ジンとウオッカが東京都高度育成学校に入学したら   作:ゆかりはるか

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常夏の海。広がる青空。澄み切った空気、そよぐ潮風は優しく身体を包み込み、真夏の猛暑を感じさせない太平洋のど真ん中。生徒達はハイテンションに豪華客船で過ごしていた。

 

 

 

 

軽井沢「ほんとすごい眺めだよ! マジ感動なんだけど!」

 

佐藤「ほんとだねー! こんなにすごいところに来られるなんてこの学校に来て本当に良かったよー!」

 

 

 

軽井沢グループもテンションアゲアゲだ

 

 

 

櫛田「ほんと、凄い景色だね…!」

 

 

 

 

櫛田も恍惚とした溜息をついて海を見ていた。Dクラスに限らず、他の3クラスも大方似たような反応で、船酔いして少し気分を悪くしているような人を除けば、☆10が大量に入るのではないだろうか?

 

 

 

そんな中、ジンとウオッカはどうしているかという

 

 

 

ジン「良い眺めだな」

 

ウオッカ「これは☆10の価値がありますぜ」

 

 

 

2人はプールのデッキチェアに寝転がり、水着姿で楽しんでいる女子達を見ていた。ただのプールなら、こういう視線に勘づく者が多いだろうが、今回は豪華客船のプールだ。内装もとても煌びやかとしており、船に搭乗するだけでも払えないのではないかと思えるほどの豪華さだ。

 

 

 

 

それを前にして平然とすることが出来るとするならば、自分ならいつでもどこでも乗れる…つまりそれなりの地位や名誉、金がある人となる。だが当然、そんな人は日本の高校生の段階だとほぼ0だと思っていいだろう。いたとしても片手で足りそうだ。

 

 

 

 

目の前には布面積が少ない水着ではしゃいでいる女子達がいる。水をかけられ「やめてよ~」といいながらもはしゃいでいるその姿は、無邪気な子供。胸がボインボインと揺れていたり、布が食い込みそれを直す姿は大人。普段なら服で隠されているうなじや足の付け根も思う存分見ることができるこの環境はアダルティ。ギラギラと揺れる太陽はシャイニー。そんな光景を見れば誰もがスマイル

 

 

 

かと思いきや……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジン「熱いっ! 熱いって! 溶ける!」

 

ウオッカ「ぐおお! 黒がぁぁ! 黒はどこだ!?」

 

ジン「女子の水着に潜りこめば、日陰になるよな!?」

 

ウオッカ「兄貴! このままだと熱中症になりますぜ!」

 

ジン「くそ、カッコつけて日陰のないデッキチェアなんかに座るんじゃなかった! クソが!」

 

ウオッカ「この船は不良品だ! 黒を取り入れないとかこの学校が不良品なんじゃないか!」

 

ジン「っぐ…。もう身体が…。ウオッカ、撤退するぞ!」

 

ウオッカ「はいですぜ!」

 

 

 

 

メルティ

 

 

 

 

 

日陰に急いで移動する2人だった。恐らく黒が無いからとブチ切れる乗船者は、この2人が初めてではないだろうか? どんな形であれ、世界記録の1つを組織が更新したとあのお方は笑っているかもしれない。

 

 

 

 

 

ジン「あー、ひどい目に遭った」

 

ウオッカ「全くですぜ。兄貴、肌はどうですかい?」

 

ジン「少しひりひりするが軽症だ。しっかりと冷やしで置けば、30分程度で治まると思う。ウオッカはどうだ?」

 

ウオッカ「俺も軽症ですぜ。少し遅くなりましたが、日焼け止めを塗りましょう」

 

 

 

 

各自日焼け止めを塗っていると、綾小路がやって来た。2人とも身構えるが

 

 

 

 

綾小路「身構えないでくれよ。別にお前らと争いたいわけじゃないんだ」

 

ジン「だったら何のようだ」

 

綾小路「いや、さっきまで須藤たちといたんだが、いつの間にかはぐれてしまってな…」

 

