ペルソナ4~迷いの先に光あれ~   作:四季の夢

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日常
変わり行く稲羽


 

4月22日(金)晴→曇

 

現在、商店街

 

雪子救出から、早いモノで数日が経過している。

 

あの後、雪子は一応大事をとって病院へ行き、数日入院する事に成ったと、洸夜は総司から聞いた。

そして、その後に何故か雪子の母親がお土産を持って洸夜を訪ねにやって来たのだ。

話を聞いて見ると、タクシー代と雪子についての事だった。

どうやらタクシー代については千枝かららしいが、その後に体調が悪い中で、雪子は母親に自分の気持ちを話をしたとの事。

しかし、その後雪子は直ぐに気を失ってしまったらしく最後まで会話が出来なかった為、雪子と自分の体調が治ったら再び二人で話すそうだ。

そして、洸夜を訪ねた理由なのだが、雪子が気を失う前に洸夜の事を話したそうだ。

帰りに雪子の母である女将は洸夜に向かってこう言っていた。

 

『貴方のお陰であの子と正面から向き合う事が出来ました。本当にありがとうございます』

 

そう言った時に見せた、女将の笑顔は今だに印象に残っている。

ちなみに、タクシー代を返すと言われたが、お土産も貰っているから別に良いと言って断ったのだが、それじゃあこちらの気がすまないと言って返す返さないを繰り返した。

その為、今度旅館に来る事が合ったらサービスすると言う事で手を打った。

 

そして、現在洸夜は……。

 

現在、商店街

 

「ゴクゴク……フゥー。あー疲れた……」

 

洸夜は商店街の道の上にバイクを止め、その上で飲み物を飲んでいた。

今日のバイトは終わり、後は家に帰るだけなのだが洸夜は少し休憩中。

そんな中、洸夜はある事を考える。

それは、バイトの帰り際に豆腐屋のお婆さんに言われた言葉。

 

『実は今度、孫が家に来る事に成っているのよ』

 

別にこの言葉に問題は無いが、問題が有るのはその孫に有るのだ。

その孫と言うのが……。

 

「まさか、あの“久慈川りせ”とはね……」

 

久慈川りせと言う人物は簡単に言えばアイドル。

しかも、子供からお年寄りまで幅広い年代にファンがいる大人気アイドルだ。

 

「(そんなアイドルがお婆さんのお孫さんとは……だが、そんなアイドルが何でこんな田舎町に?)」

 

洸夜は、人気アイドルがこの町に来る理由が今一つ分からずに考え込むが……

 

「(考え込んでも仕方ない……アイドルだろうが来たら、来たらで普通に接すれば良いだけだ)さて、帰るか」

 

そう言って洸夜は、飲み終わった空き缶を近くのごみ箱にその場から投げたのだが……。

 

カンッ!コロコロ……

 

「……ついて無いな」

 

洸夜が投げた空き缶は、普通にごみ箱の口の周りにぶつかり、普通に落ちて転がる。

そんな缶を見ながら、洸夜は怠そうにバイクから下りると缶を拾いに行くが……。

 

「ん……?」

 

突如、洸夜の前に青い帽子を被った少年が現れた。

そして、その少年はチラッと洸夜の方を見ると、先程落とした空き缶を拾い上げて口を開いた。

 

「ゴミを投げ捨てるのは余り関心出来ませんね」

 

そう言って空き缶をごみ箱に入れる帽子の少年。

 

「(なんだ、この少年は?。不思議な雰囲気を発している……それに見た感じ隙が見当たらない)」

 

謎の少年の登場に警戒する洸夜。

何より、この少年からは年相応の雰囲気が感じない。その少年の独自の雰囲気が洸夜を警戒させるのだ。

すると、そんな洸夜を察したのか少年は帽子を被り直すと再び口を開く。

 

「ああ、突然すいません。自己紹介も何もしていませんでしたね……僕の名前は“白鐘直斗”と言います。どうぞ宜しく」

 

そう言って、帽子の少年『直斗』に手を差し出される洸夜。

 

「……ッ! あ、あぁ、すまない。俺は……」

 

突然の事に一瞬頭がついて行けなかったが、直ぐに冷静になると洸夜も手を差し出すが……

 

「瀬多洸夜さん。ですよね?」

 

「ッ!? お前……!」

 

直斗が自分の名前を知っている事に驚き、洸夜は直斗を睨む。

本来ならばこの町は小さい為、自分達みたいな存在は直ぐに町に広がり、知らない人が自分を知っていても不思議ではない。

だが、名前まで知る事は余り無い筈だ。

しかも、この少年は普通の連中とは何処かが違う。

そして、洸夜は握手していた手に少し力を入れる。

 

「何で俺の名前を知っている……少なくともお前とは初対面だが?」

 

少し、声に敵意を混ぜ込み直斗を睨み続ける洸夜。 だが、直斗はそれに一切怯まずに、軽く笑うと話を続けた。

 

「簡単に言えば調べたからですよ。堂島刑事の甥っ子であり、尚且つ貴方はこの町の事件が起こり始めた時期に此処にやって来た。僕から見たら十分貴方は疑うに価する人物なんですよ」

 

「理由に成っていないだろ……!俺が聞きたいのは、何でお前にそんな権利が有る尚且つ、お前が何者かって事だッ!」

 

グイ!

