ジンとウオッカが東京都高度育成学校に入学したら   作:ゆかりはるか

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試験数日前、櫛田のおかげで過去問が手に入った。一発退学の可能性がある試験で過去問の存在は大きく、実際受け取った人たちのほとんどがとても感謝していた。全く同じ問題が出るとは限らないが、小テストの方の過去問を貰って、自分達が受けた小テストと比較すると、ほとんどが全く同じ問題であったので、更に安心感が出てきたのだろう。

 

 

 

櫛田はクラスメイトから感謝されるたびに「皆のためだよー」といっていたが、ジンとウオッカからすると、その笑みが嘲笑しているようにも見える。男子生徒もお礼を言っているが、「勉強する必要がなかったなーガハハハッ」と笑っている人もいた

 

 

 

ジン「っふ」

 

ウオッカ「楽しみですね」

 

ジン「あぁ」

 

 

 

勉強する必要がなかった? 一発退学することがありえる試験で? 彼は体育の時にも、運動能力は高くなく、女子に平気でセクハラをしているところもある。今回は過去問があるからなんとかなるかもしれないが……

 

 

 

 

 

 

 

 

(ジンside)

 

 

 

堀北「2人はテスト大丈夫なのかしら?」

 

 

堀北がジンに話しかけてきた。ちなみにもう1人は綾小路だ

 

 

 

綾小路「大丈夫じゃないか?」

 

ジン「俺も大丈夫だ。綾小路は全体的に点数が取れてはいるが、少し危ない感じがするぞ」

 

綾小路「そういうジンだって、人のこと言えないと思うのだが」

 

堀北「私からすればどっちもどっちね。だけど、今回の試験に限っていえば、小テストと合致していることが多かったことを考えると、そこまで不安になる必要はないと思うわ」

 

綾小路「櫛田様様だな」

 

ジン「あぁ」

 

堀北「…」

 

 

 

堀北は櫛田を見て、何か複雑そうな顔をしていたが、立ち上がり櫛田に話しかけた。綾小路とジンは、そんな堀北を見守る。

 

 

 

堀北「櫛田さん」

 

櫛田「んっ?」

 

堀北「本当に今日までありがとう。あなたがいなければ、勉強会は成立しなかった。それと一つだけあなたに確認したいことがあるの」

 

櫛田「確認したいこと?」

 

堀北「もし、これからもあなたがクラスのために私に協力してくれると言うなら、どうしても確認しておかなければならないことよ。あなたは私のことが嫌いよね?」

 

 

 

それを見ていた2人は

 

 

 

綾小路「おいおい……」

 

ジン「直球だ」

 

綾小路「というか上から目線すぎないか」

 

櫛田「どうしてそう思うの?」

 

堀北「そう感じるから、としかその質問には答えられないけど……間違ってる?」

 

櫛田「……あはは、参ったな」

 

 

 

クラスメイトと接するように、変わらぬ笑顔を堀北に向けた

 

 

 

櫛田「そうだね。大っ嫌い」

 

 

 

はっきりと伝えた。隠すことなく、真っ直ぐに。

 

 

 

櫛田「理由、話したほうがいい?」

 

堀北「……、いいえ。必要ない、その事実が分かれば十分よ。これからは気兼ねなくあなたと付き合っていくことが出来そう」

 

 

櫛田は鞄を持って教室から出て行った

 

 

 

綾小路「…」

 

 

 

綾小路は、さっきまでの2人のやりとりを見て何か考えているようだ

 

 

 

ジン(やれやれ。他にクラスメイトがいるというのに、あんなにも真っ直ぐに嫌いというとは……、比喩とかではなく、本当に嫌いなんだろうか)

 

 

 

平田「ジン君、勉強会に参加するかい?」

 

 

ジン「ああ」

 

 

 

 

 

 

(ウオッカside)

 

 

 

ウオッカ「おう松下。お前は試験大丈夫そうか?」

 

松下「あ、ウオッカ君。うん、櫛田さんがくれた過去問のおかげでなんとかなりそうだよー」

 