ウオッカ「っち、1つ良いことを教えてやる。この船はデカい。一度ハグれたら、また会うのは困難だ。ここは大人しくしていることを勧めるぜ」

 

ジン「そうだな」

 

綾小路「ん、そうか…」

 

ジン(はぐれたというよりは…)

 

ウオッカ(はぐらかされましたね)

 

ジン(言ってやるな。実際敵対しているわけでもないし、出来れば友好的にしたい。ここは励ますぞ)

 

ウオッカ(フォローしますぜ)

 

 

ジン「綾小路、良かったら俺達と行動しないか?」

 

ウオッカ「もし誰かとつるむ予定が無いならだがな。だが俺達としても、綾小路と仲良くなりだいんだ」

 

綾小路「……そうだな。もしよければ、俺も行動を共にさせてくれ」

 

ジン(上手くいった…が…。なんだこいつ)

 

ウオッカ(身体が…痒い!? なんでだ…)

 

綾小路「それで、どこか行くのか?」

 

ジン「とりあえず、デッキの方に行くか。娯楽施設は、多くの奴らが飛びつくだろうからな。少し日をあけてからの方が楽しめると思うしな」

 

綾小路「なるほど」

 

ジン「流石兄貴。俺もそう思っていたところですぜ」

 

綾小路「2人は仲が良いんだな」

 

ジン「おう」

 

ウオッカ「大切な相棒だからな!」

 

 

 

綾小路は羨ましそうに2人を見ている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デッキの方に着くと、櫛田がいた。綾小路を中央にして右にジン、左にウオッカが付く。3人とも体格は1年の中でも、中の上くらいで、更に後方の2人はお世辞に言っても目つきが良いとは言えず(ウオッカはサングラスを掛けているため、そもそも目つきを確認できない)、綾小路も表情が乏しいため、かなり異質な雰囲気を漂わせていた。もちろん3人はその自覚がない。

 

 

 

 

 

櫛田「綾小路君にジン君とウオッカ君だ。珍しい組み合わせだね」

 

綾小路「あぁ」

 

ジン「偶々そこで会ってな。どうせだし、一緒に行動することにしたんだ」

 

櫛田「そうなんだ! 3人ともきっと仲良くなれるよ!」

 

ウオッカ「そうだな」

 

櫛田「堀北さんは? 綾小路君一緒じゃないの?」

 

綾小路「さぁ。俺はあいつのお守りじゃないからな…」

 

ジン「でも一緒にいることが多いような気がするな」

 

ウオッカ「堀北が綾小路以外に話をしているところは見た事ないぜ」

 

綾小路「櫛田とか須藤とかいるだろ」

 

ジン「そういうのではないんだがな…」

 

綾小路「堀北は旅行を満喫するような人間じゃなさそうだし、部屋にいるんじゃないか?」

 

櫛田「そうかも」

 

 

 

 

ジンとウオッカは綾小路から少し離れる。どうもさっきから、身体が痒いのだ。不気味な相手と敵対した時とは、違い違和感があるが、その正体が分からない。ハエがずっと身体中を回っているような感覚だ。

 

 

 

 

 

櫛田は綾小路と話を続けていると、船内のスピーカーからアナウンスが流れる。ただのアナウンスではなく、「非常に意義ある景色をご覧頂けるでしょう」というものだった。ジンは綾小路達に一声を掛けて、その場から離脱する。綾小路が捨てられた子犬のような顔をしている。ジン達から誘っておいて、そっちから距離を取られたことに悲しんでいるようだ。

 

 

 

 

 

2人で少し離れたデッキの方に移動すると、そこには友達の女子達がいた。ジンとウオッカは目配せして、それぞれ普段が接している方の女子に話しかける

 

 

 

 

 

 

 

(ジンside)

 

 

 

ジン「よう椎名。今1人なのか?」

 

椎名「あ、ジン君。こんにちは」

 

ジン「おう。この船凄いよな。これだけ豪華な所にいられるなんて、今まで生きていて良かったと思うが、椎名はどうだ?」

 

椎名「私は本を読みたいですね。確かにこの景色も素晴らしいと思いますが、もう飽きました」

 

