現在、ジュネス近くのステーキハウス
「……何て言ってるか聞こえるか?」
「ビミョーっス。席も遠いし、周りの客も煩くて」
「あー!もう!少し黙っててよ! 全然聞こえないじゃん!」
「頼むから静かにしてくれ……」
等と言いながら総司達が見ているのは、自分の兄である洸夜、そしてその洸夜と楽しそうに食事をしている金髪の女性(エリザベス)の姿だった。
何故、総司達がこんな事をしているのかと言うと。
完二のシャドウとの戦いの特訓が終わった。
↓
すると、皆が空腹を訴えだした。
↓
たまには別の所で食べようと言う話になる。
↓
ならば、ジュネスの近くのステーキハウスへ。
↓
ステーキハウス到着。
↓
「あれ? あそこに要るのって洸夜さんと……誰?」
↓
現在に至る。
等の経緯から総司達は、洸夜とエリザベスから少し離れた席から洸夜達の様子を見ている。
「ね、ねえ……やっぱり止めましょうよ、覗き見なんて……」
暫く前に洸夜に相談を受けて貰った雪子は罪悪感を覚え、覗き見をしている千枝達を説得するのだが……。
「とか何とか言っちゃって、本当は雪子も気になるんでしょ?」
「ち、ちがっ! 私は別に洸夜さんの事は……」
「誰も兄さんについて言って無いんだが……」
「!!!」
総司の言葉が留めとなり、雪子は顔を真っ赤に染めたまま黙ってしまう。
「まあ、天城先輩のカミングアウトは置いといて……本当に何話してんスかね?」
「確かに良く分かんねえけど、一つ分かる事は……美人だよな」
「た、確かに……」
そう言って女性の事を見る陽介。
確かに、ミステリアスな雰囲気を纏っているが、女性は美人の分類に入る事は間違い無い。
しかし、総司は陽介の言葉よりも女性の姿に何処か見覚えがあった。
「(何だろう……見た目や服といい、雰囲気といい、ベルベットルームのマーガレットにそっくりだ……偶然なのか?)」
偶然とは言え、マーガレットとそっくりの女性と自分の兄である洸夜が一緒にいる理由が分からない総司は、後ろで勝手に盛り上がっている陽介達の事をほっとき、周りの音に気をつけながら洸夜達の話に集中する事にした。
「それでは、今回の一件は二年前の事とは関係無いのですね?」
「ああ、元々タルタロスにいた“奴ら”はニュクスの一部であり、僕みたいなモノだったからな。それに引き換え、今回の奴らは何処か違う」
「???(二年前?、奴ら?、ニュクス?。一体何の話をしているんだ?)」
洸夜達の話に出て来る単語の意味が分からない総司だったが、もう少しだけ二人の話に耳を傾ける事にした。
「……それにしても、二年もたったのにお前は全く変わらないな」
「俗に言う若さの力と言うモノです」
「何が若さだ……お前、今何歳なんだ?。本当は外見詐欺でいい歳……」
シュッ!
洸夜がそう言った瞬間、何かが顔を摩った感覚を覚え、隣を見ると……。
「ッ!?」
そこには、ペルソナカードが椅子に刺さっていた。
そして、顔を何かがつたる感覚がして洸夜は恐る恐る手で頬を触れてみると、触れた指先には赤い液体が流れていた。
この時、洸夜はようやく自分の頬が微かに斬れている事に気付いた。
そして、洸夜はゆっくりと怪我をさせた張本人であるエリザベスの方を冷や汗をかきながらみると……。
「女性に年齢を聞くのは言わゆるタブーと言うやつでございます……しかも、冗談でも許し難い事を……口を閉じる事をオススメ致します」
顔はいつもの笑顔だが、目は全く笑っていなかった。
そして、隣で刺さっていたペルソナカードもエリザベスの手元に戻る。
それを確認した洸夜はしずかに頷くと口を開いた。
「……す、すまなかったな。お前は綺麗なままのエリザベスでいてくれ……」
「……これが噂の命乞い……でありますか?」
「……(間違っていないが何かが違う……!)」
エリザベスの言葉に、洸夜が己の命の危機を感じていると……。
洸夜の恐怖の元凶であるエリザベスから殺気が無くなった。
「……まあ、反省していらっしゃっているご様子で有りますし……今回は許して差し上げます」
言葉だけ聞けば許してくれている様に聞こえるが、目をみると次は無いと語っていた。
「ああ……すまなかったな」
洸夜も今は謝る事が最善だと思い、素直に何度も謝り続けた。
「何だろう……今度は謝ってるよ」
「何か殺気みたいなもんも感じたっスよ……」
「相棒、何て言ってたか聞こえたか?」
「皆が騒いでたから余り聞こえなかったよ……」
洸夜達の奇妙な様子に不思議がる陽介達、総司も二人の会話に興味が有ったのだが陽介達の声がうるさく、後半は余り聞こえなかった。
そして、総司は再度耳を傾けようとしてしたが……。
「さて、そろそろ出るか?」
「そう致しましょう。ちなみにお会計は……」
