ペルソナ4~迷いの先に光あれ~   作:四季の夢

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認められた者

同日

 

現在、熱気立つ大浴場(最上階)

 

『うふふふふ。中々やる見たいだねぇ』

 

「センセイッ! 皆、大丈夫クマかッ!?」

 

完二のシャドウと総司達の間には、消滅していく『タフガイ』と『ナイスガイ』の姿が有った。

しかし、二体のシャドウを倒したにも関わらず、完二のシャドウには傷一つ無く、全くの無傷。

それに引き換え総司達はボロボロの姿で、四人の体力も限界に近付いていた。

そして、嘲笑っているシャドウに総司達は睨み付けていた。

 

「ハァ……ハァ……ちくしょう!」

 

「な、何て奴なの……!」

 

陽介と千枝がシャドウに対して決死の態度で構えている中で、総司は雪子に話し掛ける。

 

「……雪子。回復は後何回ぐらい出来そうだ?」

 

「一人ずつなら、まだ余裕は有るけど……全体にするならそんなに余裕は……瀬多君は?」

 

「俺もそんな感じだ……」

 

皆の残りの体力も限られているこの状況で、完二のシャドウと一戦交えなくては成らない。

元々、完二のシャドウのサポート役だった『タフガイ』と『ナイスガイ』を甘く見ていたから、こう成ってしまったのだ。

 

「クッ! ……(サポート役だと思って、甘く見たのが間違いだった。あのシャドウ達は何とか倒したが、この状態で完二のシャドウを倒せるのか……!)」

 

『何を考え事をしているんだい? もっと、僕を見てくれよ!』

 

「センセイ避けるクマ!」

 

シャドウとクマの言葉を聞き、顔を上げた総司が見たのは武器であるオブジェを振り上げているシャドウの姿だった。

 

「ッ!? しまっ……!」

 

『遅いよ! デッドエンドッ! うおりゃああああああああああッ!』

 

「ガハッ!」

 

鈍い音が辺りに響き、シャドウの攻撃をモロに喰らった総司はそのまま吹っ飛ばされてしまう。

 

「「「「相棒!/瀬多君!/センセイ!」」」」

 

「ッ! イザナギ!」

 

陽介達の言葉が耳に入った事で、頭を切り替えた総司は壁にぶつかる寸前でイザナギを召喚し、受け止めて貰い、壁への激突だけは避けれた。

しかし、シャドウの攻撃のダメージが大きく、立つ事が出来ない。

 

「く、くそ……!」

 

「瀬多君!……今、回復を!」

 

『行かせると思ってるのかい? 女は消えろやぁ!』

 

「あっ……!」

 

総司の回復へと向かおうとしたが、シャドウが雪子の前に出て妨害する。

そして、雪子目掛けてシャドウは武器を振り上げるが……。

 

「あんたの相手は私達よ!」

 

「行け! ジライヤ!」

 

「マハガル!」

 

千枝がシャドウに向かって、おもっきしの飛び蹴りを食らわし、陽介はジライヤの疾風攻撃を放つ。

そして、喰らったシャドウはそのままバランスを崩して倒れてしまう。

 

『あうッ!』

 

「千枝!」

 

「雪子! 此処は私と花村に任せて、早く瀬多君を!」

 

「分かった! クマさん!千枝達を!」

 

「任せるクマ!」

 

クマに千枝達のサポートを頼むと、雪子は総司の所へと走って行く。

そして、千枝達に妨害されたシャドウも立ち上がり、武器を構えながら千枝達を睨み付ける。

 

『ふふふ、情熱的なアプローチだね……だけど、女はお呼びじゃねえんだゴラァッ!』

 

「千枝ちゃん! ヨースケ! 避けるクマ! 攻撃が来るクマ!」

 

「「クッ!」」

 

クマの言葉に、それぞれペルソナを召喚して防御を固める千枝と陽介。

そして、シャドウは二つの武器を構えると武器を振り回し始めた。

 

『オラァッ!電光石火ッ!』

 

「きゃああッ!/うわぁあッ!」

 

シャドウの怒濤の攻撃が陽介達を襲った。

 

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「……これはまた、凄い状況だな」

 

洸夜は、ワイトにジャミングしてもらいバレ無い様に部屋の隙間から中の様子を見ていた。

しかし、口調程内心では呑気では無い。

はっきり言って、今の総司達ではシャドウを倒す前に、力尽きる可能性の方が高い。

だが、内心ではそう思っていても、洸夜は何も行動を起こそうとせずに状況を見守っている。

 

「(このまま、俺が手助けすれば簡単に勝負が着くだろう。しかし、これからも事件を追って行くならば、これよりも強力なシャドウが立ち塞がる事になる筈。ならば、俺のサポート無しで、これぐらいのシャドウを倒せなければ、事件を追う資格は無い)……だが、一応保険は架けとくか。マゴイチ!」

 

