? それとも
ジン「レイプ?」
今は夜。つまり我々のテリトリーだ。そんな自分の得意領域の中、自分以外の奴が楽しくしていると思うと、少し苛立ったジンは、物音がする方へ歩き出す。起きていること次第では、それをネタにして勧誘することが出来るかもしれないからだ。入学して約1か月、そろそろ何か事件が起きてもいいころだろう。
ジン「あのお方もそうだそうだとおっしゃっている」
忍び足で歩いて近づくと、なんとそこには櫛田桔梗と綾小路清隆がいた。しかも綾小路は櫛田の胸を触っており、櫛田はその手を握っている。
つまり……同意の上? じゃあさっきの金属に何かを思いっきりぶつけているような音は……まさかそこまでハードなものをしているのか……。ウオッカから綾小路の身のこなしを聞いてはいたが、ここまでとは……。
さらに天使のような笑みを浮かべていた櫛田が綾小路ほどの冷たい表情をしている。やはりどこか怪しいと思っていたが、そういうことだったのだろう。
少し離れた所から2人を見ていると、話し終えたのか、櫛田は綾小路から離れて行った。綾小路もそのまま部屋に戻るのかと思ったが、視線をこちらの方に向けてきた。最初は偶然かと思ったが、こちらを見てくる視線が少しずつ殺気立っていることに気付く。言葉では言っていないものの、これは「出てこい」といっているのだろう。
ジン「…」
どうしようかと迷っていると
綾小路「そこにいるのは分かっている。出てきたらどうだ?」
間違いなく、自分に言っている。ジンはゆっくりと綾小路の前に姿を現す。
綾小路「ジンか。こんなところで何をしているんだ?」
ジン「何か物音が聞こえてな、近づいて辺りに何かないか見に来ただけだ」
綾小路「そうか。ここら辺には何もないようだぞ」
ジン「そうなのか。なら俺は戻る」
ジンは背中を綾小路に向けて歩き出す。綾小路はそれ以上何かをしてくることはなかったが、自分の背中に冷たい視線を向けられていることに気付いている。間違いなく、綾小路に何らかの理由で標的若しくは候補にされてしまったような気がする。
ウオッカ「兄貴、おかえりですぜ……どうしました?」
ジン「いやー、綾小路と櫛田が人気のないところで会っていてな。そこを見てきた」
ウオッカ「……してました?」
ジン「櫛田は天使ではなく堕天使だったようだ」
ウオッカ「なるほど。やはりあの微笑みは……」
ジン「あぁ、全部が嘘とは限らねぇが、全部が本当とも限らねぇ。少なからず、演技はしているようだ」
ウオッカ「なるほど。あの女といい勝負なのでは?」
ジン「どうだか。Dクラスは不良品と茶柱がほざいていたが、あれくらいの演技は誰でもするようなものだと思うがな。決して学力や運動能力が低いわけでもなく、社交性もあるのにDクラスに配属されたということは、何かあるのだろう。逆にいうと、そこをつけばこっちの思い通りに動かせそうなんだが……」
ウオッカ「また綾小路ですかい」
ジン「堀北に続いて櫛田の時にも出てくるとは。あいつが少し邪魔だな」
ウオッカ「とりあえず食事にしましょう。今夜は肉じゃがですぜ」
ジン「うまそうだな。いただきます」
ウオッカ「兄貴、手を洗ってうがいですぜ」
ジン「おっと、そうだったな。少し待っていてくれ」
2人は夕食を摂って、そのまま適当に時間を潰しながら就寝した。
もしよろしければ評価をお願いします(^▽^)/