「ハァ、俺が払ってやるよ……ったく、一人で五皿も肉喰いやがって……」
そう言ってブツブツ言いながら請求書をレジに持って行く洸夜。
そして、その様子を見てニコニコしている女性。
どうやら、洸夜達の話は終わって閉まった様子。
だが、総司は洸夜とエリザベスの前半の会話が普通のモノでは無い気がした。
「一体誰だったんだ? さっきの女の人は……」
そう言って考え込む総司だったが……。
「いや! あれは別れ話じゃないのか!」
「違くない? 逆に寄りを戻そうとしてるんじゃ?」
「……ハァ」
既にいない洸夜と女性の話に盛り上がっている陽介達の姿にため息を吐く総司だった。
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現在、商店街
「そう言えば、先程の店で私達の事を見ていた方々がいらっしゃいましたね」
「……弟と、愉快な仲間達だ」
「気付いてらしたのですか……」
「あんな人数で騒いでいたら嫌でも気付くだろ。それに、話を聞かれていたとしてもシャドウの名前は出していないし、ニュクス等の事も意味が分からないだろ」
そんな風に会話をしながら洸夜とエリザベスは商店街の道を歩いていると、洸夜が何かを思い出した様に口を開く。
「エリザベス、お前はこの後ベルベットルームに帰るんだろ?」
「そうですね。この町に興味が沸きましたから、この町に滞在する事を兼ねて主様やお姉様にちゃんと話をしないと行けません」
「(職務放棄中なのにか……?)だったら悪いんだが、総司がベルベットルームに来たら俺の事は上手くごまかして貰えないか?。まだ総司達に俺がペルソナ使いで有る事を知られる訳には行かない」
そう真剣な表情でに伝える洸夜に、エリザベスにも真剣さが伝わったらしく静かに頷いた。
「畏まりました。弟様が来た際には上手く伝えて置きます」
「すまないな……所で、ベルベットルームで思い出したんだが?」
「何か有りましたか?」
「別に大した事じゃないんだが、この間ベルベットルームに招かれた時に、部屋の“中身”が変わっていたからさ、あれってどう成っているんだ?」
「……」
洸夜がそう言うとエリザベスは突然、商店街の道の真ん中で足を止めて洸夜をジッと見据える。
そして、見据えられている洸夜も状況が分からずに足を止めた。
「どうしたんだエリザベス……何か有ったか?」
少し心配に成り、洸夜がエリザベスに声を掛けると、エリザベスは洸夜を見据えたまま口を開く。
「……洸夜様。貴方様が初めてベルベットルームに招かれた時の事を覚えていらっしゃいますか?」
「初めて招かれた時の事……? 五年近くになるが、何と無く覚えている。だが、それがどうかしたのか?」
「その時ベルベットルームにいた人員を覚えておいでですか?」
エリザベスの質問の意図が今一良く分からない洸夜だったが、それ程深くは考えずにエリザベスの質問に答えた。
「お前とイゴールだろ? と言うよりも、あの時お前もその場に居たんだから分かるだろ?」
「では、その時の部屋の内装はどうでしたか?」
エリザベスは洸夜の言葉を無視すると話を続け、更に質問を投げ掛ける。
それに対して洸夜も、いつまでも商店街の真ん中で話している訳にも行かず、話を終わらせる為素直に質問に答える事にしたのだが……。
「何を言っているんだ? あの時の内装はエレ……ベー………ター?」
エリザベスの質問に何故か洸夜は、自分が初めてベルベットルームに招かれた際の内装の記憶があやふやな事に気付く。
二、三年前は確かにエレベーターだった筈なのだが、初めてベルベットルームに招かれた際の内装はエレベーターでは無かった気がした。
「(何だ……? 何故、あの時の事が思い出せない。何か、もっと別な何かだった気が……)」
「いかが成されましたか?」
「ッ!? ……いや、何でも無い。部屋の内装は忘れた……」
エリザベスの言葉に我に帰った洸夜は、エリザベスの質問にそう答え、それを聞いたエリザベスも「そうですか……」と答え、話が終わったかに思えたのだが……。
「……洸夜様。貴方様に来て頂きたい所が有るのですが?」
「来て頂きたい場所? 何処何だそこは?」
「すぐに御理解頂けます」
ヒュン……!
エリザベスがそう言うと同時に、エリザベスの後ろが割れると入口が出来る。
しかし、その様子に町の人は誰一人気にした様子も無く普通に歩いている所を見ると、入口が見えているのは洸夜とエリザベスだけの様だ。
「一体、俺を何処に連れて行く気なんだ?」
その出現した入口に戸惑いながらも、洸夜はエリザベスに問い掛ける。
その洸夜に対して、エリザベスは何時も通りの表情でニコッと笑うと……。
「誰にも迷惑の掛からない場所でございます。そこで……私とお手合わせ願います」
End