軽井沢「櫛田さんすごいよね。上級生から過去問を手に入れてくれるなんて……。クラスのためにって」

 

松下「流石櫛田さんだよねー」

 

ウオッカ「あぁ、櫛田はすごいな」

 

 

 

とりあえず同調するウオッカ。内心ではそんなことはあまり思っていない。しかし、女子が多い中での会話は、異議を唱えることはかなりリスクがある。女子は同調しなければいけない世界にいると以前組織で聞いたことがあるのだ。

 

 

 

軽井沢「あ、そろそろ勉強会の時間じゃん。私は行くけど、2人は?」

 

松下「どうしようかウオッカ君?」

 

ウオッカ「? あぁ、参加するつもりだ」

 

松下「私も参加するよ~」

 

軽井沢「そっか、じゃあ行こうかー」

 

 

 

松下は軽井沢と並んで歩き出すが、一瞬だけ後ろを振り返りウオッカと目が合う

 

 

 

松下「♪」

 

 

 

少しニコニコしていた。ウオッカは松下の笑みの理由が分からず戸惑ったが、置いていかれないようについていくことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして試験を終えて、今日は試験の結果発表だ。この結果次第で今日で学校からいなくなるかもしれないため、試験に自信が無かった人は恐怖で足が震えているだろう。

 

しかし、このDクラスでそのような怯えをしている人はいない。テストは櫛田が手に入れた過去問と同じ問題が怖いくらいに載っており、過去問を丸暗記した人なら不合格になるのがおかしいくらいだった。

 

ジンとウオッカも、過去問を覚えており、仮に覚えていなかったとしても全て解くことが出来る内容だったため、2人とも落ち着いている。しかし、1人だけ心配そうにしている人がいた

 

 

 

堀北「…」

 

綾小路「どうした堀北? そんなにソワソワして」

 

堀北「別にソワソワなんかしていないけど?」

 

綾小路「そうか?」

 

堀北「ジロジロ見ないでくれる? 気持ち悪い」

 

 

 

ガーンという音が綾小路から聞こえてきたような気がする

 

 

 

ジン「堀北はテスト出来なかったのか?」

 

堀北「あの程度の問題に私が躓くわけがないでしょ」

 

ジン「じゃあなんでそんなにってうおっ!?」

 

堀北「うるさいわね。少しは静かに出来ないの?」

 

 

 

堀北はお得意の武器(コンパスの針)を刺そうとしてきたので、咄嗟に手を動かした

 

 

 

ジン「綾小路、どうしてこんなに機嫌が悪いんだ」

 

綾小路「俺に分かるわけがないだろ」

 

 

 

この前睨み合った2人だが、あの時のことをなかったかのように振舞っている。茶柱先生がやってきて、黒板に試験結果の紙が貼られた。名前の横に点数が表記されており、多くの生徒が80点から100点を取っていた。

 

 

小テストのことを考えて、多くの人が100点を取っていることを考えると、間違いなく不正を疑うが、茶柱はむしろ感心していた。生徒達がその結果に喜んでいると、茶柱は赤いペンを手に持ち、ある生徒の名前の上に線を引く。

 

 

 

須藤「あ?」

 

 

 

その生徒は須藤だ

 

 

 

須藤「なんだよ、どういうことだよ?」

 

茶柱「お前は赤点だ須藤」

 

 

 

須藤の赤点扱いに騒然となっていく教室。淡々と赤点の説明をする茶柱。どうやら赤点は各クラスの平均点の半分の値が赤点となる。つまり高得点の人が沢山いるほど、赤点のハードルは高くなるというなんとも皮肉な話だった。

 

 

 

呆然とする須藤を全く気にせず説明をしていく茶柱に平田が抗議する。須藤の答案用紙を確認させてもらっているが、採点ミスは0で須藤が赤点であることは確定してしまった。茶柱が教室から出て行くと、堀北は教室を出て行く

 

 

 

ジン「どこ行くんだ?」

 

