ペルソナ4~迷いの先に光あれ~   作:四季の夢

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最強との再会

同日

 

『……『彼』を何で助けてくれなかったんですか!』

 

『あんたは何がしたかったんすか!』

 

『お前は何も変わらない。力が有ろうが無かろうが、何も変わらない』

 

『お父様を返して……!』

 

『やはり、君も我々と同じだ……』

 

『結局、お前もそう言う奴なんや』

 

“……またか、またこの悪夢が俺を支配するのか”

 

二年前の一件から、度々見る様に成ったこの悪夢。

しかし、稲羽に来てからは余り見なく成ったのだが、今日は悪い意味で特別な様だ。

 

『やっぱり、僕を殺した方が正解だったかい?』

 

『所詮はてめぇも俺と同じで、ペルソナを誰かを傷付ける道具にしか出来ねえんだよ』

 

『私は死んだ……美鶴の目の前で、君が無力だったからだ』

 

『君は私と同じだ。自分の欲望の為に何でもする』

 

何度も何度も繰り返される悪夢。

そして、決まって最後は必ず『彼』が出る。

 

『先輩……』

 

“……”

 

『先輩のワイルドは何も示さない。先輩のユニバースは何もない。だって先輩は……“黒”だから』

 

“黒……?”

 

『真っ黒だ。どれだけの色と混ざっても、何をしようが変わらない。何も変わらない存在なんですよ』

 

“……俺は黒?”

 

『『『『『『『『『真っ黒だああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!』』』』』』』』』』

 

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5月28日(土)曇→雨

 

現在、堂島宅(深夜)

 

「ハァッ!……ハァ……ハァ……ハァ…………クソ……また、あの悪夢か。この頃は見なかったのに……何かの予兆じゃなきゃ良いが」

 

そう言ってうなされていたのが原因でかいた汗を拭きながら、窓の外で降っている雨をずっと眺めているのだった。

 

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5月29日(日)晴

 

現在、堂島宅

 

現在、家にいるのは洸夜と菜々子だけ。

堂島は仕事で、総司は完二達と遊びに行くと行って留守にしている。

どうやら、すっかり完二とは仲良く成った様だ。

しかし、それでもたまには洸夜に会いに来たりしている。

そして、それはテレビを見ていた時だった。

 

「お兄ちゃ~ん!お兄ちゃんにお手紙とどいてるよ」

 

「手紙……? 誰からか分かるか?」

 

「う~ん、良く分からない」

 

そう言って菜々子は少し困った様子で封筒を渡し、洸夜はそれを受けとる。

そして、封筒に書かれている文字を見て驚愕してしまった。

何故なら、そこに書かれていたのは……。

 

「果たし状……?」

 

そう、大きな文字で『果たし状』と書かれていたのだ。

もちろん、洸夜に心当たり等は無い。

そう思いながらも、差出人の名前を確認すると再び驚愕する。

差出人の名前の所には……。

 

差出人:絵里座部酢

 

「なんだコレは……ホントに名前か?」

 

このままでは埒外開かないと判断し、手紙の中身を読む事にした。

内容を見れば、少しは謎が解けるだろう。

しかし、その考えは呆気無く崩れた。

 

『突然、この様なお手紙をお許し下さい。

実は貴方様に前から伝えたい事が有ります。

今日の12時に、近くの神社の前で待って下ります。』

 

「……何故、果たし状なのに、中身はラブレター見たいに成っているんだ?」

 

余りの訳の分からない手紙に頭を抑える。

そして、少し悩んだ結果で出した結論は……。

 

「イタズラだな。こう言うのは無視するのに限る」

 

そう言って、手紙を丸めようとした時だった。

 

PiPiPiPiPiPi

 

「あっ! お兄ちゃん、でんわだよ」

 

「今度は電話? 誰からだよ……」

 

変な手紙のあとの突然の電話。

しかも、相手の名前を見ようとしたがディスプレイに映し出されているのは『非通知』の文字。

変な手紙の後の非通知着信に息を飲むと、ゆっくりとボタンを押す。

 

Pi……!

 

「もしもし……」

 

『来ないと怒りますよ。ブツッ!。プー!プー!』

 

「……」

 

それだけ言われて、切られた電話。

本来ならば悪戯電話なのだろうが、今の電話の声には聞き覚えがあった。

洸夜は再度先程の手紙の差出人の名前に視線を移動させる。

 

「……先程の声。そして、この宛名といかにも付け焼き刃の知識で作った的な果たし状……そうか、“アイツ”か」

 

そう言うと、洸夜はすぐさま携帯電話と財布をポケットに入れて、出掛ける準備をする。

 

「菜々子、俺は少し出掛けて来る。大丈夫だとは思うが、何か有ったら電話しなさい」

 

「お兄ちゃん、何処に行くの?」

 