ジン「そっか、さっきのアナウンス聞いていたか?」

 

椎名「非常に意義のある景色と言っていましたね。なんでしょうね?」

 

ジン「なんだろうな。俺にはさっぱり分からねぇや」

 

???「この程度も分からねぇとは、やはり不良品は不良品だな」

 

椎名「あ、龍園君」

 

 

 

 

後ろから声を掛けられ、振り向くとそこにはウオッカが話していた龍園翔がいた。ウオッカは既に接触しているが(C教室の扉前で鉢合わせ)、ジンはまだだった。龍園の頭のてっぺんからつま先を見て思ったことは

 

 

 

 

こいつは面白い。綾小路と同等…いや、それ以上かもしれねぇな…

 

 

 

龍園もジンを上から下までじっくりみた上で、不敵な笑みを浮かべている

 

 

 

 

龍園「うちの椎名と随分と仲が良いな。お前、名前は?」

 

ジン「ジンだ。そういう君こそ誰なんだ?」

 

龍園「おっと、こいつはいけねぇ。俺は龍園翔、Cクラスの王だ。覚えておけ」

 

ジン「王様? 学級委員長みたいな感じか?」

 

龍園「…っくくく」

 

 

 

 

何か面白かったのか、龍園は愉快そうに笑っている。椎名はという、どうでもよさげに2人を見ていた。基本この女は、本と、本の内容を話せる人間にしか興味を抱かないのだ。

 

 

 

 

龍園「おもしれぇ! そんな返しをしてきたのはお前が初めてだ! もう1人の方も期待出来そうだな。あのサングラスの奴。うちのアルベルトと見た目が似ているしな」

 

アルベルトと呼ばれた生徒「Yes,Boss」

 

龍園「こいつはアルベルトだ。じゃあな不良品、お前達は俺が潰してやるから、その時まで待っていろよ」

 

アルベルト「Yes」

 

 

 

 

龍園は2人から離れながら、片手を上に上げて手を振っている。去り際まで拘るあの姿勢…組織でも期待できそうだが、誰彼構わず噛みつくような態度であるため、もう少し様子を見るべきだろう。あのような奴が、簡単に退学するとは思えない

 

 

 

 

椎名「しかし、小さい島ですねー」

 

ジン「遠くから見ているからな。小さく感じるだけだろうな」

 

椎名「ジン君には驚きました。あの龍園君に学級委員長って…ふふ」

 

 

 

 

椎名はお腹を抱えて、笑うのをこらえているようだ。本好きな彼女が、本以外でリアクションを取っていることが珍しいようか、近くにいた女子生徒が椎名を見て驚いている。ジンはその女子生徒を見るが、こっちを見るなと言わんばかりにそっぽを向いて顔を合わせてくれない

 

 

 

椎名「あれ? 伊吹さんじゃないですか?」

 

 

 

女子生徒はピクリと肩を震わせて、この場から去って行った

 

 

 

 

椎名「あ。行っちゃいましたね」

 

ジン「知り合いか」

 

椎名「同じクラスの伊吹澪さんです。龍園君とよくいるのを見ます」

 

 

 

 

ポロポロとクラス内のことを話す椎名。あまりにポロポロと話す椎名にトラップの可能性を疑ったが、椎名のぽわぽわした雰囲気を見ると、天然なのかなと感じてしまう。

 

 

 

 

まさか、これこそが彼女の戦術? 

 

 

 

 

ジン「伊吹とは仲良くないのか?」

 

椎名「私ですか?」

 

ジン「そうだ」

 

椎名「仲良くないですねー。話すとしても業務連絡程度なので。伊吹さんも、クラスメイトとは距離を置いていると思いますがね」

 

 

 

そんな感じで話していると、再びアナウンスが流れた。島に上陸するため、全員ジャージに着替えて手洗いを済ませておけというものだった。

 

 

 

椎名「あ、時間みたいですね。それではまた」

 

ジン「あぁ。またな」

 

 

 

 

椎名は去って行った

 

 

 

 

 

 

 

(ウオッカside)

 

 

 

 