綾小路「トイレ」

 

ジン「そうか」

 

 

 

ジンの顔を見もしないでそのまま教室から出て行った。教室内では、須藤が荒れているが、心配そうに見ている生徒よりも迷惑そうに見ている生徒の方が圧倒的に多い。

 

 

なぜなら、彼の素行はあまり良くなく、4月では遅刻は大きく、声を荒げて怒鳴るため、気の弱い生徒は怖い存在でもあったからだ。内心、うるさいのがいなくなって喜んでいる人の方が多いかもしれない。

 

 

 

ジン「あの2人がなんとかするだろうな」

 

ウオッカ「そうですね。こっちはこっちでやっておきましょう」

 

 

 

ジンとウオッカは須藤のことは放置して、他の生徒に話しかけた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ジンside)

 

 

ジン「よう」

 

佐藤「あ、ジン君。須藤君退学になったみたいだね」

 

ジン「みたいだな。とても気の毒だ」

 

軽井沢「あれ、ジン君って須藤君と仲良かった?」

 

ジン「話したことはないが、同じクラスの人がこうなると寂しいものだ」

 

軽井沢「あはは、そうなんだ。でも私は内心少し嬉しいかな。女子の中じゃ須藤君を怖がっている人って沢山いるからさ」

 

ジン「そうなのか?」

 

佐藤「うん。体格も大きいし、口調も荒いからかな」

 

ジン「俺も体格は大きい方だよな?」

 

佐藤「確かにジン君は大きい方だと思うけど、優しいし、頼りになりそうなんだよね」

 

ジン「そうか? お世辞でも嬉しいぜ」

 

軽井沢「お世辞じゃないよ~。はぁ、それにしてもあの2人もうるさいなー」

 

佐藤「池君と山内くん?」

 

軽井沢「そうそう。櫛田さんが過去問を手に入れた時さ、山内君お礼を言う前にもっと早く寄こせとか言っていたしさ。過去問がなければ自分が退学していたかもしれないのに」

 

佐藤「ほんっとそうだよね。それに目線も気持ち悪いしさ」

 

ジン「確かにあれは酷かったな」

 

軽井沢「でしょー? それに平気で下ネタも教室内で言うし、控えめに言って気持ち悪い」

 

佐藤「キモイよねー」

 

軽井沢はDクラスの女子カーストで上位にいるからか、気の強い発言が多いようだ。佐藤もそんな軽井沢と一緒にいるからか、気が強い。しかし、この2人の発言に近くにいた女子の多くが賛同していることから、軽井沢の発言力の強さが分かる。まぁ、山内に関しては、発言力以前にとても不愉快だったらしく、満場一致のようだ

 

 

 

ジン(狙うとしたら軽井沢か。こいつの発言力はとても頼りになるが、敵になると怠いな)

 

 

 

しかし気の強い発言のわりに、どこかよそよそしい感じもある。ただの気の強いギャルというわけではないのだろうか? それからも須藤や池、山内の陰口で盛り上がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

(ウオッカside)

 

 

 

兄貴は佐藤と軽井沢と話しているから……俺はどうしようか。教室にいても空気が悪く、少し気を紛れさせるためにも、トイレに向かうことにした。用を足し、自分の教室に戻る途中、廊下の曲がり角で誰かとぶつかってしまう。

 

 

 

???「きゃっ」

 

 

 

少女の背中を支えて倒れないようにすると、近くに杖が落ちている。その子は黒いベレー帽をかぶっており、ガーターベルトをしているため、非常に良い肉付きをしていることが分かる。

 

 

 

ウオッカ「すまない。大丈夫か?」

 

少女「え、えぇ。怪我はありませんので心配は無用です」

 

ウオッカ「それはよかった。その杖は…」

 

 

 

ウオッカが少女から杖に視線を移動させると、近くにはもう1人の少女がいた。その子は1年女子の中でも身長が高い方で、やる気がないというか、面倒ごとが起きた時のようなだるさを感じさせる目でウオッカを見ていた。その子は黙って杖を手に取り、帽子の少女に渡す。

