同日
現在、洸夜はバイクに乗って警察署に向かっていた。堂島から掛かってきた電話は総司達が補導されたと言う内容。
そして、豆腐屋のお婆さんに許可を貰い、総司達を迎えに行く為に警察署に向かっている。
「……(それにしても、ペルソナ能力やシャドウの事等で困惑してる為、暫くは落ち着いた行動をすると思ったが…-やってくれたな)」
自分達の時は桐条の後ろ盾や影時間等があり、隠密行動が多かった為周りの人間には最低限は迷惑を掛ける事は無かった。
しかし、今回は全くそんなモノはない。
イゴールから頼まれたとは言え、表上では殺人事件なのだから自分や総司達の行動は、捜査の邪魔になる野次馬と変わりない。
その為、今回洸夜は堂島達や周りの人に迷惑を掛けない様に隠密に事を動かす予定だった為、総司達の行動は余りにも考え無しだと言わざる得ない。
「(まだ、この事件の危険性等に気付いて無いのか。それとも面白半分でしか自覚していないのか……どっちにしろ話を聞かなければ成らないな)」
そう思いながらも、洸夜は警察署へと急いだ。
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現在、警察署
警察署に到着した洸夜はバイクを止め、入口の方に歩いて行って中に入ろうとした時だった。
「じゃあ案内するから行こう……うぷッ!」
誰かが前から自分にぶつかって来たのだ。
しかも、良く見るとその人物は千枝。
「おい、千枝大丈夫……か……」
それと同時に千枝を心配する総司の声が聞こえたが、千枝のぶつかった人物が洸夜だと気付くと顔を青くなって行く。
そして、その隣で洸夜と事実上は初対面の陽介は誰なのか分からず困惑する。
また、洸夜は何と無くだが話の流れを察した。
だが、このまま行かせては再び同じ過ちを繰り返す可能性があると判断し、何か一言でも言わなければ成らないと思い口を開く。
「何処に行くんだ?。俺にも教えて欲しいんだが……!」
「に、兄さん……」
「えっ!? この人が相棒の兄貴・・・」
「えっ? わ、わわッ!? す、すいません! 私前を向いて無くて……」
「ちゃんと前を見ないとな……それに警察署は走り回る所ではないよ」
「うっ……は、はい……」
千枝もようやくぶつかったのが洸夜だと気付き急いで謝罪する。
そして、千枝の行動に洸夜は目は合わせなかったが、歩きながら頭に手をポンっと置いてそう言うと、総司の前に向かう。
「俺の言いたい事は分るか総司?」
「何と無くだけど……」
洸夜の言葉に総司はゆっくりと顔を上げて、洸夜の顔を見る。
何だかんだでいつも家族に甘い洸夜でも、怒ると怖い事は総司は嫌でも知っている。
「総司……お前等はもう高校生だ。 義務教育も終わって、望まない場所でも高校に通っている。だから、お前の友人関係や行動に一々口を挟む気はない」
「……」
洸夜の言葉に総司は黙って聞いている。
今回は自分達が悪いと言う事をわかっているからである。
「だがな……それで周りの人に迷惑を掛ける行動は絶対にするな。今回の一件だって、下手をすれば周りからの叔父さんの信頼を無くしていたかも知れなかったんだぞ」
刑事であり、周りからの信頼の厚い堂島の甥っ子である洸夜達が問題を起こし続ければどうなるかは考え無くても分かる筈。
堂島はそんな事で一々騒ぐ様な小さい人ではないが、警察と言う組織にいる以上はそうは言ってられない。そう思いながら洸夜は総司達に視線を戻す。
「今回の一件だって、叔父さんが居たからこんなにも早く話が終わったんだ。だが、そんな事を繰り返して見ろ。知らず知らずの内に叔父が刑事だと言うのを良い事に好き勝手やっている連中とか言われて、叔父さんや菜々子に迷惑を掛けるぞ!」
「ごめんなさい……」
「あ、あの! 少し待ってくれよ! 今回の一件は俺が悪かったんだ……だからあんまり怒んないで欲しいんだ!」
総司を庇っての事の発言なのだろうが、陽介の言葉を聞いて洸夜はため息を吐いた。
「ハァ……俺は君達全員に対して言っていたつもりだったんだが、どうやら人事にしか聞こえなかった様だな」
「あっ……いや、そう言う訳じゃないすけど……」
洸夜の言葉に陽介はそれっきり黙ってしまった。
「まあ、俺もこんなにグチグチ言いたくない。今回は見逃すが総司、コレだけは覚えておけ。自分達を中心に物事を考えるな」
「分かった。兄さん、本当にゴメン……」
「別に謝って欲しい訳じゃない。……ところで、何で模造刀何て振り回していたんだ?」
「「ッ!?」」
洸夜の言葉を聞き、総司と陽介は顔色が如何にもマズイと言った顔になる。
「(恐らくコレからの戦いで武器がゴルフクラブでは心許ないからだな)」
総司達が模造刀を振り回していた理由を何と無く予想していた洸夜。
そして、洸夜がそう考えていると総司は意を決した様な感じで口を開く。
「……今は言えない。だけど、どうしてもやりたい事なんだ。必ずいつか言うから……兄さん、今は見逃して欲しい」
「やりたい事か……(自分の意思を殺して来た総司がここまで言うか)分かった。ほら、行く所が有るんだろ?さっさと行け」
洸夜の言葉を聞き、総司達の顔に笑顔が生まれる。
「ありがとう兄さん……!」
「ども……!」
「洸夜さん!ありがとね!」
そう言って総司達は走って行ってしまった。
「(だから、走るなって……)」
先程注意したにも関わらず署内を走っていく総司達に苦笑いする洸夜。
すると、その時……。
「あれ?。君は確か堂島さん所の……?」
誰かに声を掛けられ、洸夜は振り向いてみるとそこには以前、事件現場で事件の情報を暴露していた刑事の足立が立っていた。
「貴方は確か……?」
「足立透。堂島さんの相棒を勤めさせて貰ってるよ。君は確か、総司君のお兄さんだったよね? 堂島さんから色々聞かせて貰っているよ」
「そうですか。自分は瀬多洸夜です」
そう言って握手する洸夜と足立。
「宜しく。ところで君ってさ……天城雪子ちゃんについて何か知らない?」
「……意味が分かりませんが?」
「いや、実は……」
足立に総司達と同じ話を聞かせて貰った。
そして、洸夜は足立の話から周りの警官達がピリピリしている理由が分かった。
「なる程……署内がピリピリしている理由はそれですか……」
「そう言う事。だから、天城さんについて……」
足立がそこまで言った時だった。
「足立ッ!! コーヒーのお代わりにどれだけ時間掛けてんだッ!!」
堂島の怒鳴り声が廊下に響き渡り、足立は慌てる。
「す、すいません! あ、それよりさっきの事言って良かったのかな……? ゴメン!今の無し!忘れて……」
そう言って足立は行ってしまうが、忘れてと言われて忘れられる訳が無い。
「彼女が疑われているのか。救出が長引けばマズイかも知れないな……」
このままでは、雪子が犯人と言う先入観が警察内で広まるかも知れない。
最悪、救出が間に合わず雪子がシャドウに殺害されたら、彼女が自殺したと思われる可能性も無くはない。
「俺も行くか……!」
そう言って洸夜もテレビの世界に行く為、自宅へと急いだ。
END