その言葉に少し微笑みながら菜々子の方を振り向き、洸夜はこう告げた。

 

「少し友人に会ってくるだけだよ……」

 

「お兄ちゃんのお友達 ?どんな人?」

 

洸夜の友人が気になるのか菜々子は、興味津々で聞いてくる。

その様子を見た洸夜は、菜々子の頭を撫でながら口を開いた。

 

「なあに、世界“最凶”の……“エレベーターガール”だよ」

 

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現在、神社

 

あの電話の後、少し急ぎ気味で神社に向かった洸夜は今神社に到着していた。

遅れたら何をされるか分かったもんじゃない。

また、ここの商店街の神社は周りを見る限りそれ程綺麗では無く、ハッキリ言ってボロい神社だ。

しかし、不思議と心が落ち着く場所の様に感じていた。

近頃、また見始めた悪夢のせいで静かな場所が恋しいのだろうか。

それとも、二年前の戦いを知る数少ない友人と久しぶりに会話出来るのが嬉しいからなのか。

この頃余り見せなく成った笑顔で神社の階段を上り始めた。

すると、そこには……。

 

ちゃりーん……!

パン……パン……!

 

「……(昔見たいに賽銭箱に財布をひっくり返すマネは、もうしない様だな)」

 

そう思いながらも目に入ったのは見たのは明らかに場違いで、周りからも浮いた感じの青い服装を完璧に着こなしている銀髪の女性が神社の前でお参りをしている光景。

そして、自分の気配に気付いたのか銀髪の女性はコチラの方を向き、こちらをを見て微笑んだ。

その女性の微笑みはミステリアスだが、確かな嬉しさと優しさが表れていた。

 

「……二年ぶりの再会だな。元気そうで何よりだ“エリザベス”」

 

そう言って、笑顔でエリザベスに語りかける洸夜の言葉を聞き、エリザベスも再び微笑む。

 

「突然、御呼び立てして申し訳有りません……ですが、変わりない様で安心致しました……洸夜様」

 

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現在、ジュネス近くのステーキハウス

 

あの後、再会した二人だったが、エリザベスが空腹を訴えた為にジュネス近くのステーキハウスへと足を運んでいた。

別にジュネスでも良かったのだが、万が一に総司達に見付かると面倒だからだ。

そして現在、エリザベスと共に注文した料理を口にしながら話をしている。

 

「それにしても一体何なんだ、あの果たし状は?。」

 

「古えより、誰かを呼び出す時にはその手紙を使うのが正しいとばかり思っていたのですが?」

 

そう言って、注文したお肉を口に運ぶエリザベス。

口にお肉を含んだその姿はまるでリスの様で可愛いが、今はその姿で和む暇は無い。

 

「別に呼び出す事自体は間違っていないが……それに、差出人の所の名前は何だ。電話が来なかったら、お前だって気付かなかったぞ?」

 

「あの方が見栄えが良かったので」

 

「お前は、漢字を嘗めている」

 

「辞書を引いて頑張りました」

 

「そんな事より常識を学んでくれ……」

 

そう言って胸を張るエリザベスに頭痛を訴えた頭を抑える。

 

「それに、何だあの手紙の内容は? あんな内容で本当に決闘だったら、体育館の裏が血の海になるぞ」

 

そう言ってエリザベス同様に注文した肉を口に運ぶ。

 

「殿方の方は、あの様な内容の手紙が届くと嬉しがると思っていたのですが?」

 

「別に男に限った事では無い。つーか、二十歳であんな内容の手紙を貰った所で何にも感じないがな」

 

そう言って呆れた感じで食事を続ける。

それに対してエリザベスは間違った内容とは言え、自分が書いた手紙に全く興味を示さない態度が惜に触ったらしくこちらを少し睨む。

そして、エリザベスの眼力が自分を捕らえる。

 

ジーー

 

「……」

 

伊達に最強クラスのペルソナ使いであり、力を司る者と言われるだけあって眼力が尋常では無かった。

そのあまりの眼力に冷や汗が流れ出した。

 

「……俺が悪かったからもう睨むな」

 

「最初からそうおっしゃれば良かったのです。せっかくの再会ですのに、女性の心を傷付ける酷い殿方……シクシク」

 

そう言って嘘泣きをするエリザベスだが、片手はしっかりと肉を捕らえている。

 

「(この二年で一体何を学んだんだ……)」

 

そう思いながらエリザベスの行動に再度頭痛を起こす。

最近は頭痛が結構起きている。

理由は単純、総司達が最初の頃に起こしていた周辺への迷惑と軽率な行動によるストレス。

しかし、だからと言って別に苦とは思ってはいないが……。

そんな状態だが、頭から手を離すとエリザベスに視線を向けた。

 

「全く、お前は俺の事を何だと思っている?」

 