そう言って洸夜はマゴイチを召喚すると、マゴイチに銃口をシャドウに向けさせる。

 

「さて、総司。まさに此処がお前等の天王山だ」

 

そう言って洸夜は、マゴイチにはまだ手を出させず、総司達の出方を伺う様に壁に背中を任せた。

 

 

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『メディア!』

 

「大丈夫? …瀬多君?」

 

「何とか……」

 

雪子に回復して貰い総司は立ち上がる。

そして、シャドウと交戦している千枝達の方に視線を向けると、武器を構えて再びシャドウの下へと走り出した。

 

「相棒! 大丈夫なのか?」

 

「問題ない……それよりも、コイツを倒すぞ!」

 

「倒そうって、それが出来たら苦労は無いよ!」

 

総司の言葉に千枝達は肩を落しながらそう言った。

しかし、二人の言葉に総司は首を振る。

 

「俺に考えがある」

 

「「「どんな!?」」」

 

「陽介を囮にして一端態勢を立て直す」

 

「いや、ふざけんなって! そんな事、誰が認め……って里中に天城! ああ、その手が有ったか……見たいな顔すんな!」

 

「ご、ごめん……」

 

場が和んだので、総司は本題に入った。

 

「冗談だって……もう、此処まで来たら下手な作戦は必要ない。俺が残りの体力を全て使ってデカイ攻撃をするから、後は皆で叩き込むんだ」

 

「確かに手っ取り早いけど……」

 

「まあ、それしか無いか」

 

総司の言葉に追い付いて来た雪子達は苦笑いしながらも武器を構え直す。

残りの体力等が少ないこの状態では、下手に補助技や回復を繰り返すならば、少しでも敵にダメージを与える事に優先した方が良いと総司達は判断した。

 

『さっきから何を、ごちゃごちゃ言っているんだい?もう、そろそろ終わらせるよ!』

 

さっきからずっと喋っていてばかりの総司達に、シャドウは我慢の限界が来たのか、武器を振り回しながら総司達を睨みつける。

 

「……お前の言う通りだな。そろそろ終わりにしよう。行くぞ、皆!」

 

「「「了解ッ!」」」

 

総司の言葉に全員が移動したのを確認すると、総司はまず行動を開始する。

 

「ハイピクシー!」

 

総司が召喚したのは、小さな妖精の様なペルソナ。

そして、召喚されたハイピクシーの身体から雷が流れ始める。

 

『な、なんだ一体それは!』

 

「ただの妖精さ……ハイピクシー!」

 

『ジオンガッ!』

 

『うわああああああッ!?』

 

総司がそう言ってシャドウに微笑むと、ハイピクシーから巨大な雷が放たれ、シャドウに直撃する。

 

「今だ! 一気に畳み掛けるよ! トモエッ!」

 

「ジライヤッ!/コノハナサクヤッ!」

 

シャドウに攻撃が直撃したのを確認した千枝達は、ここぞとばかしに攻勢に打って出た。

 

『脳天落し!/マハラギ!/マハガル!』

 

『グワァァ……!!!』

 

そう叫んだ後、シャドウは倒れた。

そして、それを確認した総司達はシャドウの方を警戒しながら見て、完二のシャドウが立ち上がらないのが分かると腰を下ろす。

 

「か、勝った……?」

 

「も、もう……限界……」

 

「「同じ……」」

 

言葉では、疲れた事が分かるが、総司達の顔には笑みが生まれており、それぞれが自分の思っている事を口に出していた。

しかし……。

 

『…………ッグ……ウフフ……ふふふ、情熱的なアプローチだなぁ。これならみんな……素敵なカレになってくれそうだよ』

 

「「「「ッ!?」」」」

 

総司達は声の聞こえる方を向くと、そこには完二のシャドウが完二の姿に戻り、こちらに近付いてくる姿だった。

 

「ま、まだ向かってくるクマ!。よっぽど強く拒絶されてるクマか……?」

 

「……そりゃ、これだけのギャラリーがいればな」

 

「ある意味、一生の恥だもんね」

 

陽介と千枝の言葉に苦笑いしながらも、何とか平常心を保とうとする総司達。

すると……

 

「……めろ」

 

「?……なんだ? 誰か今、なんか言ったか?」

 

「ううん。私は違うよ」

 

「私も」

 

今一瞬だけ、誰かの声が聞こえた様な気がした総司は気になり、近くにいた千枝達に聞くが千枝達は首を横に振る。

すると、そんな事を言っている間にも完二?がこちらに近付いて来る。

 

『誰でもいいんだ……誰かボクを受け入れてよおおおお!!!』

 

「止めろって! 行ってんだろおおおお!!」

 

「うぉっ!ビビった……」

 

突然、完二が自分のシャドウを殴り飛ばし、その殴った時のバキッ!と言う音が周りに響く。

そして、殴り飛ばしたシャドウを見ながら完二は、ゆっくりと語り始めた。

 

