ペルソナ4~迷いの先に光あれ~   作:四季の夢

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失踪

 

4月17日(日)晴れ

 

この日、マヨナカテレビに動きが見られた。

 

『こんばんは~』

 

突如、マヨナカテレビに映し出されたのは紅いドレスとティアラを纏った雪子だった。

その姿は日頃見る和服の雪子ではなく、洋風なお姫様を連想させる姿だった。

 

『今日は私、あの天城雪子がなんと!“逆ナン“に挑戦したいと思います!題してーーー』

 

その台詞の後に流れるジャラララララララ、と言う音が止むと同時にでかでかと題名が出て来る。

 

[やらせナシ! 雪子姫、白馬の王子様さがし!]

 

『もぉ、超本気ィ!! 見えないトコまで勝負仕様……』

 

そう言って雪子は下の方を手で隠す。

そして、最後に再びカメラ目線で振り向くと……。

 

『もぉ、私用のホストクラブをぶっ建てるくらいの意気込みで、じゃあ行ってきま~す!!』

 

と言って雪子は後ろの方に建っている城の中に消えて行ってしまった。

そして、それを部屋で見ていた洸夜はと言うと……。

 

「な、何だったんだ今のは……?」

 

今までのマヨナカテレビとは違い、番組らしくなっている。

しかもテレビの中に居るのは、つい昨日会って話した天城雪子だと言う事実に洸夜は多少成りともショックだった。

だが、今回のマヨナカテレビのお陰で洸夜はある確信を得た。

それは山野真由美・小西早紀・そして今回、誘拐されたであろう天城雪子。

この三人にはマヨナカテレビに映った以外に共通点がある。

それは……。

 

「メディア……不倫騒動で騒がれた山野アナ。その山野アナの遺体の第一発見者で報道されていた小西早紀そして、山野アナが泊まった事で注目されていた旅館の女将の娘の天城雪子。全員が誘拐される前に必ずメディアで取り上げられている……偶然は三回も続かない、決まりだ」

 

そう言って自分の考えに納得する洸夜。

もちろん、洸夜はそれ以外にも狙われる理由を考えてはいた。

最初は山野アナの事件の関係者を狙っているかと踏んだが、雪子が誘拐された事によって状況が変わる。

旅館に宿泊していた山野アナは人気の高い女子アナである。

しかも、その時既に不倫騒動で騒がれている為、その様な人の対応をするのは恐らく、雪子の母である現在将。

その為、雪子が山野アナと会った可能性は低く、誘拐される可能性が高いのは直接会った女将の方。

しかし、現に誘拐されているのは雪子の方。

テレビの中にいる為、誘拐されたのは確実だ。

……等の理由から、この推理は除外される。

となると、それ以外で共通点は性別を除けばメディアしか無いのだ。

 

……と、洸夜はここまでの推理を白いノートに書き留める。

このノートは、洸夜が今回の事件について記録している言わば調査レポート。

『真実の書』と書かれている白いノートの方には事件について。

『影の書』と書かれている黒いノートには、テレビの世界にいるシャドウについてが記されている。

コレは、自分にもしもの事が起こった時の為の言わば保険。

自分に何か会っても、総司かイゴールの関係者に事件についての事を残す為のモノだ。

 

「……それはそうと、山野アナ達の遺体が発見されたのは雨が続いた日の翌日だな……となると助けなければ成らない期限も自ずと分かる。総司達も動くと思うが……万が一の為に、俺も何時でも動ける様にしとくか)」

 

そう思いながら洸夜は明日に備える為眠りに着いた

 

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4月18日(月)晴れ

 

雪子がテレビの中に入れられ、早速洸夜は行動を起こすと思い気や……。

 

現在、豆腐屋

 

「お兄さん、木綿と絹を二つお願い」

 

「ありがとうございます。またのお越しを……フゥ、ピークは過ぎたかな?」

 

豆腐を買って帰って行くお客さんを見ながら、一息着。

 

「ご苦労様、洸夜さん。ありがとうね、とっても助かっているわ。」

 

