同日
現在、完二の家
ジュネスで話終えた総司達は雪子の案をで巽完二の家である染物屋に来た。
そして中に入ると、青い帽子を被った少年が完二の母親らしき人と会話をしていた。
だが、総司達が入って来たのに気付き、完二の母親に頭を下げて店から出て行ってしまう。
「なんなんだ今の? 変な奴だな……」
「見かけない顔だったよね?」
さっきの少年について陽介と千枝が会話する中、雪子が完二の母親と話しをしていたので総司達も後に続いた。
「(だけど、さっきの少年は一体? 不思議な雰囲気だったな……)」
総司は少年から感じた謎の雰囲気が気になり、少年が出ていった入り口を陽介達に呼ばれるまで見ていた。
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現在、完二の家の前
「此処か……」
入口の前にバイクを止めた洸夜は、染物屋を見上げていた。
老舗と言われるだけあり、中々の雰囲気を店から感じる。
「……(見た所、巽完二は見当たらないか)」
店と周りの雰囲気から察して、辺りに完二がいる様子は無い。
ある意味それはそれで都合が良いのだが、逆に目の届く範囲にいないといつ頃のタイミングで犯人が完二に接触してくるのか分からない。
「ふう……表情にでやすい人達ですね」
誰かが店の中から何かを呟きながら誰かが出て来る。
そして、その人物と洸夜は互いにその姿を見ると同時に口を開く。
「ッ! 貴方……!」
「暫くぶりだな、直斗……」
店から出て来たのは白鐘直斗だった。
そして、自分の姿を確認した直斗は最初は驚いた表情だったが、今度は自分を睨む。
「……洸夜さん。どうして貴方が此処に居るんですか?」
「なぁに、それ程深い理由は無い。ただ染物屋に興味が合ったんだよ」
そう言って軽く笑う洸夜だが、直斗はその理由では納得していない様子。
前回の会話で直斗は洸夜に対する見方が少し変わっているのが理由なのだが、洸夜はそんな事に気付いてはいない。
「普通の一般人ならば、その理由で通ったと思いますが洸夜さん。貴方ならば話は別です」
「……俺も十分一般人だと思うんだが?」
直斗の言葉に少し不機嫌な感じで話す洸夜。
周りの人と自分を区別されたのが、どうやら気に入ら無かった様だ。
そして、そんな様子の洸夜に直斗は、帽子を被り直しながら話を続ける。
「普通の一般人は被害者達の共通点に気付きません……メディアに映ると言う共通点にね」
「……(そう言えば俺、直斗にヒントを教えていたな……だから怪しまれているのか)」
今になって自分が直斗に此処まで警戒される理由を思い出す。
しかし、だからと言って本当の事を言う訳には行かないのが現状。
それに、普通に現実を生きている直斗に、ペルソナやシャドウと言った非現実的な世界に巻き込みたくはない。
「メディアに関しては、俺以外にも気付いている人間がいると思うが ? 元々、同じ事が三度も続けば、誰でも疑問に思うだろ」
「……確かに、そう言う事も有り得ますね」
案外、物分かりの良い返答に少し呆気ない感じに思う洸夜。
しかし、直斗の話はまだ終わっていなかった。
「……それならば、もう一つだけ聞きたい事が有るのですが」
「別に良いが、こちらも予定が有るから手短に頼む。 と言うよりもそんなに聞く事が有るなら電話すれば良かったろ? 何の為の連絡先だ」
「……い、今は目の前にいるんだから良いじゃないですか。それに、手短に成るかは貴方次第です。ですが、聞きたい事自体はシンプルなモノですから、難しく考えないで下さい」
そう思って軽く笑いながら洸夜を見る直斗。
しかし、その目はまるで獲物を見る様な目に近い。
そして、直斗らしくないその視線に洸夜は、少し冷や汗を流しながら直斗の言葉を待つ。
だが、直斗の言葉を聞いた瞬間に今度は背中から冷や汗が流れ出す事になる。
「……単刀直入に聞きます。洸夜さん、貴方は何で天城雪子さんの事件を知っているんですか?」
「……何の事を言っているのか分からないな(ヤバい。何か口を滑らせる様な事をいったのか俺は!)」
口では冷静を保っているのだが、内心は口を滑らせた事を後悔していた。
元々、洸夜は嘘をバラさない様にするのは余裕なのだが、相手は年下とは言え、探偵の直斗。
人の嘘を暴くのが仕事と言っても過言ではない。
その為、どの様な所から自分が隠している事が見破られるか分かったもんじゃない。
「隠しても無駄ですよ。この間、貴方は確かに言いました……“三人”ってね」
直斗の言葉に洸夜は、自分が無意識に言ってしまった失言に気付き、つい口元に笑みが零れてしまう。
「……確かに言ったが、それが問題なのか?」
笑いながら喋っていたのが気に入らなかったのか、直斗の表情が少し厳しくなった様に感じた。
「笑いながら言っても説得力は有りませんよ。ですが、まあ良いでしょ貴……方には被害者達の共通点と言うヒントを教えて貰いましたし、今日の所はこの辺で退きます」
そう言って、不本意だが今回は仕方ないと言った感じに洸夜に背を向ける直斗。しかし洸夜は、直斗の余りの呆気ない行動に驚いてしまい、つい呼び止めてしまう。
「待て直斗」
「……何ですか?」
「……何故、こうもあっさりと退く? お前からしたら、俺の行動は怪しいと言う判断になる筈。それに、天城雪子の一件もその気に成れば俺から聞き出せる筈だ」
「さっき言いましたよ。今回、貴方の事を見逃すのは貴方から情報を貰ったからです。つまり、コレで貸しはチャラにしてもらいたいだけです」
洸夜にそう告げる直斗の姿は、一人の少女ではなく、正真正銘の探偵としての姿だった。
その姿に洸夜は、心の何処かで直斗の事を過小評価していた事は大きな間違いだと理解した。
最初は感情的に行動するかと思いきや、攻める時は攻め、退く時は退く。
その年齢的にも合わない思考・行動力に洸夜は驚かされてばかり。
「お前、もし俺が犯人だったらどうする気だ?」
直斗からしたら自分が犯人だと言う可能性は決してゼロではない。
そう思い洸夜は直斗にそう聞いて見ると直斗は……。
「何と無くですが、それは有り得ません。貴方からは覚悟が感じますので……」
「覚悟……」
「はい。何が有ろうと、この事件を解決すると言う覚悟が貴方から感じます。そんな人が犯人である可能性は有りませんよ。何より、もし犯人だったらワザワザ探偵である僕にヒント何て渡さないですからね……と言う訳で、僕はコレで失礼させていただきます。それでは、また今度会いましょう」
まるで、洸夜が言いたかった事が分かっていた様な感じで、話すだけ話し、その場を後にする直斗。
そして洸夜は、まるで嵐が過ぎ去った様な感じで、どっと体から疲れ出ていて、精神的に疲れてしまった様子の洸夜。
だが、疲れてはいるが、その顔には笑みが見て取れている。
「白鐘直斗……既に俺が、何だかんだで事件に介入している事に感づいたか……何て言うか、凄い少女……いや、探偵だな」
まるで、弟か妹を見る様な目で洸夜は直斗が去って行った方向を暫く眺め、そして、完二の家にへと足を進めた。
END