「この様なか弱い私を二人掛かりで襲う様な殿方なのでは?」

 

「ッ! 。ゲホッ!ゴホッ!……お前、何て事言うんだ!? 知らない奴が聞いたら誤解するだろ!」

 

調度、水を飲んでいた時のエリザベスの発言で噎せてしまった。

その様子にクスクスと笑っているエリザベス。

どうやら、先程の仕返しのつもりの様だ。

そして、その様子に気付くと周りを確認して、誰も聞いて無い事に安心するとエリザベスのオデコに指をグリグリと押し付けた。

 

「笑っている場合か! 第一、暇有ればメギドラオンとかばっかりするお前の何処がか弱いんだ!?。それにあの時は『アイツ』と俺の二人掛かりで挑めって言ったのはお前だろ!」

 

「も、申し訳ありません! じょ、冗談、あっ!痛いです、痛いです! オデコが凹んでしまいます!?」

 

エリザベスがそう言う為オデコから指を離すと、窓から外の景色を見始めた。

そして、オデコを抑えながら自分に抗議の視線を送るエリザベス。

しかし、そんなエリザベスの視線には気付かないままで口を開いた。

 

「……あれから二年なんだよな?」

 

その言葉にエリザベスは、オデコから手を離すと小さく「そうですね」と相槌をうつと、自分の事を悲しそうな目で見る。

 

「確かにあれから二年です……ですが、私にはつい昨日の様に感じて成りません」

 

「お前は前に進む事を選んだからな。だが、前に進む所か二年前から時が止まった俺には、この二年は長すぎたよ……」

 

そう言って力を抜く様にその場の椅子に座り直すと、ゆっくりとエリザベスの方を向いたのだが目には涙が流れていた。

しかし、無意識から来るモノなのか自身では自分が涙を流している事には気付いて織らず、そのままの状態のまま話を続ける。

 

「……『アイツ』は凄いよ。ニュクスもシャドウ達も皆、人間の愚かさが招いた事だったのに……『アイツ』は自分の命を賭けて終わらせたんだ。アイツも、もっと生きたかった筈なのに……いや、生きて欲しかった……!」

 

「……」

 

そう言って自分の涙に気付き、顔を隠しながら話す姿にエリザベスはただじっと黙って聞く。

エリザベスは洸夜の身に何が有ったのかは知らない。

だが何か、自分には分からない苦しみが洸夜を襲った事だけは理解できた。

そして、自分が喋り終わるのを確認すると同時に口を開き、語り始めた。

 

「私は『彼』を救う術を探す為旅に出ました……ですが、その方法は疎か、手掛かりすら見付かりません」

 

「……イゴール達から聞いたよ。だが、やはりニュクスも『ユニバース』の力も甘くは無い。そんな方法自体有るかどうか……」

 

その言葉に顔を俯かせるエリザベス。

恐らく、エリザベス自身も内心では多少なりともそう思っているのだろう。

しかし、エリザベスはすぐに顔を上げた。

 

「それでも私は前に進む事に致しました。洸夜様も、今こうしていると言う事は前に進む事を選んだからなのではありませんか?」

 

「分からない。俺はちゃんと前に進んでいるのかどうか……うッ!」

 

自分はちゃんと前に進んでいるのかが分からずエリザベスにその事を聞こうとした瞬間、頭に痛みが走る。

 

「どうしましたか?。何処か、お怪我でも?」

 

「いや、何でも無いさ。ただの頭痛だ……」

 

そう言って、大丈夫の合図の為に手をブラブラと降る。

だが、その様子にエリザベスは少し心配そうに見るがそれに気付いた為、話を変える事にした。

 

「そう言えば、何でお前が稲羽に来たんだ? ここの事件と二年前との関連性でも探しにきたか?」

 

「ここの事件……? 少し、お待ち下さいませ」

 

その言葉にエリザベスは意外にも、何も知らないと言った感じだった。

そしてエリザベスはそう言うと、静かに目を閉じて何かに集中し始める。

 

「(何をしているんだ? だが、それよりもイゴールがエリザベスに何も言って無かったと言うのが驚きだな)」

 

そう思いながらエリザベスの様子を見守っていると、5分もしない内にエリザベスは目を開いた。

 

「お待たせ致しました。確かに、この町から少し不思議な力を感じます……もしや、主様関係ですか?」

 

「当たりだ。相変わらず、お前には隠し事は出来ないな……だが、お前が何も知らなかったの意外だった。……マーガレットとかに何も聞いていないのか?」

 

「只今、絶賛職務放棄中でございます」

 

「ああ、そうかい……(俺がマーガレットを知っている事すらつっこまないか)」

 

そう言って、何故か得意気に話すエリザベスに今回の事件の説明等の会話をする事にした。

 

END


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