 

「ッ!?」

 

話をごまかす直斗に、洸夜は掴んでいた手を引っ張り自分の方に近付かせる。

こうした方が洸夜的には有利に事が運べるからだ。

しかし、洸夜にも予想外の事が起きた。

 

「なっ!?(コイツ、軽すぎるだろ!)」

 

引っ張った直斗の身体の軽さに驚く洸夜。

それもその筈、直斗の重さは明らかに年相応の男子の重さではないのだ。

それに、今気付いたみれば直斗の腕はとても細かったのだ。

しかも、手に関しては傷一つ無い綺麗な手だ。

 

「わッ!」

 

「ヤバッ!」

 

そして、結果的に洸夜に引っ張られた直斗はバランスを崩してこちら側に倒れそうになり、それに気付いた洸夜は直斗の身体を押さえたのだが……。

 

むにゅ……

 

「ッ!?」

 

「ん?。何だこの感触……?」

 

洸夜は直斗の身体を押さえた瞬間に、明らかにおかしい感触を感じた。

そして、良く確認するとその場所は胸。

 

「(何故、男子である筈のコイツから何故そんな感触が……?)」

 

そう思いながらも、洸夜はつい腕に力を入れてしまった。

 

むにゅ、むにゅ……

 

「ひゃあッ!」

 

直斗が変な声を上げているが、洸夜は気付かずに考えていた。

 

「(何だ、このまるでサラシか何かで抑えている様なこの変な感触だが、確かに分かるこの膨らみは……?)」

 

そう思いながら洸夜は、フッと直斗の顔を見てみると……。

 

「ゲッ……!」

 

「うっ……うっ……」

 

そこには先程の冷静な表情は無く、顔を真っ赤にして涙目に成っている直斗の顔が合った。

そして、洸夜はようやく意味を理解する。

 

「ま、まさかお前……いや、ちょっと待て! これは不可抗力……!」

 

しかし、洸夜が口を開いた瞬間……。

 

「うわぁぁぁぁぁッ!!」

 

パァァァンッ!

 

渇いた音が商店街に響き渡った。

 

========================

現在、神社

 

「ほら、少しは落ち着いたか……?」

 

「す、すいません……」

 

あの後、洸夜と直斗は神社の階段に座っていた・・・が、洸夜の顔には生々と平手の跡が残っている。

そして、洸夜は座っている直斗に買ってきたジュースを渡して直斗はそれを受け取る。

その様子を見た洸夜も隣に座ると、気まずそうに口を開いた。

 

「それにしても、探偵の一族の五代目か……」

 

洸夜はあの後、直斗から自分は『白鐘家』と言う探偵の一族の五代目である事を聞いた。

そして、今回は警察から直々に稲羽の事件の調査を依頼された事も教えられた。元々、不可解な事が多過ぎる今回の事件。

流石の警察も自分達だけでは事件解決は不可能と判断した為、探偵である直斗にわざわざ依頼したのだろう……。

しかし、だからと言って先程の事が解決した訳では無い。

 

「ところで直斗。お前何でわざわざ男装なんかしていたんだ?。男装なんかしていなければ、あんな事は……」

 

洸夜は先程の事を自分で言って恥ずかしく成り、顔を片手で覆う。

そして、それを聞いた直斗も顔を赤くし、恥ずかしそうにジュースに口を付ける。

 

「そ、それに関しては言いたく有りません」

 

「……(まあ、何と無くは予想がつくがな)」

 

ただでさえ年齢的にも子供の直斗。

女性だとバレたら周りから嘗められてしまい、ロクに捜査は疎か、事件解決なんて無理だろう。

洸夜は内心そう思いながらも話を変える。

 

「まあ、この話はここまでで良い……それで結局、お前は何で俺に接触して来た?。この町に来たのは俺だけじゃないだろう?」

 

洸夜の言葉に直斗は表情を最初の時に戻し、帽子を被り直すと目だけこちらに向けて口を開いた。

 

「僕なりに、事件が起き始めた時期にこの町に来た人を調べたんです。そして、その人達に話を聞こうとしていた時に丁度、貴方に会った……コレが理由です」

 

「簡単に言えば偶然か……」

 

そう言って洸夜は直斗に視線を戻す。

そして、つい直斗の雰囲気が気に成ってしまった。

先程は気付か無かったが、直斗の雰囲気は何処か無理をしている様な感じだ。

今思えば、何故こんな年齢の直斗が殺人事件の調査に来たのかが不思議で成らない。

未成年で、しかも隠しているが女性。

外見や年齢と違い、中身は探偵としてかなりの力が合ったとしても、やはり普通ならば考えられない。

 

「……直斗。はっきり言うが、お前が事件に関わるのは危険なんじゃないのか?」

 

「……どう言う意味ですか?」

 

