同日
現在、雪子姫の城
洸夜との接触の後、総司達はテレビの中に入り雪子がいるである、巨大な城へと向かった。
しかし、そこで雪子を心配した千枝が独断で行動をしてしまい、総司達は急いで千枝を追う。
そして、千枝を追った先には千枝と千枝?が対峙している光景だった。
「あ、あれは!?」
「シャドウだクマ! 抑圧された内面……不安定な精神状態が制御を失ってシャドウが出たクマよ!」
クマの説明で総司達に気づいた千枝がこちらを向く。
「み……皆……違う……違うよ! 来ないで!見ないで!」
自分のシャドウが見られたくないのか手を広げ、シャドウを隠そうとする千枝に千枝?は可笑しそうに笑っている。
『ふふ。雪子はトモダチ……雪子が大事……手放せない……はははは!あんな都合のいいやつを手放せる訳ないよね!』
「違う……違う!」
『雪子ってさ、美人だし女らしいから男子にいっつもチヤホヤしてる……。その雪子が時々あたしを卑屈な目で見てくる……それがたまんなく嬉しかったんだよね!!!』
「黙れ!!」
「まずいぞ……!」
「よせ里中!」
不穏な空気をさした陽介が千枝に言葉をかける。
だが、自分のシャドウのせいで冷静さを失っている千枝には届いてない。
そして、千枝は拒絶の言葉を口にする。
「あんたなんか! あんたなんか……私じゃない!」
その言葉が引き金となり、シャドウから闇が放出される。
『うふふ……はははは!!!そうよ私は私!あんた何かじゃないわ!』
そう言うと千枝?の回りの闇が千枝?包み込んだ。
そして覆面を被り、手には鞭を持ち、沢山積み重なっているシャドウ達の上に乗っているシャドウ『千枝の影』が出現する。
シャドウは見下す様に笑い上げた。
『ハハハハハハハハハッ! 我は影、真なる我、うふふ、あんた……邪魔!』
「あ……ああ……」
「まずい、クマ! 千枝を頼むぞ!」
「任せるクマ!」
何が起こったのか理解出来ずに放心状態に成っている千枝はクマに任せ、総司達はシャドウの前に出る。
まだシャドウとの戦いに慣れていない二人だが、此処で逃げる訳にも行かない。
そして、そんな二人を見てシャドウはうっとうしい様に口を開く。
『なに? あんたたちも邪魔よ。とっとと消えなさい!』
「消えろと言われて消えれるかよ! 行くぜ相棒!」
「陽介! 油断するなよ!」
「「ペルソナ!」」
その唱えるとジライヤとイザナギが召喚され、二人はそれぞれ戦闘体勢に入る。
「先手必勝だ!」
『ガル!』
陽介が先手をとり、風がシャドウを襲う。
シャドウはそのままガルをモロに喰らった。
『きゃああ!この!』
『ガル』をくらい体勢を崩すシャドウの様子を見て、総司達は相手の弱点が分かった。
「どうやら相手の弱点は風の様だ……」
「ああ、なら俺の独壇場だ相棒!援護を頼む!」
「ッ!? 待て陽介!油断するなッ!」
相手の弱点属性が自分の属性と分かった途端に、考え無しに突っ込む陽介を総司が止めるが陽介はそのまま突っ込む。
「くらえ!」
『ガル!』
そう言って再び風がシャドウを襲うが……。
『ふふふ、ただ突っ込むだけの馬鹿程倒し易いのは無いわよ……コレでどう?』
『緑の壁!』
パキィン!