 

 

 

ウオッカ「その……すまなかった。俺の注意不足だった」

 

帽子少女「いえ。こちらも注意不足でしたので、お気になさらず。それではいきますよ真澄さん」

 

ウオッカ「あ、あぁ」

 

 

 

帽子少女は一礼してウオッカの横を通り過ぎると、もう1人の少女はウオッカに何も言わず、彼女に付いていった。

 

 

 

とてもかわいい少女だったが、どこか冷たいような印象を受ける。杖を必要としていたことから、歩行に必須なものだと思えることから、身体に何かしらあるのだろうか? 

 

 

もう1人の少女もどこか面倒そうにしていたが、友人同士でもそうなることはよくあることだし、偶然そういう時だったのだろう。

 

 

 

ウオッカは教室に戻った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうやら須藤の退学は取消しになったらしい。詳しいことは良く分からないが、須藤が退学にならなかったことに、不満を抱いている生徒は結構いた。しかし、須藤は直ぐに噛みついてくる性格……ある意味沸点が堀北と近いので、それを言葉で出すのはあまりなかったが、雰囲気で感じることが出来た。

 

 

 

そして今まで1人でいることが多かった、というより1人でいた堀北は少しずつではあるが、クラスメイトと交流するようになっていった。といっても、いきなり話すような感じではなく、挨拶されたら返事をする程度だが、それでも周りと交流しようとする意志が見られるため、クラスでの堀北の印象は少しずつ上昇する……と思ったが

 

 

 

 

 

堀北「気持ち悪いわね」

 

山内「そんなこと言わないでくれよー堀北ちゃん~」

 

堀北「気持ち悪い」

 

 

 

ちゃん付けされていることに苛立ったのか、前よりも言葉の鋭さが増している。なんなら鳥肌も立っている。言葉だけでなく、身体でも意思表示をするとは、交流する意思が簡単に折れる心配はなさそうだ。

 

 

 

ジン「まぁ一安心か?」

 

ウオッカ「そうでもないみたいですぜ」

 

ジン「あ? どういうことだ?」

 

 

 

 

ウオッカは右隣の生徒を小さく指さす。他の者では気づくことが出来ないくらい、素早く的確な指さし。組織にいながら、荒っぽい運転をしたことが無いウオッカなので、しつこいくらい指さし確認をして得た指先の器用さはかなりのものだ。

 

 

 

ウオッカの右隣……佐倉愛理だ

 

 

 

彼女は堀北と同様に、ほとんどのクラスメイトから距離を置いている。堀北と違い、堂々と前を向いているわけではなく、いつも顔を下に向けている。更にはきはきと喋るわけでもなく、どもったり、時には無言になることもある。堀北とは違う意味で浮いている存在であった。

 

 

 

 

そういう人間も沢山いるし、それだけなら特になんだというわけではないのだが、今日は一際身を小さくしているような気がした。もしかしたら……

 

 

 

ウオッカ「それもあるかもしれませんが、これを見て下さい」

 

ジン「…なるほど」

 

 

 

周囲に人気がない(綾小路が教室にいないこと)を確認し、ウオッカは持っていたスマホをジンに見せる。そこにはあるアイドルのホームページが表示されており、その人物が目の前にいる佐倉愛理と酷似していた。

 

 

 

眼鏡を掛けているため、よく見ないと気付かないが、組織で活躍してきた2人からすれば、見抜けないわけがなかった。なんせ組織には変装の達人がいるからだ。彼女と比較すれば、この程度はおままごとに過ぎない。

 

 

 

 

更新はある日を境に途切れており、応援コメントも見ることが可能だ。応援コメントを見ると、「更新を待っています」というコメントが沢山あったが、一部にはとても気味の悪いコメントもあった。内容は「いつでも君を見ている」とか「君は僕だけの天使」などと、独占欲丸出し一方通行の想いが書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

そしてその気持ち悪い書き込みに関連してある事件が起きることになる

 

 




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