直斗の言葉は落ち着いているが、明らかに目には怒りが混じっている。

まるで、親の仇でも見るかの様に洸夜を睨む直斗。

洸夜自身もまさか、今の言葉でここまで直斗が怒りを表すとは思ってはいなかった。

 

「そう睨むな。お前の様な年齢で、しかも女だ。言い方は良くないが、普通なら何でお前見たいな奴が殺人事件の調査をするのか疑問に思わない訳が無い」

 

「回りくどいですね。ハッキリ言えば良いじゃないですか。子供の癖に、女の癖にでしゃばって事件に首を突っ込むなってッ!」

 

洸夜から視線を外し、突然声を上げる直斗に洸夜は一瞬驚く。

だが、直斗のその姿は余りにもか弱く見えた。

見た目では強がって見せているが、直斗の目には恐怖や悲しみが写されていて、それが強がりだと言う事が洸夜は理解した。

 

「……直斗。さっきの言葉が気にしたのならすまなかった。だが、この町の事件は何処か異質なモノである事はお前も何処かで理解している筈だ。一体何がお前をそこまで駆り立てさせる?」

 

今回の事件には、シャドウやテレビの世界等と言った非現実的なモノが関係している。

ハッキリ言って、ペルソナ使いではない一般人の直斗が解決出来る事件では無いと洸夜は判断している。

最悪、下手に犯人を刺激してしまい、誘拐の標的にされてしまう可能性だって無い訳ではない。

そんな洸夜の考えを知ってか知らずか、直斗は拳を握り絞めると口を開いた。

 

「……言いたく有りません」

 

「……そうか」

 

洸夜も今回の会話だけで、全て話してくれるとは思っていない。

性別を偽ったり、この年齢で今回の様な凶悪事件を調査してるのだ、恐らくは直斗にしか分からない何かが有るのだろう。

すると、洸夜がそう思っていたら突然、直斗は立ち上がりこちらを見ると再び口を開いた。

 

「ですが、既に覚悟は出来ていますよ。必ず僕は今回の事件を解決まで導きます……必ず」

 

そう言った直斗の目には先程の怒りは無く、文字通り覚悟が写っていた。

自分身に何が起ころう共必ず事件は解決させる。

そんな覚悟が写った目を見てしまったら、洸夜はもう何も言えない。

 

「……それ程の覚悟を持ってこの事件に挑むのか。……子供扱いして悪かったな。頑張れよ直斗。」

 

そう言って洸夜は直斗の頭を帽子の上から撫で、バイクに跨がる。

 

「えっ? あ、あの……」

 

洸夜の突然の反応に、やや困惑気味の直斗。

そして洸夜は、そんな直斗の様子を見ていると、まるで何かを思い出した様にヘルメットを被ると直斗に向かって口を開く。

 

「ああ、そうだ。直斗、情報を欲しがっていたな。三人が事件に巻き込まれる前のメディアを調べな……あと、これ俺の連絡先だから。そう言う訳で、じゃあな」

 

「えっ!? ちょっ!待って下さい! いきなりそんな事言われても!」

 

直斗が止めに入ったが洸夜は面倒だから無視し、止まらずに走り去る。

後ろで直斗が何か言っているが、走っている内にそれは聞こえなく成った。

 

「アイドルに探偵か……この田舎町も大分騒がしくなって来たな(どこまで調査出来るか分からないが、負けんなよ直斗)」

 

久しぶりにまともな覚悟をした人物に会い、洸夜は上機嫌で家に帰った。

心の中でその人物を激励しながら。

 

=================

 

現在、直斗宅

 

直斗はテーブルの上に新聞紙のテレビ覧の部分を引いて、一枚一枚メディアの部分を読んでいる。

理由は今日出会った瀬多洸夜が去り際に言った言葉が気になり、至急家に戻って古新聞を集めた。

そしてその結果、直斗は亡くなった二人と行方不明に成っていた雪子との共通点に気付く。

 

「……メディア。三人共、事件が起こる前にテレビで報道されている……!」

 

洸夜が言っていた事はこの事か、と自分の目で確認して理解する直斗。

しかし、それと同時に直斗の頭の中にある疑問が過ぎる。

それは・・・。

 

「何故、洸夜さんは天城雪子さんの一件を知っていたんだ?」

 

直斗は、何故事件として扱われていないかった天城雪子が行方不明に成った事を洸夜が知っているのか疑問に感じていた。

今回貰った情報もそうなのだが、この情報は気付く人は気付く事。

 

しかし、雪子の一件は別の話だ。

本来ならば事件として扱われておらず、知っている人も限られている。

事実、自分もこの事を知ったの警官達の世間話を立ち聞きした為であり、その話を聞いて一連の事件と天城雪子の失踪が関係していると判断したのだ。

 

「堂島刑事が話したのか?。いや、あの人は仕事とプライベートを分けている様な人に感じた……一体、貴方は何者なんですか?洸夜さん……」

 

自分しかいない部屋で直斗はそう呟くと、机に洸夜から貰った連絡先の書かれたメモをただジッと眺めているのであった。

 

END

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