「いえ、こちらこそ雇って貰って感謝しています」

 

そう、実は洸夜は商店街にある豆腐屋でバイトをしている。

何故バイトをしているかと言うと……。

 

①商店街でバイトを探していた。

 

②すると、商店街で腰を押さえているお婆さんを発見

 

③話を聞くと、腰を痛めたらしく店の事に支障が出るかも知れないとの事。

 

④……なら、安くてでも良いから俺をバイトで雇いませんか?。

 

⑤成立

 

こう言った話の流れで現在に至る。

しかも、安くて良いと言ったにも関わらず時給は780円と、洸夜からしたら十分過ぎる程の額なのだ。

 

「後は休憩して大丈夫ですよ。この時間はお客さんはいないから」

 

「えっ? でも……いや、しかし……」

 

洸夜を心配して言ってくれているお婆さんだが、流石にそれは悪いと思ってしまうが、逆にお客もいないのに無理に働いてバイト代を貰うのも気が引ける。

 

そう思いながら悩んでいると……。

 

buuuu!buuuu!

 

「携帯? すいません……少し失礼」

 

そう言ってお婆さんが頷くのを確認する。

そして、ディスプレイには『堂島遼太郎』の名前が写し出されていた。

 

「(この時間帯に叔父さんからは珍しいな……まだ仕事中だと思うんだが……)」

 

そう思いながらも洸夜は聞いた方が早いと判断して電話を取る。

しかし、堂島から掛かってきた内容を聞いた洸夜は頭痛に悩まされる事になる。

 

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現在、稲羽警察署

 

「全く俺がいたからよかったものを……!」

 

「「す……すいません……」」

 

現在、総司と陽介は警察署で堂島に怒られていた。

原因はこれかのテレビの中の戦いにゴルフクラブだけでは心許ないと言う事で、陽介がジュネスの倉庫から模造刀を持ってきた。

そこまではよかったのだが、陽介がそれを振り回していた所を警察に見られてしまい現在に至る。

 

「お前はこう言う事するようには見えなかったんだが……」

 

今だ信じられないと言った感じで話す堂島。

引っ越しして、まだ一週間も経ってないし、何より総司がこんな事をするとは思っていなかった為尚更信じられ無いのだ。

 

「すいません……次から気をつけます」

 

「え!? いや……その、今回は俺が悪かったんであんま、コイツの事を叱んないで下さい」

 

総司が堂島に謝罪するのを見て、陽介は今回の一件は自分に非が有ると思って一緒に謝罪する。

そして、その様子を見た堂島は二人の態度から反省したのを確認した。

 

「まぁ、今回は何とかなったが次はどうなるか解らんからな。あんま、問題を起こすな……」

 

「「はい……」」

 

堂島の言葉は少し厳しい様に感じるが、その言葉から心配してくれているのがわかる

 

「あ……そうだ。一応、洸夜の奴を呼んどいたからな、ちゃんと事情を説明しとけよ」

 

そう言って堂島は仕事場に戻って行くが、堂島の言葉を聞いた総司の表情は少し青くなる。

 

「(……マズイ。いくら兄さんでも補導された何て聞いたら良い顔をしない。だからって、理由も話す訳にも行かない。ペルソナやシャドウなんて非現実的なモノを話したって下手な言い訳にしか聞こえないし……)」

 

補導された事によって、兄である洸夜がどんな反応をするか総司が心配していると陽介が口を開く。

 

「なあ相棒、洸夜って誰なんだ?」

 

「そう言えば、陽介は会って無かったな。洸夜は俺の兄さんだよ」

 

「えぇッ! お前って兄弟いたのかッ!?」

 

自分は一人っ子に見られ易いのだろうか?。

そんな疑問が総司の頭を過ぎった時だった。

 

「あれ? 君って確か、堂島さんの所の……?」

 

誰かに声を掛けられ、振り向いて見るとそこには、右手にコーヒーを持った、堂島と一緒に行動している何処か頼りなさそうな刑事がいた。

 

「貴方は確か、叔父さんと一緒にいる……」

 