シャドウが唱えるとシャドウの前に緑の壁が出現し、ジライヤのガルが壁にぶつかり威力が激減してただの弱い風になる。
『あ~ら、良いそよ風ね』
「嘘だろ! そんなのありかよ!」
陽介が余りの事に混乱するなか、シャドウが視線を陽介に向けた。
「ッ!……逃げろ!陽介!!」
「攻撃がくるクマ!」
「え?」
『何、人事みたいに言ってんの?あんたたちもよ!』
『マハジオ!』
「「ぐわぁぁぁ!」」
シャドウが放つ雷が降り注いで二人を襲い、総司達は膝を付いてしまう。
耐性属性を持つ敵との戦いが初めての二人には、攻撃が効きづらい敵は陽介のシャドウ以上に手強い。
「センセイ! ヨースケ!」
『これでとどめよ! 底知れぬ妬み!』
シャドウが鞭を振り回しながら攻撃を放つ。
「ッ!?(アレは流石にマズイッ!)」
シャドウの攻撃を見て、ヤバいと判断した総司が前に出て陽介を庇う。
「ぐあッ!!」
「相棒!」
余りの威力に再び膝をつく総司。
この時、総司は初めて大型シャドウの恐ろしさを自覚した。
「はぁ……はぁ……! 陽介、どうにか……ならないのか……!」
「どうにかって言ってもよ……あの壁をどうにかしねぇと」
どうすれば良いか分からず陽介の顔に恐怖が写った時だった。
『疾風ガードキル!』
突然、何処からともなく緑色の光が降り注ぎシャドウの壁を破壊する。
『ちょっと! ナニよこれ!』
突然の事にシャドウが困惑する。
その突然の事に総司達も驚きが隠せないでいた。
少なくとも自分達では無い別の力が働いたのだ。
今の総司達はそれぐらいしか理解出来ず、呆気にとられてしまった。
「どうしたんだ?」
「よく分かんないけど、今がチャンスだ!」
「イザナギ!」
我に返った総司の言葉を合図にイザナギがシャドウを斬り付け、斬撃がシャドウにダメージを与える。
『キャアアアッ!』
シャドウが怯んだ事で隙が生まれ、総司は更に追撃する。
「畳み掛ける! オロバス!」
『アギッ!』
総司がイザナギを一旦戻し、馬の姿のペルソナを召喚すると同時に炎を放つ。
炎はシャドウを囲む様に走り、シャドウの周りは軽い火の海と成った。
『ぐああッ! ナメんじゃないわよッ!!』
「ッ!?」
そう言ってシャドウは鞭を握り絞めると振り回し、炎を凪ぎ払うと総司目掛けて振り下ろそうとした。
だが……。
『スクンダ!』
『!……な……に……コレ……体が……!』
突如、先程の様に謎の光がシャドウに降り注がれ、その光を浴びたシャドウは動きが鈍りだした。
そして今がチャンスと思い、総司はイザナギを再び召喚する。
「イザナギッ!!」
『スラッシュ!』
体の自由が効かないシャドウは、イザナギの攻撃をかわす事が出来ずにそのまま攻撃が直撃する 。
『ああああああ!!』
そして、それがとどめとなりシャドウは千枝?の姿に戻る。
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あの後、千枝と千枝?は向かいあっていた。
陽介からは「俺もそうだった」などと言った応援をして貰い。
総司も「それも含めて千枝だ」などと言って応援をする。
「私、最低だね……でもさ、こんな……わた……しでも雪子のこと……好きなのは嘘じゃ……ないから……!」
泣きながら答える千枝の言葉を聞いて、千枝?は静に頷くと光りだし仮面を付け薙刀を持つペルソナ『トモエ』へと転生した。
「知ってるよ……皆もそう言う所あるから」
「……うん、ありがとう」
総司の言葉に少し気が楽になったのかお礼を言う千枝その時だ……。
『うふふあははは! あらぁ? サプライズゲストかしら?。どんな風に絡んでくれるの?』
雪子?が前にいて総司達を見ながら喋っていた。
だが、その姿にはいつもの雪子の姿は無い。
「違う……! あんたは雪子じゃない! 本物の雪子は何処!」
『何言ってんの? 雪子は私、私は雪子』
千枝と雪子?が言い争っている間に総司はクマに聞いてみる。
「やっぱり彼女は……」
「そうクマね……“もう一人のあの子“クマよ」
「(やっぱり彼女のシャドウか……)」
陽介の時と同じ様な感じだと思いながら、総司は雪子?に警戒する。
『それじゃ再突撃いって来まーす! 王子様! 首を洗ってまってろよ!』
しかし、雪子?は何もせずにそう言って奥の方に走って行ってしまう。
「ま!……まて……!」
雪子?を止めようとする千枝だが、疲れが出た為か膝をついてしまう。
「今日は一回戻った方がいいな……」
「ああ、里中を休ませないとな」
「ちょ! ちょっと勝手に決めないでよ! 私は大丈夫だから!」