「情けねぇぜ……こんなんがオレん中にいるかと思うとよ……知ってんだよ、お前がオレん中にいることくらいな!」

 

そう言って完二はシャドウの前に立つ。

その姿は、先程まで恐怖に支配されていた姿では無く自信に満ち溢れていた。

 

「オラ立てよ! 俺と同じツラ下げてんだ……ちっと殴られただけで沈む程ヤワじゃねえだろ。男だ女だってんじゃねえ、拒絶されんのが怖くてビビってよ……自分から嫌われ様としてるチキン野郎だった……でもよ、この間店に来たお客が俺の作った人形を妹の為とは言え……あんなに褒めてくれて買ってくれたのを見て正直……てめぇも嬉しかった筈だろ!」

 

『……』

 

完二のその言葉に、完二?は立ち上がると、完二に近付いてくる。

 

「今まで、お袋以外に俺の趣味を認めてくれた奴はいたか!。いねえだろ!あの人が言ってくれた言葉を聞いて……もう少し頑張ってみようと思ったんじゃねえか!。だから来い! あの人が認めてくれた様に俺も認めてやる!てめぇは俺だあ!」

 

完二の言葉にシャドウは頷き、光に包まれると全身が黒く巨大で髑髏のイラストが描かれていて、手には雷のオブジェを持つペルソナ『タケミカヅチ』になり、完二は自分のペルソナを見上げた。

 

「頼むぜ相棒……」

 

『オオオオッ!』

 

完二の言葉に答える様にタケミカヅチは手に持つ雷のオブジェを掲げた。

 

 

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「……保険はあくまで、保険で終わったか」

 

そう言って洸夜は、マゴイチを戻すと入り口の影から総司達の方を眺める。

 

「(完二も総司達も、一皮剥けたか……だが、やっぱりまだ甘い……けど、今回は褒めといてやるか)」

 

戦い方はまだ甘いが、確実に成長した事は事実。

その事に関しては、素直に褒めて上げて良い。

 

「さて……俺もそろそろ帰るか……ッ! 傷も……まだ治り切って無いしな、何より、シャワー浴びたいし……」

 

そう言って洸夜は右手を掲げて入口を出現させると、現実の世界へと帰って行った。

 

チリーン……!

 

この時、鈴の音が響いていた事に洸夜は気付かなかった……。

 

 

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チリーン……!

 

「今……!」

 

「どうした相棒?」

 

うっすらと聞こえた鈴の音に、反応している総司に陽介が声をかける。

 

「今、兄さんの鈴の音が聞こえた気がしたんだ……」

 

「ハハ、いくら死に掛かったからって、それは無いだろう……今日はお前も俺達も、疲れてんだ。早く帰ろうぜ」

 

そう言って笑いながら、千枝達の下へ行く陽介。

その様子に何処か納得出来ない感じの総司だったが、陽介の言う通り、今回の戦いでの疲労は半端では無かった為、完二を連れて、此処から早く帰る事にした。

 

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現在、堂島宅

 

「ただいま……」

 

「お帰りなさい……って、お兄ちゃんどうしたの凄い汗だよ!?」

 

「はは……ちょっとね」

 

菜々子が驚くのも無理はなく、総司のワイシャツは汗でびしょびしょに成っている。

いくら

今が夏とは言えこれは流石にかきすぎであった。

……サウナの様な場所で戦って来たから当然なのだが。

 

「……シャワーを浴びてくるよ」

 

菜々子にそう言って浴室に向かう総司……だが。

 

「あっ! お兄ちゃん今は洸夜お兄ちゃんがシャワー使ってるよ」

 

「兄さんが……?」

 

「うん、洸夜お兄ちゃんもお兄ちゃんと一緒で凄い汗かいてたんだよ。何かね、素振りしてたんだって」

 

「素振り……」

 

菜々子の言葉に総司は少し考える。

洸夜が趣味の剣術をしている事は総司も知っている。

その為、木刀の素振り等をしていてもおかしくは無いのだが……総司は玄関に置いてある木刀に目を向けると、近付いて触ってみた。

 

「濡れてない……それどころか湿ってすらない」

 

総司が木刀に手を触れると、汗で濡れているどころかずっと家でエアコンにあたっていたかのように冷たかった。

 

「さっぱりしたな……ん? なんだ総司帰っていたのか」

 

「たった今だけどね、ただいま兄さん」

 

「お帰り……それにしても凄い汗だな。お前も早くシャワー浴びてこい」

 

総司の姿を見て、洸夜は驚いた表情しながらそう告げると木刀を持って部屋へと行ってしまう。

そして、総司はその後ろ姿を静かに見詰めていた。

 

「まただ……(前にも感じたこの違和感……一体何なんだ)」

 

ジュネスでも感じた洸夜への謎の違和感に、総司は分からずにただ、佇んでいた。

 

END


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