「堂島さんの相棒を勤めさせて貰ってる足立透だよ。宜しくね」

 

そう言って軽い感じに話し掛けてくる足立に、総司も自己紹介しながらそれに答える。

 

「瀬多総司です。宜しくお願いします」

 

「ああ、宜しく。ところで君達って天城さんと同じクラスだよね?。天城さんについて何か聞いてない?」

 

総司達も雪子の映ったマヨナカテレビを見ている為、足立の言葉に総司と陽介の二人は顔を見合わせる。

 

「あ、あの、天城さんに何か会ったんすか!」

 

「えっ!? いや、その、実はね……」

 

陽介の勢いに圧されたのか、足立は少し気まずい感じで語り始める。

 

足立の話によれば雪子が昨日辺りから家に帰って無いと、家の人達から相談を受けていたらしい。

しかし、警察の中には山野アナが旅館の接客態度に過剰にクレームを入れ、それが原因で接客をしていた雪子の母親である女将がストレスで倒れた事を知っている。

その為、この状況で雪子が行方不明に成ったのは実は、何か後ろめたい事が有るからじゃないかと思っている人達がいるとの事。

 

「そう言う訳だから、警察署の中もピリピリしていてね……」

 

と、足立がそこまで言った時だった。

 

「足立ぃッ! コーヒー持って来るのにどんだけ掛かってんだッ!!」

 

堂島の怒鳴り声が警察署の廊下に響き渡り、その声を聞いた足立をビクッ!と肩を揺らした。

 

「い、今行きます! ……って言うか今の言って良かったのかな? ゴメン!今の無し!忘れて……」

 

そう言って足立は堂島の所に言ってしまった。

そして、足立の言葉を聞いた総司達は忘れてと言われても忘れられる訳が無く、事態が嫌な方向に流れている事を感じた。

 

「相棒……もしかしてコレってマズイんじゃね?」

 

「確かにマズイ……このままじゃ、雪子が犯人にされてしまうぞ」

 

二人がそう言って、今の状況に焦りを感じていた時だった。

 

「見付けたッ!」

 

突然、廊下に響く声に驚きながらも総司達は声の主の方を振り向くと……。

 

「「千枝!/里中!」」

 

そこには走ってきたのか、肩で息をしている千枝の姿が会った。

 

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現在、稲羽警察署受付

 

総司達は千枝に今までの状況を説明した。

 

「何よそれ……! 雪子が疑われてるのッ!」

 

「落ち付けって! 気持ちは解るけどよ……」

 

千枝を宥めようとする陽介だが、親友である雪子の危機に大人しくする程、千枝は単純ではない。

 

「落ち着いてられないよ! すぐに助けに行こう!」

 

「助けにって……あそこは危険なんだ」

 

総司も何とか落ち着かせようとする。

このまま行ったって危険なのだから。

 

「相棒の言う通りだ。お前はあそこがどう言う所か知らないからそう事が言えるんだよ」

 

「そんなの、あんただって同じだったじゃん」

 

「うっ」

 

千枝の言葉に黙ってしまう陽介。

総司も正論の為、フォロー出来ない。

 

「でもな……武器も取り上げられたしよ」

 

「え? 武器? それなら売ってる場所知ってるからついて来てよ」

 

陽介の言葉に普通に返す千枝。

しかし、武器を売っている店って一体?。

等と言う疑問が頭の中に残る総司と陽介は互いに顔を見合わせる。

 

「どうする?」

 

陽介が総司に、意見を求める。

 

「此処に居ても仕方ないし、まずは行ってみよう」

 

「じゃあ案内するから行こう……うぷッ!」

 

総司の台詞に二人は頷き、千枝が入口に走り出すと誰かにぶつかる。

 

「おい、千枝大丈夫……か……!」

 

千枝を心配する総司だったが、千枝のぶつかった人物に気付くと顔を青くなるする。

何故ならば、その人物は……。

 

「何処に行くんだ?。俺にも教えて欲しいんだが……!」

 

機嫌が悪そうな顔の洸夜が立っていたのだから。

 

END


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