総司と陽介の話しに反論して叫ぶ千枝だが、何処をどう見ても無理をしている様にしか見えない。
「あのな……!」
千枝の説得は陽介とクマに任せて総司はある事を考えていた。
それは、シャドウとの戦いの最中にシャドウに隙を作ってくれた光。
アレが無ければ、恐らく自分達は負けていた。
「なんだったんだ……あの大型シャドウの技を糸もたやすく……」
そう考えていた時だった……。
「お~い!相棒! 里中の説得に成功したから今日は戻ろうぜ!」
陽介から声をかけられ、今考えを一旦止めて皆の所に向かう事にした。
「今、行くよ(今、考えても仕方ない……今は体を休めて雪子を助けだす事を考えよう)」
そう言って総司達はこの城を後にした。
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現在、雪子姫の城。
洸夜は城の影から、総司達が城を出る所を眺めていた
「急いで来て正解だったな……しかし、花村の奴はまだまだだな。緑の壁が破壊された時に奴も攻撃していれば、もっと楽に勝てた筈だ」
しかし、それを除いても総司達の耐性持ちのシャドウに対する戦い方は撫様としか言い様が無かった。
今回は自分が居たから勝てたものを、いつでも自分がいる訳ではない為総司達には早く自立して貰わないと困る。
本来なら洸夜が教えれば良いのだが、もし自分が名乗り出て共に戦う事になれば必ず自分を頼ってしまい、全く成長しなくなる可能性もある。
「しかし、まさか千枝ちゃんまで覚醒するとは……だが何故、この時期にペルソナ能力に覚醒する者達が増えたんだ……? 偶然にしてはイゴールの事件とタイミングが……」
そう思っていた時、後ろから強い力を感じた。
「……全く面倒事が続くな」
そう言って後ろを向くと、大量のシャドウが洸夜をとり囲んでた。
そして真ん中にシャドウに守られる様に、一人の女性がいる。
『あら~? 皆帰ったと思ったのにまだ此処に王子様がいたわ!』
そう言いながらシャドウを従えさせた雪子?が立っていた。
「やあ、雪子ちゃん……やっぱり君は和服以外も似合うな」
洸夜の言葉に嬉しそうに笑う雪子?。
『うふふ、嬉しいわ。ところで、貴方が私の事を此処から連れ出してくれるのかしら?』
「すまないな。君を連れ出す王子様達は俺じゃないんだ」
洸夜にとって此処で彼女を助ける事は容易なのだが、少なくとも総司には成長して貰わないと困る為、あえて今は後手に回る。
すると、雪子?は先程の笑顔が嘘の様に顔を歪ませると……。
『あら~それは残念……だったら……消えて』
その言葉を合図にシャドウ達が洸夜に一斉に襲いかかった。
「今日はお前のデビュー戦だ! ……アリス!」
『ふふふ』
俺の台詞共に、金色の髪に青いドレスを着た少女の姿をしたペルソナがあらわれる。
「(この子はこの間、商店街で見付けたベルベットルームの扉のなかでイゴールの下で誕生させたペルソナだ)頼むぞアリス!」
しかし、周りのシャドウ達は警戒しているのか、洸夜とアリスから少し距離をとる。
「その行動は普通では正解だ。だが、コイツに限っては不正解だ!」
アリスは接近戦タイプのペルソナではない為、いくら距離をとっても無意味なのだ。
「アリス!!」
『死んでくれる?』
『『『*☆▲□!?』』』
アリスがそう唱えると、大群だったシャドウは突如震えだし、一匹を残して闇に消えた。
「……あいつは別格か」
洸夜の目の前には脚が無く、宙に浮かんでいる黒い馬型のシャドウに乗っている槍を持った黒いシャドウ『征服の騎士』がいた。
洸夜はアリスを戻し、オシリスに変えて刀を構える。
『串刺し!』
シャドウが先に動き槍を俺に向けて突っ込む。
だがその攻撃をオシリスが防ぐ。
「物理無効を持つオシリスには効かないぞ……」
そう言うと刀で槍を受け流し、そのまま馬型シャドウの首を斬る。
『ーーー!!』
首を斬られた事によりシャドウはバランスを崩し、そして洸夜はその隙を見逃さずに一気に突っ込む。
「チェックメイトだ!」
『ジオダイン!』
オシリスが大剣を翳し、巨大な雷がシャドウを飲み込み、シャドウはそのまま消滅する。
「……俺の勝ちだ」
シャドウを殲滅し終え、洸夜は辺りを見回すが雪子?の姿はなかった。
「逃げたか……(今日のところは戻るか。総司が家に帰る前に戻らないと厄介な事になるかもしれないしな)だが、時間や総司達の成長の為とは言え、目の前の命に背を向けるとは……すまない」
そう言って雪子が今だに捕らえられている城を洸夜は後にした。
END