ウオッカ「よう佐倉」

 

佐倉「あ。ウオッカ君…」

 

ウオッカ「こんなところで何をしているんだ」

 

佐倉「その…ウオッカ君は私が雫って知っているんだよね?」

 

ウオッカ「そうだな」

 

佐倉「そうなんだ……。なら言うけど、カメラ映りの良い場所を探していたんです」

 

ウオッカ「なるほど。それでこんな人気の無いところに。俺で良ければ付き合おうか?」

 

佐倉「え、い、いいの…かな?」

 

ウオッカ「あぁ。今は自由行動だからな。それに一人だと不便なところもあるだろうし、佐倉が嫌じゃなければ」

 

佐倉「え…っと、その、じゃあ、お願い…します」

 

 

 

 

ゆっくりではあるが、ちゃんと自分の意思を言葉に出来るようになってきている

 

 

 

 

ウオッカ「豪華客船なんて滅多に乗る機会が無いからな。どんなところを撮るつもりなんだ?」

 

佐倉「そ、そうだね…。こことか、い、いいかもしれない…です」

 

 

 

 

人気の無いチェアに出ると、近くに魚がぴちぴちと飛んでいることが分かる。それを背景に、美少女がスマイル&ピースでもすれば、美しい一枚が撮れるだろう。

 

 

 

 

ウオッカ「撮ってみようか?」

 

佐倉「ウオッカ君はカメラ扱えるの?」

 

ウオッカ「これでもカメラは少しだけ齧っていたんだ。何枚か撮ってみて、佐倉が判断してくれるといい」

 

佐倉「そ、そうだね。う、うん、お願いします」

 

 

 

 

佐倉は自分の大切なカメラをウオッカに渡し、使い方を説明する

 

 

 

 

ウオッカ「じゃあ撮るぞー」

 

 

カシャカシャカシャカシャ

 

 

 

我ながら上手く撮れたと思う写真を佐倉に確認してもらうと、佐倉から見ても合格が出た。画面には、美少女が笑顔でピースしており、綺麗な青空とほどよい配置にある雲、さらに海からは何匹か魚が飛んでいるところも映っている

 

 

 

佐倉「す、すごいよウオッカ君! よく撮れているよ!」

 

 

 

ウオッカにくっつきそうになるくらいに近づいて、凄い凄いと言っていると、自分から近くに来たことに気付いたのか、リンゴのように頬を赤くして「えっと、あの、その」と両手を前に出して左右にブンブンと振っている。ウオッカも頬を緩ませて佐倉と同じように、両手を前に出して手を左右に振る

 

佐倉「あ、もう、その」

 

ウオッカ「いい笑顔だ。惚れてしまいそうだ」

 

佐倉「ふぇ!??」

 

ウオッカ「本当だぜ?」

 

 

 

 

 

佐倉はあわあわと両手を頬の近くに寄せて、あっちこっち向いていた。そんな感じで過ごしていると、アナウンスが流れる。島に上陸するから、ジャージに着替えて手洗いを済ませておけという内容だった。それを聞いた佐倉は、さっきまでのテンションから戻って、少し落ち込んでいる。

 

 

 

 

 

佐倉「島に上陸って……何するんだろう…」

 

ウオッカ「さぁな。とりあえず30分しかないようだから、急いだほうがいいぜ」

 

佐倉「うん、そうだね。じゃあまたあとでねウオッカ君!」

 

 

 

 

佐倉が去って行ったのを確認すると、後ろからカツカツと足音が聞こえる。その足音は隠す気はなく、ウオッカが気付かなかったふりをさせないようにしているようだ。

 

 

 

 

ウオッカは最初から気付いていた。具体的に言うと、ジンと別れてからずっと視線を感じていたが、奴は上手い具合に周囲に溶け込み、尻尾を出してくれなかった。

 

 

 

 

足音は止まる

 

 

 

???「あんたがウオッカよね」

 

 

 

振り返る

 

 

 

 

 

 

 

 

そこにはAクラスの黒のベレー帽をかぶっていた少女の側近の少女だった

 

 

 

 

 




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